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1:バー・クォーター
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店を出た時に、雨が降っていた。
マンションまで、さほどの距離でもない。
カオルは、傘を差すのも億劫な気がして、走って帰ろうとしたが。
──いや、思いの外、飲んじまったからな……。
行きつけのバーである〝クォーター〟には、いつもなら誰かしらの連れを伴って来るのだが。
今夜は、ムードが盛り上がったところで、水を差す電話が掛かってきた。
「カオルさん、ごめんね」
と言って、仕事モードで店を出て行ってしまった相手を追う気にもなれず──。
だからといって、すごすご帰る気分でもなかった。
故に、いつもより長く滞在することになってしまったのだ。
──あそこで帰ってりゃ、降られなかったんかね? 今日はとことんついてない……。
中に戻ってマスターに傘を借り、カオルは一歩踏み出した。
だが、店と店の間……路地とも言えない店の裏手に繋がる隙間に、ちらと人影がある。
そこには、クォーターでアルバイトをしている桐生がいた。
薄暗い路地に差し込むのは、通りの向こうの街灯の光だけ。
背が高い独特のシルエットゆえに、それが桐生と判ったが。
よく見ると、影は一つではない。
最初はゴミ出しでもしているのだろうと通り過ぎたカオルだが、二つ目のシルエットが〝誰だろう?〟と思ったら、思わず引き返していた。
自分が傘を借りた程度に、マスターは店内にいる。
クォーターにはマスターの他、従業員は桐生しかいない。
「初めてなんでしょ? 三万……いや五万出すよ。俺も誠意を見せたいからさ」
聞こえた声は、クォーターで何度か見かけた佐伯のものだ。
──あいつ、界隈でもあんまり性質の良くない噂しかないんだよなぁ。
カオルは傘を畳むと、サッと路地の奥に入っていった。
「桐生くん、待たせてわるかったね」
カオルの声掛けに、佐伯がギョッとした顔で振り返る。
「あ……、えっと、じゃあ……ね!」
取り出しかけていた財布をしまうと、佐伯はそそくさと立ち去った。
「あ、ごめんね。話に割り込んじゃって……」
ヘラッと謝るカオルに、桐生がぼそっと呟いた。
「……で……ですか……」
「え……? なに?」
「なんで、遮ったんですかっ!」
握りしめられ、震えている拳。
少し怒った口調と、歪んだ口元。
雨に濡れそぼったまま、桐生は仄暗い目をしてカオルを見ている。
「だって、きみみたいな将来有望な若者が、あんな与太者に喰い物にされるの、見過ごせなかったんだもの」
「どこが……、僕のどこが将来有望なんです? もう、アパートも追い出されて、寝る場所もなくて……」
桐生の頬を伝う水滴は、明らかに雨ではない。
少々面食らったカオルは、それでもすぐに我に返って、パンッと傘を開いた。
「よくわかんないけど……。とにかく冷えちゃうから。もっと落ち着いたところで話聞こっか?」
§
カオルの部屋は、クォーターからほど近い高層マンションの一室だ。
独り者で家族は居ない。
桐生を説得して連れ帰る前に、スマホから遠隔操作アプリで風呂を炊いておいた。
桐生が風呂に入っている間に、自分にコーヒーを、桐生にはインスタントのスープを用意しておく。
カオルのバスローブを着て出てきた桐生は、手足がつんつるてんだったが、雨で強張った表情はやや落ち着いていた。
──俺より二十センチはデカいからなぁ……。
濡れた服を着せるわけにいかないと思ったが、これは失敗だったな……と、カオルは反省した。
裾と袖からニュッと突き出している脛と前腕の線が、想像以上に綺麗な筋肉が付いた美しいラインを描いていて、少々目のやり場にも困る。
「これ、飲んで。えっと、腹は減ってる?」
「いえ……、ありがとうございます……」
ソファを勧めると、大人しく座る。
あの雨の中の激情が嘘のように、190センチ超えの体を縮こめるようにして、桐生は俯いていた。
岩永桐生。
クォーターに一年前からアルバイトとして入っている大学生だ。
マスターの四谷とは知り合い……よりは少し遠い、ツテがあるのだ……と言う。
曰く、苦学生で、給付型奨学金を受けられるだけの好成績を修め続け、国立大の法学部に通っている。
生活費を稼ぐために、件のツテでクォーターのバイトに入ったのだ……との話は、四谷から聞かされた。
「セイタカの可愛い子だからって、コナかけたら出入り禁止にするから!」
とは、マスターの口癖だ。
──佐伯は……出入り禁止だろうな……。
カップから立ち上る湯気を、ただ見つめているだけの桐生を、カオルはしばらく黙って見守っていた。
「あの……」
声を掛けられないことに痺れを切らしたのか、桐生が口を開く。
「なんだ?」
「なにも……聞かないんですか?」
「聞くよ。でも先に、それ飲んじゃいなよ」
「……ありがとうございます」
ようやくカップに口をつけた桐生の眉が、スープの温かさに緩んだかのように下がる。
「それで? 佐伯が口説いてたのは、想像の範疇だけど。マスターから、ああいう手合を相手にしちゃ駄目だって、言われてないの?」
「言われました……。でも、逆にそれならお金になるのかなって……」
「アパート追い出されたって言ってたけど、どうして?」
「家賃を三ヶ月……滞納しました」
「マスターに相談しなかったの?」
「……二度目なので……」
桐生が、キュッと唇を噛む。
クォーターの常連であるカオルは、この一年の桐生の働きを見ている。
口数は少ないが、熱心で生真面目。
マスターも随分可愛がっているが、それに甘える気配もなく、静かな佇まいと整った容姿も相まって、常連からの評判も良い。
「きみ、生活費を稼ぐためにクォーターでバイトしてるって聞いたけど……。仕送りはどうしたの?」
「ありません」
──まぁ、返済不要の奨学金狙うぐらいだから、なんか事情があるんかね?
カオルはコーヒーを飲みながら、少し考えた。
「マスターが、きみはとっても成績が良くて、気持ちの優しいコだから、すごく良い弁護士になるって言ってたけど……」
「………………」
カップを持つ手がかすかに震えて、俯いた顔からぽたぽたと雫が落ちた。
「あ、ごめん。泣かすつもりはなかったんだけど……」
「僕には……誰かの期待に応えられるような資質はありません……」
嗚咽をもらし、桐生は肩にかけていたバスタオルで顔を覆った。
しかし抑え込んだバスタオルの下から、更に嗚咽が漏れ出ている。
カオルは立ち上がると、桐生の隣に座り直して、頭をぽんぽんと慰めるように撫でた。
「資質なんてのは、やってみなきゃワカランもんだ。そう簡単に、否定から入るもんじゃない」
ブルブルと、桐生の頭が左右に揺れる。
「ん~、じゃあ、この部屋で住み込みのハウスキーパーさん出来る?」
カオルの言葉に、桐生は顔を上げた。
目元は真っ赤だが、驚きのあまり涙が引っ込んだらしい。
「え……?」
「だから、ハウスキーパー。三食の賄い付きで、給料は……相場はいくらだ?」
スマホを手に取り、カオルは検索をする。
「待ってください! いくらなんでも、そんなの危ないですよ!」
「あ、俺がきみに手を出すかもって? クォーターのお出入り禁止は手痛いから、それは無いよ。大丈夫」
「違います! 僕が……この家のものを持ち出して、売ったりとか……」
「するの?」
「いえ、しませんけど……」
「なら、いいじゃない」
「そうじゃなくて! そんな簡単に僕みたいなの、信用しちゃ駄目ですってことで……」
真剣に訴えてくる桐生の様子に、カオルは吹き出した。
「そこ、笑うところじゃありません!」
「いや~、きみみたいな真面目なコに、そんなこと言われてもねぇ」
「僕が真面目かどうかなんて、わからないじゃないですかっ!」
「クォーターでの働きぶりを見てりゃ、わかるよ。これでもちっちゃい会社経営してるし、それなりに面接とかして、人を見る目はあるつもりだよ」
視線をスマホに戻し、ざっくりと検索結果を確かめる。
「相場は月に二十万みたいだから、それでいい?」
「駄目です! 僕がちゃんと仕事ができるかどうかもわからないのに!」
「そう? じゃあ、お試しってことで十五万で様子見る?」
「駄目っ! 駄目ですっ! そんな泊めてもらって、食事まで付いて、お金をもらうなんてありえません!」
「ハウスキーパーなんだから、ちゃんと給料は貰わないと駄目だよ。後で口座教えて。給料は振り込みのほうが安全だからね」
「待って! 待ってください! なんで……なんで僕なんかを、そこまでして助けようとするんですか……。意味が、わかりません……」
押し留めるようにカオルの肩を掴み、桐生は必死の形相だ。
「うーん。クォーターにバイトに入った時から、可愛いなって思ってたし。そんなコが毎日、家で出迎えてくれたらって思うだけで、楽しいでしょ? 俺にとっては、それだけで充分かな?」
「それ、理由になってません」
「俺が良いと思えばいいじゃない。あ、部屋はそこを使って。とにかく湯冷めしても困るし、俺は酔ってるし、面倒な話は明日以降にしよう」
カオルは話を聞かず、戸惑う桐生を客室に押し込んだ。
戸口で一度だけ、桐生が振り返る。
カオルの背中を見て、何かを言いかけたが、結局そのまま扉を閉めた。
マンションまで、さほどの距離でもない。
カオルは、傘を差すのも億劫な気がして、走って帰ろうとしたが。
──いや、思いの外、飲んじまったからな……。
行きつけのバーである〝クォーター〟には、いつもなら誰かしらの連れを伴って来るのだが。
今夜は、ムードが盛り上がったところで、水を差す電話が掛かってきた。
「カオルさん、ごめんね」
と言って、仕事モードで店を出て行ってしまった相手を追う気にもなれず──。
だからといって、すごすご帰る気分でもなかった。
故に、いつもより長く滞在することになってしまったのだ。
──あそこで帰ってりゃ、降られなかったんかね? 今日はとことんついてない……。
中に戻ってマスターに傘を借り、カオルは一歩踏み出した。
だが、店と店の間……路地とも言えない店の裏手に繋がる隙間に、ちらと人影がある。
そこには、クォーターでアルバイトをしている桐生がいた。
薄暗い路地に差し込むのは、通りの向こうの街灯の光だけ。
背が高い独特のシルエットゆえに、それが桐生と判ったが。
よく見ると、影は一つではない。
最初はゴミ出しでもしているのだろうと通り過ぎたカオルだが、二つ目のシルエットが〝誰だろう?〟と思ったら、思わず引き返していた。
自分が傘を借りた程度に、マスターは店内にいる。
クォーターにはマスターの他、従業員は桐生しかいない。
「初めてなんでしょ? 三万……いや五万出すよ。俺も誠意を見せたいからさ」
聞こえた声は、クォーターで何度か見かけた佐伯のものだ。
──あいつ、界隈でもあんまり性質の良くない噂しかないんだよなぁ。
カオルは傘を畳むと、サッと路地の奥に入っていった。
「桐生くん、待たせてわるかったね」
カオルの声掛けに、佐伯がギョッとした顔で振り返る。
「あ……、えっと、じゃあ……ね!」
取り出しかけていた財布をしまうと、佐伯はそそくさと立ち去った。
「あ、ごめんね。話に割り込んじゃって……」
ヘラッと謝るカオルに、桐生がぼそっと呟いた。
「……で……ですか……」
「え……? なに?」
「なんで、遮ったんですかっ!」
握りしめられ、震えている拳。
少し怒った口調と、歪んだ口元。
雨に濡れそぼったまま、桐生は仄暗い目をしてカオルを見ている。
「だって、きみみたいな将来有望な若者が、あんな与太者に喰い物にされるの、見過ごせなかったんだもの」
「どこが……、僕のどこが将来有望なんです? もう、アパートも追い出されて、寝る場所もなくて……」
桐生の頬を伝う水滴は、明らかに雨ではない。
少々面食らったカオルは、それでもすぐに我に返って、パンッと傘を開いた。
「よくわかんないけど……。とにかく冷えちゃうから。もっと落ち着いたところで話聞こっか?」
§
カオルの部屋は、クォーターからほど近い高層マンションの一室だ。
独り者で家族は居ない。
桐生を説得して連れ帰る前に、スマホから遠隔操作アプリで風呂を炊いておいた。
桐生が風呂に入っている間に、自分にコーヒーを、桐生にはインスタントのスープを用意しておく。
カオルのバスローブを着て出てきた桐生は、手足がつんつるてんだったが、雨で強張った表情はやや落ち着いていた。
──俺より二十センチはデカいからなぁ……。
濡れた服を着せるわけにいかないと思ったが、これは失敗だったな……と、カオルは反省した。
裾と袖からニュッと突き出している脛と前腕の線が、想像以上に綺麗な筋肉が付いた美しいラインを描いていて、少々目のやり場にも困る。
「これ、飲んで。えっと、腹は減ってる?」
「いえ……、ありがとうございます……」
ソファを勧めると、大人しく座る。
あの雨の中の激情が嘘のように、190センチ超えの体を縮こめるようにして、桐生は俯いていた。
岩永桐生。
クォーターに一年前からアルバイトとして入っている大学生だ。
マスターの四谷とは知り合い……よりは少し遠い、ツテがあるのだ……と言う。
曰く、苦学生で、給付型奨学金を受けられるだけの好成績を修め続け、国立大の法学部に通っている。
生活費を稼ぐために、件のツテでクォーターのバイトに入ったのだ……との話は、四谷から聞かされた。
「セイタカの可愛い子だからって、コナかけたら出入り禁止にするから!」
とは、マスターの口癖だ。
──佐伯は……出入り禁止だろうな……。
カップから立ち上る湯気を、ただ見つめているだけの桐生を、カオルはしばらく黙って見守っていた。
「あの……」
声を掛けられないことに痺れを切らしたのか、桐生が口を開く。
「なんだ?」
「なにも……聞かないんですか?」
「聞くよ。でも先に、それ飲んじゃいなよ」
「……ありがとうございます」
ようやくカップに口をつけた桐生の眉が、スープの温かさに緩んだかのように下がる。
「それで? 佐伯が口説いてたのは、想像の範疇だけど。マスターから、ああいう手合を相手にしちゃ駄目だって、言われてないの?」
「言われました……。でも、逆にそれならお金になるのかなって……」
「アパート追い出されたって言ってたけど、どうして?」
「家賃を三ヶ月……滞納しました」
「マスターに相談しなかったの?」
「……二度目なので……」
桐生が、キュッと唇を噛む。
クォーターの常連であるカオルは、この一年の桐生の働きを見ている。
口数は少ないが、熱心で生真面目。
マスターも随分可愛がっているが、それに甘える気配もなく、静かな佇まいと整った容姿も相まって、常連からの評判も良い。
「きみ、生活費を稼ぐためにクォーターでバイトしてるって聞いたけど……。仕送りはどうしたの?」
「ありません」
──まぁ、返済不要の奨学金狙うぐらいだから、なんか事情があるんかね?
カオルはコーヒーを飲みながら、少し考えた。
「マスターが、きみはとっても成績が良くて、気持ちの優しいコだから、すごく良い弁護士になるって言ってたけど……」
「………………」
カップを持つ手がかすかに震えて、俯いた顔からぽたぽたと雫が落ちた。
「あ、ごめん。泣かすつもりはなかったんだけど……」
「僕には……誰かの期待に応えられるような資質はありません……」
嗚咽をもらし、桐生は肩にかけていたバスタオルで顔を覆った。
しかし抑え込んだバスタオルの下から、更に嗚咽が漏れ出ている。
カオルは立ち上がると、桐生の隣に座り直して、頭をぽんぽんと慰めるように撫でた。
「資質なんてのは、やってみなきゃワカランもんだ。そう簡単に、否定から入るもんじゃない」
ブルブルと、桐生の頭が左右に揺れる。
「ん~、じゃあ、この部屋で住み込みのハウスキーパーさん出来る?」
カオルの言葉に、桐生は顔を上げた。
目元は真っ赤だが、驚きのあまり涙が引っ込んだらしい。
「え……?」
「だから、ハウスキーパー。三食の賄い付きで、給料は……相場はいくらだ?」
スマホを手に取り、カオルは検索をする。
「待ってください! いくらなんでも、そんなの危ないですよ!」
「あ、俺がきみに手を出すかもって? クォーターのお出入り禁止は手痛いから、それは無いよ。大丈夫」
「違います! 僕が……この家のものを持ち出して、売ったりとか……」
「するの?」
「いえ、しませんけど……」
「なら、いいじゃない」
「そうじゃなくて! そんな簡単に僕みたいなの、信用しちゃ駄目ですってことで……」
真剣に訴えてくる桐生の様子に、カオルは吹き出した。
「そこ、笑うところじゃありません!」
「いや~、きみみたいな真面目なコに、そんなこと言われてもねぇ」
「僕が真面目かどうかなんて、わからないじゃないですかっ!」
「クォーターでの働きぶりを見てりゃ、わかるよ。これでもちっちゃい会社経営してるし、それなりに面接とかして、人を見る目はあるつもりだよ」
視線をスマホに戻し、ざっくりと検索結果を確かめる。
「相場は月に二十万みたいだから、それでいい?」
「駄目です! 僕がちゃんと仕事ができるかどうかもわからないのに!」
「そう? じゃあ、お試しってことで十五万で様子見る?」
「駄目っ! 駄目ですっ! そんな泊めてもらって、食事まで付いて、お金をもらうなんてありえません!」
「ハウスキーパーなんだから、ちゃんと給料は貰わないと駄目だよ。後で口座教えて。給料は振り込みのほうが安全だからね」
「待って! 待ってください! なんで……なんで僕なんかを、そこまでして助けようとするんですか……。意味が、わかりません……」
押し留めるようにカオルの肩を掴み、桐生は必死の形相だ。
「うーん。クォーターにバイトに入った時から、可愛いなって思ってたし。そんなコが毎日、家で出迎えてくれたらって思うだけで、楽しいでしょ? 俺にとっては、それだけで充分かな?」
「それ、理由になってません」
「俺が良いと思えばいいじゃない。あ、部屋はそこを使って。とにかく湯冷めしても困るし、俺は酔ってるし、面倒な話は明日以降にしよう」
カオルは話を聞かず、戸惑う桐生を客室に押し込んだ。
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