131 / 196
シルフ族の療法司ショーア
今度はショーアって名前らしい 相棒だなんて認めたくはないけどな
しおりを挟む
この仕事、今まで何度も異世界人達から、興味や関心を持たれることはあった。
しかし、泊りがけされてまで付きまとわれることはなかったな。
しかも立て続けって感じだ。
まぁ止めたくても噂ってのは広まるもんだし、尾ひれもつきもの。
部屋も二つに増えりゃ収容人数も増える。
認めたくはないが現実逃避したって、噂の人物に会ってみたいと思う相手を立ち入り禁止にはできない。
俺に出来ることは、そんな押しかけてきたり押し付けられる奴らを遠ざける精一杯の抵抗くらいだ。
が、この女……もエルフか? はちょっと違った。
俺の作業をやや離れたところから見学している。
俺じゃなく、俺の手元を見ている。
気になるってば気になるが、離れてくれてる分邪魔にはならない。
が、今やってることは普段の作業とはちょっと違う。
具を多めにする分ご飯の量もやや増やす。
見た目三割増しくらいだろうか。
それを普段の握り飯の大きさに圧縮。
梅やボ……しゃけはその分使わずに済むから食費は浮くだろうが……。
具の種類に偏りが出るのがちょっとな。
けど、人気のある具が多いのは、こいつらもいくらかは満足してくれるだろ。
それにいつもより重い握り飯だ。食いごたえもあるだろ。
「……ふう……っと、水……紙コップ忘れて……あ?」
「こちら、でしょうか?」
「お……おう……」
俺を神呼ばわりした女エルフ? がパックごとショーケースの上に置いた。
盗まれても困るって程じゃないから、ショーケースに鍵をかけてはいない。
が、無断で勝手に開けたり、物を取り出したりされてもな。
「勝手に取り出して申し訳ありません。ですが、か……コウジ様のお手伝いをしたく……」
コルト、シェイラみたいに押しかけて来たのとはちょっと様子は違う。
いきなり自分の都合を押し付けてはこない。
そこら辺は好感が持てるが……。
「……今俺が何をしてるか分からないだろ? 分からないなら下手に手を出すな」
「あ、は、はい」
むぅ……。
素直じゃないか。
いや、素直すぎるな。
まぁ問題を起こさなきゃそれでいい。
※※※※※ ※※※※※
「コウジ、今朝のは食いごたえ、あるな」
「しかも外れがない。美味いじゃないか」
結局タラコと筋子だけになっちまった。
それでも生ものは賞味期限内に消費できた。
評価も上々。
でもなぁ。
コストパフォーマンスがなぁ。
保存が効かず長持ちしない。
梅、シャケはその点安心なんだが。
「お疲れさまでした」
「うぉう!」
びっくりした。
労を労われるなんて初めてだよな。
なんというか、あの二人からもそんなことを言われた記憶がないな。
ここに来る避難者からも、もちろん言われたことはない。
礼なら何度も言われたが、これほど心に残ったこともない。
なんせ、握り飯の配給もすべて終わった後だから。
やることと言えば、紙コップの回収、そしてゴミ袋に入れることくらい。
「えーと……」
「ショーア、です。種族はシルフ。職業は療法師です」
「リョーホーシ?」
「はい。魔術、アイテムなどを使って心や体を癒す仕事をしております」
「……あ、そう……」
何と言うか。
何の感想も出てこない。
自分のことを俺に伝えて、それでどうしたいと言うのか。
「……あの、コウジ様は」
「様、いらねぇ。落ち着かない。つか、見ず知らずの者から様つけて呼ばれる理由がない」
せいぜい領収書がいいとこだ。
「え、えーと……。あ、う、噂話は聞いております。人族しかいない世界での、普通の人族だということも知ってます。けれども、その行いを聞いた時、だからこそ、まるで神のようだ、と思わずにいられませんでした」
どもってるなぁ。
落ち着けよ。
「そ、それでコウジさ……んの元で、もし許されるなら修業してみたい、と思いまして……」
なんだその白いひげを生やしてそうな導師みたいな扱いは。
そんな高尚なもんじゃねぇぞ、俺は。
けど、個室を使ってた奴らと比べたら、まぁそれなりに……。
身なり……はどこぞの女王並みにヒラヒラ度が多いが、なんかこう、社会に揉まれてきた、みたいな感じがするよな。
「ここを勝手に修業の場にすんな。邪魔したり余計なことをしなければ別に構わんが、勝手にいろいろ決め付けんじゃねえよ」
「なら私もここに住み込みでいさせてもらえるんですね?」
だから勝手に決め付けんなっての。
「なんで住み込みなんて言えるんだ」
「その噂も聞きました。救世主や遣いの者をそばに置いて、自由に使役したとか」
俺は一体何者にされてんだ?
ある意味こいつが一番厄介だぞ?
いや、救世主の渾名をあいつに押し付けたのは俺だけどさ。
「……分かった分かった。そこの個室、誰かの私物がなければ自由に使っていいからさ。鍵とかはねえし掃除も自分でやってもらうが」
「それだけでも有り難いです。よろしくお願いします」
いや待て。
だから中を確認してからにしろっての。
シェイラはここを出てくときに自分の物そっくり持っていったようだけどさ。
「……掃除道具とかはあるようですが」
「あぁ、それはこっちで用意した奴だ。石鹸とかの日用品も使いかけの物があるなら、それは使っていいぞ」
……何だよ、キラキラ輝かせたその目は。
「じゃあ早速今日からお世話になりますねっ」
俺は誰が相手でも依存したくねぇから、くれぐれも余計なことしてくれるなよ?
しかし、泊りがけされてまで付きまとわれることはなかったな。
しかも立て続けって感じだ。
まぁ止めたくても噂ってのは広まるもんだし、尾ひれもつきもの。
部屋も二つに増えりゃ収容人数も増える。
認めたくはないが現実逃避したって、噂の人物に会ってみたいと思う相手を立ち入り禁止にはできない。
俺に出来ることは、そんな押しかけてきたり押し付けられる奴らを遠ざける精一杯の抵抗くらいだ。
が、この女……もエルフか? はちょっと違った。
俺の作業をやや離れたところから見学している。
俺じゃなく、俺の手元を見ている。
気になるってば気になるが、離れてくれてる分邪魔にはならない。
が、今やってることは普段の作業とはちょっと違う。
具を多めにする分ご飯の量もやや増やす。
見た目三割増しくらいだろうか。
それを普段の握り飯の大きさに圧縮。
梅やボ……しゃけはその分使わずに済むから食費は浮くだろうが……。
具の種類に偏りが出るのがちょっとな。
けど、人気のある具が多いのは、こいつらもいくらかは満足してくれるだろ。
それにいつもより重い握り飯だ。食いごたえもあるだろ。
「……ふう……っと、水……紙コップ忘れて……あ?」
「こちら、でしょうか?」
「お……おう……」
俺を神呼ばわりした女エルフ? がパックごとショーケースの上に置いた。
盗まれても困るって程じゃないから、ショーケースに鍵をかけてはいない。
が、無断で勝手に開けたり、物を取り出したりされてもな。
「勝手に取り出して申し訳ありません。ですが、か……コウジ様のお手伝いをしたく……」
コルト、シェイラみたいに押しかけて来たのとはちょっと様子は違う。
いきなり自分の都合を押し付けてはこない。
そこら辺は好感が持てるが……。
「……今俺が何をしてるか分からないだろ? 分からないなら下手に手を出すな」
「あ、は、はい」
むぅ……。
素直じゃないか。
いや、素直すぎるな。
まぁ問題を起こさなきゃそれでいい。
※※※※※ ※※※※※
「コウジ、今朝のは食いごたえ、あるな」
「しかも外れがない。美味いじゃないか」
結局タラコと筋子だけになっちまった。
それでも生ものは賞味期限内に消費できた。
評価も上々。
でもなぁ。
コストパフォーマンスがなぁ。
保存が効かず長持ちしない。
梅、シャケはその点安心なんだが。
「お疲れさまでした」
「うぉう!」
びっくりした。
労を労われるなんて初めてだよな。
なんというか、あの二人からもそんなことを言われた記憶がないな。
ここに来る避難者からも、もちろん言われたことはない。
礼なら何度も言われたが、これほど心に残ったこともない。
なんせ、握り飯の配給もすべて終わった後だから。
やることと言えば、紙コップの回収、そしてゴミ袋に入れることくらい。
「えーと……」
「ショーア、です。種族はシルフ。職業は療法師です」
「リョーホーシ?」
「はい。魔術、アイテムなどを使って心や体を癒す仕事をしております」
「……あ、そう……」
何と言うか。
何の感想も出てこない。
自分のことを俺に伝えて、それでどうしたいと言うのか。
「……あの、コウジ様は」
「様、いらねぇ。落ち着かない。つか、見ず知らずの者から様つけて呼ばれる理由がない」
せいぜい領収書がいいとこだ。
「え、えーと……。あ、う、噂話は聞いております。人族しかいない世界での、普通の人族だということも知ってます。けれども、その行いを聞いた時、だからこそ、まるで神のようだ、と思わずにいられませんでした」
どもってるなぁ。
落ち着けよ。
「そ、それでコウジさ……んの元で、もし許されるなら修業してみたい、と思いまして……」
なんだその白いひげを生やしてそうな導師みたいな扱いは。
そんな高尚なもんじゃねぇぞ、俺は。
けど、個室を使ってた奴らと比べたら、まぁそれなりに……。
身なり……はどこぞの女王並みにヒラヒラ度が多いが、なんかこう、社会に揉まれてきた、みたいな感じがするよな。
「ここを勝手に修業の場にすんな。邪魔したり余計なことをしなければ別に構わんが、勝手にいろいろ決め付けんじゃねえよ」
「なら私もここに住み込みでいさせてもらえるんですね?」
だから勝手に決め付けんなっての。
「なんで住み込みなんて言えるんだ」
「その噂も聞きました。救世主や遣いの者をそばに置いて、自由に使役したとか」
俺は一体何者にされてんだ?
ある意味こいつが一番厄介だぞ?
いや、救世主の渾名をあいつに押し付けたのは俺だけどさ。
「……分かった分かった。そこの個室、誰かの私物がなければ自由に使っていいからさ。鍵とかはねえし掃除も自分でやってもらうが」
「それだけでも有り難いです。よろしくお願いします」
いや待て。
だから中を確認してからにしろっての。
シェイラはここを出てくときに自分の物そっくり持っていったようだけどさ。
「……掃除道具とかはあるようですが」
「あぁ、それはこっちで用意した奴だ。石鹸とかの日用品も使いかけの物があるなら、それは使っていいぞ」
……何だよ、キラキラ輝かせたその目は。
「じゃあ早速今日からお世話になりますねっ」
俺は誰が相手でも依存したくねぇから、くれぐれも余計なことしてくれるなよ?
1
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!
ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!?
夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。
しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。
うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。
次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。
そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。
遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。
別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。
Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって!
すごいよね。
―――――――――
以前公開していた小説のセルフリメイクです。
アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。
基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。
1話2000~3000文字で毎日更新してます。
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
異世界転移物語
月夜
ファンタジー
このところ、日本各地で謎の地震が頻発していた。そんなある日、都内の大学に通う僕(田所健太)は、地震が起こったときのために、部屋で非常持出袋を整理していた。すると、突然、めまいに襲われ、次に気づいたときは、深い森の中に迷い込んでいたのだ……
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる