冷徹公爵は、契約妻に亡き妻の愛を重ねる

白桃

文字の大きさ
9 / 9

第九話「深まる疑惑」

しおりを挟む
 レオンハルトとアリアは、領地内で聞き込み調査を始めた。魔物の出現場所や、目撃情報を集めていく。しかし、有力な情報はなかなか得られなかった。

「……やはり、手がかりは少ないですね」

 アリアが、疲れた様子で呟いた。レオンハルトも、焦燥感を覚えていた。

「ああ。だが、諦めるわけにはいかない」

 その時、一人の領民が、レオンハルトに近づいてきた。

「レオンハルト様、少し、お話が……」

 領民は、何かを恐れているように、周囲を気にしながら言った。

「構わない。何か知っていることがあるなら、教えてくれ」

 レオンハルトが促すと、領民は、震える声で語り始めた。

「……最近、森の奥で、怪しい光を見たんです。それと、今まで聞いたことのない、おぞましい唸り声も……」

「怪しい光?唸り声?」

 レオンハルトが尋ねると、領民は、頷いた。

「はい。夜になると、特に酷いんです。まるで、魔物が集まっているかのように……」

 領民の証言に、レオンハルトは、森の奥に何かがあると確信した。

「アリア、森の奥を調べてみる」

「分かりました」

 二人は、領民に案内され、森の奥へと向かった。そこは、昼間だというのに薄暗く、不気味な雰囲気が漂っていた。

「……ここです。この辺りで、光や唸り声を聞きました」

 領民が、震える声で言った。レオンハルトとアリアは、周囲を警戒しながら、森の奥へと進んでいった。

 やがて、二人は、開けた場所に出た。そこには、巨大な岩があり、その奥へと続く洞窟があった。

「……あれが、例の場所か?」

 レオンハルトが尋ねると、アリアは頷いた。

「おそらく。中に入ってみましょう」

 二人は、洞窟の中へと入っていった。洞窟の中は、ひんやりとして湿っぽく、不気味な音が響いていた。奥へと進んでいくと、やがて、開けた空間に出た。

 そこには、異様な光景が広がっていた。巨大な魔法陣が描かれ、その中心には、黒い靄のようなものが渦巻いている。そして、その周囲には、倒れた魔物たちの死骸が転がっていた。

「……これは」

 アリアが、驚愕の声を上げた。レオンハルトも、目の前の光景に息を呑んだ。

「……魔物を、操っていたのは、こいつか」

 レオンハルトは、黒い靄を見つめ、呟いた。

「レオンハルト様、あれは、禁忌の魔法の痕跡です」

 アリアが、警告するように言った。

「禁忌の魔法……?」

「はい。あれは、死者の魂を操り、魔物を使役する魔法です。古代に封印されたはずの、危険な魔法……」

 アリアの言葉に、レオンハルトは、背筋が凍りついた。誰が、何の目的で、こんな危険な魔法を?

 その時、黒い靄が、激しく動き出した。

「レオンハルト様!危ない!」

 アリアが叫んだ。黒い靄は、巨大な魔物の姿へと変化し、レオンハルトたちに襲いかかってきた。

 レオンハルトは、剣を抜き、魔物に応戦した。しかし、魔物は、強力な魔法を使い、レオンハルトたちを追い詰めていく。

「……くそっ、なんて力だ」

 レオンハルトは、額に汗を浮かべ、呟いた。アリアも、魔法で応戦するが、魔物の力は、想像を遥かに超えていた。

「レオンハルト様、ここは一度、退きましょう!」

 アリアが叫んだ。レオンハルトも、これ以上は危険だと判断し、アリアと共に洞窟から脱出した。

「……一体、何が起こっているんだ」

 レオンハルトは、洞窟から出ると、空を見上げた。そこには、不気味なほどに、黒い雲が広がっていた。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢は嫁き遅れていらっしゃる

夏菜しの
恋愛
 十七歳の時、生涯初めての恋をした。  燃え上がるような想いに胸を焦がされ、彼だけを見つめて、彼だけを追った。  しかし意中の相手は、別の女を選びわたしに振り向く事は無かった。  あれから六回目の夜会シーズンが始まろうとしている。  気になる男性も居ないまま、気づけば、崖っぷち。  コンコン。  今日もお父様がお見合い写真を手にやってくる。  さてと、どうしようかしら? ※姉妹作品の『攻略対象ですがルートに入ってきませんでした』の別の話になります。

王太子妃専属侍女の結婚事情

蒼あかり
恋愛
伯爵家の令嬢シンシアは、ラドフォード王国 王太子妃の専属侍女だ。 未だ婚約者のいない彼女のために、王太子と王太子妃の命で見合いをすることに。 相手は王太子の側近セドリック。 ところが、幼い見た目とは裏腹に令嬢らしからぬはっきりとした物言いのキツイ性格のシンシアは、それが元でお見合いをこじらせてしまうことに。 そんな二人の行く末は......。 ☆恋愛色は薄めです。 ☆完結、予約投稿済み。 新年一作目は頑張ってハッピーエンドにしてみました。 ふたりの喧嘩のような言い合いを楽しんでいただければと思います。 そこまで激しくはないですが、そういうのが苦手な方はご遠慮ください。 よろしくお願いいたします。

何も言わずメイドとして働いてこい!とポイされたら、成り上がり令嬢になりました

さち姫
恋愛
シャーリー・サヴォワは伯爵家の双子の妹として産まれた 。実の父と双子の姉、継母に毎日いじめられ、辛い日々を送っていた。特に綺麗で要領のいい双子の姉のいつも比べられ、卑屈になる日々だった。 そんな事ある日、父が、 何も言わず、メイドして働いてこい、 と会ったこともないのにウインザー子爵家に、ポイされる。 そこで、やっと人として愛される事を知る。 ウインザー子爵家で、父のお酒のおつまみとして作っていた料理が素朴ながらも大人気となり、前向きな自分を取り戻していく。 そこで知り合った、ふたりの男性に戸惑いながらも、楽しい三角関係が出来上がっていく。 やっと人間らしく過ごし始めたのに、邪魔をする家族。 その中で、ウインザー子爵の本当の姿を知る。 前に書いていたいた小説に加筆を加えました。ほぼ同じですのでご了承ください。 また、料理については個人的に普段作っているのをある程度載せていますので、深く突っ込むのはやめてくださいm(*_ _)m

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

婚約破棄された王太子妃候補ですが、私がいなければこの国は三年で滅びるそうです。

カブトム誌
恋愛
王太子主催の舞踏会。 そこで私は「無能」「役立たず」と断罪され、公開の場で婚約を破棄された。 魔力は低く、派手な力もない。 王家に不要だと言われ、私はそのまま国を追放されるはずだった。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 この国が長年繁栄してきた理由も、 魔獣の侵攻が抑えられていた真の理由も、 すべて私一人に支えられていたことを。 私が国を去ってから、世界は静かに歪み始める。 一方、追放された先で出会ったのは、 私の力を正しく理解し、必要としてくれる人々だった。 これは、婚約破棄された令嬢が“失われて初めて価値を知られる存在”だったと、愚かな王国が思い知るまでの物語。 ※ざまぁ要素あり/後半恋愛あり ※じっくり成り上がり系・長編

幼い頃に、大きくなったら結婚しようと約束した人は、英雄になりました。きっと彼はもう、わたしとの約束なんて覚えていない

ラム猫
恋愛
 幼い頃に、セリフィアはシルヴァードと出会った。お互いがまだ世間を知らない中、二人は王城のパーティーで時折顔を合わせ、交流を深める。そしてある日、シルヴァードから「大きくなったら結婚しよう」と言われ、セリフィアはそれを喜んで受け入れた。  その後、十年以上彼と再会することはなかった。  三年間続いていた戦争が終わり、シルヴァードが王国を勝利に導いた英雄として帰ってきた。彼の隣には、聖女の姿が。彼は自分との約束をとっくに忘れているだろうと、セリフィアはその場を離れた。  しかし治療師として働いているセリフィアは、彼の後遺症治療のために彼と対面することになる。余計なことは言わず、ただ彼の治療をすることだけを考えていた。が、やけに彼との距離が近い。  それどころか、シルヴァードはセリフィアに甘く迫ってくる。これは治療者に対する依存に違いないのだが……。 「シルフィード様。全てをおひとりで抱え込もうとなさらないでください。わたしが、傍にいます」 「お願い、セリフィア。……君が傍にいてくれたら、僕はまともでいられる」 ※糖度高め、勘違いが激しめ、主人公は鈍感です。ヒーローがとにかく拗れています。苦手な方はご注意ください。 ※『小説家になろう』様『カクヨム』様にも投稿しています。

前世の記憶しかない元侯爵令嬢は、訳あり大公殿下のお気に入り。(注:期間限定)

miy
恋愛
(※長編なため、少しネタバレを含みます) ある日目覚めたら、そこは見たことも聞いたこともない…異国でした。 ここは、どうやら転生後の人生。 私は大貴族の令嬢レティシア17歳…らしいのですが…全く記憶にございません。 有り難いことに言葉は理解できるし、読み書きも問題なし。 でも、見知らぬ世界で貴族生活?いやいや…私は平凡な日本人のようですよ?…無理です。 “前世の記憶”として目覚めた私は、現世の“レティシアの身体”で…静かな庶民生活を始める。 そんな私の前に、一人の貴族男性が現れた。 ちょっと?訳ありな彼が、私を…自分の『唯一の女性』であると誤解してしまったことから、庶民生活が一変してしまう。 高い身分の彼に関わってしまった私は、元いた国を飛び出して魔法の国で暮らすことになるのです。 大公殿下、大魔術師、聖女や神獣…等など…いろんな人との出会いを経て『レティシア』が自分らしく生きていく。 という、少々…長いお話です。 鈍感なレティシアが、大公殿下からの熱い眼差しに気付くのはいつなのでしょうか…? ※安定のご都合主義、独自の世界観です。お許し下さい。 ※ストーリーの進度は遅めかと思われます。 ※現在、不定期にて公開中です。よろしくお願い致します。 公開予定日を最新話に記載しておりますが、長期休載の場合はこちらでもお知らせをさせて頂きます。 ※ド素人の書いた3作目です。まだまだ優しい目で見て頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。 ※初公開から2年が過ぎました。少しでも良い作品に、読みやすく…と、時間があれば順次手直し(改稿)をしていく予定でおります。(現在、146話辺りまで手直し作業中) ※章の区切りを変更致しました。(9/22更新)

誰か私と結婚してくれ。〜婚活の邪魔をしていたのは公爵家の幼馴染みでした〜

こたきんぐ
恋愛
伯爵家の令嬢であるラティは、悩んでいた。 自分は今19歳…結婚適齢期の歳であるのにもかかわらず許嫁もいない、婚約者もいない、自分と結婚してくれる人がいない…。 そんな中幼馴染みである公爵家次期当主のレイが、21歳になったしとそろそろ結婚してしまいそう…!? レイは外面はいいし、能力も高い、爵位だって…きっと自分の父とレイの父が親友でなかったら自分たちは出会っていなかっただろう。 幼い頃と変わらず週に何度もレイが自宅にまで来て、自室でお互いの好物であるお酒を飲み会話を交わす…レイに婚約者が出来てしまったらそんな日が無くなることは間違いない。 今まで女の影が無かったことの方がおかしいレイに素敵な婚約者が出来て自分を置いて行く前に、自分が先にと、自分が傷つく前に先に結婚を…!そう、焦っていた。 何度も運ばれて来た縁談。しかしどれも失敗に終わり続け…? どうして!私のなにが悪いんだ!?…と酒を浴びながら机に突っ伏すラティを見てほほ笑むレイ。 ラティは気づかない。 その縁談を全て白紙に戻している元凶が、目の前で微笑む男だと。 _____ ・ふわっとした世界観にどうしてもなってしまうので広い心で見て頂ければ大変ありがたいです。 ・誤字脱字等あると思いますが、すみませんがいい感じに読んで頂ければありがたいです。

処理中です...