拉致られて箱庭掃除をやらされてます。~きっと犯人は闇の組織に違いない

那珂川

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違う、そうじゃない

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 マクセルさん、確か裁判所に行くから忙しいってことじゃなかったっけ?
 それにしては二時間ぐらいで又来たな。
 まさかそんなに早く来ると思っていなかった俺は、慌てて三人がけのソファー、紅茶、コーヒー、緑茶、それ用のティーカップ、マグカップ、湯呑み、そして茶菓子を注文。

 ソファー設置はお客さんであるマクセルさんがやってくれたし。やはり早め早めの行動って大事なんだな。

 しかし、ここは山の中だと勝手に思ってたけど、裁判所が近いのなら結構街寄りなんだろうか?

 それとマクセルさんの目線が俺の頭にあるのは仕方ない。
 俺もどうしていいのか分からない状態である。

 先程マクセルさんを見送りに庭に出たら黒い龍が空中に浮かんでいた。
 プロジェクションマッピングだと思っていたが、いきなり大粒の涙をボロボロと落とし始めたのを見て、頭の中が「?」で埋め尽くされた。

 きっとこれはテストか何かだろうと、慰める為に龍の鼻面を撫でていると猫であるローマンが間に飛び込んで来た。
 何やら龍に話し掛けているのは分かったが、俺には猫語は分からない。

 昔動画で宇宙語を話す猫と言うのを見たが、あんな感じだった。

 暫くその様子を見ていたら、新幹線サイズの黒い龍が、50cm程になった。そしてフワフワと近付き、俺の左腕に巻き付いた。
 これは「俺の左腕が闇の力で封じられたーーー!」と言わねばならん状況だろうか?
 そう思ったが、緩く巻き付いているだけで噛み付く様子も無いし、ローマンも宇宙語を話さなくなったので、取り敢えず家に戻ることにした。

 家に戻ってフルフェイスのメットを脱ぐと黒いミニ龍がビクリと身体を震わせパタリと床に落ちたので、俺は焦ってガラステーブルにミニ龍を横たわせた。
 そこへ小さいオッサンが現れ、小さなサングラスを持って来た。
 焦った俺はそのサングラスをミニ龍のセットする。ツルじゃなくてゴムバンドになっていたので、人間の様な耳が無くてもちゃんとセット出来た。
 いや、違う。俺はこの不可思議なことを何故当たり前の様に受け止めているのだろうか?
 意識が復活したミニ龍はフワリと浮き上がり、今度は俺の頭に巻き付いた。
 色が黒いと孫悟空の緊箍児と言うより、酔っ払ったオッサンがネクタイを巻いてる様に見える。
 まぁ、この子が落ち着くなら別にいいか。

 そうこうしてる内にマクセルさんがやって来たのだった。

「頭、大丈夫か?」

 そう言われると俺の頭が変になった様な感じに聞こえるな。

「気にならない訳では無いけど、居心地が良いらしいから」

「そうか」

 戸惑っているマクセルさんに何を飲むか聞くと、何でも良いと言われたので、緑茶と煎餅を出すと、ニッコリと笑みを浮かべ美味しそうに緑茶を飲んだ。
 マクセルさん、日本通なのかな?日本語堪能だし、煎餅もバリバリ食べてるな。

「時間を空けて来るつもりだったんだが、君の頭に居る子が気になってね。それで直ぐにやって来たんだ。その様子だとローマンは何の説明もしてないんだろう?」

「え?」

 マクセルさんの横に座っているローマンに視線を向けるとフイっと逸らされた。

 説明も何も、俺は猫語がハッキリ分かっている訳では無い。何となくこう思ってるんじゃないかとフンワリした感じで把握しているだけだ。

 マクセルさんて猫語が完全に分かるんだな。
 ハッ!そう言えば動物の気持ちが分かる外国人がテレビに出てたけど、あんな感じか?

「ローマン、いい加減彼に説明してやれ」

 マクセルさんが大きな溜息を吐くと、彼の横から声優バリの美声が流れて来た。

「潮時かぁ。仕方ない」

 え?ローマン、喋れるのか。凄いな。
 ん?俺、もっと驚いてもいいんじゃないだろうか?
 日本のアニメや漫画文化の影響なのか、動物が喋ることを普通に感じてしまうんだが。

「改めて自己紹介するよ。私はローマンザック。6番の管理人だ。君をここに連れて来た張本人でもある」

「え??俺をここに連れて来たのがローマン??一体どんな組織なんだ??」

「組織?うーんとね、君の了承も無しに連れて来たのは本当申し訳無いと思ってるんだけど、理由としては助けてくれた君の傍に居たかったことと、放置された23番が都合良くあったから」

 俺が助けたってことは、やはりローマンはあの時の猫なんだな。

「ローマンがあの時の猫だとして、何故急に居なくなったんだ?心配したんだぞ」

「え??あ、うん、あの時は時間が迫ってて。ほら、私も管理人であるから。それに喋る訳にはいかなかったからね」

 ローマンが俯いて悲しそうに話す。

「ごめん。責めたかった訳じゃなくて、本当に心配したんだ。猫は死ぬ姿を飼い主に見せないって聞くから、何処かで又怪我でもして帰れなくなってるんじゃないかと思って」

「違うよ!私は許されるならもっと居たかった」

「待て待てーーー!」

 マクセルさんが俺達の話に強引に入ってくる。

「重要なのはそこじゃない」

「「え?」」

「問題はその頭の闇龍だ」

「病み龍?」

 ええ?この子病気なのか??だから泣いてたり、力無く床に落ちたりしたのか??

「そんな!この子どうしたらいいんだ??」

「闇龍がそんな状態だと他の子達が嫉妬するぞ」

「嫉妬?良く分からないが病み龍なら放っておけないだろう」

「まぁ、君と闇龍との因縁も聞いてはいるが……ローマン、お前がサッサと説明しておかないからこんなことになるんだぞ?」

 病み龍って、身体は怪我してる様子は無かったし、内臓系か?いや、泣いていたから精神面かもしれない。
 この場合、動物病院に連れて行くべきだろうか?
 いや、俺はこの箱庭から出て良いのかすら分からない状況だ。
 一体どうしたらいいんだーー!

「え?何?何でそんな苦悶の表情になってんの?」

「マクセル、彼は多分まだ誤解してるんだと思うんだ。私が猫の姿で話しても、龍が居ても不思議に思って無いのに、まだここが地球だと思ってる」

「ええ?そんなことあるか?地球の、特に日本では異世界流行ってるんだろう?日本人ならここが異世界だって気付いても良いんじゃないか?」

「いや、私に言われても。さて、どう説明したらいいのやら」

「全面的にお前のせいだと思うが、普段の姿になったらどうだ?ここが異世界だと思うんじゃないか?」

「仕方ない。そうするしかないだろう」

 あれ?ローマンの姿が変わった。
 頭が猫で身体が人間だ。
 何かエジプトの壁画にそんな神様が描かれていたような……。
 でもあの神様って女神じゃなかった?
 どう見ても目の前に居るのは細マッチョだ。

 右にムキムキ、左に細マッチョ。
 俺の腹筋もどうにかせねばなるまい。
 この仕事を始めてから運動量が減った俺の腹は明らかにプヨンとしている。

 いや、今は病み龍だ。ネットで龍を診てくれる病気探さなきゃな。
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