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シルフ族の療法司ショーア
あの二人、ようやくいなくなって……迷惑千万!
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その日の夜、みんなが寝静まる頃。
珍しく、俺とあのガキはシェイラに個室へ呼ばれた。
日中、シェイラは顔を青くしていた。
見てて具合が悪そうだった。
そうまでしてここにいなきゃいいのに、とも思った。
で、ここでガキと一緒にその理由を聞いた。何とも馬鹿馬鹿しい。
こいつがスパイ活動をしているんじゃないか、だとさ。
「お前から出てくる情報なんて、たかが知れてるだろ」
「うぐぐ」
うぐぐじゃねぇだろ。
見た目通りかどうかは分からんが、シェイラのイメージとしては我がまま箱入りお嬢様。
好きな勉強には力を入れて、嫌いな勉強は押しのける。
そんな未熟な知識から、どうやって戦争で必勝に繋がる情報を仕入れられるっての。
「えーと、コウジさん」
このガキから名前を呼ばれなきゃならん理由が見つからんのだが。
「スパイ……って何ですか?」
おぉう。
こっちの知識もそんなもんだったんか。
「諜報活動、かな」
「僕が、ですか? そんなこと全く言いつかってないんですけど」
スパイって言葉は分からないが、諜報活動なら知ってるって……。
こいつもこいつで、知識が偏り過ぎてんな。
で、シェイラは何やらこのガキといろいろ話し込んでいる。
ま、そっちの世界の話で盛り上がるなら、部外者の俺はいなくてもいいだろ。
「先に寝るぜ? じゃあな……」
やれやれだ。
まぁこの仕事をして、俺がいい目に遭うことはまずないってのは分かってたけどさ。
※※※※※ ※※※※※
朝起きて、握り飯の準備をしようとプレハブに入ると、あの兵士三人の姿がない。
「あぁ、あの三人なら夜中に出て行ったよ。体力も体調も完全に復活したみたいだったぜ?」
傍にいた冒険者からそんな話を聞いた。
「あ、おはよぉ……」
「おはようございますっ!」
寝癖がひどい王女様。
いつも元気な例のガキ。
二人揃って個室から出てきた。
……ま、どちらも子供だから気にするこたぁないか。
俺のせいでもないしな。
「お米、持ってくるねー」
「僕も手伝いますっ!」
随分と懐いたもんだ。
いいコンビになるんじゃねぇの?
「ああぁぁぁっ! どうしよう……これ……」
「だ、出すしかないんじゃないですか?」
指輪の部屋からシェイラの絶叫が聞こえた。
今度は何やらかした。
部屋から出てきたシェイラは両脇に一袋ずつ抱えて、手には米袋の口を閉じた結び目を掴んでいる。
後ろから出てきたあのガキは、何かを持っているのだが……。
「コウジぃ、筋子とタラコが中に紛れてたぁ」
生ものじゃねぇか。
大丈夫なのか? それ。
「えっと消費期限は……明後日?」
目覚まし時計には日付もついている。
それを見てればいつまで消費すればいいかは分かるだろうが、要冷蔵じゃないか? それ。
「触った感じは冷えてますけど」
状態もコピーできるのか。
まぁそれなら……って、なんで部屋に紛れてたんだよ。
製造年月日は昨日か。
なら問題はないんだろうけど……。
いや。
問題は大ありだ。
なるべく早めに消費しなきゃならん。
しかし具を多くしたら比率的にご飯が少なくなる。
比率的に同じにしたら、握り飯が大きくなる。
……圧縮するか。
ご飯を玩具にするみたいで、作る者としちゃいい気分にはならんが。
それでも具を無駄にするよりは……。
何か屋根裏部屋の方がざわついてるな。
「コ、コウジっ! 変な人来たよ!」
「あー? 変な奴なんざ、お前ら二人で腹いっぱいだっつーう?!」
なんかこう……。
先入観で言わせてもらえば、だ。
教会のシスターか何かみたいな恰好した人が来た。
俺の世界の人じゃないのは確か。姿を現したのは、屋根裏部屋の壁の方らしかったからな。
「初めまして。あなたがこの場所の主でいらっしゃいますか?」
シュ?
今、シュって言った?
アルジ、じゃなかったよな。
……ややこしいことはもういいよ。勘弁してくれよ。
「……この部屋の持ち主、管理人、責任者、そんな感じだ。どこぞの宗教の神みたいな言い方はやめてくれ。俺はごく普通の」
「苦しむ者達を、何か丸い食べ物で救って帰してくれる者がいる。そんな噂を聞きました」
あ、人の話聞かねぇ奴がまた来た。
「あー、女神、とやらだろ? それは……」
シェイラを横目で見る。
首を真横に一生懸命振っている。
流石のこいつも、そいつはまともな奴じゃないと判断できたか。
「いえ。女性という話は聞きませんでした。ですのでひょっとしたらあなたのことかと」
最近、無傷でこの部屋に来る者が増えてきてねぇか?
つか、シェイラの噂は聞いてないってことか。
「……神はいないぞ? 俺は」
「コウジ、とその神は名乗っていたとの」
待て待て待て。
誰が神だ誰が。
「思い込みが激しい奴とは会話する気はねぇんだ。それより今朝の握り飯の時間に間に合わんから黙っ」
「ならば私にもそのお手伝いをさせてくださいませ。我がある」
「コウジー。とりあえずアール君との誤解も解けたし、アール君もこっちの国に来てみたいって言うからここらへんでお暇するわね」
「し、失礼します、コウジさんっ」
……。
逃げやがったーーーっ!
い、いや、いなくなってほしい奴らではあったが。
そのタイミングが、よりにもよって……。
「あ、私はショーア、と申します」
いや、お前の名前は聞いてねぇよ!
「コウジさん、でよろしいんですよね?」
……何でこう……俺の思う通りにならん連中が俺に絡んでくるんだ?
異世界、うっとおしいわっ!
黙って握り飯、食って出てけ!
珍しく、俺とあのガキはシェイラに個室へ呼ばれた。
日中、シェイラは顔を青くしていた。
見てて具合が悪そうだった。
そうまでしてここにいなきゃいいのに、とも思った。
で、ここでガキと一緒にその理由を聞いた。何とも馬鹿馬鹿しい。
こいつがスパイ活動をしているんじゃないか、だとさ。
「お前から出てくる情報なんて、たかが知れてるだろ」
「うぐぐ」
うぐぐじゃねぇだろ。
見た目通りかどうかは分からんが、シェイラのイメージとしては我がまま箱入りお嬢様。
好きな勉強には力を入れて、嫌いな勉強は押しのける。
そんな未熟な知識から、どうやって戦争で必勝に繋がる情報を仕入れられるっての。
「えーと、コウジさん」
このガキから名前を呼ばれなきゃならん理由が見つからんのだが。
「スパイ……って何ですか?」
おぉう。
こっちの知識もそんなもんだったんか。
「諜報活動、かな」
「僕が、ですか? そんなこと全く言いつかってないんですけど」
スパイって言葉は分からないが、諜報活動なら知ってるって……。
こいつもこいつで、知識が偏り過ぎてんな。
で、シェイラは何やらこのガキといろいろ話し込んでいる。
ま、そっちの世界の話で盛り上がるなら、部外者の俺はいなくてもいいだろ。
「先に寝るぜ? じゃあな……」
やれやれだ。
まぁこの仕事をして、俺がいい目に遭うことはまずないってのは分かってたけどさ。
※※※※※ ※※※※※
朝起きて、握り飯の準備をしようとプレハブに入ると、あの兵士三人の姿がない。
「あぁ、あの三人なら夜中に出て行ったよ。体力も体調も完全に復活したみたいだったぜ?」
傍にいた冒険者からそんな話を聞いた。
「あ、おはよぉ……」
「おはようございますっ!」
寝癖がひどい王女様。
いつも元気な例のガキ。
二人揃って個室から出てきた。
……ま、どちらも子供だから気にするこたぁないか。
俺のせいでもないしな。
「お米、持ってくるねー」
「僕も手伝いますっ!」
随分と懐いたもんだ。
いいコンビになるんじゃねぇの?
「ああぁぁぁっ! どうしよう……これ……」
「だ、出すしかないんじゃないですか?」
指輪の部屋からシェイラの絶叫が聞こえた。
今度は何やらかした。
部屋から出てきたシェイラは両脇に一袋ずつ抱えて、手には米袋の口を閉じた結び目を掴んでいる。
後ろから出てきたあのガキは、何かを持っているのだが……。
「コウジぃ、筋子とタラコが中に紛れてたぁ」
生ものじゃねぇか。
大丈夫なのか? それ。
「えっと消費期限は……明後日?」
目覚まし時計には日付もついている。
それを見てればいつまで消費すればいいかは分かるだろうが、要冷蔵じゃないか? それ。
「触った感じは冷えてますけど」
状態もコピーできるのか。
まぁそれなら……って、なんで部屋に紛れてたんだよ。
製造年月日は昨日か。
なら問題はないんだろうけど……。
いや。
問題は大ありだ。
なるべく早めに消費しなきゃならん。
しかし具を多くしたら比率的にご飯が少なくなる。
比率的に同じにしたら、握り飯が大きくなる。
……圧縮するか。
ご飯を玩具にするみたいで、作る者としちゃいい気分にはならんが。
それでも具を無駄にするよりは……。
何か屋根裏部屋の方がざわついてるな。
「コ、コウジっ! 変な人来たよ!」
「あー? 変な奴なんざ、お前ら二人で腹いっぱいだっつーう?!」
なんかこう……。
先入観で言わせてもらえば、だ。
教会のシスターか何かみたいな恰好した人が来た。
俺の世界の人じゃないのは確か。姿を現したのは、屋根裏部屋の壁の方らしかったからな。
「初めまして。あなたがこの場所の主でいらっしゃいますか?」
シュ?
今、シュって言った?
アルジ、じゃなかったよな。
……ややこしいことはもういいよ。勘弁してくれよ。
「……この部屋の持ち主、管理人、責任者、そんな感じだ。どこぞの宗教の神みたいな言い方はやめてくれ。俺はごく普通の」
「苦しむ者達を、何か丸い食べ物で救って帰してくれる者がいる。そんな噂を聞きました」
あ、人の話聞かねぇ奴がまた来た。
「あー、女神、とやらだろ? それは……」
シェイラを横目で見る。
首を真横に一生懸命振っている。
流石のこいつも、そいつはまともな奴じゃないと判断できたか。
「いえ。女性という話は聞きませんでした。ですのでひょっとしたらあなたのことかと」
最近、無傷でこの部屋に来る者が増えてきてねぇか?
つか、シェイラの噂は聞いてないってことか。
「……神はいないぞ? 俺は」
「コウジ、とその神は名乗っていたとの」
待て待て待て。
誰が神だ誰が。
「思い込みが激しい奴とは会話する気はねぇんだ。それより今朝の握り飯の時間に間に合わんから黙っ」
「ならば私にもそのお手伝いをさせてくださいませ。我がある」
「コウジー。とりあえずアール君との誤解も解けたし、アール君もこっちの国に来てみたいって言うからここらへんでお暇するわね」
「し、失礼します、コウジさんっ」
……。
逃げやがったーーーっ!
い、いや、いなくなってほしい奴らではあったが。
そのタイミングが、よりにもよって……。
「あ、私はショーア、と申します」
いや、お前の名前は聞いてねぇよ!
「コウジさん、でよろしいんですよね?」
……何でこう……俺の思う通りにならん連中が俺に絡んでくるんだ?
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黙って握り飯、食って出てけ!
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