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店の日常編
村の防衛もこいつらにかかりゃ、戦争ごっこかなぁ その4
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離れていても気配は分かる。
近ければ、その気配の主は誰のもので、その感情はどういったものかも分かる。
だが、離れれば離れる程知ることができる情報は少なくなる。
察知できる範囲は広がってきているが、遠ければ気配の数くらいしか分からない。
どのルートを通るか分かればみんなの負担も楽になるんだろうが、それを知るためには、相手も自分の位置が分かるくらいに接近せにゃならん。
「意外と苦戦するんじゃない?」
「ヨウミい、どうしてだあ?」
俺もヨウミに同意だ。
だがモーナーはそんな風には考えてないらしい。
俺達がそう考える理由はな……。
「魔物殲滅が目的だったら、遠慮なくぶちのめせばいい。だが相手は犯罪者であって、魔物じゃないからな」
「手加減が必要なのよ。下手に手を出して、それが致命傷になったらこっちの立場がまずくなるんじゃない?」
普通ならな。
だが相手は自己中心の腹いせか何かの動機で、目的が村への損害なら、抒情酌量の余地はあるだろう。
けどそれも、犯罪者が人間たちで防犯が人間よりも力がある魔族なら、それが通用するかどうか。
「責任者がアラタってんなら大目に見てもらえるかもしれないけど」
「それも……どうだろうな」
「え?」
「元旗手……普通の人間とは違うからな。体力は一般人より下の自信はあるが」
ヨウミもモーナーも、そのことはすっかり忘れてたぼかった。
つか、しょっちゅう俺の能力当てにしてるのに、何で忘れられてんだよ、その設定っ。
「で、でもお、生け捕りってところはあ、みんな強調してたからあ」
「あ、そうだ。なら村人たちを起こしてここにくるようにすれば」
「村を襲いに来たってのは俺にしか分からねぇだろ? 俺がその位置とかを教えてお前らが分かるって感じだろ? 村人たちは、それすらも感じ取れねえんだぞ?」
「あ……そうか……。外から誰かが来たって言っても、それを信じてもらえるかどうか分からないんだ」
「今夜も見回りしてるだろう。そいつらが来てくれればいいだろうが、そいつらから『村の入り口から来たらどうすんだ』って言われたら、俺にはそいつらを説得できる自信も力量もねえし」
「それにい、人質にされるかもしれないしい」
それなんだよな。
人質に取られたら、みんなの防衛行動は過剰じゃなくなるかもしれん。
だが今度は人質の命がヤバくなる。
「……つまりい、その一味がここから来たってのはあ……俺達にとってえ、都合は良かったんだなあ」
うん、そんな風にも受け止められるな。
村人の命が一番遠いところからやってきた、という見方ができるからな。
「でもどうして通話機使わないの? サミーに伝言頼むって、手間暇かかり過ぎじゃない?」
「声が相手に聞こえたらまずいだろ。逃がすわけにはいかんし」
「どうして逃がしちゃダメなの?」
「別グループに頼んで大人数で来られたら対応できんぞ? この村が害悪って話をでっちあげて、この村のことを知らない冒険者に依頼するかも分からんし」
正確な情報の流通は、俺がいた世界に比べたらやや劣っているっぽいんだよな。
サミーを伝言役にすれば、盗み聞きもできない。
みんなは、夜陰に隠れて動けるメリットを指摘してたが、そっちのメリットも侮れない気がしたからな。
会話なら、片方の話は相手に聞こえてしまうかもしれない。
だがサミーだと、聞き手からはただの返事だけで事足りる。
「でえ……みんなにい、情報伝えなくてえ、いいのかあ?」
「その前に状況把握しねぇとな。んと……これ、盗人だな? さっきまで動いてたのに、全く動かないのが三人。
その三人を挟んで二人と一人の気配は……ミアーノとンーゴが二人の方。一人の方は……テンちゃんか?」
「すげえなあ、アラタあ。そんな作戦立てたんだあ」
「ほう?」
沼にハマれば、誰だってそこから抜け出そうとするだろう。
ところがそいつらに向けて、テンちゃんの羽ばたきで強風を起こす。
沼にハマった奴は、その風を堪えるのが精一杯。
沼から抜け出すのは、その風が収まってから、と考える。
が、テンちゃんは羽ばたき程度ならいつまでも続けられる。
つまり、沼にハマったら、夜回りか保安官に引き渡すまでずっとそのまま。
という作戦を立てたんだそうだ。
なるほどよく考えたもんだ。
「でえ、誰もお、沼のそばをお、通るわけじゃないからあ」
「マッキーとかクリマーの出番ってわけか」
「マッキーい、ずっと悩んでたんだってえ?」
「悩んでた? まぁ……時々沈みがちになるそぶりは見せてたが……」
弓が得意なマッキーは、それでも力不足に悩んでたんだそうだ。
テンちゃんにはパワーはあるし空も飛べる。
ライムは体の形状を変えられ、硬さや重さも変えられる。
クリマーも体を変化させられる。
モーナーはその頑丈さと体格のでかさがある。
ミアーノとンーゴは、地面が土ならその地形を変えられる。
来たばかりでまだ日が浅いコーティは、それでも強い魔力の持ち主だということがすぐ分かる。
今のところ可愛いだけのサミーを除外すれば、力不足は否めない。
そういうことを感じ取ってたってんだからなぁ。
俺からすりゃ、センシティブって感じなんだがな。
「ライムう、最近体大きくなってきててえ、自分の体持て余し気味なんだってえ」
「それは初耳だな」
「でえ、体の一部に爆発力をこめてえ」
「ふむ?」
「マッキーの矢じりにくっつけてえ、攻撃力高めてえ、何度か練習してたんだってえ」
なんとまあ。
で、今の詳細は分からないが、動かなくなった三つの気配に移動しつつある一つの気配。
おそらく沼に誘導されつつあるんだろう。
それが動かなくなったら、残る気配は五つ。
「サミー。伝言頼む。接近しつつある気配は残り五。場所は……」
サミーに託すべき情報を伝え、再び成り行きを見守るしかない、か。
近ければ、その気配の主は誰のもので、その感情はどういったものかも分かる。
だが、離れれば離れる程知ることができる情報は少なくなる。
察知できる範囲は広がってきているが、遠ければ気配の数くらいしか分からない。
どのルートを通るか分かればみんなの負担も楽になるんだろうが、それを知るためには、相手も自分の位置が分かるくらいに接近せにゃならん。
「意外と苦戦するんじゃない?」
「ヨウミい、どうしてだあ?」
俺もヨウミに同意だ。
だがモーナーはそんな風には考えてないらしい。
俺達がそう考える理由はな……。
「魔物殲滅が目的だったら、遠慮なくぶちのめせばいい。だが相手は犯罪者であって、魔物じゃないからな」
「手加減が必要なのよ。下手に手を出して、それが致命傷になったらこっちの立場がまずくなるんじゃない?」
普通ならな。
だが相手は自己中心の腹いせか何かの動機で、目的が村への損害なら、抒情酌量の余地はあるだろう。
けどそれも、犯罪者が人間たちで防犯が人間よりも力がある魔族なら、それが通用するかどうか。
「責任者がアラタってんなら大目に見てもらえるかもしれないけど」
「それも……どうだろうな」
「え?」
「元旗手……普通の人間とは違うからな。体力は一般人より下の自信はあるが」
ヨウミもモーナーも、そのことはすっかり忘れてたぼかった。
つか、しょっちゅう俺の能力当てにしてるのに、何で忘れられてんだよ、その設定っ。
「で、でもお、生け捕りってところはあ、みんな強調してたからあ」
「あ、そうだ。なら村人たちを起こしてここにくるようにすれば」
「村を襲いに来たってのは俺にしか分からねぇだろ? 俺がその位置とかを教えてお前らが分かるって感じだろ? 村人たちは、それすらも感じ取れねえんだぞ?」
「あ……そうか……。外から誰かが来たって言っても、それを信じてもらえるかどうか分からないんだ」
「今夜も見回りしてるだろう。そいつらが来てくれればいいだろうが、そいつらから『村の入り口から来たらどうすんだ』って言われたら、俺にはそいつらを説得できる自信も力量もねえし」
「それにい、人質にされるかもしれないしい」
それなんだよな。
人質に取られたら、みんなの防衛行動は過剰じゃなくなるかもしれん。
だが今度は人質の命がヤバくなる。
「……つまりい、その一味がここから来たってのはあ……俺達にとってえ、都合は良かったんだなあ」
うん、そんな風にも受け止められるな。
村人の命が一番遠いところからやってきた、という見方ができるからな。
「でもどうして通話機使わないの? サミーに伝言頼むって、手間暇かかり過ぎじゃない?」
「声が相手に聞こえたらまずいだろ。逃がすわけにはいかんし」
「どうして逃がしちゃダメなの?」
「別グループに頼んで大人数で来られたら対応できんぞ? この村が害悪って話をでっちあげて、この村のことを知らない冒険者に依頼するかも分からんし」
正確な情報の流通は、俺がいた世界に比べたらやや劣っているっぽいんだよな。
サミーを伝言役にすれば、盗み聞きもできない。
みんなは、夜陰に隠れて動けるメリットを指摘してたが、そっちのメリットも侮れない気がしたからな。
会話なら、片方の話は相手に聞こえてしまうかもしれない。
だがサミーだと、聞き手からはただの返事だけで事足りる。
「でえ……みんなにい、情報伝えなくてえ、いいのかあ?」
「その前に状況把握しねぇとな。んと……これ、盗人だな? さっきまで動いてたのに、全く動かないのが三人。
その三人を挟んで二人と一人の気配は……ミアーノとンーゴが二人の方。一人の方は……テンちゃんか?」
「すげえなあ、アラタあ。そんな作戦立てたんだあ」
「ほう?」
沼にハマれば、誰だってそこから抜け出そうとするだろう。
ところがそいつらに向けて、テンちゃんの羽ばたきで強風を起こす。
沼にハマった奴は、その風を堪えるのが精一杯。
沼から抜け出すのは、その風が収まってから、と考える。
が、テンちゃんは羽ばたき程度ならいつまでも続けられる。
つまり、沼にハマったら、夜回りか保安官に引き渡すまでずっとそのまま。
という作戦を立てたんだそうだ。
なるほどよく考えたもんだ。
「でえ、誰もお、沼のそばをお、通るわけじゃないからあ」
「マッキーとかクリマーの出番ってわけか」
「マッキーい、ずっと悩んでたんだってえ?」
「悩んでた? まぁ……時々沈みがちになるそぶりは見せてたが……」
弓が得意なマッキーは、それでも力不足に悩んでたんだそうだ。
テンちゃんにはパワーはあるし空も飛べる。
ライムは体の形状を変えられ、硬さや重さも変えられる。
クリマーも体を変化させられる。
モーナーはその頑丈さと体格のでかさがある。
ミアーノとンーゴは、地面が土ならその地形を変えられる。
来たばかりでまだ日が浅いコーティは、それでも強い魔力の持ち主だということがすぐ分かる。
今のところ可愛いだけのサミーを除外すれば、力不足は否めない。
そういうことを感じ取ってたってんだからなぁ。
俺からすりゃ、センシティブって感じなんだがな。
「ライムう、最近体大きくなってきててえ、自分の体持て余し気味なんだってえ」
「それは初耳だな」
「でえ、体の一部に爆発力をこめてえ」
「ふむ?」
「マッキーの矢じりにくっつけてえ、攻撃力高めてえ、何度か練習してたんだってえ」
なんとまあ。
で、今の詳細は分からないが、動かなくなった三つの気配に移動しつつある一つの気配。
おそらく沼に誘導されつつあるんだろう。
それが動かなくなったら、残る気配は五つ。
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サミーに託すべき情報を伝え、再び成り行きを見守るしかない、か。
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