暁闇の騎士

琉斗六

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「同盟連邦評議会は、魔人の全てが根絶やしにされたわけじゃないことを理由に、きみの不死性を研究したいと団長を説得した。だが団長は常に部下が死体で戻って来るような作戦実行する組織を作ることを由としなかった」
「それはあのかたなら、当然だろうな」
「そしたら同盟連邦評議会は、邪魔な中間管理職に適当な理由と責任をおっつけて、片付けた……というわけだ」

 眉をひそめるミスティに、ダスクは肩をすくめてみせる。

「だが、そんな同盟連邦評議会の思惑とは別に、現在のクリスタルナイトは、歴代と違って、ただの脳筋バカじゃなかった」
「つまり、クリスも僕の引き渡しをことわった?」
「断るも何も、きみは "行方不明" じゃないか」
「そうか……。それで、僕はここにいるのか……」
「そんな単純な話じゃない」

 ダスクの答えに、ミスティは首を傾げた。

「そもそも転送陣に "仕掛け" をしたのは、同盟連邦評議会側だってことだ」
「そんなことをしたら、僕……いや "検体" が失われるじゃないか」
「きみの属性は特殊だろう? 転送陣に仕掛けをして、きみだけをピックアップするのは、わりと簡単なんだよ」
「じゃあ、他の兵士は最初から犠牲になる予定だったと? それをクリスはめなかったのかっ?!」
「どうやって?」
「どう……って、転送陣に異常があるって分かってたなら……」
「言ったら終わりよ。あの転送陣は、ルミナリア貴族の "帰還祝い" 。建前でも口を挟めば、反逆と見なされるわ」
「向こうにしてみりゃ、口を挟んでクリスを物理的にクビにできるなら、万々歳ばんばんざいだっただろうがな」

 冗談めかして言ったダスクの顔に、冗談ではない影が落ちていた。
 ミスティとて、分かっている。
 ラディアントなどと呼ばれていても、一騎士に過ぎない自分たちは、戦場での指揮権があっても、政治的な発言権は無いのだ。
 それでも、無辜の兵士の多大な犠牲をめられなかった悔しさが滲む。

「だが、多大な犠牲を出したにも関わらず、肝心のきみは手に入らなかった。しかもなぜか公式発表で、事故に巻き込まれたもののリストに、きみの名も記載された」
「……それは、クリスが僕を "荷物" として浮遊城に連れ戻したから……か?」
「そうだ」
「つまり、僕を欲しがってる相手は、僕が生きてることを知ってるんだな」
「そうなるな。そして次なる一手として、ラディアントを解散すると言い出した」
「クリスは、どうしたんだ?」
「個人がどう対処をするか……なんて、話じゃない。最大の英雄たるミステリーナイトの喪失、突然の騎士団長グリントの更迭、更にラディアントを全部解雇すると言われて、今まで必死に戦ってきた騎士や兵士が、黙ってると思うか?」
「……反乱……か?」
「クリスは、混乱に乗じてあなたの行方をくらませる計画をたてたの。それが浮遊城の自爆よ」

 ダイアナは、そこで言葉をつまらせた。

「どうした……?」
「プランAは、オートモードで自爆をセット、ダイアナと同時にクリスも退去する予定だった」
「最初から、嘘だったのよ! クリスは、反乱鎮圧を装ってルミナリア貴族の私兵が派遣されると、最初から知っていた! それでも自爆をめさせないために、浮遊城にひとりで立てこもったのよ」
「しかし、僕を飛竜で連れ出すように指示したのは、クリスなんだろう?」
「そうよ! チェンバーなら、あなたの特殊な属性も感知されずに連れ出せるからって……。そして、あっちには内部に未だあなたがいると思い込ませて……。クリスは、敵を出来るだけ引き付けるほうを選択したの!」

 怒りに任せるように、ダイアナが叫んだ。
 しばしの沈黙の後、ミスティは口を開いた。

「なぜ…死なない僕をかばって…クリスが死ななければならないんだ?」

 ミスティは、それが当然の問いだと信じていた。
 だからこそ、ダイアナの怒りも、悲しみも、まるで別の言語のように思えた。

「……わからないの?」

 ダイアナの問いに頷くと、彼女は呆れ、それから少し怒りをにじませた顔でミスティを睨んだが。
 それもすぐに消え、ただ憐れむような色を瞳に浮かべた。

「本当に、生真面目で可哀想ね、あなた……」
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