俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

文字の大きさ
178 / 196
後日談:屋根裏部屋は異空間! おにぎりが結ぶ、俺を知らない父さんとの縁

俺、エッジ=エズの家のこと 2

しおりを挟む
 母さんは、俺を育てなきゃならない、みたいなことを言って、しばらく休んでた冒険者業を再開した。
 そして俺は、いつまでも親に甘えてばかりいてはならないって思うようになった。
 だから最後の甘えを許してくださいって頭を下げた。
 母さんは、何馬鹿な事言ってるのって大笑いしてたけど、俺は本気だった。

 体力がついたら、魔力がなくても冒険者になる。
 ひと山でもふた山でも当てて、母さんに楽させてあげたいんだ。

 けど、魔力がないってことだけで、いろいろとハンディがあるんだよな。
 体力がないうちにできることってば、荷物の管理くらいなんだってさ。
 中には体力も増えない人もいるらしい。
 そうなったら普通に一般職に就くしかないんだって。

 それだと母さんに楽させてやれないから、何とか頑張らないとって必死になった。

「じゃあ母さん、仕事に行ってくるから。弁当用意してるから忘れないでね」

 俺が起きて着替えをしてる時には母さんはいつも、身支度を既に整えていた。
 そしていつも俺に一声かけてから出かける。
 だから俺が学校に行くときは、俺一人しかいないわけだ。

 誰もいなくても真面目に通ってるよ?
 けど問題が一つ起きちゃってさ。

「……なんか、物足りないんだよな……。作ってくれた弁当も今食って、昼までは大丈夫って感じなんだよな……」

 弁当、もっと量を増やしてほしいって思うんだけど、何か言いづらくってさ。
 いろいろ苦労してるの、知ってるから。

「おにぎり、作ってみるか」

 手の平に少し溢れるくらいの大きさの握り飯を七個。
 昼ご飯にするにはちょっと多いかもしれないけど、余ったら学校帰りに食べながら帰る。

 けど、おにぎりを作ってるときも、ちょっとだけ気が重い。
 自分のことは全部自分でできるようになれたら、こんな風に感じることはないんだろうけど。

 でも、他にも気が重くなる理由はある。

 学校に行くだろ?
 普通の勉強もするけど、冒険者としての知恵を身につけるのが中心になる。
 現代の冒険者は、欠点を補う者達同士でパーティを組んで活動するのが主流なんだ。
 卒業後すぐに実践に出られるように、現役の冒険者の活動に近いカリキュラムを取り入れてるんだって。

 授業の内容は、講義と実践。
 その実践のため、クラスでは男女三人ずつの六人一組にパーティを組まされた。
 パーティを組まされる前に、全員適してるポジションの検査を受ける。
 といっても、前衛か後衛かってことだけなんだけど。

 魔力がない奴、少ない奴は俺だけじゃないどころか、割といた。
 体力があれば武力任せの前衛に割り当てられる。
 でも俺は残念ながら、ご飯はたくさん食べるようになったけど筋肉がなかなかつかない。

「鬼人族で体力がない、というのも珍しいな……。まぁ家族を思いやる気持ちも尊重してあげたいし……」

 そんな教官からの計らいと、冒険者たるもの生還を第一とすべしという基本的観念から、後衛を担当することになった。
 とは言っても、魔力がないから補助魔法なんて使えるわけがない。
 やれることと言ったら荷物持ちとか荷物の番。あとは伝令伝達の係くらい。
 筋肉はないくせに、足は速かったしね。

 他の五人は、男子は人馬族とワーウルフ族。どちらも前衛。
 女子は鳥人族とエルフ二人で、後衛は四人ってことになる。
 どのグループにも前衛と後衛がいるように組まされたんだけど、能力の高低はあまり重要視されなかった。
 成長の度合いで激しく変化するからなんだって。

 入学当時はどのグループもそんなに差は見られなかったんだけど、授業を受けていくにつれその差はだんだん見えてくる。
 はっきり言えば、俺達のグループがクラスで一番力の伸びがあった。
 一人一人が成長して実力をつけたってこともあるんだけど、チームワークのおかげというのが一番でかい。
 それぞれが自分のポジションを守り、お互いにフォローし合ってたから。
 誰もでしゃばることはなかったんだよね。

 けど、学校生活では……最悪だった。
 ……最悪なのは、自分だけって感じなんだけどね。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

【完結】スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...