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ダンジョン終了と童話のあれこれ
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田代達とエリーナがお別れの挨拶をしてる傍で、マッシモが訓練が無事終了し、これから帰還することを伝魔鳥でタナトス宛に送っていた。
二日目、ダンジョンに潜り、中層階までスピードを上げながら下り、そこから少し先にある、エリーナの言ってたセーフティーゾーン(通称仮眠所)で交代で仮眠を取り、三日目にそのダンジョンのボス部屋にあっさり着いた。
下層階にはミノタウロスや一つ目の巨人のキュクロープスが出て来たが、田代の『結界』にどうすることも出来なかった。
ボスは黒いキュクロープスで、通常より更に大きかった。
陣野の『鼓舞』を発動。
それから田代の『結界』の盾でキュクロープスの気を引いて貰い、下半身を騎士達が斬り裂き、腕を坂下が斬り落とし、如月が鳩尾がボッコリ凹む位の拳を叩き込んだ。
痛みでキュクロープスが口を開いた所に水魔術師が水球を送り込み、エリーナが目に風矢を打ち放った。
蹴飛ばされてうずくまった騎士が居たが、素早く回復術師二人が術を掛け、内臓破裂で血を吹いていた騎士は一命を取り留めた。
彼は帰ったら訓練が厳しくなるだろう。
それぞれが仕事をし、キュクロープスは大き目の金の斧とハイポーションを落として消えた。
金の斧は鋳潰して魔道具や装飾品に使われるらしい。
「金の斧って言ったら、イソップ物語思い出すなぁ」
田代の呟きに水の魔術師が反応する。
「俺達の世界の童話で湖に斧を落とした木こりが、湖の女神に聞かれるんだよ。金の斧を持ってあなたが落としたのはこれですか?って。木こりは違うと答える。
次に女神は銀の斧を持ってきて同じ様に聞くんだ」
「女神か。それで、その木こりは何と答えたんだい?」
「自分が落としたのは普通の木と鉄の斧だって答えたんだよ。その正直さに女神は金と銀の斧を含めた三本の斧を木こりに渡したんだ」
「正直であれ、という話なのか。なるほどね」
「続きがあるわよ」
坂下が話を続ける。
「それを聞いた欲張りな木こりが鉄の斧を湖に落とすの。同じ様に女神は金の斧を持って現れたけど、それを見て欲張りな木こりはそれだと答える。女神はその強欲さにそのまま何も渡さずに湖に消えたの。結局その木こりは自分の斧も失ったのよ」
「正直さだけを諭した訳ではないんだねぇ。良く出来てる物語だ」
水魔術師の少し芝居じみた言い方に皆が頷く。
「ライソン帝国で、そう言った話は無いの?」
陣野はマッシモに聞いてみると、「物語では無いけど…」と、親の言うことを聞かない子供には「精霊が攫いに来るぞ」と脅かすと言った話をしてきた。
「実際精霊術師含めた王国の連中が帝国人を攫っていたことは俺の故郷でも知られてる。行方不明者を確認する為に国境寄りの村や町で調査されたからね」
その話に水魔術師も参加する。
「ボクの故郷では『悪い子は精霊魔術師に売られる』って言われてたな。元々帝国は色んな国の寄せ集めみたいな国だし、それぞれの地域で民話として伝えられてる話はあるけど、ここ十数年は精霊魔術師を悪役にした物語が書かれてて、子供達にはそっちの方が有名かもしれないねぇ。
敢えて言えば、暗黒龍が出て来る民話があったよ。光龍や水龍、他の龍から仲間外れにされた傲慢な暗黒龍が悲しくて暴れるんだ。人間も恐れおののき益々暗黒龍は孤独になっていく。そこへ一人の少年が現れて友達になると言うんだ。
暗黒龍は初めは信じなかった。でも少年は暗黒龍に冷たくされながらも傍に居た。少しずつ暗黒龍は絆されて来たけど、少年は徐々に弱っていく。実は少年は親から口減らしで捨てられた子なんだ。
龍は住んでいる場所から魔力を摂取するから、特に食事を摂らなくても死ぬことは無い。だから暗黒龍は人間が食べないと死ぬことを知らなかった。
それからグッタリした少年を抱えて暗黒龍は泣きながら光龍へお願いする。光龍は少年を癒すが間に合わなかった。最後に少年は暗黒龍に『仲直り出来て良かったね。もう喧嘩しないで』と言って息を引き取る。暗黒龍はその少年の言葉を受け止め、それからは我儘を言わなくなったって話なんだけど」
「少年死んだの……」
陣野は顔をしかめる。
「まぁ、この話の言いたいことは、大切な者を失う前に行動しろってことだね」
「あれ、何かいきなりアッサリした話になった?」
「童話や寓話ってそんなものだよ。個人個人で感じることは違うだろうけど、人間にこんな事したら駄目だ、ああしたら良い事がある。みたいなことを諭す様な内容が多いし」
田代達やマッシモ達より年齢を重ねた哀愁を漂わせ、水魔術師は遠い目をする。
一体何があったんだ?と皆は苦笑いをする。
ダンジョンを出て、ギルドにアイテム売却と収納袋の返却を済ませ、田代達とマッシモ達は皇宮へ帰還することになった。
エリーナはカレーの手配の為に、バルカン王国に一旦帰るそうだ。
カレーのルーを皇宮宛てに送る手続きをしても、到着するには早くて一ヶ月ちょっとはかかるだろうとエリーナは言う。
「私も田代くんみたいに空飛べたら直ぐに帰れるんだけど、ここからバルカン王国の王都までは早い馬車でも二週間弱は掛かるからね」
ヴェズリー王国はライソン帝国の西にあるが、バルカン王国はライソン帝国の東に存在している。
帝国のほぼ真ん中に皇都があるとしても、帝国が大国過ぎて、かなり距離があるのだ。
「国境へ進軍する日がハッキリ決まってて余裕があるなら、僕が送るんだけどね」
田代がエリーナに言うが、エリーナは首を横に振る。
「貴方達はコンディションをベストな状態にしておかないと。帰ったら直ぐ送るから、楽しみにしておいて」
そう言って、エリーナはイケおじ回復術師にラランの事を改めて頼み、その日の馬車の最終便に乗って旅立って行った。
イケおじ回復術師は市井に住んでいるので、ラランと一緒に自宅方面へ行く馬車に乗り、他のメンバーは田代が動かす空飛ぶ絨毯で皇宮へ戻る。
そして戻ると直ぐに、ゴーレムの完成と進軍の予定を聞かされたのだった。
二日目、ダンジョンに潜り、中層階までスピードを上げながら下り、そこから少し先にある、エリーナの言ってたセーフティーゾーン(通称仮眠所)で交代で仮眠を取り、三日目にそのダンジョンのボス部屋にあっさり着いた。
下層階にはミノタウロスや一つ目の巨人のキュクロープスが出て来たが、田代の『結界』にどうすることも出来なかった。
ボスは黒いキュクロープスで、通常より更に大きかった。
陣野の『鼓舞』を発動。
それから田代の『結界』の盾でキュクロープスの気を引いて貰い、下半身を騎士達が斬り裂き、腕を坂下が斬り落とし、如月が鳩尾がボッコリ凹む位の拳を叩き込んだ。
痛みでキュクロープスが口を開いた所に水魔術師が水球を送り込み、エリーナが目に風矢を打ち放った。
蹴飛ばされてうずくまった騎士が居たが、素早く回復術師二人が術を掛け、内臓破裂で血を吹いていた騎士は一命を取り留めた。
彼は帰ったら訓練が厳しくなるだろう。
それぞれが仕事をし、キュクロープスは大き目の金の斧とハイポーションを落として消えた。
金の斧は鋳潰して魔道具や装飾品に使われるらしい。
「金の斧って言ったら、イソップ物語思い出すなぁ」
田代の呟きに水の魔術師が反応する。
「俺達の世界の童話で湖に斧を落とした木こりが、湖の女神に聞かれるんだよ。金の斧を持ってあなたが落としたのはこれですか?って。木こりは違うと答える。
次に女神は銀の斧を持ってきて同じ様に聞くんだ」
「女神か。それで、その木こりは何と答えたんだい?」
「自分が落としたのは普通の木と鉄の斧だって答えたんだよ。その正直さに女神は金と銀の斧を含めた三本の斧を木こりに渡したんだ」
「正直であれ、という話なのか。なるほどね」
「続きがあるわよ」
坂下が話を続ける。
「それを聞いた欲張りな木こりが鉄の斧を湖に落とすの。同じ様に女神は金の斧を持って現れたけど、それを見て欲張りな木こりはそれだと答える。女神はその強欲さにそのまま何も渡さずに湖に消えたの。結局その木こりは自分の斧も失ったのよ」
「正直さだけを諭した訳ではないんだねぇ。良く出来てる物語だ」
水魔術師の少し芝居じみた言い方に皆が頷く。
「ライソン帝国で、そう言った話は無いの?」
陣野はマッシモに聞いてみると、「物語では無いけど…」と、親の言うことを聞かない子供には「精霊が攫いに来るぞ」と脅かすと言った話をしてきた。
「実際精霊術師含めた王国の連中が帝国人を攫っていたことは俺の故郷でも知られてる。行方不明者を確認する為に国境寄りの村や町で調査されたからね」
その話に水魔術師も参加する。
「ボクの故郷では『悪い子は精霊魔術師に売られる』って言われてたな。元々帝国は色んな国の寄せ集めみたいな国だし、それぞれの地域で民話として伝えられてる話はあるけど、ここ十数年は精霊魔術師を悪役にした物語が書かれてて、子供達にはそっちの方が有名かもしれないねぇ。
敢えて言えば、暗黒龍が出て来る民話があったよ。光龍や水龍、他の龍から仲間外れにされた傲慢な暗黒龍が悲しくて暴れるんだ。人間も恐れおののき益々暗黒龍は孤独になっていく。そこへ一人の少年が現れて友達になると言うんだ。
暗黒龍は初めは信じなかった。でも少年は暗黒龍に冷たくされながらも傍に居た。少しずつ暗黒龍は絆されて来たけど、少年は徐々に弱っていく。実は少年は親から口減らしで捨てられた子なんだ。
龍は住んでいる場所から魔力を摂取するから、特に食事を摂らなくても死ぬことは無い。だから暗黒龍は人間が食べないと死ぬことを知らなかった。
それからグッタリした少年を抱えて暗黒龍は泣きながら光龍へお願いする。光龍は少年を癒すが間に合わなかった。最後に少年は暗黒龍に『仲直り出来て良かったね。もう喧嘩しないで』と言って息を引き取る。暗黒龍はその少年の言葉を受け止め、それからは我儘を言わなくなったって話なんだけど」
「少年死んだの……」
陣野は顔をしかめる。
「まぁ、この話の言いたいことは、大切な者を失う前に行動しろってことだね」
「あれ、何かいきなりアッサリした話になった?」
「童話や寓話ってそんなものだよ。個人個人で感じることは違うだろうけど、人間にこんな事したら駄目だ、ああしたら良い事がある。みたいなことを諭す様な内容が多いし」
田代達やマッシモ達より年齢を重ねた哀愁を漂わせ、水魔術師は遠い目をする。
一体何があったんだ?と皆は苦笑いをする。
ダンジョンを出て、ギルドにアイテム売却と収納袋の返却を済ませ、田代達とマッシモ達は皇宮へ帰還することになった。
エリーナはカレーの手配の為に、バルカン王国に一旦帰るそうだ。
カレーのルーを皇宮宛てに送る手続きをしても、到着するには早くて一ヶ月ちょっとはかかるだろうとエリーナは言う。
「私も田代くんみたいに空飛べたら直ぐに帰れるんだけど、ここからバルカン王国の王都までは早い馬車でも二週間弱は掛かるからね」
ヴェズリー王国はライソン帝国の西にあるが、バルカン王国はライソン帝国の東に存在している。
帝国のほぼ真ん中に皇都があるとしても、帝国が大国過ぎて、かなり距離があるのだ。
「国境へ進軍する日がハッキリ決まってて余裕があるなら、僕が送るんだけどね」
田代がエリーナに言うが、エリーナは首を横に振る。
「貴方達はコンディションをベストな状態にしておかないと。帰ったら直ぐ送るから、楽しみにしておいて」
そう言って、エリーナはイケおじ回復術師にラランの事を改めて頼み、その日の馬車の最終便に乗って旅立って行った。
イケおじ回復術師は市井に住んでいるので、ラランと一緒に自宅方面へ行く馬車に乗り、他のメンバーは田代が動かす空飛ぶ絨毯で皇宮へ戻る。
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