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光龍と誓約を結ぶ人
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「それでは裏ギルドの件は神の御業だと?」
「然り、ワシが1年前まで報告を受けていたこの街の様子では、裏ギルドやエセレジスタンスのアホゥ共は痕跡を辿れ無く工作しとったじゃろ?」
光龍のコウはグラスにワインを注ぎながら、アンドリュースに話していた。
光龍の元には帝国を飛び回る鳥や、各国を渡る渡り鳥等が見聞きしたことを報告しにやって来ていたらしい。眠っている時はかなり鳥達に啄き回されていたが、その事は勿論コウは知らない。
簡単な説明はアンドリュース達が来るまでにドーンに伝えていたのだが、今は改めて詳しく話してくれている。
既にアンドリュースから結界で閉じ込めてしまったこと、光龍の魔力を抽出していたことに対して謝罪がなされていたが、それに対してコウは街を壊してしまったことと相殺して欲しいと言った。
存外このコウは、この街と街の人間がお気に入りらしい。
それからアンドリュース達は神が代替わりしたことを聞くことになった。
「ワシは暫く神域におったのだが、新しい神、ワシは神獣じゃからワシにとっては主になるが、そのお方のご尊顔を拝見することはまだ叶わんかったのじゃ」
アンドリュースとドーンは同じくワインを、田代達はこちらの世界で言えば既に酒が飲める年齢だが、一度飲んで酷い二日酔いになった為、四人は辺境伯領特産のオレンジジュースを飲んでいる。冷やしてあるので美味しく飲めた。
「主を連れて来た別の世界の創造神、ローマンザック様から説明があったんじゃ。現在神はこの世界を蔓延っている瘴気を浄化しとるとな。それがある程度落ち着くまではワシらにも姿を見せることは無いかもしれんそうじゃ」
「先程光龍殿がされていたと言う浄化のことを伺ったが、神ならば全ての瘴気を浄化出来るのだろうか?」
「コウじゃ」
「ん?」
「この姿の時はコウと呼んで欲しいんじゃ。コウさんで良いぞ?」
その言葉にドーンは苦笑いをするが、アンドリュースは遠慮が無かった。
アンドリュースがコウさんと呼ぶので、自然に田代達もコウさんと呼ぶことになる。
ドーンの報告によれば、裏ギルドのギルドマスターと自称レジスタンスの主要人物が、毒気を抜かれたように自ら投降して来たらしい。証拠を持って。
それを機に一斉捜査が行われ、アジトも実行犯も押さえられることになったのだ。
今まで散々辛酸を嘗めさせられていた治安部隊は、この呆気ない結末に逆に裏が無いか不安になったそうだ。
「神獣であるワシと神の御業は質も量も違うのでな。どんな方法かはワシも分かり兼ねるが、アホゥを改心させるぐらいは軽いもんじゃろな。元々瘴気のせいで小悪党が悪党になったようなもんじゃ。しかしワシはこの街の人間に対して何もしてこんじゃった。ワシら神獣は人間に関わるには制約があっての。特に人間を守ることに関してはの」
コウは直接悪党達から街の人間を守れなかった理由を説明する。
龍の様な神獣は、正式な祝詞を唱え、守護する対象と対価を以て誓約しなければならないらしい。
「その対価さえ貰えればワシが対象を守護することが出来るんじゃ。して、新しい皇帝よ、貴様はどうする?」
今まで穏やかな表情だった白髪の美青年はニヤリと口の端を上げた。
「対価とは何であろうか?もし生贄等と言うのであれば、私は貴方を隔絶しなければならない。我が国民を犠牲にしたくないのでな」
「ほう、ワシと闘うと?」
「例え剣が届かぬとしても、国民を守るのが仕事なのだ」
向かい合っている二人から不穏なものが湧き上がると、ドーンがアンドリュースの前に出、田代はアンドリュースの目の前に結界を張った。
「ほほう、眠る直前に感じた結界魔力はそこの坊主のだったのか」
コウは結界を指差すと、結界はパリンっと音を立てて消えてしまった。
「僕の結界が!」
「瘴気に侵されとったのはワシも同じじゃ。ろくな浄化も出来んじゃったが、我が身と我が島からも瘴気は消えた。オマケに神域で主の神力に癒されて来たでな。坊主レベルの結界を壊すくらいわけないわい。それに対価は生贄何ぞではないわ。酒じゃ、祭以外でも酒が飲みたいんじゃーーーー!!」
手足をバタバタと動かし駄々を捏ねるコウに光龍の威厳は全く感じられなくなった。
「フ、フハハハハハ!コウさん、是非ともドーンと誓約を交わして欲しい。そしてこの街を守護して欲しい」
「ぬ?てっきり貴様がワシの守護を求めると思ったのだがな」
「そうです、陛下!是非陛下がコウさんの守護を受けて下さい!これからあの王国との戦いもあるのですから!」
ドーンも王国陥落が悲願の帝国民である。アナスタシア皇女殿下のことは、当時の帝国民に楔を残していた。
「今までコウさんと関わって来たのはお前達ではないか。酒代なら心配するな。ちゃんとタナトスに取り計らってやる。遠慮せず守護を受けろ。皇命だ」
「陛下~~」
ドーンは未だに納得が行かないが皇命ならば従わねばならない。
この事はドーンから領民達に話がなされ、領民達も「え?陛下は?」「陛下にこそ必要じゃ?」と口々に声が上がったが、アンドリュースからの皇命だと知ると、領民達は感動し幼い子供まで皇帝陛下に立派な帝国民になることを誓った。
儀式は意外と簡単なものであった。
コウさんが光龍に戻り、聞いた事も無い言葉で暫く唱えると、ドーンの頭を軽く噛んだ。
ドーンは倒れそうになったが、気力を振り絞って耐えた。
しかしコウに戻った光龍に「先にやり方を教えておけ!」と叫んでいた。
その後、街は祭の様に酒と料理が振る舞われ、アンドリュース達は楽しんだ。
ただ一人、田代だけが自分の力の無さに肩を落としていた。
「然り、ワシが1年前まで報告を受けていたこの街の様子では、裏ギルドやエセレジスタンスのアホゥ共は痕跡を辿れ無く工作しとったじゃろ?」
光龍のコウはグラスにワインを注ぎながら、アンドリュースに話していた。
光龍の元には帝国を飛び回る鳥や、各国を渡る渡り鳥等が見聞きしたことを報告しにやって来ていたらしい。眠っている時はかなり鳥達に啄き回されていたが、その事は勿論コウは知らない。
簡単な説明はアンドリュース達が来るまでにドーンに伝えていたのだが、今は改めて詳しく話してくれている。
既にアンドリュースから結界で閉じ込めてしまったこと、光龍の魔力を抽出していたことに対して謝罪がなされていたが、それに対してコウは街を壊してしまったことと相殺して欲しいと言った。
存外このコウは、この街と街の人間がお気に入りらしい。
それからアンドリュース達は神が代替わりしたことを聞くことになった。
「ワシは暫く神域におったのだが、新しい神、ワシは神獣じゃからワシにとっては主になるが、そのお方のご尊顔を拝見することはまだ叶わんかったのじゃ」
アンドリュースとドーンは同じくワインを、田代達はこちらの世界で言えば既に酒が飲める年齢だが、一度飲んで酷い二日酔いになった為、四人は辺境伯領特産のオレンジジュースを飲んでいる。冷やしてあるので美味しく飲めた。
「主を連れて来た別の世界の創造神、ローマンザック様から説明があったんじゃ。現在神はこの世界を蔓延っている瘴気を浄化しとるとな。それがある程度落ち着くまではワシらにも姿を見せることは無いかもしれんそうじゃ」
「先程光龍殿がされていたと言う浄化のことを伺ったが、神ならば全ての瘴気を浄化出来るのだろうか?」
「コウじゃ」
「ん?」
「この姿の時はコウと呼んで欲しいんじゃ。コウさんで良いぞ?」
その言葉にドーンは苦笑いをするが、アンドリュースは遠慮が無かった。
アンドリュースがコウさんと呼ぶので、自然に田代達もコウさんと呼ぶことになる。
ドーンの報告によれば、裏ギルドのギルドマスターと自称レジスタンスの主要人物が、毒気を抜かれたように自ら投降して来たらしい。証拠を持って。
それを機に一斉捜査が行われ、アジトも実行犯も押さえられることになったのだ。
今まで散々辛酸を嘗めさせられていた治安部隊は、この呆気ない結末に逆に裏が無いか不安になったそうだ。
「神獣であるワシと神の御業は質も量も違うのでな。どんな方法かはワシも分かり兼ねるが、アホゥを改心させるぐらいは軽いもんじゃろな。元々瘴気のせいで小悪党が悪党になったようなもんじゃ。しかしワシはこの街の人間に対して何もしてこんじゃった。ワシら神獣は人間に関わるには制約があっての。特に人間を守ることに関してはの」
コウは直接悪党達から街の人間を守れなかった理由を説明する。
龍の様な神獣は、正式な祝詞を唱え、守護する対象と対価を以て誓約しなければならないらしい。
「その対価さえ貰えればワシが対象を守護することが出来るんじゃ。して、新しい皇帝よ、貴様はどうする?」
今まで穏やかな表情だった白髪の美青年はニヤリと口の端を上げた。
「対価とは何であろうか?もし生贄等と言うのであれば、私は貴方を隔絶しなければならない。我が国民を犠牲にしたくないのでな」
「ほう、ワシと闘うと?」
「例え剣が届かぬとしても、国民を守るのが仕事なのだ」
向かい合っている二人から不穏なものが湧き上がると、ドーンがアンドリュースの前に出、田代はアンドリュースの目の前に結界を張った。
「ほほう、眠る直前に感じた結界魔力はそこの坊主のだったのか」
コウは結界を指差すと、結界はパリンっと音を立てて消えてしまった。
「僕の結界が!」
「瘴気に侵されとったのはワシも同じじゃ。ろくな浄化も出来んじゃったが、我が身と我が島からも瘴気は消えた。オマケに神域で主の神力に癒されて来たでな。坊主レベルの結界を壊すくらいわけないわい。それに対価は生贄何ぞではないわ。酒じゃ、祭以外でも酒が飲みたいんじゃーーーー!!」
手足をバタバタと動かし駄々を捏ねるコウに光龍の威厳は全く感じられなくなった。
「フ、フハハハハハ!コウさん、是非ともドーンと誓約を交わして欲しい。そしてこの街を守護して欲しい」
「ぬ?てっきり貴様がワシの守護を求めると思ったのだがな」
「そうです、陛下!是非陛下がコウさんの守護を受けて下さい!これからあの王国との戦いもあるのですから!」
ドーンも王国陥落が悲願の帝国民である。アナスタシア皇女殿下のことは、当時の帝国民に楔を残していた。
「今までコウさんと関わって来たのはお前達ではないか。酒代なら心配するな。ちゃんとタナトスに取り計らってやる。遠慮せず守護を受けろ。皇命だ」
「陛下~~」
ドーンは未だに納得が行かないが皇命ならば従わねばならない。
この事はドーンから領民達に話がなされ、領民達も「え?陛下は?」「陛下にこそ必要じゃ?」と口々に声が上がったが、アンドリュースからの皇命だと知ると、領民達は感動し幼い子供まで皇帝陛下に立派な帝国民になることを誓った。
儀式は意外と簡単なものであった。
コウさんが光龍に戻り、聞いた事も無い言葉で暫く唱えると、ドーンの頭を軽く噛んだ。
ドーンは倒れそうになったが、気力を振り絞って耐えた。
しかしコウに戻った光龍に「先にやり方を教えておけ!」と叫んでいた。
その後、街は祭の様に酒と料理が振る舞われ、アンドリュース達は楽しんだ。
ただ一人、田代だけが自分の力の無さに肩を落としていた。
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