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『借金一億五千万ゴールドの俺が異世界で静かに暮らす方法』
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人は死ぬとき、だいたい「うわ、これヤバい」って思う暇すらない。
俺――九条迅(くじょう・じん)は、まさにそれだった。
気づいたら視界が白かった。白い、というか、白すぎる。病院の天井みたいに無機質な白じゃない。やたら神聖っぽい白。写真加工アプリで“神々しさ”を盛りすぎた白。
目を開けた瞬間に理解した。ここ、現実じゃない。現実だったらもっと埃が舞ってるし、蛍光灯がチカチカしてる。俺の人生、そんな感じだ。
「やっと起きたぁぁぁ! 遅い! 遅いのよあなた!」
怒鳴り声が降ってきた。いや降ってきたって何だ。上から声がする。見上げたら、そこに“いた”。
金髪が、光っている。
いや、髪が光ってるってどういう状況だ。しかも長い。風が吹いてるのか知らないけど、ここ無風っぽいのに勝手にたなびいてる。
青い瞳。白金のドレス。金細工と宝石が、これでもかってくらい付いてる。背後では粒子みたいな光が舞ってて、背景は荘厳な神殿。
完璧だ。百点だ。理想の女神ってやつが“いるならこう”っていうテンプレの権化。
――ただし。
「ねえ聞いてる!? あなた、死んだの! だから異世界に行くの! 分かる!? 分かりやすく言うと二度と元の世界には戻れないの! うん、かわいそう! でも仕方ない!」
口を開いた瞬間、百点の外見が八十点くらいに落ちた。いや、落ちたというより“真実”が見えた。
こいつ、テンションが高い。高すぎる。神々しさで誤魔化してるけど、言ってることはわりと雑だ。
「……まず、誰。あと、ここどこ。あと、今の話、わりと人生の重大事項なんだけど、もうちょい丁寧にやってくれない?」
「はぁ!? 丁寧に!? 私が!? 女神が!? あなたのために!? ちょっと、失礼すぎない!? もう一回言うわよ、私は――」
彼女は胸を張った。宝石がキラッと鳴った。なんで鳴るんだよ宝石。
そして自信満々に宣言する。
「ルミエル・セラフィナ! 通称『光輝の大聖女』! そして『天界管理局・第一階層担当』! あなたが今後一生お世話になる、完璧女神ルミ様よ!」
「最後の“完璧”は自称だろ」
「当然よ! 完璧は自分で名乗るものなの!」
いや、違うと思う。完璧ってのは周囲が勝手に認めるものだ。少なくとも俺の人生では。
俺はため息をつきたい気持ちを飲み込んだ。飲み込んだところで状況は変わらない。
とりあえず確認だ。
「で、俺が死んだってのは……本当?」
「本当よ! ちゃんと帳簿にも載ってる!」
「帳簿って何……天界、経理あるの……?」
「あるわよ! 天界なめないで! えーっと、九条迅、死亡原因――」
ルミエルは虚空から紙束を取り出した。いや、紙束をどこから。手品師か。
彼女は指で紙をぺらぺらとめくる。豪華な指輪が何個も光ってる。
その指先だけはやたら優雅で、顔はなぜか焦ってる。
「……あれ? え、ちょっと待って。おかしい。おかしいわね?」
「おかしいのはだいたいお前だと思う」
「違うの! 帳簿が、帳簿が……えーっと、九条迅……九条……くじょう……あった! これ!」
彼女は勝ち誇った顔で一枚の紙を掲げた。
そこには確かに俺の名前があった。生年月日っぽい数字もある。死亡時間とか、所在地とか。
……やめろ。やめてくれ。現実感が急に刺さる。
「ほら! 死んだ! 確定! だからあなたは異世界に転送されます!」
「転送って言い方が軽いな」
「だって軽いもの!」
「いや重いだろ。人生だぞ」
「人生ってそんなに重い?」
この女神、価値観が浮世離れしてる。いや神なんだから浮世離れしてて当然か。
いや待て。浮世離れしてるにしても、地上の人間を扱う担当ならもう少し“人間の心”を学んでくれ。
「で、異世界って何。俺、何させられるの」
「勇者! 魔王! 冒険! ドーン! ワクワク! あなたは選ばれし者!」
「やりたくねぇ……」
「えっ?」
ルミエルが固まった。
「いや、だってさ。選ばれし者って、だいたい過労死する枠だろ。俺は平穏に暮らしたいだけなんだけど」
「平穏って、異世界に来る時点で無理に決まってるでしょ! それにあなた、もう死んでるのよ!?」
「死んだ後も平穏を求めたっていいだろ。死んだら労働が消えるとは限らないのかよ」
「消えないわね! むしろ増えるわね!」
増えるのかよ。
俺は頭を抱えた。抱えようとして気づく。俺、体あるのか? あるっぽい。感覚ある。痛みはないけど、指先は動く。
「……なあ。異世界行くとして、せめて初期装備とか、チート能力とか、そういうのは?」
「もちろんよ! 女神が担当してるのよ!? 超豪華特典が――」
ルミエルはまた紙束をめくった。
さっきと同じ動きなのに、さっきより不穏だ。
嫌な予感がする。人間の直感ってやつは、だいたい当たる。
「……え?」
「何」
「……あれ?」
「やめろ。その“あれ?”やめろ」
「ちょっと待って、ちょっと待って! 待って! 落ち着いて! 今、すっごい大事なことに気づいたかもしれない!」
「落ち着けって言うやつが落ち着いてないとき、だいたい最悪なやつなんだよ!」
「違うの! これはね! 天界事務処理の、ほんの、ほんの小さなミスで――」
「ミスの時点でアウトだろ」
「だって! だってあなたの転送費用、立て替えが必要で……!」
「転送に費用かかるの!?」
「かかるわよ! 異世界って遠いんだから! 転送は無料じゃないの!」
「え、じゃあ誰が払うの」
ルミエルは、満面の笑みで言った。
「あなた♡」
「は?」
“は?”って声が出た。
理解が追いつかない。いや理解したくない。
「いやいやいや。待て待て待て。俺、死んだばっかなんだけど。財布も通帳も置いてきたんだけど」
「異世界通貨で返せるから大丈夫!」
「返せるか! 知らねぇ通貨だよ!」
「でも、そういう規約だから!」
「規約って何だよ神の規約って!」
「天界管理局の規約!」
管理局って言った。言い切った。
この女神、完全に公務員気質だ。しかも事務ミスを規約で押し通すタイプの公務員だ。
「待て。つまり俺は、異世界に飛ばされるうえに、借金まで背負うの?」
「うん!」
「うんじゃねぇよ!!」
叫んだ瞬間、神殿の空気が少しだけ震えた。
ルミエルは目を丸くして、次の瞬間、涙目になった。
「な、なによぉ……! せっかく完璧に導いてあげてるのに……!」
「どこが完璧だよ! 借金の時点で破綻してるだろ!」
「でも私、顔は完璧でしょ!?」
「そこしか誇るとこないのかよ!」
このやり取り、地獄か。いや天界か。
俺は深呼吸した。状況判断は冷静に。ここで怒鳴っても意味がない。
俺は“平穏に暮らしたいだけ”だ。飯と屋根と安全。それが最優先。英雄だの魔王だのは、俺の生活圏の外側に置いとけ。
「……で、借金、いくら」
「えへへ。聞いて驚かないでね?」
「やめろ、その前振りは数字が凶悪なやつだ」
ルミエルは指を立てた。
「一億五千万ゴールド♡」
「殺す気か!!」
「もう死んでる!」
「殺す気かって言っただろ!!」
俺は思考を止めかけた。
一億五千万。ゼロが多すぎて感情が追いつかない。
これ、返せるやついるのか? 魔王でも返せないんじゃないか?
「ちょっと待て。借金返せないとどうなる」
「えーっと……取り立てが来る!」
「誰が」
「……えへへ」
「お前の“えへへ”は信用できない」
ルミエルは視線を逸らし、指先で頬をつついた。
その仕草だけはやたら可愛いのが腹立つ。外見が強すぎる。中身がポンコツでも外見が強いと許されると思うな。
「と、とにかく! 異世界で稼げばいいの! 冒険者になって! クエストやって! 魔物倒して! 宝箱ゲットして! ドーン!」
「雑」
「雑じゃない! 王道よ王道!」
「王道はだいたい死ぬ」
「死なない! 私が付いてる!」
「お前が付いてるのが一番不安なんだよ」
俺は額を押さえた。
だが、ここで立ち止まっても始まらない。
異世界に行くのは確定。借金も背負わされた。ここまでは決まってる。
なら、次だ。最小の損で最大の安全を確保する。俺の得意分野はそれだ。
英雄扱いは全力で否定する。でも見捨てない。――その矛盾を抱えてでも、生き延びる。
「……条件がある」
「条件?」
「俺は英雄にならない。目立たない。平穏第一。借金は返すけど、命は安売りしない」
「えぇ~……冒険って命がけでしょ?」
「命がけじゃない冒険を探す。なければ作る」
ルミエルは口を尖らせた。
そして、なぜか少しだけ真面目な顔になった。
「……あなた、変な人ね」
「今さらだろ。人生終わってるし」
「でも……そういうの、嫌いじゃないかも」
その瞬間だけ、女神っぽい空気が戻った。
眩しい光が強くなる。粒子が舞う。神殿が遠のく。
足元が抜ける感覚。落下――じゃない。引っ張られる。世界そのものに。
「行ってらっしゃい、九条迅!」
ルミエルは、満面の笑みで手を振った。
「異世界で、ちゃんと稼いでね! 借金! 返してね! お願いね!」
「最後までそれかよ!!」
叫びは光に飲まれた。
次に目を開けたとき――俺は、知らない空の下にいた。
そして理解する。
この世界で一番厄介なのは、魔王でも魔物でもない。
――“完璧女神ルミ様”だ。
俺の平穏は、開始一秒で終わっていた。
俺――九条迅(くじょう・じん)は、まさにそれだった。
気づいたら視界が白かった。白い、というか、白すぎる。病院の天井みたいに無機質な白じゃない。やたら神聖っぽい白。写真加工アプリで“神々しさ”を盛りすぎた白。
目を開けた瞬間に理解した。ここ、現実じゃない。現実だったらもっと埃が舞ってるし、蛍光灯がチカチカしてる。俺の人生、そんな感じだ。
「やっと起きたぁぁぁ! 遅い! 遅いのよあなた!」
怒鳴り声が降ってきた。いや降ってきたって何だ。上から声がする。見上げたら、そこに“いた”。
金髪が、光っている。
いや、髪が光ってるってどういう状況だ。しかも長い。風が吹いてるのか知らないけど、ここ無風っぽいのに勝手にたなびいてる。
青い瞳。白金のドレス。金細工と宝石が、これでもかってくらい付いてる。背後では粒子みたいな光が舞ってて、背景は荘厳な神殿。
完璧だ。百点だ。理想の女神ってやつが“いるならこう”っていうテンプレの権化。
――ただし。
「ねえ聞いてる!? あなた、死んだの! だから異世界に行くの! 分かる!? 分かりやすく言うと二度と元の世界には戻れないの! うん、かわいそう! でも仕方ない!」
口を開いた瞬間、百点の外見が八十点くらいに落ちた。いや、落ちたというより“真実”が見えた。
こいつ、テンションが高い。高すぎる。神々しさで誤魔化してるけど、言ってることはわりと雑だ。
「……まず、誰。あと、ここどこ。あと、今の話、わりと人生の重大事項なんだけど、もうちょい丁寧にやってくれない?」
「はぁ!? 丁寧に!? 私が!? 女神が!? あなたのために!? ちょっと、失礼すぎない!? もう一回言うわよ、私は――」
彼女は胸を張った。宝石がキラッと鳴った。なんで鳴るんだよ宝石。
そして自信満々に宣言する。
「ルミエル・セラフィナ! 通称『光輝の大聖女』! そして『天界管理局・第一階層担当』! あなたが今後一生お世話になる、完璧女神ルミ様よ!」
「最後の“完璧”は自称だろ」
「当然よ! 完璧は自分で名乗るものなの!」
いや、違うと思う。完璧ってのは周囲が勝手に認めるものだ。少なくとも俺の人生では。
俺はため息をつきたい気持ちを飲み込んだ。飲み込んだところで状況は変わらない。
とりあえず確認だ。
「で、俺が死んだってのは……本当?」
「本当よ! ちゃんと帳簿にも載ってる!」
「帳簿って何……天界、経理あるの……?」
「あるわよ! 天界なめないで! えーっと、九条迅、死亡原因――」
ルミエルは虚空から紙束を取り出した。いや、紙束をどこから。手品師か。
彼女は指で紙をぺらぺらとめくる。豪華な指輪が何個も光ってる。
その指先だけはやたら優雅で、顔はなぜか焦ってる。
「……あれ? え、ちょっと待って。おかしい。おかしいわね?」
「おかしいのはだいたいお前だと思う」
「違うの! 帳簿が、帳簿が……えーっと、九条迅……九条……くじょう……あった! これ!」
彼女は勝ち誇った顔で一枚の紙を掲げた。
そこには確かに俺の名前があった。生年月日っぽい数字もある。死亡時間とか、所在地とか。
……やめろ。やめてくれ。現実感が急に刺さる。
「ほら! 死んだ! 確定! だからあなたは異世界に転送されます!」
「転送って言い方が軽いな」
「だって軽いもの!」
「いや重いだろ。人生だぞ」
「人生ってそんなに重い?」
この女神、価値観が浮世離れしてる。いや神なんだから浮世離れしてて当然か。
いや待て。浮世離れしてるにしても、地上の人間を扱う担当ならもう少し“人間の心”を学んでくれ。
「で、異世界って何。俺、何させられるの」
「勇者! 魔王! 冒険! ドーン! ワクワク! あなたは選ばれし者!」
「やりたくねぇ……」
「えっ?」
ルミエルが固まった。
「いや、だってさ。選ばれし者って、だいたい過労死する枠だろ。俺は平穏に暮らしたいだけなんだけど」
「平穏って、異世界に来る時点で無理に決まってるでしょ! それにあなた、もう死んでるのよ!?」
「死んだ後も平穏を求めたっていいだろ。死んだら労働が消えるとは限らないのかよ」
「消えないわね! むしろ増えるわね!」
増えるのかよ。
俺は頭を抱えた。抱えようとして気づく。俺、体あるのか? あるっぽい。感覚ある。痛みはないけど、指先は動く。
「……なあ。異世界行くとして、せめて初期装備とか、チート能力とか、そういうのは?」
「もちろんよ! 女神が担当してるのよ!? 超豪華特典が――」
ルミエルはまた紙束をめくった。
さっきと同じ動きなのに、さっきより不穏だ。
嫌な予感がする。人間の直感ってやつは、だいたい当たる。
「……え?」
「何」
「……あれ?」
「やめろ。その“あれ?”やめろ」
「ちょっと待って、ちょっと待って! 待って! 落ち着いて! 今、すっごい大事なことに気づいたかもしれない!」
「落ち着けって言うやつが落ち着いてないとき、だいたい最悪なやつなんだよ!」
「違うの! これはね! 天界事務処理の、ほんの、ほんの小さなミスで――」
「ミスの時点でアウトだろ」
「だって! だってあなたの転送費用、立て替えが必要で……!」
「転送に費用かかるの!?」
「かかるわよ! 異世界って遠いんだから! 転送は無料じゃないの!」
「え、じゃあ誰が払うの」
ルミエルは、満面の笑みで言った。
「あなた♡」
「は?」
“は?”って声が出た。
理解が追いつかない。いや理解したくない。
「いやいやいや。待て待て待て。俺、死んだばっかなんだけど。財布も通帳も置いてきたんだけど」
「異世界通貨で返せるから大丈夫!」
「返せるか! 知らねぇ通貨だよ!」
「でも、そういう規約だから!」
「規約って何だよ神の規約って!」
「天界管理局の規約!」
管理局って言った。言い切った。
この女神、完全に公務員気質だ。しかも事務ミスを規約で押し通すタイプの公務員だ。
「待て。つまり俺は、異世界に飛ばされるうえに、借金まで背負うの?」
「うん!」
「うんじゃねぇよ!!」
叫んだ瞬間、神殿の空気が少しだけ震えた。
ルミエルは目を丸くして、次の瞬間、涙目になった。
「な、なによぉ……! せっかく完璧に導いてあげてるのに……!」
「どこが完璧だよ! 借金の時点で破綻してるだろ!」
「でも私、顔は完璧でしょ!?」
「そこしか誇るとこないのかよ!」
このやり取り、地獄か。いや天界か。
俺は深呼吸した。状況判断は冷静に。ここで怒鳴っても意味がない。
俺は“平穏に暮らしたいだけ”だ。飯と屋根と安全。それが最優先。英雄だの魔王だのは、俺の生活圏の外側に置いとけ。
「……で、借金、いくら」
「えへへ。聞いて驚かないでね?」
「やめろ、その前振りは数字が凶悪なやつだ」
ルミエルは指を立てた。
「一億五千万ゴールド♡」
「殺す気か!!」
「もう死んでる!」
「殺す気かって言っただろ!!」
俺は思考を止めかけた。
一億五千万。ゼロが多すぎて感情が追いつかない。
これ、返せるやついるのか? 魔王でも返せないんじゃないか?
「ちょっと待て。借金返せないとどうなる」
「えーっと……取り立てが来る!」
「誰が」
「……えへへ」
「お前の“えへへ”は信用できない」
ルミエルは視線を逸らし、指先で頬をつついた。
その仕草だけはやたら可愛いのが腹立つ。外見が強すぎる。中身がポンコツでも外見が強いと許されると思うな。
「と、とにかく! 異世界で稼げばいいの! 冒険者になって! クエストやって! 魔物倒して! 宝箱ゲットして! ドーン!」
「雑」
「雑じゃない! 王道よ王道!」
「王道はだいたい死ぬ」
「死なない! 私が付いてる!」
「お前が付いてるのが一番不安なんだよ」
俺は額を押さえた。
だが、ここで立ち止まっても始まらない。
異世界に行くのは確定。借金も背負わされた。ここまでは決まってる。
なら、次だ。最小の損で最大の安全を確保する。俺の得意分野はそれだ。
英雄扱いは全力で否定する。でも見捨てない。――その矛盾を抱えてでも、生き延びる。
「……条件がある」
「条件?」
「俺は英雄にならない。目立たない。平穏第一。借金は返すけど、命は安売りしない」
「えぇ~……冒険って命がけでしょ?」
「命がけじゃない冒険を探す。なければ作る」
ルミエルは口を尖らせた。
そして、なぜか少しだけ真面目な顔になった。
「……あなた、変な人ね」
「今さらだろ。人生終わってるし」
「でも……そういうの、嫌いじゃないかも」
その瞬間だけ、女神っぽい空気が戻った。
眩しい光が強くなる。粒子が舞う。神殿が遠のく。
足元が抜ける感覚。落下――じゃない。引っ張られる。世界そのものに。
「行ってらっしゃい、九条迅!」
ルミエルは、満面の笑みで手を振った。
「異世界で、ちゃんと稼いでね! 借金! 返してね! お願いね!」
「最後までそれかよ!!」
叫びは光に飲まれた。
次に目を開けたとき――俺は、知らない空の下にいた。
そして理解する。
この世界で一番厄介なのは、魔王でも魔物でもない。
――“完璧女神ルミ様”だ。
俺の平穏は、開始一秒で終わっていた。
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