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また聖女!?
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「え? また聖女?」
王都を囲む城壁。
その入管の前で私は門兵のうんざりしたような言葉に出迎えられた。
「今日だけでもう十六人目だよ」
「それってどういうことなんですか?」
山奥のローエル村で、突然女神様から信託を受け『聖女の印』を授かった私、エリアロナ。
女神様から直々に『聖女』認定された事で村中の人々は大騒ぎ。
私も突然の事に驚きながらも、女神様に認められた事を誇りに思っていました。
村の蓄えの半分を使い切るほどの盛大な祭りの後、村を旅立った私は、十日ほどの旅路を経てやっと王都にたどり着いたのです。
あの日女神様から『王都へ行きなさい』という神託を受けた私は、胸いっぱいに期待と不安を詰め込んで門兵に声をかけたまでは良かったのですが……。
「六人って……え? しかも今日だけでって事は他にも?」
「そうだよ。ここのところ毎日のように『聖女の印』を持った聖女様がやってくるんだ」
「そんな……聖女は数十年に一人のはずでは」
私が教会で学んだ歴史では、数十年に一度だけ世界に何かしら危機が訪れるときに女神様が世界を救うために『聖女』を任命すると教えられました。
ですので私はこの世界を救うのだと気合いを入れてやって来たというのに。
「おいヘンリク。この子で何人目だ?」
門兵は何やら羊皮紙に書き込みをしている若い同僚に声をかけます。
ヘンリクと呼ばれた門兵は「えっと、ちょっと待ってください」と答えて、手元の羊皮紙の上に指を這わしてから大きな声で告げました。
「その子でちょうど五百人目の聖女様ですね」
「だってよ。五百人目とは切りが良い」
「ご……五百!?」
私はそのとんでもない数に絶句してしまいます。
世界の危機にただ一人現れるはずの『聖女』が同時に五百人も現れたというのです。
信じろという方が無理な話でしょう。
「みなさん嘘をついていらっしゃるなんてことは――」
「ないな。お前さんもそんな事は不可能だってことくらい知ってるだろ?」
「はい……そうでした」
私は左手の甲に浮かぶ『聖女の印』を撫でながら答えます。
この印は魔力を流し込むと七色に輝く不思議な印で、今まで同じような仕組みの魔法を作る事が出来たという話は聞いた事がありません。
ですので、七色に光る『聖女の印』を持つ者は、女神様から聖女として任命された者で間違いないのです。
「それで、私はどうすれば良いのでしょうか?」
「ああ、忘れてた。上から聖女様がやって来たら大聖堂に案内するように言われてるんだ」
「大聖堂ですか。話には聞いた事がありますけど、何処にあるのでしょう?」
私の問いかけに門兵はその手を開いた門の先に向け「あれだよ」と答えました。
彼の指さす先、王都の賑やかな町並みの向こうにひときわ大きな建物が見えます。
その更に奥にある王城とその建物だけが突出して威容を誇っているのです。
「あそこに向かえば良いのですね。ありがとうございます」
「聖女様に手を出そうとする罰当たりはいねぇと思うが、まぁ一応気をつけてな」
「はい」
女神の加護を受けている聖女。
その聖女に害をなそうとする者は、女神様から天罰を喰らうという話は誰もが知っているのです。
私が女の身一人で王都まで旅に出た理由もそこにあります。
現に途中で不信心な山賊に襲われたものの、私に手をかけようとした瞬間に、その山賊に晴天の空から稲光が落ちるという事もありました。
「初めて王都に来ましたが、まるでお祭りのように賑やかですね」
私はお上りさんよろしくキョロキョロと周りを見ながら大聖堂へ向かって歩いて行きます。
近づけば近づくほど大聖堂の大きさに驚きます。
「凄い」
大聖堂の前の広場にたどり着いた私は、目の前にそびえる大聖堂を見上げます。
そしてゆっくりと視線を降ろすと……。
「凄い」
大聖堂の前に沢山の『聖女』が列になっていたのです。
王都を囲む城壁。
その入管の前で私は門兵のうんざりしたような言葉に出迎えられた。
「今日だけでもう十六人目だよ」
「それってどういうことなんですか?」
山奥のローエル村で、突然女神様から信託を受け『聖女の印』を授かった私、エリアロナ。
女神様から直々に『聖女』認定された事で村中の人々は大騒ぎ。
私も突然の事に驚きながらも、女神様に認められた事を誇りに思っていました。
村の蓄えの半分を使い切るほどの盛大な祭りの後、村を旅立った私は、十日ほどの旅路を経てやっと王都にたどり着いたのです。
あの日女神様から『王都へ行きなさい』という神託を受けた私は、胸いっぱいに期待と不安を詰め込んで門兵に声をかけたまでは良かったのですが……。
「六人って……え? しかも今日だけでって事は他にも?」
「そうだよ。ここのところ毎日のように『聖女の印』を持った聖女様がやってくるんだ」
「そんな……聖女は数十年に一人のはずでは」
私が教会で学んだ歴史では、数十年に一度だけ世界に何かしら危機が訪れるときに女神様が世界を救うために『聖女』を任命すると教えられました。
ですので私はこの世界を救うのだと気合いを入れてやって来たというのに。
「おいヘンリク。この子で何人目だ?」
門兵は何やら羊皮紙に書き込みをしている若い同僚に声をかけます。
ヘンリクと呼ばれた門兵は「えっと、ちょっと待ってください」と答えて、手元の羊皮紙の上に指を這わしてから大きな声で告げました。
「その子でちょうど五百人目の聖女様ですね」
「だってよ。五百人目とは切りが良い」
「ご……五百!?」
私はそのとんでもない数に絶句してしまいます。
世界の危機にただ一人現れるはずの『聖女』が同時に五百人も現れたというのです。
信じろという方が無理な話でしょう。
「みなさん嘘をついていらっしゃるなんてことは――」
「ないな。お前さんもそんな事は不可能だってことくらい知ってるだろ?」
「はい……そうでした」
私は左手の甲に浮かぶ『聖女の印』を撫でながら答えます。
この印は魔力を流し込むと七色に輝く不思議な印で、今まで同じような仕組みの魔法を作る事が出来たという話は聞いた事がありません。
ですので、七色に光る『聖女の印』を持つ者は、女神様から聖女として任命された者で間違いないのです。
「それで、私はどうすれば良いのでしょうか?」
「ああ、忘れてた。上から聖女様がやって来たら大聖堂に案内するように言われてるんだ」
「大聖堂ですか。話には聞いた事がありますけど、何処にあるのでしょう?」
私の問いかけに門兵はその手を開いた門の先に向け「あれだよ」と答えました。
彼の指さす先、王都の賑やかな町並みの向こうにひときわ大きな建物が見えます。
その更に奥にある王城とその建物だけが突出して威容を誇っているのです。
「あそこに向かえば良いのですね。ありがとうございます」
「聖女様に手を出そうとする罰当たりはいねぇと思うが、まぁ一応気をつけてな」
「はい」
女神の加護を受けている聖女。
その聖女に害をなそうとする者は、女神様から天罰を喰らうという話は誰もが知っているのです。
私が女の身一人で王都まで旅に出た理由もそこにあります。
現に途中で不信心な山賊に襲われたものの、私に手をかけようとした瞬間に、その山賊に晴天の空から稲光が落ちるという事もありました。
「初めて王都に来ましたが、まるでお祭りのように賑やかですね」
私はお上りさんよろしくキョロキョロと周りを見ながら大聖堂へ向かって歩いて行きます。
近づけば近づくほど大聖堂の大きさに驚きます。
「凄い」
大聖堂の前の広場にたどり着いた私は、目の前にそびえる大聖堂を見上げます。
そしてゆっくりと視線を降ろすと……。
「凄い」
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