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四人目の相棒は許嫁
カレーの追撃
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二つ目のプレハブができた。
施錠もできる。
ミュウワの安全な生活空間ができた。
翌朝はご機嫌だった。
「朝日がとても綺麗でした! 私の家の周りも緑はたくさんありますけど、山がこんなに近くに見えるなんて素敵です!」
褒めてくれてありがとう。
でも、それ、俺のお陰とかじゃないから。
自分の故郷を褒めてもらって悪い気はしないけどな。
俺に向ける顔は、表情豊かになってきている。
けれども、日中は今までとさほど変わらない。
クーデレともちょっと違うが……。
それはともかく。
ミュウワもこの屋根裏部屋の仕事を好ましく思ってくれてるようだし、あとは任せられる仕事、苦手な仕事、好みはどんな物か、何に対して嫌悪感を持つか。
そんなことを知る必要もある、はずだ。
嫌なら戻ってきてもいいと言われてるらしいから、嫌な仕事が続くなら帰ってもらっても問題ない。
けど、どうせいてもらう時間があるんだから、思い出は悪いものより良いものを多く持ってもらった方が……。
いや、嫌な思い出をたくさん持ち帰ってもらったらそんな噂話も広がるだろうから、面倒な来訪者の数も減るんじゃないか?
「ということで、昨日の今日で、カレーを持って来ました」
「ええぇぇ?! ほんとですかぁ?!」
ミュウワの昼の顔と夜の顔がガラッと変わるのを見るのは、まぁ俺の娯楽になりつつあるのかもしれない。
もっとも、その面白いと思う感情を誰かと分かち合うつもりはまったくないが。
だからといって、俺だけの秘密っていうつもりもないけどな。
「でも、またご飯たくさん……」
「安心しろ。今夜はうどんだ!」
おい。
よだれよだれ。
それと口閉じろ!
何と言うか、中身の年齢は間違いなく俺より下だよな。
って、待て!
そのままカレーに付けようとするんじゃない!
それは乾麺だ!
茹でなきゃ食えん。
いや、食えなくはないけど、歯に張り付くしバリカタどころじゃねぇぞ!
「料理したことないのかお前は!」
「あ、ありますけど……」
「……麺は茹でるだけでいいから。な?」
「……はい……」
食う前からこの有様だ。
日中の冷静さを、少しくらい維持してくれ。
※※※※※ ※※※※※
この部屋にも、大きい鍋用意しておいてよかった。
一気に五人分くらいは茹でられる。
入れるだけ入れてもいいが、ゆで上がった時がちと苦労しそうだしな。
キリのいいところで十人分持ってきたのだが。
まあ昨日の食いっぷりだと、二十人分も平らげそうな気もするが。
種族の特性なんだろうかねぇ。
「つけ麺風にしてみた。かけ風にしたら間違いなくカレーが周りに飛ぶだろうからな」
「あ、はい。有り難うございます……」
「お代わりはこっちの器に入れといた。これで全部だから。盛り付けは自分でやってな」
「あ、はい、有り難うございます……」
こいつ、俺が何を言ってるか理解してないな?
目線がカレーに集中してやがる。
しかも箸を握って待ち構えてやがる。
やれやれだ。
「まぁ、遠慮なく食え。と言っても量は限定されて……」
「いただきますっ」
昨日以上の勢いで食い始めた。
が、見事なまでにカレーが飛び散らない。
勢いのある綺麗な食い方ってのも珍しい。
まぁつけ麺だしな。
「俺もお相伴に預かるかね。いただきま」
「お代わりお願いしますっ!」
はえぇよ!
まぁツルツルした細い麺だしな。
飲み込みやすいんだろ。
……つか、噛んで食えよな。
「目の前にお代わり用の麺があるだろ。つか説明したろうがっ」
「あ、はい。いただきますっ!」
こいつ、自分の家でもこんな風に食ってんのかな?
飯の争奪戦だよな。
大家族っつってたし。
「お代わりお願いしますっ!」
「お前なぁ……って、カレーの方かよ!」
「はいっ」
ニコニコ顔の口の周りにカレーがついてる。
妙に滑稽だ。
「自分で好きなだけ取ってきな。コンロの方にあるだろ」
「はい、じゃあ遠慮なくっ」
急いでカレーを追加するその足音が、バタバタってんじゃなくトトトトって感じだから、やはりお淑やかって感じがついて回る。
理性が強いのか感情が強いのか、よく分からんな。
麺の次はカレー、カレーの次が麺のお代わりって、その行動はせわしない。
「コウジさん……」
急に声のトーンが下がる。
理由は大体分かるが……。
「ん?」
「麺が……ありません……」
だろうな。
だが安心しろ、ミュウワ。
「プレハブにご飯、炊飯器に三つできてんじゃねぇか? それでがま」
「ありがとうございますっ!」
「え? あ、お……」
いっちゃった。
うどんの麺を入れた丼を持って。
カレー丼かよ。
そしておそらく……。
「えへ。カーレェ、カーレェ」
丼からご飯が顔を出している。
てんこ盛りだ。
つくづくつけ麺風にしてよかった。
これも見越してたんだよな。
かけ麺にしたら、間違いなくルーの消費も早い。
つけ麺風にすると、意外と消費は抑えられる。
計算通り。
さて、俺もうどん食い終わって、カレーが余ったからご飯に……って……。
「お代わりしまーす」
早いんだよお前はっ!
誰だっけ?
カレーは飲み物って言い出した奴は。
こいつ、ほんとにカレー食ってんのか?
ご飯後と飲み物にしてねぇか?
まったく……。
※※※※※ ※※※※※
それにしてもカレー食ってる間のこいつの幸せそうな表情ときたら。
カウラは見たことあんのかな。
「おしぼりも用意したろ? 口の周り拭けよ?」
「んもぁい、ぅおあい」
「口の中に物入れて喋るな!」
まったくもう。
「お前、家でもそんな顔して食ってんのか?」
「んんっ……。ぷはぁ。えっと、こんなに美味しいのは食べたことないです。もちろんお家でのご飯も美味しいですけど」
「そか」
すでに炊飯器を一つ空にしている。
俺の一杯分もその中に入っているとは言え。
そしてその早さは衰えず。
再び食べだしたミュウワの顔を目掛けて……。
パシャッ!
取り出した事にも気づかなかったミュウワ。
その幸せそうな顔をスマホのカメラで撮ってみた。
その音にも気付かないほどの、いや、気付いても気にも留められないほどのカレーの誘惑力に負けてんだろうな。
「……ちょっと出かけてくる。すぐ戻る」
「あい、いっえらっあい」
だから食いながら喋るなっての!
※※※※※ ※※※※※
二十分ほどの外出から戻ると、ミュウワが悲しそうにしていた。
「どうしたんだ? 少しくらい席外したっていいだろうが」
「違います……うぅ……」
涙を浮かべている。
何があったというのか。
「カレー……」
「うん?」
「なくなりました」
泣くほどのことかよ!
「お前なぁ……」
「だって、美味しかったんですもんっ!」
俺の世界のカレーを褒めてくれてありがとな。
けど食ったらなくなるのは、どの世界でも同じだろうに。
「で、ご飯はまだあるのか?」
「はい、大きいのはまだ手つかずです……」
その言い方も、何かイヤ。
手をつける気満々じゃねぇのか?
って言うか……。
「お腹いっぱいなんじゃないか?」
「あともう一杯くらいで」
マジか!
しかも……やはりお腹は出っ張っていない。
「自宅ではそんなことあったか?」
「そんなこと?」
「お腹いっぱいになる前に全部食いつくした、とか」
「あぁ、お腹いっぱいになるまで食べてますけど、こんな感じになったことも結構あります」
食生活に満足できないのは最悪だよな。
でも調理した物をあの貯蔵庫に入れるのもどうかと思うんだよ。
「あ、でも満足してますよ? 美味しかったです! ごちそうさまでしたっ」
「あ、お、おう……。んじゃ米研ぎするか。みんな寝静まってるから、静かに、手早く、な」
「はいっ。……って、ここでやってもいいんじゃないですか?」
「あ、おう、それもそうか」
……それにしても、ご先祖様よ。
あんたもカウラに物を食わせてやった時は、こんな心境だったのかね?
だとしたら、曽祖父母、祖父母、それに親父とお袋はこんな気持ちにはなれなかったかもな。
仕事中は凛として、美味い飯を食ってるときはいい顔をしながら一生懸命食って、なくなったら泣きそうになってやんの。
こいつは俺のことどう思ってるか分からんが、何かに対していつも一生懸命って奴は好きだな。
曾祖母の思いを託されたって意味では気の毒には思うけどな。
「……コウジさん」
「んー?」
「コウジさんも、なんだかんだ言って、ちょっとかわいいですよね」
「はあ?!」
いきなり変な事言われて、変な声が出ちまった。
そんなこと言われたことねぇぞ!
「昨日も言いましたけど、ここに来る人達に対しては、コウジさん自身はどう思ってるか分かりませんがみんなが有り難いって思うことをしてますし、カウラお婆様の思う通りにならないかもしれない私に、こうして親切にしてくださいますし」
まぁ、そう思われることはしているな。
だが本人の自己評価と行動と、その行動の他人からの評価は必ずしも一致しない。
「みんなのために何かをするっていう大それた志まではもってなさそうですよね? それは私も同じです。けど、周りからの評価ってすごいですよね、コウジさん」
「まぁ、なぁ……。それはなくてもいい。というか、むしろ勘弁してくれってな。まさにお前の言う通りだな」
「目の前にある仕事をし続けてるだけなのに、そんな風に思われる人ってすごいなぁって」
米を研ぐ音が途切れ途切れになっていく。
仕事、早く終わらせないと、早く寝れねぇぞ?
俺も眠くなってきた。
「肩ひじ張らずに、たくさんの人の為にできる仕事があったらやってみたいなぁって」
「ま、ここで、というなら俺は大歓迎だがな」
「お婆様のことは無関係に、ですね」
まぁな。
それより、うん、眠い。
……もう十一時過ぎたか。
「……後のこと、任せていいか?」
「え? あ、はい。じゃあ炊飯器のスイッチ間違えないようにしないとですね。ちょっとうれしいです」
何を言ってるのか分からんが……。
「んじゃ先に寝るわ。そっちのベッドでいいな?」
「え? この部屋でですか?」
「お前のベッドに入るわけじゃないし、寝るだけだ。んじゃな」
「ちょ、コウジさん、お風呂は?」
「寝る」
まぁ、いつも寝る時間だし、なんでこんなに時間かかったやら……。
施錠もできる。
ミュウワの安全な生活空間ができた。
翌朝はご機嫌だった。
「朝日がとても綺麗でした! 私の家の周りも緑はたくさんありますけど、山がこんなに近くに見えるなんて素敵です!」
褒めてくれてありがとう。
でも、それ、俺のお陰とかじゃないから。
自分の故郷を褒めてもらって悪い気はしないけどな。
俺に向ける顔は、表情豊かになってきている。
けれども、日中は今までとさほど変わらない。
クーデレともちょっと違うが……。
それはともかく。
ミュウワもこの屋根裏部屋の仕事を好ましく思ってくれてるようだし、あとは任せられる仕事、苦手な仕事、好みはどんな物か、何に対して嫌悪感を持つか。
そんなことを知る必要もある、はずだ。
嫌なら戻ってきてもいいと言われてるらしいから、嫌な仕事が続くなら帰ってもらっても問題ない。
けど、どうせいてもらう時間があるんだから、思い出は悪いものより良いものを多く持ってもらった方が……。
いや、嫌な思い出をたくさん持ち帰ってもらったらそんな噂話も広がるだろうから、面倒な来訪者の数も減るんじゃないか?
「ということで、昨日の今日で、カレーを持って来ました」
「ええぇぇ?! ほんとですかぁ?!」
ミュウワの昼の顔と夜の顔がガラッと変わるのを見るのは、まぁ俺の娯楽になりつつあるのかもしれない。
もっとも、その面白いと思う感情を誰かと分かち合うつもりはまったくないが。
だからといって、俺だけの秘密っていうつもりもないけどな。
「でも、またご飯たくさん……」
「安心しろ。今夜はうどんだ!」
おい。
よだれよだれ。
それと口閉じろ!
何と言うか、中身の年齢は間違いなく俺より下だよな。
って、待て!
そのままカレーに付けようとするんじゃない!
それは乾麺だ!
茹でなきゃ食えん。
いや、食えなくはないけど、歯に張り付くしバリカタどころじゃねぇぞ!
「料理したことないのかお前は!」
「あ、ありますけど……」
「……麺は茹でるだけでいいから。な?」
「……はい……」
食う前からこの有様だ。
日中の冷静さを、少しくらい維持してくれ。
※※※※※ ※※※※※
この部屋にも、大きい鍋用意しておいてよかった。
一気に五人分くらいは茹でられる。
入れるだけ入れてもいいが、ゆで上がった時がちと苦労しそうだしな。
キリのいいところで十人分持ってきたのだが。
まあ昨日の食いっぷりだと、二十人分も平らげそうな気もするが。
種族の特性なんだろうかねぇ。
「つけ麺風にしてみた。かけ風にしたら間違いなくカレーが周りに飛ぶだろうからな」
「あ、はい。有り難うございます……」
「お代わりはこっちの器に入れといた。これで全部だから。盛り付けは自分でやってな」
「あ、はい、有り難うございます……」
こいつ、俺が何を言ってるか理解してないな?
目線がカレーに集中してやがる。
しかも箸を握って待ち構えてやがる。
やれやれだ。
「まぁ、遠慮なく食え。と言っても量は限定されて……」
「いただきますっ」
昨日以上の勢いで食い始めた。
が、見事なまでにカレーが飛び散らない。
勢いのある綺麗な食い方ってのも珍しい。
まぁつけ麺だしな。
「俺もお相伴に預かるかね。いただきま」
「お代わりお願いしますっ!」
はえぇよ!
まぁツルツルした細い麺だしな。
飲み込みやすいんだろ。
……つか、噛んで食えよな。
「目の前にお代わり用の麺があるだろ。つか説明したろうがっ」
「あ、はい。いただきますっ!」
こいつ、自分の家でもこんな風に食ってんのかな?
飯の争奪戦だよな。
大家族っつってたし。
「お代わりお願いしますっ!」
「お前なぁ……って、カレーの方かよ!」
「はいっ」
ニコニコ顔の口の周りにカレーがついてる。
妙に滑稽だ。
「自分で好きなだけ取ってきな。コンロの方にあるだろ」
「はい、じゃあ遠慮なくっ」
急いでカレーを追加するその足音が、バタバタってんじゃなくトトトトって感じだから、やはりお淑やかって感じがついて回る。
理性が強いのか感情が強いのか、よく分からんな。
麺の次はカレー、カレーの次が麺のお代わりって、その行動はせわしない。
「コウジさん……」
急に声のトーンが下がる。
理由は大体分かるが……。
「ん?」
「麺が……ありません……」
だろうな。
だが安心しろ、ミュウワ。
「プレハブにご飯、炊飯器に三つできてんじゃねぇか? それでがま」
「ありがとうございますっ!」
「え? あ、お……」
いっちゃった。
うどんの麺を入れた丼を持って。
カレー丼かよ。
そしておそらく……。
「えへ。カーレェ、カーレェ」
丼からご飯が顔を出している。
てんこ盛りだ。
つくづくつけ麺風にしてよかった。
これも見越してたんだよな。
かけ麺にしたら、間違いなくルーの消費も早い。
つけ麺風にすると、意外と消費は抑えられる。
計算通り。
さて、俺もうどん食い終わって、カレーが余ったからご飯に……って……。
「お代わりしまーす」
早いんだよお前はっ!
誰だっけ?
カレーは飲み物って言い出した奴は。
こいつ、ほんとにカレー食ってんのか?
ご飯後と飲み物にしてねぇか?
まったく……。
※※※※※ ※※※※※
それにしてもカレー食ってる間のこいつの幸せそうな表情ときたら。
カウラは見たことあんのかな。
「おしぼりも用意したろ? 口の周り拭けよ?」
「んもぁい、ぅおあい」
「口の中に物入れて喋るな!」
まったくもう。
「お前、家でもそんな顔して食ってんのか?」
「んんっ……。ぷはぁ。えっと、こんなに美味しいのは食べたことないです。もちろんお家でのご飯も美味しいですけど」
「そか」
すでに炊飯器を一つ空にしている。
俺の一杯分もその中に入っているとは言え。
そしてその早さは衰えず。
再び食べだしたミュウワの顔を目掛けて……。
パシャッ!
取り出した事にも気づかなかったミュウワ。
その幸せそうな顔をスマホのカメラで撮ってみた。
その音にも気付かないほどの、いや、気付いても気にも留められないほどのカレーの誘惑力に負けてんだろうな。
「……ちょっと出かけてくる。すぐ戻る」
「あい、いっえらっあい」
だから食いながら喋るなっての!
※※※※※ ※※※※※
二十分ほどの外出から戻ると、ミュウワが悲しそうにしていた。
「どうしたんだ? 少しくらい席外したっていいだろうが」
「違います……うぅ……」
涙を浮かべている。
何があったというのか。
「カレー……」
「うん?」
「なくなりました」
泣くほどのことかよ!
「お前なぁ……」
「だって、美味しかったんですもんっ!」
俺の世界のカレーを褒めてくれてありがとな。
けど食ったらなくなるのは、どの世界でも同じだろうに。
「で、ご飯はまだあるのか?」
「はい、大きいのはまだ手つかずです……」
その言い方も、何かイヤ。
手をつける気満々じゃねぇのか?
って言うか……。
「お腹いっぱいなんじゃないか?」
「あともう一杯くらいで」
マジか!
しかも……やはりお腹は出っ張っていない。
「自宅ではそんなことあったか?」
「そんなこと?」
「お腹いっぱいになる前に全部食いつくした、とか」
「あぁ、お腹いっぱいになるまで食べてますけど、こんな感じになったことも結構あります」
食生活に満足できないのは最悪だよな。
でも調理した物をあの貯蔵庫に入れるのもどうかと思うんだよ。
「あ、でも満足してますよ? 美味しかったです! ごちそうさまでしたっ」
「あ、お、おう……。んじゃ米研ぎするか。みんな寝静まってるから、静かに、手早く、な」
「はいっ。……って、ここでやってもいいんじゃないですか?」
「あ、おう、それもそうか」
……それにしても、ご先祖様よ。
あんたもカウラに物を食わせてやった時は、こんな心境だったのかね?
だとしたら、曽祖父母、祖父母、それに親父とお袋はこんな気持ちにはなれなかったかもな。
仕事中は凛として、美味い飯を食ってるときはいい顔をしながら一生懸命食って、なくなったら泣きそうになってやんの。
こいつは俺のことどう思ってるか分からんが、何かに対していつも一生懸命って奴は好きだな。
曾祖母の思いを託されたって意味では気の毒には思うけどな。
「……コウジさん」
「んー?」
「コウジさんも、なんだかんだ言って、ちょっとかわいいですよね」
「はあ?!」
いきなり変な事言われて、変な声が出ちまった。
そんなこと言われたことねぇぞ!
「昨日も言いましたけど、ここに来る人達に対しては、コウジさん自身はどう思ってるか分かりませんがみんなが有り難いって思うことをしてますし、カウラお婆様の思う通りにならないかもしれない私に、こうして親切にしてくださいますし」
まぁ、そう思われることはしているな。
だが本人の自己評価と行動と、その行動の他人からの評価は必ずしも一致しない。
「みんなのために何かをするっていう大それた志まではもってなさそうですよね? それは私も同じです。けど、周りからの評価ってすごいですよね、コウジさん」
「まぁ、なぁ……。それはなくてもいい。というか、むしろ勘弁してくれってな。まさにお前の言う通りだな」
「目の前にある仕事をし続けてるだけなのに、そんな風に思われる人ってすごいなぁって」
米を研ぐ音が途切れ途切れになっていく。
仕事、早く終わらせないと、早く寝れねぇぞ?
俺も眠くなってきた。
「肩ひじ張らずに、たくさんの人の為にできる仕事があったらやってみたいなぁって」
「ま、ここで、というなら俺は大歓迎だがな」
「お婆様のことは無関係に、ですね」
まぁな。
それより、うん、眠い。
……もう十一時過ぎたか。
「……後のこと、任せていいか?」
「え? あ、はい。じゃあ炊飯器のスイッチ間違えないようにしないとですね。ちょっとうれしいです」
何を言ってるのか分からんが……。
「んじゃ先に寝るわ。そっちのベッドでいいな?」
「え? この部屋でですか?」
「お前のベッドに入るわけじゃないし、寝るだけだ。んじゃな」
「ちょ、コウジさん、お風呂は?」
「寝る」
まぁ、いつも寝る時間だし、なんでこんなに時間かかったやら……。
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