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店の日常編
千里を走るのは、悪事だけじゃない 噂ばかりじゃなく、それに振り回された連中もな
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フィールドじゃ、もうすでに宴が始まってるようだ。
「まぁ別にいいんじゃない? アラタの言ってること、間違ってないしさ。逆にその飲み会に一緒に混ざってたら、確かにちょっと居心地悪かったかもね」
お祝いの席を飲み会呼ばわりたぁ、冒険者達も立つ瀬がねぇんじゃねぇかな?
つい苦笑いしちまった。
その宴の料理作りで忙しいドーセンに無理を言って、晩飯の出前を頼んだ。
で、店の洞窟の中で、ヨウミと二人きりの晩飯の時間。
フィールドの方から、盛り上がって騒いでる様子が分かる。
能力がなくても、その騒ぎようがかすかに耳の中に入ってきた。
「盛り上がってるわねぇ」
「滅多に仕留めることができない大物三体っつってたしな。しかも村を襲いに来るかもしれない魔物だったから、大義名分もあったわけだしな」
そして、貴重なアイテムやら食料やら薬や道具の素材やら、多くの財を手にしたわけだから、そりゃ盛り上がるわな。
大金持ちとまではいかねぇが、参加者全員小金持ちくらいにはなれただろう。
……あんなお祭り騒ぎの中にいること自体嫌いじゃない。
いや、子供の頃はそうだった。
むしろ好きだった。
今は、そんな中にいて楽しんでる連中を見てる方が好きだな。
一緒に楽しんでる最中でも、途中で無理やりその輪から追い出されることが多かったからな。
最後まで楽しめず、その楽しみを無理やり取り上げられたようなことなんて何度あったか。
誰だって寂しいことより楽しい体験をしたいに決まってるし、俺もそうだった。
だから……正直なことを言えば、大勢のみんなが楽しんでいる中、俺だけがそんな扱いだから寂しいに決まってる。当然楽しんでる奴らを羨ましがったり妬んだりした思いを持ったことなんか数えきれない。
でも、そんな思いを持ってても、一緒に楽しみたいって思いが叶えらるわけじゃない。
そんな感情を持つたびに、気持ちが、心が疲れるだけ。
そのうち、そうなることが分かり切って、その現実を受け入れるようになった。
だから、その寂しさの中で楽しみを得る工夫をしてきた。
その方法の一つが……楽しんでる奴らを見て、俺が持ってる感情を持たずに済んで良かったな、という気持ちを持つことだった。
だから……この世界に来た初日には、他の連中にはそんなに怒る気持ちはなかったんかもなぁ。
「初日? 何の事? あ、あの閉店を迫ってきた連中の事?」
「え?」
「え? その事じゃないの?」
やべぇ。
思ったこと、口に出してたっぽい。
疲れてるから油断してんのかもな。
それで前に失敗してんだ。
気を引き締めとかないとなぁ……。
って、引き締めた途端……。
「あ、いや、何でもない。俺の世界にいた頃のことをちっとばっかりな。って……あいつら戻ってくるぞ? 流石にンーゴとミアーノはいないみたいだが」
「え? みんな戻ってくる? 飲み会始まって一時間するかしないかだよ?」
といっても、近づいてきてんだからしょうがない。
あいつら晩飯食ったんか?
辛うじて握り飯は……みんなが満腹になるくらいまでには残ってるが……おにぎり、随分捌けたんだなぁ。
「ただいまあ、アラタあ、ヨウミい」
「ミュゥッ!」
「疲れました……。あ、ご飯はあそこで済ませてきましたから、お腹いっぱいです」
「てへ。途中で抜け出してきちゃった。翼の怪我、完全に治ったけど、まだ痛いっつって仮病使っちゃった」
てへ、じゃねぇだろ。
「あたし達も、テンちゃんに付き添うっつって戻ってきちゃったー」
「ンーゴトミアーノモ、イッショニバイバイシテ、ネドコニモドッタヨ」
「ま、あたしらはお腹いっぱいになったら、もうあそこには用はないし。アラタんとこの方がよっぽど落ち着くわ」
コーティ、ツンデレかよ。
「……どしたの? アラタ。なんか顔が赤くない? 熱でもあるの?」
「へ? い、いや、何でもねぇ。何でもねぇよ、ヨウミ」
エージ達から聞いた話思い出しちまった。
まだヨウミにそのことは話ししてねぇんだよ。
誰も話すんじゃねぇぞ!
「えっとなあ、アラタがさあ」
ちょっ!
モーナー!
まさかお前が喋るとはっ!
「おい、モーナー! あのことは……っ」
「そ、そうよモーナー! あんたは黙りなさいよっ!」
「……珍しいわね。アラタとコーティの意見が合うなんて。コーティ、私達の間で秘密はなしって決まりだからね? 何かあったの? モーナー」
モーナーがご機嫌な顔で話し始めた。
俺は言うまでもなく、ライムとサミー以外は悶絶。
ライムとサミーは……。
モーナー同様、無邪気な性格、なんだろうな。
モーナーの話にはしゃいでる。
……こいつら三人の性格がうらやましい……。
向こうの連中の夜はまだまだ終わらず盛り上がってるようだが……。
こっちもこっちで、別の意味でささやかに盛り上がりそうだ……。
「かっこいいじゃない、アラタ」
ヨウミィ……。ニコニコしながら言ってんじゃねえっ。
それにしても今回の騒動、発端は雑誌の取材だったんだよな。
そしてこの騒動を収めたきっかけの一つも、雑誌絡み。
ファンクラブがどうとかがなきゃこんなに冒険者達は集まらなかったし、全員がこうして無事に戻ってきて飲めや歌江の大騒ぎができることもなかった。
雑誌の反応は、迷惑千万のこともあれば胸をなでおろす思いをもたらすこともある。
まぁ今回は、ほっといたら遅かれ早かれ村を襲っていたかもしれない魔物討伐に大いに役に立ったということで、我が身に降りかかった迷惑は、些細なこととして目をつぶるとするか。
あいつらもしかるべき場所で正当に裁かれるみたいだしな。
「まぁ別にいいんじゃない? アラタの言ってること、間違ってないしさ。逆にその飲み会に一緒に混ざってたら、確かにちょっと居心地悪かったかもね」
お祝いの席を飲み会呼ばわりたぁ、冒険者達も立つ瀬がねぇんじゃねぇかな?
つい苦笑いしちまった。
その宴の料理作りで忙しいドーセンに無理を言って、晩飯の出前を頼んだ。
で、店の洞窟の中で、ヨウミと二人きりの晩飯の時間。
フィールドの方から、盛り上がって騒いでる様子が分かる。
能力がなくても、その騒ぎようがかすかに耳の中に入ってきた。
「盛り上がってるわねぇ」
「滅多に仕留めることができない大物三体っつってたしな。しかも村を襲いに来るかもしれない魔物だったから、大義名分もあったわけだしな」
そして、貴重なアイテムやら食料やら薬や道具の素材やら、多くの財を手にしたわけだから、そりゃ盛り上がるわな。
大金持ちとまではいかねぇが、参加者全員小金持ちくらいにはなれただろう。
……あんなお祭り騒ぎの中にいること自体嫌いじゃない。
いや、子供の頃はそうだった。
むしろ好きだった。
今は、そんな中にいて楽しんでる連中を見てる方が好きだな。
一緒に楽しんでる最中でも、途中で無理やりその輪から追い出されることが多かったからな。
最後まで楽しめず、その楽しみを無理やり取り上げられたようなことなんて何度あったか。
誰だって寂しいことより楽しい体験をしたいに決まってるし、俺もそうだった。
だから……正直なことを言えば、大勢のみんなが楽しんでいる中、俺だけがそんな扱いだから寂しいに決まってる。当然楽しんでる奴らを羨ましがったり妬んだりした思いを持ったことなんか数えきれない。
でも、そんな思いを持ってても、一緒に楽しみたいって思いが叶えらるわけじゃない。
そんな感情を持つたびに、気持ちが、心が疲れるだけ。
そのうち、そうなることが分かり切って、その現実を受け入れるようになった。
だから、その寂しさの中で楽しみを得る工夫をしてきた。
その方法の一つが……楽しんでる奴らを見て、俺が持ってる感情を持たずに済んで良かったな、という気持ちを持つことだった。
だから……この世界に来た初日には、他の連中にはそんなに怒る気持ちはなかったんかもなぁ。
「初日? 何の事? あ、あの閉店を迫ってきた連中の事?」
「え?」
「え? その事じゃないの?」
やべぇ。
思ったこと、口に出してたっぽい。
疲れてるから油断してんのかもな。
それで前に失敗してんだ。
気を引き締めとかないとなぁ……。
って、引き締めた途端……。
「あ、いや、何でもない。俺の世界にいた頃のことをちっとばっかりな。って……あいつら戻ってくるぞ? 流石にンーゴとミアーノはいないみたいだが」
「え? みんな戻ってくる? 飲み会始まって一時間するかしないかだよ?」
といっても、近づいてきてんだからしょうがない。
あいつら晩飯食ったんか?
辛うじて握り飯は……みんなが満腹になるくらいまでには残ってるが……おにぎり、随分捌けたんだなぁ。
「ただいまあ、アラタあ、ヨウミい」
「ミュゥッ!」
「疲れました……。あ、ご飯はあそこで済ませてきましたから、お腹いっぱいです」
「てへ。途中で抜け出してきちゃった。翼の怪我、完全に治ったけど、まだ痛いっつって仮病使っちゃった」
てへ、じゃねぇだろ。
「あたし達も、テンちゃんに付き添うっつって戻ってきちゃったー」
「ンーゴトミアーノモ、イッショニバイバイシテ、ネドコニモドッタヨ」
「ま、あたしらはお腹いっぱいになったら、もうあそこには用はないし。アラタんとこの方がよっぽど落ち着くわ」
コーティ、ツンデレかよ。
「……どしたの? アラタ。なんか顔が赤くない? 熱でもあるの?」
「へ? い、いや、何でもねぇ。何でもねぇよ、ヨウミ」
エージ達から聞いた話思い出しちまった。
まだヨウミにそのことは話ししてねぇんだよ。
誰も話すんじゃねぇぞ!
「えっとなあ、アラタがさあ」
ちょっ!
モーナー!
まさかお前が喋るとはっ!
「おい、モーナー! あのことは……っ」
「そ、そうよモーナー! あんたは黙りなさいよっ!」
「……珍しいわね。アラタとコーティの意見が合うなんて。コーティ、私達の間で秘密はなしって決まりだからね? 何かあったの? モーナー」
モーナーがご機嫌な顔で話し始めた。
俺は言うまでもなく、ライムとサミー以外は悶絶。
ライムとサミーは……。
モーナー同様、無邪気な性格、なんだろうな。
モーナーの話にはしゃいでる。
……こいつら三人の性格がうらやましい……。
向こうの連中の夜はまだまだ終わらず盛り上がってるようだが……。
こっちもこっちで、別の意味でささやかに盛り上がりそうだ……。
「かっこいいじゃない、アラタ」
ヨウミィ……。ニコニコしながら言ってんじゃねえっ。
それにしても今回の騒動、発端は雑誌の取材だったんだよな。
そしてこの騒動を収めたきっかけの一つも、雑誌絡み。
ファンクラブがどうとかがなきゃこんなに冒険者達は集まらなかったし、全員がこうして無事に戻ってきて飲めや歌江の大騒ぎができることもなかった。
雑誌の反応は、迷惑千万のこともあれば胸をなでおろす思いをもたらすこともある。
まぁ今回は、ほっといたら遅かれ早かれ村を襲っていたかもしれない魔物討伐に大いに役に立ったということで、我が身に降りかかった迷惑は、些細なこととして目をつぶるとするか。
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