婚約破棄で覚醒したポンコツ令嬢は、最強聖女として愛されます

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聖女の覚醒

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　翌朝、クラリスは決意を胸に、ソフィアの家を訪ねた。

「王立図書館に行きたいの。精霊の光について調べてみようと思うの」

　驚くソフィアに、クラリスは初めて自信に満ちた表情を見せた。

「私、ずっと自分の能力を恥じていたわ。でも、それは間違いだったのかもしれない。この能力には、何か意味があるはず」

　王立図書館には、一般には公開されていない秘密の書庫があった。伯爵令嬢である彼女の身分なら、そこへのアクセスも可能だ。

「ソフィア、協力してくれる？」

「もちろんよ、クラリス！」

　図書館の奥深くに足を踏み入れると、そこには誰もいなかった。古びた書物が並ぶ棚の間を進むうち、クラリスの目に見える精霊の光が次第に強くなっていった。

「あれ…」

　彼女は光に導かれるように、一冊の古い書物に手を伸ばした。

『聖女と精霊の契約』

　ページをめくるクラリスの手が震えた。そこには、彼女が見ている光と全く同じものが描かれていた。

「精霊の光が見えるのは…聖女の証だったの？」

　書物によれば、真の聖女は精霊と契約を結び、その力を借りることができるという。しかし、その力を完全に目覚めさせるためには、聖女自身が自分の運命を受け入れ、覚悟を決める必要があった。

「これって…私のことかもしれない」

　次のページには衝撃的な記述があった。

『王国が危機に瀕したとき、真の聖女が現れる。偽りの聖女が去り、新たな聖女が力を得るとき、王国に平和が訪れるだろう』

「偽りの聖女…ミアのこと？でも、彼女も本当は聖女の力を持っていたかもしれない…」

　クラリスはさらに読み進めた。書物によれば、聖女の力は自分自身を信じ、他者を助けようという強い意志によって覚醒するという。

「聖女の力…」

　彼女は目を閉じ、深く息を吸い込んだ。これまでの人生で、自分はずっと自分自身を疑い、自分の能力を恥じてきた。しかし、もしそれが特別な力の現れだとしたら？

　クラリスが目を開けると、彼女の周りを取り巻く精霊の光が、これまでになく明るく輝いていた。

「クラリス！あなた、輝いているわ！」

　ソフィアの声に、クラリスは我に返った。自分の手から柔らかな光が放たれていることに気づき、彼女は息を呑んだ。

「これが…聖女の力…？」

　その瞬間、クラリスの中で何かが覚醒した。温かな力が体中を巡り、心が澄み渡るような感覚。彼女はついに自分の真の姿を見つけた気がした。

「本当に王都を離れるの？」

　翌日、アレスフォード伯爵邸の門前で、ソフィアはクラリスを見送っていた。彼女は旅装束に身を包み、小さな馬車に荷物を積み込んでいた。

「ええ。この力の意味を知るためには、実際に人々を助けることから始めなければならないわ」

　クラリスの表情は、もはや婚約破棄されたときの絶望に満ちた少女のものではなかった。そこにあるのは、強い決意と静かな自信だった。

「でも、危険よ？特に最近は境界の村で魔物の出現が増えているって噂だわ」

「だからこそ、私の力が必要とされているの」

　クラリスはソフィアの手を握った。

「ありがとう、ソフィア。あなたがいなかったら、私はまだ部屋で泣いていたかもしれないわ」

「何言ってるの。私は何もしていないわ。あなたが強くなったのよ、クラリス」

　二人は固く抱き合った。

「もし、ロランやパトリシアに会ったら、何て言えばいい？」

「何も言わなくていいわ。きっとすぐに、私の噂が彼らの耳にも入るでしょうから」

　クラリスは微笑んだ。それはもはや、傷ついた微笑みではなく、自分の道を見つけた者の、凛とした微笑みだった。

「それでは、行ってくるわ」

　クラリスは馬車に乗り込み、王都の門をくぐった。彼女の心には不思議な高揚感があった。これまで「ポンコツ令嬢」と嘲笑されていた自分が、今、新たな一歩を踏み出そうとしている。

　王都を出て間もなく、彼女は馬車の窓から見える景色に気づいた。道の両側に並ぶ木々の間から、精霊の光が彼女を導くように輝いていた。

「私を導いているのね…」

　クラリスは目を閉じ、深く息を吸い込んだ。これから始まる旅路で、彼女が何を見つけるのか、まだ分からない。しかし、自分が正しい道を歩んでいることだけは確かだった。

「今度は私が、自分の力で人々を助ける番」

　彼女の周りを取り巻く精霊の光が、その決意に応えるように明るく瞬いた。

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