俺の店の屋根裏がいろんな異世界ダンジョンの安全地帯らしいから、握り飯を差し入れてる。

網野ホウ

文字の大きさ
179 / 196
後日談:屋根裏部屋は異空間! おにぎりが結ぶ、俺を知らない父さんとの縁

俺が通う冒険者養成学校でのこと

しおりを挟む
「おい、エッジ。俺ら授業受けねぇで寝てるから代返頼むわ」
「授業受けるくらいはしなさいよ」
「俺達ゃ前衛だぜ? 肉体的疲労がハンパねぇんだよ。睡眠時間多めに欲しいんだっての!」

 そんなことを言われたら、俺は何も言えない。
 あいつらがどんな苦労をしてるかなんて分からない。
 ただ、俺よりも大変な役目を果たしてるってのは分かる。
 これは分かるし、俺よりも疲れが溜まるのも分かる。
 けど、授業サボって何をしているかまでは分からない。
 釈然とはしないけど、理には適ってる。

 けどそれを見て女子達は、講義の不真面目な態度の二人に文句を言う。
 それに、何でも言いなりの俺にも、その矛先は向けられた。
 でもあいつら二人は、実践だと魔物相手にほんとに頼りになる戦いをしてくれるんだよな。
 女子達からの補助の魔法のお陰でもあるんだけど。

「けどまぁ……学生には手に負えなさそうな魔物も倒すくらいだから……多少のことは目をつぶってもいいかもね」
「だろ?」
「お前らにも楽させてやるつもりだしな」
「適度に経験も積ませてもらってるし、まぁ有り難いかな」

 女子からの実戦での二人の評価はプラマイゼロ。
 ということは、グループ内での相互評価が最低なのは俺ってことになる。

 しょうがない。
 できることが限られてるんだから、その限られたことを精一杯頑張るしかないし。

 ※

「最近、講義の内容が物足りないのよね」
「私もそう思う。図書室で自習してよっか」
「じゃあ……エッジ。代返頼むわね」

 前衛二人ばかりじゃなく、エルフ二人も俺に代返を頼み始めた。

「いや、女の子の声なんか出せるわけがないよ」
「っつっかえないわねー。私らの返事をする声、この道具に吹き込んだから、私の名前呼ばれたら発動させといて。ここ押すだけで声が出るから」
「分かってると思うけど、私がこっち。この子はそっちだからね? 道具は色違いだから分かるでしょ?」
「……タグに名前書いて貼っとくよ……これでいい?」
「サンキュー。じゃ、頼むわね」
「礼を言うの、まだ早いわよ。ミスしたら台無しだし」
「どんなバカでも、流石に間違えないでしょ?」

 エルフ二人はこうして教室から出ていった。
 俺のグループでは、残ったのは鳥人族の女の子と二人だけ。
 六十人もいるクラス。
 元々空席もあるから四人くらいいなくなってもあまり目立たないけど……。

「……ねぇ、エッジ」
「……何だよ、フォールス」

 フォールスってのは、その鳥人族の女の子の名前。
 冒険者としての実力は、クラスで一番上。
 ちなみにクラスで二番目の実力の持ち主は、同じグループの人馬族の男子。
 ナンバー1、ナンバー2が同じチームになってるってこと自体いろいろ意見があるみたいなんだけど、最初に組み分けしたグループは、一年間ずっとその編成のままにすることになったらしい。

「あんた、今のままでいいと思ってるの?」
「……魔力が1でもあったら、二倍、三倍努力すれば増えると思うよ? でもゼロなんだよ。ゼロは何倍にしてもゼロのまま」

 フォールスはわざと俺に聞こえるようなため息をついた。
 正直言ってうざったい。
 ないものはないんだ。
 なけりゃ他のことで努力するしかないだろ。

「なっさけな……」

 耳が痛い。

 天才には凡人の気持ちは分からないだろうよ。
 って文句を言いたいけど、フォールスは天才とは違う。
 こいつもこいつで努力し続けて、クラスで一番の実力者と言われるほどまで頑張った奴なのは知ってる。
 だからこそ、耳が痛い。

「こっちだってそれなりに努力してるんだ。その結果を出せたら、俺を見る目を変えてくれるだろうよ」

 自分で言ってて虚しく感じる。
 講義の勉強は、確かに頑張った分だけ知識は身につく。
 けれど、俺の能力は何の変化ももたらさない。
 言い返したけど、そのどこにも根拠はない。
 こいつもそれを分かってるんだろうな。
 フォールスの目は、教壇の教官に集中していた。

 点呼が始まる。
 俺は四人分の代返を無難にこなした。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい

ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。 強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。 ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜

タナん
ファンタジー
 オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。  その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。  モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。  温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。 それでも戦わなければならない。  それがこの世界における男だからだ。  湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。  そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。 挿絵:夢路ぽに様 https://www.pixiv.net/users/14840570 ※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~

深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】 異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!

異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~

ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆ ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。 ※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

処理中です...