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傷心旅行への誘い
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「これで全部かしら」
今日中に荷物をまとめて出て行くように。
前日まで自分に傅いてくれていた侍女長に冷たくそう言われた私は、朝から私物を一生懸命まとめていた。
といっても元々この部屋に私物なんてものはほとんど無い。
大体のものは婚約者として、聖女として招かれてから王国側が用意したものだ。
こんなことになって「それなら全部貰っていくわね」という気持ちになれるわけも無く。
むしろ絶対施しなど受けるものかという気持ちで一杯だった。
「シルクなら部屋中のものを持って行くんだろうけど」
現に侍女長からはこの部屋のものは全て持って行って良いとは言われていた。
だがこれから先向かう教会に用意されている部屋はとても小さく、持って行けと言われても困るだけだ。
これも婚約破棄をされ、聖女の資格を剥奪された私への嫌がらせなのかも知れない。
「本当にこれだけで良いの?」
今、この部屋にいるのは私だけでは無かった。
もう一人、私の婚約破棄と強制退所の事を知って手伝いに来てくれた人物がいる。
彼女の名前はエスマ。
王都で唯一仲良くなった友達だ。
彼女も私と同じように地方から聖女候補として王都へ招集され、私たちは唯一の『聖女』の座を競った。
といっても当時はそんな話は聞かされておらず、聖女の力を持った者たちが集められてその力を調査するというお題目ではあったが。
「しっかしあの馬鹿王子、あんたほどの力の持ち主を捨ててわがまま娘に乗り換えるなんて、目が腐ってるよ」
「エスマ。誰かに聞かれたら大変なことになるわよ」
「大丈夫よ。さっき一度荷物を外に持って行ったとき、もうだれもいなかったから」
私が聖女になってこの部屋にやって来てからは、昼夜問わず部屋の前で次女が交代で待機をしていた。
それは護衛の意味もあるが、聖女からの呼び出しを常に受けとるためでもあった。
「そっか。もう私を守る必要も、呼び出しを待つ必要も無いから……」
「ったく。現金なものよね」
エスマはそう憤慨しながら私がまとめた荷物の一つを肩に担いだ。
彼女は細い見かけからは想像出来ないが、かなりの力持ちである。
この国を囲む山脈の中腹にある村で生まれ育った彼女は、日々重いものを持って険しい山を上り下りしていたらしい。
「そういえばセリア。あなた教会で神官の仕事を始めるのは30日くらいあとだったよね?」
「婚約破棄とか聖女から神官への手続きが色々あるからそれくらい掛かると聞いてるわ」
「だったらさ」
ぐいっとエスマは私に顔を近づけるとこんな提案を口にした。
「一度あたしの村に遊びに来ない? ちょうど里帰りしようと思ってた所だったし……体を動かしたら嫌なことも忘れられるかもよ」
今日中に荷物をまとめて出て行くように。
前日まで自分に傅いてくれていた侍女長に冷たくそう言われた私は、朝から私物を一生懸命まとめていた。
といっても元々この部屋に私物なんてものはほとんど無い。
大体のものは婚約者として、聖女として招かれてから王国側が用意したものだ。
こんなことになって「それなら全部貰っていくわね」という気持ちになれるわけも無く。
むしろ絶対施しなど受けるものかという気持ちで一杯だった。
「シルクなら部屋中のものを持って行くんだろうけど」
現に侍女長からはこの部屋のものは全て持って行って良いとは言われていた。
だがこれから先向かう教会に用意されている部屋はとても小さく、持って行けと言われても困るだけだ。
これも婚約破棄をされ、聖女の資格を剥奪された私への嫌がらせなのかも知れない。
「本当にこれだけで良いの?」
今、この部屋にいるのは私だけでは無かった。
もう一人、私の婚約破棄と強制退所の事を知って手伝いに来てくれた人物がいる。
彼女の名前はエスマ。
王都で唯一仲良くなった友達だ。
彼女も私と同じように地方から聖女候補として王都へ招集され、私たちは唯一の『聖女』の座を競った。
といっても当時はそんな話は聞かされておらず、聖女の力を持った者たちが集められてその力を調査するというお題目ではあったが。
「しっかしあの馬鹿王子、あんたほどの力の持ち主を捨ててわがまま娘に乗り換えるなんて、目が腐ってるよ」
「エスマ。誰かに聞かれたら大変なことになるわよ」
「大丈夫よ。さっき一度荷物を外に持って行ったとき、もうだれもいなかったから」
私が聖女になってこの部屋にやって来てからは、昼夜問わず部屋の前で次女が交代で待機をしていた。
それは護衛の意味もあるが、聖女からの呼び出しを常に受けとるためでもあった。
「そっか。もう私を守る必要も、呼び出しを待つ必要も無いから……」
「ったく。現金なものよね」
エスマはそう憤慨しながら私がまとめた荷物の一つを肩に担いだ。
彼女は細い見かけからは想像出来ないが、かなりの力持ちである。
この国を囲む山脈の中腹にある村で生まれ育った彼女は、日々重いものを持って険しい山を上り下りしていたらしい。
「そういえばセリア。あなた教会で神官の仕事を始めるのは30日くらいあとだったよね?」
「婚約破棄とか聖女から神官への手続きが色々あるからそれくらい掛かると聞いてるわ」
「だったらさ」
ぐいっとエスマは私に顔を近づけるとこんな提案を口にした。
「一度あたしの村に遊びに来ない? ちょうど里帰りしようと思ってた所だったし……体を動かしたら嫌なことも忘れられるかもよ」
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