馬鹿王子にはもう我慢できません! 婚約破棄される前にこちらから婚約破棄を突きつけます

白桃

文字の大きさ
5 / 5

突然の来訪者

しおりを挟む
「お嬢様。お嬢様に会いにお客様がいらっしゃいました」

 扉の向こうからセバスの声が聞こえます。

「お客様……?」
「メアリー様、もしかすると先ほどお話ししたあの方かもしれません」

 私は慌ててベッドから飛び降りると「今行きますわ」と扉の向こうのセバスに声を掛けました。
 そしてそのままの勢いで部屋を出て行こうとすると――

「メアリー様、お待ちください」
「ぐえっ」

 アンの前を通り過ぎようとした瞬間、首根っこをつかまれ引き戻されてしまいました。

「その格好でお客様の前に出るおつもりですか?」

 アンにそう言われ自らの体を見下ろす。
 そして頭にも手を伸ばすと、かなり髪も服装も乱れていることに気がつきました。

 先ほどベッドに倒れ込んだせいでしょう。
 私はおずおずと備え付けられている鏡台の前に座ります。

「セバス様、お嬢様の支度が終わり次第向かいますので、応接室にてお待ちいただけますようお伝え願えますか?」
「わかりました。先方もあまり急がなくて良いと仰っておいででしたので、ごゆるりと身支度を」

 アンはセバスにそう伝えると私の髪を優しく整えていきます。
 あっというまに髪と服をベッドに倒れ込む前と同じように整えたアンは、最後に軽く私の肩に手を置いて「お美しいですよ」と耳元で囁くのです。

「アンったら、くすぐったいですわ。それに褒めても何も出ませんわよ」
「メアリー様の笑顔を見ることが出来ただけで十分ご褒美です。さぁ、お客様がお待ちですので行きましょう」

 私はからかうようなアンの言葉に少し頬を染めながら立ち上がると、彼女が開けてくれた扉から廊下へ進み出ました。
 私の部屋は二階。
 応接室は一階にありますので少し歩くことになります。

「少し天気が荒れてきそうですわね」
 
 窓の外。
 先ほどまで雲一つ無かった空が、今はもうすぐに泣き出しそう。

「何も起こらなければ良いのですけれど」
「不安になるお気持ちもわかりますが、天気などというものは気まぐれなもの。それが何か予感めいた物に感じるのは気のせいです」
「そうですね。少し私もいろんな事がありすぎたせいで疲れているのかもしれませんわ」

 そんな話をしながら私は階下の応接室の前へたどり着く。
 扉の前でアンが私より先に扉に手を掛けるとゆっくりと開いていった。

 一体お客様とは誰なのでしょう。
 アンの言っていた『あのお方』だとすれば私の味方なのでしょうけれど。

 ゆっくりと開いていく扉に、私は大きく深呼吸をして――

「えっ」

 そして開いた扉の向こうに立つ人物の笑顔に固まってしまいました。
 なぜならそこに立っていたのは――

「久しぶりだね、メアリー」
「ポール様!?」

 そう、扉の向こうで私を待っていたのは、私が婚約破棄の手紙を送りつけた馬鹿王子ポール=クリフォードその人だったのです。
しおりを挟む
感想 5

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(5件)

悔い
2025.09.08 悔い

これは・・・
なにかのリハビリとか?

解除
黒耀の響き
2025.07.08 黒耀の響き

よくわからなさ過ぎて読んで損した

解除
tyobi
2025.05.29 tyobi

オチの意味わからんにも程がある

解除

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢の涙

拓海のり
恋愛
公爵令嬢グレイスは婚約者である王太子エドマンドに卒業パーティで婚約破棄される。王子の側には、癒しの魔法を使え聖女ではないかと噂される子爵家に引き取られたメアリ―がいた。13000字の短編です。他サイトにも投稿します。

お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!

にのまえ
恋愛
 すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。  公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。  家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。  だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、  舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。

婚約者に「愛することはない」と言われたその日にたまたま出会った隣国の皇帝から溺愛されることになります。~捨てる王あれば拾う王ありですわ。

松ノ木るな
恋愛
 純真無垢な侯爵令嬢レヴィーナは、国の次期王であるフィリベールと固い絆で結ばれる未来を夢みていた。しかし王太子はそのような意思を持つ彼女を生意気だと疎み、気まぐれに婚約破棄を言い渡す。  伴侶と寄り添う幸せな未来を諦めた彼女は悲観し、井戸に身を投げたのだった。  あの世だと思って辿りついた先は、小さな貴族の家の、こじんまりとした食堂。そこには呑めもしないのに酒を舐め、身分社会に恨み節を唱える美しい青年がいた。  どこの家の出の、どの立場とも知らぬふたりが、一目で恋に落ちたなら。  たまたま出会って離れていてもその存在を支えとする、そんなふたりが再会して結ばれる初恋ストーリーです。

あなたのことなんて、もうどうでもいいです

もるだ
恋愛
舞踏会でレオニーに突きつけられたのは婚約破棄だった。婚約者の相手にぶつかられて派手に転んだせいで、大騒ぎになったのに……。日々の業務を押しつけられ怒鳴りつけられいいように扱われていたレオニーは限界を迎える。そして、気がつくと魔法が使えるようになっていた。 元婚約者にこき使われていたレオニーは復讐を始める。

婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました

日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。 だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。 もしかして、婚約破棄⁉

その婚約破棄喜んで

空月 若葉
恋愛
 婚約者のエスコートなしに卒業パーティーにいる私は不思議がられていた。けれどなんとなく気がついている人もこの中に何人かは居るだろう。  そして、私も知っている。これから私がどうなるのか。私の婚約者がどこにいるのか。知っているのはそれだけじゃないわ。私、知っているの。この世界の秘密を、ね。 注意…主人公がちょっと怖いかも(笑) 4話で完結します。短いです。の割に詰め込んだので、かなりめちゃくちゃで読みにくいかもしれません。もし改善できるところを見つけてくださった方がいれば、教えていただけると嬉しいです。 完結後、番外編を付け足しました。 カクヨムにも掲載しています。

後悔などありません。あなたのことは愛していないので。

あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」 婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。 理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。 証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。 初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。 だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。 静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。 「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」

もう終わってますわ

こもろう
恋愛
聖女ローラとばかり親しく付き合うの婚約者メルヴィン王子。 爪弾きにされた令嬢エメラインは覚悟を決めて立ち上がる。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。