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第3話 文化祭の波乱
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春川高校の文化祭が近づいてきた。
教室は連日、準備の喧騒に包まれていて、2年B組は「メイド喫茶」をやることに決まったらしい。
誰が言い出したのかは知らないけど、美咲が「絶対楽しいって!」と目を輝かせてノリノリなのは確かだ。
「悠斗、衣装見てよ! これ着たら私、めっちゃ可愛くなると思わない?」
美咲が手に持ってるのは、まさにメイド服。
黒と白のフリルがたっぷりついたやつで、正直、想像しただけでちょっとドキッとする。
「う、うん、まあ……似合うんじゃない?」と返すのが精一杯だった。
美咲は「やった! じゃあ悠斗は執事ね!」と勝手に決めてくる。
「え、僕が?」
「だって、メイド喫茶に執事いないとバランス悪いじゃん!」
そうやってまた巻き込まれるのが僕の運命らしい。
結衣はというと、クラスの出し物には興味なさそうで、準備の間もずっと本を読んでる。
でも、美咲が「結衣ちゃんもメイドやってよ!」と絡みに行ったせいで、結局「手伝うだけなら」と渋々参加することになった。
文化祭当日。
校舎は生徒や保護者でごった返していて、2年B組の教室は予想以上に大盛況だった。
美咲はメイド服で「お客様、いらっしゃいませ~!」と元気に接客してるし、僕も無理やり着せられた執事服でトレーを運んでる。
慣れない蝶ネクタイが首に食い込んで地味に辛いけど、美咲が「悠斗、似合ってるよ!」と笑ってくれるから、まあ悪くない気分だ。
結衣はというと、メイド服は頑なに拒否して、普通の制服のまま裏方で注文をさばいてた。
でもそのクールな雰囲気と、時折見せる手際の良さが逆に目立ってて、男子生徒から「結衣さん、かっこいい……」なんて声が漏れていた。
「藤原さん、メイド服着ないの勿体ないね」と僕が何気なく言うと、結衣は一瞬俺を睨んで不満そうに口を開く。
「…あんなフリフリしたの、着るわけないでしょ」
「でも、意外と似合うかもよ?」
「冗談でも言わないで」
そのやり取りに、美咲がニヤニヤしながら割り込んできた。
「ねえ、悠斗ってば結衣ちゃんに優しいね。私にはもっと優しくしてくれてもいいよね?」
「え、別に普通だろ!」
「ふーん、そういうことにしとく!」
美咲のからかうような笑顔に、なぜかドキドキしてしまって、僕は慌ててトレーを持って逃げるように厨房に戻った。
*****
そんな感じで順調に進んでいたメイド喫茶だったけど、やっぱり波乱はやってくる。
昼過ぎ、教室に3年の翔太先輩が現れた。あの手紙騒動の張本人だ。
「おお、佐藤! 山崎! いい感じじゃん、このメイド喫茶!」
「先輩、来るなら注文してくださいよ」と僕が返すと、翔太先輩はニヤッと笑って、
「じゃあ、美咲ちゃんに特別サービスお願いしようかな~。」
「え、私?」と美咲が驚く中、先輩は「告白成功したお礼にさ、ちょっとハグとかどう?」と冗談っぽく言ってきた。
「いやいや、先輩、それはダメでしょ!」と僕が慌てて止めに入ると、美咲は笑いながら、
「悠斗、嫉妬?」
「ち、違っ……!」
言いかける前に、結衣が冷たく一言。
「田中先輩、騒ぐなら出てってください。」
その鋭い眼光に、翔太先輩は「うっ、怖っ!」と一歩下がった。
でもその場の空気が妙に和んで、みんなで笑いものになった。
ところが、そこに新たな火種が。
隣のクラスから、1年の後輩、松本葵(まつもとあおい)がふらっと入ってきた。
葵は小柄で、ツインテールがトレードマークの可愛い系で、学年問わずファンクラブ的な存在らしい。彼女が僕を見て、
「執事のお兄さん、かっこいいですね! 私にもお茶運んでください!」とニコッと笑った瞬間、教室の男子たちが「うおおお、葵ちゃんキター!」と騒ぎ始めた。
「え、僕?」と戸惑ってると、美咲が「ちょっと待った!」と割り込んできた。
「悠斗は私の専属執事だから、他の子に渡さないよ!」
「えーっ、ずるい!私もお願いしたい!」と葵が可愛く拗ねる。
そのやり取りを見てた結衣が、ため息まじりに呟く。
「佐藤くん、モテるね。呆れるくらい」
「いや、モテてないって!誤解だよ!」
そんなドタバタの中、翔太先輩が「よし、じゃあ俺が葵ちゃんの執事に立候補するぜ!」と乗り気になって、さらに混乱が増す。
結局、僕と美咲と結衣でなんとか場を収めて、葵には別の男子が対応することになったけど、美咲が「悠斗は私だけでいいよね?」と耳元で囁いてきたのが妙に気になってしまった。
*****
文化祭の終わり頃、片付けをしながら3人で教室に残ってた。
美咲は疲れたのか、机に突っ伏して「楽しかったけど疲れた~」と呟いてる。
結衣は黙々とゴミをまとめつつ口を開いた。
「思ったより騒がしかったね。」
「だろ? でも、藤原さんがいて助かったよ。冷静に仕切ってくれるから」
そう僕が言うと、結衣は少し照れたように目を逸らす。
「…別に。普通にやっただけ」
その控えめな反応が、なんか結衣らしいなと思った。
美咲がふと顔を上げて、
「ねえ、悠斗。文化祭楽しかったけどさ、私的には悠斗が他の子に取られそうでハラハラしたよ」
「え、取られるって……大げさだよ」
「ふーん、そうかなぁ?」
美咲の意味深な笑顔に、僕は言葉に詰まる。
結衣がチラッとこっちを見て、「山崎さん、心配性だね」と呟いたけど、その声に少し笑いが混じってた気がした。
文化祭はこうして幕を閉じたけど、なんだか僕の周りがますます騒がしくなりそうな予感がしてならなかった。
教室は連日、準備の喧騒に包まれていて、2年B組は「メイド喫茶」をやることに決まったらしい。
誰が言い出したのかは知らないけど、美咲が「絶対楽しいって!」と目を輝かせてノリノリなのは確かだ。
「悠斗、衣装見てよ! これ着たら私、めっちゃ可愛くなると思わない?」
美咲が手に持ってるのは、まさにメイド服。
黒と白のフリルがたっぷりついたやつで、正直、想像しただけでちょっとドキッとする。
「う、うん、まあ……似合うんじゃない?」と返すのが精一杯だった。
美咲は「やった! じゃあ悠斗は執事ね!」と勝手に決めてくる。
「え、僕が?」
「だって、メイド喫茶に執事いないとバランス悪いじゃん!」
そうやってまた巻き込まれるのが僕の運命らしい。
結衣はというと、クラスの出し物には興味なさそうで、準備の間もずっと本を読んでる。
でも、美咲が「結衣ちゃんもメイドやってよ!」と絡みに行ったせいで、結局「手伝うだけなら」と渋々参加することになった。
文化祭当日。
校舎は生徒や保護者でごった返していて、2年B組の教室は予想以上に大盛況だった。
美咲はメイド服で「お客様、いらっしゃいませ~!」と元気に接客してるし、僕も無理やり着せられた執事服でトレーを運んでる。
慣れない蝶ネクタイが首に食い込んで地味に辛いけど、美咲が「悠斗、似合ってるよ!」と笑ってくれるから、まあ悪くない気分だ。
結衣はというと、メイド服は頑なに拒否して、普通の制服のまま裏方で注文をさばいてた。
でもそのクールな雰囲気と、時折見せる手際の良さが逆に目立ってて、男子生徒から「結衣さん、かっこいい……」なんて声が漏れていた。
「藤原さん、メイド服着ないの勿体ないね」と僕が何気なく言うと、結衣は一瞬俺を睨んで不満そうに口を開く。
「…あんなフリフリしたの、着るわけないでしょ」
「でも、意外と似合うかもよ?」
「冗談でも言わないで」
そのやり取りに、美咲がニヤニヤしながら割り込んできた。
「ねえ、悠斗ってば結衣ちゃんに優しいね。私にはもっと優しくしてくれてもいいよね?」
「え、別に普通だろ!」
「ふーん、そういうことにしとく!」
美咲のからかうような笑顔に、なぜかドキドキしてしまって、僕は慌ててトレーを持って逃げるように厨房に戻った。
*****
そんな感じで順調に進んでいたメイド喫茶だったけど、やっぱり波乱はやってくる。
昼過ぎ、教室に3年の翔太先輩が現れた。あの手紙騒動の張本人だ。
「おお、佐藤! 山崎! いい感じじゃん、このメイド喫茶!」
「先輩、来るなら注文してくださいよ」と僕が返すと、翔太先輩はニヤッと笑って、
「じゃあ、美咲ちゃんに特別サービスお願いしようかな~。」
「え、私?」と美咲が驚く中、先輩は「告白成功したお礼にさ、ちょっとハグとかどう?」と冗談っぽく言ってきた。
「いやいや、先輩、それはダメでしょ!」と僕が慌てて止めに入ると、美咲は笑いながら、
「悠斗、嫉妬?」
「ち、違っ……!」
言いかける前に、結衣が冷たく一言。
「田中先輩、騒ぐなら出てってください。」
その鋭い眼光に、翔太先輩は「うっ、怖っ!」と一歩下がった。
でもその場の空気が妙に和んで、みんなで笑いものになった。
ところが、そこに新たな火種が。
隣のクラスから、1年の後輩、松本葵(まつもとあおい)がふらっと入ってきた。
葵は小柄で、ツインテールがトレードマークの可愛い系で、学年問わずファンクラブ的な存在らしい。彼女が僕を見て、
「執事のお兄さん、かっこいいですね! 私にもお茶運んでください!」とニコッと笑った瞬間、教室の男子たちが「うおおお、葵ちゃんキター!」と騒ぎ始めた。
「え、僕?」と戸惑ってると、美咲が「ちょっと待った!」と割り込んできた。
「悠斗は私の専属執事だから、他の子に渡さないよ!」
「えーっ、ずるい!私もお願いしたい!」と葵が可愛く拗ねる。
そのやり取りを見てた結衣が、ため息まじりに呟く。
「佐藤くん、モテるね。呆れるくらい」
「いや、モテてないって!誤解だよ!」
そんなドタバタの中、翔太先輩が「よし、じゃあ俺が葵ちゃんの執事に立候補するぜ!」と乗り気になって、さらに混乱が増す。
結局、僕と美咲と結衣でなんとか場を収めて、葵には別の男子が対応することになったけど、美咲が「悠斗は私だけでいいよね?」と耳元で囁いてきたのが妙に気になってしまった。
*****
文化祭の終わり頃、片付けをしながら3人で教室に残ってた。
美咲は疲れたのか、机に突っ伏して「楽しかったけど疲れた~」と呟いてる。
結衣は黙々とゴミをまとめつつ口を開いた。
「思ったより騒がしかったね。」
「だろ? でも、藤原さんがいて助かったよ。冷静に仕切ってくれるから」
そう僕が言うと、結衣は少し照れたように目を逸らす。
「…別に。普通にやっただけ」
その控えめな反応が、なんか結衣らしいなと思った。
美咲がふと顔を上げて、
「ねえ、悠斗。文化祭楽しかったけどさ、私的には悠斗が他の子に取られそうでハラハラしたよ」
「え、取られるって……大げさだよ」
「ふーん、そうかなぁ?」
美咲の意味深な笑顔に、僕は言葉に詰まる。
結衣がチラッとこっちを見て、「山崎さん、心配性だね」と呟いたけど、その声に少し笑いが混じってた気がした。
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