追放からの逆転溺愛 ~魔力ゼロの聖女は、実は最強の魔導士でした~

白桃

文字の大きさ
5 / 6

王都への帰還

しおりを挟む
 リリアナの魔力が完全に制御できるようになると、アシュフォードは、リリアナと共に王都へ戻ることを決意した。
 ユリウスやミレーヌ、そしてリリアナを追放した者たちに、真実を突きつけ、リリアナの名誉を回復するために。

 王都へ向かう道中、リリアナは不安と期待が入り混じった複雑な気持ちだった。
 自分を追放した人々に、再び会うことへの恐怖。
 そして、アシュフォードと共に、新しい未来を切り開くことへの希望。
 しかし、それ以上に、ユリウスたちに、自分の力を見せつけ、彼らの傲慢さを打ち砕きたいという、強い復讐心も芽生えていた。

「……大丈夫だ、リリアナ。俺が必ず君を守る。そして、君を貶めた者たちには、必ず報いを受けさせる」

 アシュフォードは、リリアナの不安を察し、優しく声をかけた。
 その言葉は、リリアナの心を温かく包み込んだ。
 そして、リリアナの復讐心を、静かに肯定してくれた。

 王都に到着した二人は、堂々と王宮へと向かった。
 衛兵たちは、突然現れたアシュフォードとリリアナに驚き、警戒したが、アシュフォードの圧倒的な魔力に、何も言うことができなかった。

 二人は、王宮の大広間へと案内された。
 そこには、ユリウスとミレーヌ、そして多くの貴族たちが集まっていた。
 今日は、ミレーヌの聖女就任の儀式が行われる予定だったのだ。

 リリアナの姿を見たユリウスは、驚愕の表情を浮かべた。

「……リリアナ……なぜ、お前がここに……」

 ユリウスは、信じられないものを見るような目で、リリアナを見つめた。
 その顔には、恐怖と困惑の色が浮かんでいた。

「……ユリウス殿下。私は、あなたに婚約破棄され、聖女の座を追放された身。しかし……」

 リリアナは、ユリウスの言葉を遮り、静かに魔力を解放した。
 その圧倒的な魔力に、ユリウスとミレーヌ、そして周囲の貴族たちは息を呑んだ。

 広間は、静寂に包まれた。
 誰もが、リリアナの魔力に圧倒され、言葉を失っていた。

「……私は、魔力を持たない聖女ではありません。……いえ、聖女などという枠には収まらない、強大な力を持つ魔導士なのです」

 リリアナは、力強く宣言した。
 その声は、広間中に響き渡り、全ての人々の心を揺さぶった。

 ミレーヌは、リリアナの魔力に圧倒され、顔面蒼白になっていた。
 彼女の自慢の魔力も、リリアナの前では、まるで小さな灯火のように頼りなく見えた。

「……そ、そんな……馬鹿な……! 魔力ゼロのあなたが、こんな力を……!」

 ミレーヌは、震える声で叫んだ。
 しかし、その声は、リリアナの圧倒的な存在感にかき消されていった。

「……ユリウス殿下、ミレーヌ様。あなた方は、私を無能だと嘲笑い、追放しましたね。……しかし、それが、どれほど愚かな行為だったか、今なら分かるでしょう?」

 リリアナは、冷たい視線をユリウスとミレーヌに向けた。
 その視線は、氷のように冷たく、二人を凍りつかせた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

触れると魔力が暴走する王太子殿下が、なぜか私だけは大丈夫みたいです

ちよこ
恋愛
異性に触れれば、相手の魔力が暴走する。 そんな宿命を背負った王太子シルヴェスターと、 ただひとり、触れても何も起きない天然令嬢リュシア。 誰にも触れられなかった王子の手が、 初めて触れたやさしさに出会ったとき、 ふたりの物語が始まる。 これは、孤独な王子と、おっとり令嬢の、 触れることから始まる恋と癒やしの物語

一夜限りの関係だったはずなのに、責任を取れと迫られてます。

甘寧
恋愛
魔女であるシャルロッテは、偉才と呼ばれる魔導師ルイースとひょんなことから身体の関係を持ってしまう。 だがそれはお互いに同意の上で一夜限りという約束だった。 それなのに、ルイースはシャルロッテの元を訪れ「責任を取ってもらう」と言い出した。 後腐れのない関係を好むシャルロッテは、何とかして逃げようと考える。しかし、逃げれば逃げるだけ愛が重くなっていくルイース… 身体から始まる恋愛模様◎ ※タイトル一部変更しました。

婚約破棄された王太子妃候補ですが、私がいなければこの国は三年で滅びるそうです。

カブトム誌
恋愛
王太子主催の舞踏会。 そこで私は「無能」「役立たず」と断罪され、公開の場で婚約を破棄された。 魔力は低く、派手な力もない。 王家に不要だと言われ、私はそのまま国を追放されるはずだった。 けれど彼らは、最後まで気づかなかった。 この国が長年繁栄してきた理由も、 魔獣の侵攻が抑えられていた真の理由も、 すべて私一人に支えられていたことを。 私が国を去ってから、世界は静かに歪み始める。 一方、追放された先で出会ったのは、 私の力を正しく理解し、必要としてくれる人々だった。 これは、婚約破棄された令嬢が“失われて初めて価値を知られる存在”だったと、愚かな王国が思い知るまでの物語。 ※ざまぁ要素あり/後半恋愛あり ※じっくり成り上がり系・長編

一級魔法使いになれなかったので特級厨師になりました

しおしお
恋愛
魔法学院次席卒業のシャーリー・ドットは、 「一級魔法使いになれなかった」という理由だけで婚約破棄された。 ――だが本当の理由は、ただの“うっかり”。 試験会場を間違え、隣の建物で行われていた 特級厨師試験に合格してしまったのだ。 気づけばシャーリーは、王宮からスカウトされるほどの “超一流料理人”となり、国王の胃袋をがっちり掴む存在に。 一方、学院首席で一級魔法使いとなった ナターシャ・キンスキーは、大活躍しているはずなのに―― 「なんで料理で一番になってるのよ!?  あの女、魔法より料理の方が強くない!?」 すれ違い、逃げ回り、勘違いし続けるナターシャと、 天然すぎて誤解が絶えないシャーリー。 そんな二人が、魔王軍の襲撃、国家危機、王宮騒動を通じて、 少しずつ距離を縮めていく。 魔法で国を守る最強魔術師。 料理で国を救う特級厨師。 ――これは、“敵でもライバルでもない二人”が、 ようやく互いを認め、本当の友情を築いていく物語。 すれ違いコメディ×料理魔法×ダブルヒロイン友情譚! 笑って、癒されて、最後は心が温かくなる王宮ラノベ、開幕です。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

「女のくせに強すぎて可愛げがない」と言われ婚約破棄された追放聖女は薬師にジョブチェンジします

紅城えりす☆VTuber
恋愛
*毎日投稿・完結保証・ハッピーエンド  どこにでも居る普通の令嬢レージュ。  冷気を放つ魔法を使えば、部屋一帯がや雪山に。  風魔法を使えば、山が吹っ飛び。  水魔法を使えば大洪水。  レージュの正体は無尽蔵の魔力を持つ、チート令嬢であり、力の強さゆえに聖女となったのだ。  聖女として国のために魔力を捧げてきたレージュ。しかし、義妹イゼルマの策略により、国からは追放され、婚約者からは「お前みたいな可愛げがないやつと結婚するつもりはない」と婚約者破棄されてしまう。  一人で泥道を歩くレージュの前に一人の男が現れた。 「その命。要らないなら俺にくれないか?」  彼はダーレン。理不尽な理由で魔界から追放された皇子であった。  もうこれ以上、どんな苦難が訪れようとも私はめげない!  ダーレンの助けもあって、自信を取り戻したレージュは、聖女としての最強魔力を駆使しながら薬師としてのセカンドライフを始める。  レージュの噂は隣国までも伝わり、評判はうなぎ登り。  一方、レージュを追放した帝国は……。

弟が悪役令嬢に怪我をさせられたのに、こっちが罰金を払うだなんて、そんなおかしな話があるの? このまま泣き寝入りなんてしないから……!

冬吹せいら
恋愛
キリア・モルバレスが、令嬢のセレノー・ブレッザに、顔面をナイフで切り付けられ、傷を負った。 しかし、セレノーは謝るどころか、自分も怪我をしたので、モルバレス家に罰金を科すと言い始める。 話を聞いた、キリアの姉のスズカは、この件を、親友のネイトルに相談した。 スズカとネイトルは、お互いの身分を知らず、会話する仲だったが、この件を聞いたネイトルが、ついに自分の身分を明かすことに。 そこから、話しは急展開を迎える……。

あっ、追放されちゃった…。

satomi
恋愛
ガイダール侯爵家の長女であるパールは精霊の話を聞くことができる。がそのことは誰にも話してはいない。亡き母との約束。 母が亡くなって喪も明けないうちに義母を父は連れてきた。義妹付きで。義妹はパールのものをなんでも欲しがった。事前に精霊の話を聞いていたパールは対処なりをできていたけれど、これは…。 ついにウラルはパールの婚約者である王太子を横取りした。 そのことについては王太子は特に魅力のある人ではないし、なんにも感じなかったのですが、王宮内でも噂になり、家の恥だと、家まで追い出されてしまったのです。 精霊さんのアドバイスによりブルハング帝国へと行ったパールですが…。

処理中です...