167 / 196
四人目の相棒は許嫁
ミュウワとの日常の中で
しおりを挟む
ミュウワがここで仕事を始めた初日からそれなりに手際が良かった。
慣れていくにつれ、要領も得ていったため、なんだろうな。
ここでの仕事は掃除と米研ぎ。
あとは食材のチェックと来訪者の観察。
日に日に椅子に座っている時間が長くなっていった。
それだけ仕事が効率的になってきているってことだ。
しかも、笑顔でありながら常に気を引き締めている。
人のメンタルのコンディションなんか、当人でしか分からない。
流石の俺も、いつもそんなに気を張り詰めて大丈夫なのか? と思うこともある。
「問題ありません。平気ですよ」
とにっこり返された。
もちろん部屋の中で見せる無邪気な笑顔じゃない。
だから、感情の揺らぎとかもその笑顔では見抜くことはできないし、過剰に仕事をさせたとしても疲れを見せることもない。
公私の切り替えができる人ってのは、俺には好ましく見えるんだが、ケアの気配りもしなきゃならん時は、これはやっかい。
ということで。
「二時間ここにいたら五分部屋で休んで、五分経ったらまたここで二時間。けど握り飯タイムの時とかは除く」
なんてことを言ってみた。
部屋で何をさせるかというと、言うまでもない。
リラックス。
そのためのグッズを買ってみた。
マッサージ器とかじゃない。
まぁあれだけのパワーがあるんだ。
無いように見えて実はある筋肉をほぐす必要はあるんだとは思うが……。
それについては後でゆっくり考える。
で何を買ったかというと……。
「じゃあ五分ですね」
「うん。それくらい短い時間なら何とかなる」
実際なんとかなりそうな感じ。
部屋を一つ増やしてからは、押し掛けてくる自称何とかさんの数もかなり減った。
誰かの為に部屋を丸々一つ増やした、なんて噂でも流れたんだろう。
本命ができた、横取りできないっ、なんて計算でもされてんだろうな。
しばらくすると部屋の中から、ドタンと何かが落ちる音が聞こえてきた。
まぁ想像できる。
「コウジ、部屋で何かやってんのか?」
心配する冒険者もいるが、それは無用。
何をしていたかは、五分過ぎた後でわかる。
「休憩、終わりました」
「はい、仕事よろしくね……うぇっ」
ミュウワはそのまま俺の前に立ち、両腕を伸ばし、両手で俺の両頬をつまむ。
「ういぃ……。いあいいあい」
ミュウワはパッと手を離す。
そして俺は一言ポツリと。
「俺はあれじゃねぇからな?」
「す、すみません……」
ミュウワはやや顔を赤くして、部屋の様子を見て回る。
俺が買ってやったのはクッション。
しかもアスキーアートの顔文字が印刷されているやつだ。
動物のぬいぐるみとか買ってやろうと思ったりしたが、ミュウワの世界にいない動物だったら、ひょっとしたら不気味に思われるかもしれない。
ならば、ミュウワの想像力に任せてシンプルなそんな絵柄のクッションの方が、枕とかの実用品にもなるし都合がいいんじゃないかと。
まさか俺をクッションと同一視するとは思わなかったがな。
まぁ俺にそんなことをする理由は、俺には分かっていたが周りは分かるわけがない。
「大丈夫か? あの子」
大丈夫だ。
問題ない。
※※※※※ ※※※※※
毎日同じ仕事をする。
その仕事が好きならば、飽きることはないかもしれない。
特に何の感情もなければ、退屈に感じるようになるかもしれない。
何か変化があれば、さらに仕事に身を入れるようになるかもしれない。
今のところ、ミュウワの仕事ぶりに手を抜くようなことは感じられないが。
でも、俺のと同じ効果があるおにぎりを作れたりしたら、ひょっとしたら、さらに多く生産できるかもしれない、なんてことを思ったり。
それを言ってみた。
「流石です」
いや、そこまで褒められる要素がどこにあるのかと。
「自分の仕事が楽になる、とは言いませんでしたから」
物理的、成り行き上楽にはなるだろうよ。
でも、握り飯が必要な連中しか来ないし、来訪者が途切れることはないんだよな。
「じゃあ私も、ちょっとやってみます」
「うん。まずナイロンの手袋はめて、水でぬらして……」
「はい。次は?」
「ご飯を手に乗せて……」
「はい。次は?」
「握って……」
「あれ? 崩れました」
水のつけすぎ。
やり直し。
「……何とか出来ました」
「握るだけだからな。普通は具を入れるからな」
「はい。えっと、まず水でぬらして……ご飯を……そして……」
「具を乗せて、その上にご飯だろ?」
「はい……あれ? はみ出ました」
「出ちゃったね」
「付け足します」
そんなごまかしの仕方初めて見るぞおい。
「おにぎり作り、奥深いですね」
そんな大掛かりなもんじゃないから、これっ!
しかも真顔だよ。
夜の顔知ってるから、下手なツッコミもできねぇよこいつに!
「ミュウワちゃんもおにぎり作るようになるのか。楽しみだな」
効果があるかどうか、まだ分かんないんだけど?!
全くもぉ……。
ま、ミュウワは地道に頑張ろうな。
※※※※※ ※※※※※
頑張った甲斐があった。
夕方の握り飯タイムに間に合った。
おにぎり作りはほぼ完璧。
あとは効果のほどなんだが……。
「ミュウワちゃんのあるか?」
「こっちの女の人の作ったのがほしい!」
「こ、この人のおにぎり、食べたい……」
どいつもこいつも贅沢言うな!
あるもん持ってけ!
つか、見分けは作んだよな。
ややいびつなおにぎりはすべてミュウワが作ったもの。
形が整ってるのは俺のだ。
「ミュウワちゃんのおにぎりの方が、元気が出るような気がする」
「あぁ。あのどでかい敵も一撃で斃せそうなくらいにな!」
パブロフの犬かプラシーボ効果か?
それとも実際にそうなのか?
食ったお前らの評価がこれほど怪しいと思ったことないぞ。
慣れていくにつれ、要領も得ていったため、なんだろうな。
ここでの仕事は掃除と米研ぎ。
あとは食材のチェックと来訪者の観察。
日に日に椅子に座っている時間が長くなっていった。
それだけ仕事が効率的になってきているってことだ。
しかも、笑顔でありながら常に気を引き締めている。
人のメンタルのコンディションなんか、当人でしか分からない。
流石の俺も、いつもそんなに気を張り詰めて大丈夫なのか? と思うこともある。
「問題ありません。平気ですよ」
とにっこり返された。
もちろん部屋の中で見せる無邪気な笑顔じゃない。
だから、感情の揺らぎとかもその笑顔では見抜くことはできないし、過剰に仕事をさせたとしても疲れを見せることもない。
公私の切り替えができる人ってのは、俺には好ましく見えるんだが、ケアの気配りもしなきゃならん時は、これはやっかい。
ということで。
「二時間ここにいたら五分部屋で休んで、五分経ったらまたここで二時間。けど握り飯タイムの時とかは除く」
なんてことを言ってみた。
部屋で何をさせるかというと、言うまでもない。
リラックス。
そのためのグッズを買ってみた。
マッサージ器とかじゃない。
まぁあれだけのパワーがあるんだ。
無いように見えて実はある筋肉をほぐす必要はあるんだとは思うが……。
それについては後でゆっくり考える。
で何を買ったかというと……。
「じゃあ五分ですね」
「うん。それくらい短い時間なら何とかなる」
実際なんとかなりそうな感じ。
部屋を一つ増やしてからは、押し掛けてくる自称何とかさんの数もかなり減った。
誰かの為に部屋を丸々一つ増やした、なんて噂でも流れたんだろう。
本命ができた、横取りできないっ、なんて計算でもされてんだろうな。
しばらくすると部屋の中から、ドタンと何かが落ちる音が聞こえてきた。
まぁ想像できる。
「コウジ、部屋で何かやってんのか?」
心配する冒険者もいるが、それは無用。
何をしていたかは、五分過ぎた後でわかる。
「休憩、終わりました」
「はい、仕事よろしくね……うぇっ」
ミュウワはそのまま俺の前に立ち、両腕を伸ばし、両手で俺の両頬をつまむ。
「ういぃ……。いあいいあい」
ミュウワはパッと手を離す。
そして俺は一言ポツリと。
「俺はあれじゃねぇからな?」
「す、すみません……」
ミュウワはやや顔を赤くして、部屋の様子を見て回る。
俺が買ってやったのはクッション。
しかもアスキーアートの顔文字が印刷されているやつだ。
動物のぬいぐるみとか買ってやろうと思ったりしたが、ミュウワの世界にいない動物だったら、ひょっとしたら不気味に思われるかもしれない。
ならば、ミュウワの想像力に任せてシンプルなそんな絵柄のクッションの方が、枕とかの実用品にもなるし都合がいいんじゃないかと。
まさか俺をクッションと同一視するとは思わなかったがな。
まぁ俺にそんなことをする理由は、俺には分かっていたが周りは分かるわけがない。
「大丈夫か? あの子」
大丈夫だ。
問題ない。
※※※※※ ※※※※※
毎日同じ仕事をする。
その仕事が好きならば、飽きることはないかもしれない。
特に何の感情もなければ、退屈に感じるようになるかもしれない。
何か変化があれば、さらに仕事に身を入れるようになるかもしれない。
今のところ、ミュウワの仕事ぶりに手を抜くようなことは感じられないが。
でも、俺のと同じ効果があるおにぎりを作れたりしたら、ひょっとしたら、さらに多く生産できるかもしれない、なんてことを思ったり。
それを言ってみた。
「流石です」
いや、そこまで褒められる要素がどこにあるのかと。
「自分の仕事が楽になる、とは言いませんでしたから」
物理的、成り行き上楽にはなるだろうよ。
でも、握り飯が必要な連中しか来ないし、来訪者が途切れることはないんだよな。
「じゃあ私も、ちょっとやってみます」
「うん。まずナイロンの手袋はめて、水でぬらして……」
「はい。次は?」
「ご飯を手に乗せて……」
「はい。次は?」
「握って……」
「あれ? 崩れました」
水のつけすぎ。
やり直し。
「……何とか出来ました」
「握るだけだからな。普通は具を入れるからな」
「はい。えっと、まず水でぬらして……ご飯を……そして……」
「具を乗せて、その上にご飯だろ?」
「はい……あれ? はみ出ました」
「出ちゃったね」
「付け足します」
そんなごまかしの仕方初めて見るぞおい。
「おにぎり作り、奥深いですね」
そんな大掛かりなもんじゃないから、これっ!
しかも真顔だよ。
夜の顔知ってるから、下手なツッコミもできねぇよこいつに!
「ミュウワちゃんもおにぎり作るようになるのか。楽しみだな」
効果があるかどうか、まだ分かんないんだけど?!
全くもぉ……。
ま、ミュウワは地道に頑張ろうな。
※※※※※ ※※※※※
頑張った甲斐があった。
夕方の握り飯タイムに間に合った。
おにぎり作りはほぼ完璧。
あとは効果のほどなんだが……。
「ミュウワちゃんのあるか?」
「こっちの女の人の作ったのがほしい!」
「こ、この人のおにぎり、食べたい……」
どいつもこいつも贅沢言うな!
あるもん持ってけ!
つか、見分けは作んだよな。
ややいびつなおにぎりはすべてミュウワが作ったもの。
形が整ってるのは俺のだ。
「ミュウワちゃんのおにぎりの方が、元気が出るような気がする」
「あぁ。あのどでかい敵も一撃で斃せそうなくらいにな!」
パブロフの犬かプラシーボ効果か?
それとも実際にそうなのか?
食ったお前らの評価がこれほど怪しいと思ったことないぞ。
0
あなたにおすすめの小説
五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~
よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】
多くの応援、本当にありがとうございます!
職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。
持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。
偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。
「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。
草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。
頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男――
年齢なんて関係ない。
五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!
異世界転生したので森の中で静かに暮らしたい
ボナペティ鈴木
ファンタジー
異世界に転生することになったが勇者や賢者、チート能力なんて必要ない。
強靭な肉体さえあれば生きていくことができるはず。
ただただ森の中で静かに暮らしていきたい。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
男が英雄でなければならない世界 〜男女比1:20の世界に来たけど簡単にはちやほやしてくれません〜
タナん
ファンタジー
オタク気質な15歳の少年、原田湊は突然異世界に足を踏み入れる。
その世界は魔法があり、強大な獣が跋扈する男女比が1:20の男が少ないファンタジー世界。
モテない自分にもハーレムが作れると喜ぶ湊だが、弱肉強食のこの世界において、力で女に勝る男は大事にされる側などではなく、女を守り闘うものであった。
温室育ちの普通の日本人である湊がいきなり戦えるはずもなく、この世界の女に失望される。
それでも戦わなければならない。
それがこの世界における男だからだ。
湊は自らの考えの甘さに何度も傷つきながらも成長していく。
そしていつか湊は責任とは何かを知り、多くの命を背負う事になっていくのだった。
挿絵:夢路ぽに様
https://www.pixiv.net/users/14840570
※注 「」「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています。
スキルはコピーして上書き最強でいいですか~改造初級魔法で便利に異世界ライフ~
深田くれと
ファンタジー
【文庫版2が4月8日に発売されます! ありがとうございます!】
異世界に飛ばされたものの、何の能力も得られなかった青年サナト。街で清掃係として働くかたわら、雑魚モンスターを狩る日々が続いていた。しかしある日、突然仕事を首になり、生きる糧を失ってしまう――。 そこで、サナトの人生を変える大事件が発生する!途方に暮れて挑んだダンジョンにて、ダンジョンを支配するドラゴンと遭遇し、自らを破壊するよう頼まれたのだ。その願いを聞きつつも、ダンジョンの後継者にはならず、能力だけを受け継いだサナト。新たな力――ダンジョンコアとともに、スキルを駆使して異世界で成り上がる!
異世界で家をつくります~異世界転移したサラリーマン、念動力で街をつくってスローライフ~
ヘッドホン侍
ファンタジー
◆異世界転移したサラリーマンがサンドボックスゲームのような魔法を使って、家をつくったり街をつくったりしながら、マイペースなスローライフを送っていたらいつの間にか世界を救います◆
ーーブラック企業戦士のマコトは気が付くと異世界の森にいた。しかし、使える魔法といえば念動力のような魔法だけ。戦うことにはめっぽう向いてない。なんとか森でサバイバルしているうちに第一異世界人と出会う。それもちょうどモンスターに襲われているときに、女の子に助けられて。普通逆じゃないのー!と凹むマコトであったが、彼は知らない。守るにはめっぽう強い能力であったことを。
※「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる