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クリスは黙ってグラスを傾けながら、向かいのミスティが、あの夜の出来事に全く触れようとしないことが気になっていた。
抵抗はされなかったが、完全に同意してからというわけでもなく。
乱暴に、傷つけただけだ。
──まだ、謝ってすらいないのに。
その言葉は、声にはならず、グラスの底に沈んでいった。
「きみは……」
「なんだ?」
「記憶は、あるんだろう?」
ソファの縁に座るミスティが、ゆるく頷いた。
「ある。ルーファ・カルテムとして生きてきた記憶は、全部。でも今の僕は、不死身だし……」
彼は一息ついてから続けた。
「他のネクシオンは魔物の本能に従ってる。なのに……なんで僕だけ、戻ってこれたんだろう?」
問いかけは、独白に近かった。
「……いや、そもそも "戻って" これたのか? 僕は、単に "おかしくなっただけ" なんじゃないかって思う時もある」
その言葉に、クリスは思わず息を止めた。
「おいおい、今さらそんな怖いことを言うなよ」
「本当の話しさ」
ミスティは苦笑して、グラスの中身を見つめた。
琥珀色の液体が、何かを映し出しているように見えた。
「……でも、人間も、同盟連邦評議会も、僕を必要としてくれている。たとえ僕が模倣であっても、本当の "ルーファ・カルテム" じゃなくても。いや、僕が "誰" であるかなんて、もう求められてないのかもしれないな。ただ不死身の戦力として、役に立てばいいと」
クリスの胸の奥で、静かにひとつの支えが折れた気がした。
誰であってもいい。
個人である必要はない。
そう言い切るミスティの声は、静かで、残酷だった。
喉が焼けるようだった。
酒の所為ではない。
気づけばクリスは、ソファにいるミスティを押し倒していた。
何も言わずに、唇を重ねる。
ミスティの体はわずかに硬直した。
けれど、それ以上の抵抗はなかった。
拒まれたわけでもなく、受け入れられたわけでもない。
唇が離れると、ミスティは微かに目を細めた。
「……きみは、いつも唐突だな」
穏やかな声音だった。
ただ、その奥には何もなかった。
表情は薄く笑っている。
だがそれは、どこかズレたタイミングで微笑む、精密な機械のようだった。
クリスの胸が、軋む音を立てていた。
抵抗はされなかったが、完全に同意してからというわけでもなく。
乱暴に、傷つけただけだ。
──まだ、謝ってすらいないのに。
その言葉は、声にはならず、グラスの底に沈んでいった。
「きみは……」
「なんだ?」
「記憶は、あるんだろう?」
ソファの縁に座るミスティが、ゆるく頷いた。
「ある。ルーファ・カルテムとして生きてきた記憶は、全部。でも今の僕は、不死身だし……」
彼は一息ついてから続けた。
「他のネクシオンは魔物の本能に従ってる。なのに……なんで僕だけ、戻ってこれたんだろう?」
問いかけは、独白に近かった。
「……いや、そもそも "戻って" これたのか? 僕は、単に "おかしくなっただけ" なんじゃないかって思う時もある」
その言葉に、クリスは思わず息を止めた。
「おいおい、今さらそんな怖いことを言うなよ」
「本当の話しさ」
ミスティは苦笑して、グラスの中身を見つめた。
琥珀色の液体が、何かを映し出しているように見えた。
「……でも、人間も、同盟連邦評議会も、僕を必要としてくれている。たとえ僕が模倣であっても、本当の "ルーファ・カルテム" じゃなくても。いや、僕が "誰" であるかなんて、もう求められてないのかもしれないな。ただ不死身の戦力として、役に立てばいいと」
クリスの胸の奥で、静かにひとつの支えが折れた気がした。
誰であってもいい。
個人である必要はない。
そう言い切るミスティの声は、静かで、残酷だった。
喉が焼けるようだった。
酒の所為ではない。
気づけばクリスは、ソファにいるミスティを押し倒していた。
何も言わずに、唇を重ねる。
ミスティの体はわずかに硬直した。
けれど、それ以上の抵抗はなかった。
拒まれたわけでもなく、受け入れられたわけでもない。
唇が離れると、ミスティは微かに目を細めた。
「……きみは、いつも唐突だな」
穏やかな声音だった。
ただ、その奥には何もなかった。
表情は薄く笑っている。
だがそれは、どこかズレたタイミングで微笑む、精密な機械のようだった。
クリスの胸が、軋む音を立てていた。
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