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突然の来訪者
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「お嬢様。お嬢様に会いにお客様がいらっしゃいました」
扉の向こうからセバスの声が聞こえます。
「お客様……?」
「メアリー様、もしかすると先ほどお話ししたあの方かもしれません」
私は慌ててベッドから飛び降りると「今行きますわ」と扉の向こうのセバスに声を掛けました。
そしてそのままの勢いで部屋を出て行こうとすると――
「メアリー様、お待ちください」
「ぐえっ」
アンの前を通り過ぎようとした瞬間、首根っこをつかまれ引き戻されてしまいました。
「その格好でお客様の前に出るおつもりですか?」
アンにそう言われ自らの体を見下ろす。
そして頭にも手を伸ばすと、かなり髪も服装も乱れていることに気がつきました。
先ほどベッドに倒れ込んだせいでしょう。
私はおずおずと備え付けられている鏡台の前に座ります。
「セバス様、お嬢様の支度が終わり次第向かいますので、応接室にてお待ちいただけますようお伝え願えますか?」
「わかりました。先方もあまり急がなくて良いと仰っておいででしたので、ごゆるりと身支度を」
アンはセバスにそう伝えると私の髪を優しく整えていきます。
あっというまに髪と服をベッドに倒れ込む前と同じように整えたアンは、最後に軽く私の肩に手を置いて「お美しいですよ」と耳元で囁くのです。
「アンったら、くすぐったいですわ。それに褒めても何も出ませんわよ」
「メアリー様の笑顔を見ることが出来ただけで十分ご褒美です。さぁ、お客様がお待ちですので行きましょう」
私はからかうようなアンの言葉に少し頬を染めながら立ち上がると、彼女が開けてくれた扉から廊下へ進み出ました。
私の部屋は二階。
応接室は一階にありますので少し歩くことになります。
「少し天気が荒れてきそうですわね」
窓の外。
先ほどまで雲一つ無かった空が、今はもうすぐに泣き出しそう。
「何も起こらなければ良いのですけれど」
「不安になるお気持ちもわかりますが、天気などというものは気まぐれなもの。それが何か予感めいた物に感じるのは気のせいです」
「そうですね。少し私もいろんな事がありすぎたせいで疲れているのかもしれませんわ」
そんな話をしながら私は階下の応接室の前へたどり着く。
扉の前でアンが私より先に扉に手を掛けるとゆっくりと開いていった。
一体お客様とは誰なのでしょう。
アンの言っていた『あのお方』だとすれば私の味方なのでしょうけれど。
ゆっくりと開いていく扉に、私は大きく深呼吸をして――
「えっ」
そして開いた扉の向こうに立つ人物の笑顔に固まってしまいました。
なぜならそこに立っていたのは――
「久しぶりだね、メアリー」
「ポール様!?」
そう、扉の向こうで私を待っていたのは、私が婚約破棄の手紙を送りつけた馬鹿王子ポール=クリフォードその人だったのです。
扉の向こうからセバスの声が聞こえます。
「お客様……?」
「メアリー様、もしかすると先ほどお話ししたあの方かもしれません」
私は慌ててベッドから飛び降りると「今行きますわ」と扉の向こうのセバスに声を掛けました。
そしてそのままの勢いで部屋を出て行こうとすると――
「メアリー様、お待ちください」
「ぐえっ」
アンの前を通り過ぎようとした瞬間、首根っこをつかまれ引き戻されてしまいました。
「その格好でお客様の前に出るおつもりですか?」
アンにそう言われ自らの体を見下ろす。
そして頭にも手を伸ばすと、かなり髪も服装も乱れていることに気がつきました。
先ほどベッドに倒れ込んだせいでしょう。
私はおずおずと備え付けられている鏡台の前に座ります。
「セバス様、お嬢様の支度が終わり次第向かいますので、応接室にてお待ちいただけますようお伝え願えますか?」
「わかりました。先方もあまり急がなくて良いと仰っておいででしたので、ごゆるりと身支度を」
アンはセバスにそう伝えると私の髪を優しく整えていきます。
あっというまに髪と服をベッドに倒れ込む前と同じように整えたアンは、最後に軽く私の肩に手を置いて「お美しいですよ」と耳元で囁くのです。
「アンったら、くすぐったいですわ。それに褒めても何も出ませんわよ」
「メアリー様の笑顔を見ることが出来ただけで十分ご褒美です。さぁ、お客様がお待ちですので行きましょう」
私はからかうようなアンの言葉に少し頬を染めながら立ち上がると、彼女が開けてくれた扉から廊下へ進み出ました。
私の部屋は二階。
応接室は一階にありますので少し歩くことになります。
「少し天気が荒れてきそうですわね」
窓の外。
先ほどまで雲一つ無かった空が、今はもうすぐに泣き出しそう。
「何も起こらなければ良いのですけれど」
「不安になるお気持ちもわかりますが、天気などというものは気まぐれなもの。それが何か予感めいた物に感じるのは気のせいです」
「そうですね。少し私もいろんな事がありすぎたせいで疲れているのかもしれませんわ」
そんな話をしながら私は階下の応接室の前へたどり着く。
扉の前でアンが私より先に扉に手を掛けるとゆっくりと開いていった。
一体お客様とは誰なのでしょう。
アンの言っていた『あのお方』だとすれば私の味方なのでしょうけれど。
ゆっくりと開いていく扉に、私は大きく深呼吸をして――
「えっ」
そして開いた扉の向こうに立つ人物の笑顔に固まってしまいました。
なぜならそこに立っていたのは――
「久しぶりだね、メアリー」
「ポール様!?」
そう、扉の向こうで私を待っていたのは、私が婚約破棄の手紙を送りつけた馬鹿王子ポール=クリフォードその人だったのです。
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