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「くそっ! 考えてみれば、最悪な思い出以外、ないじゃないか……」
自嘲すら、もう出てこない。
だが、ここで泣くのは、卑怯に思える。
ミスティが再生することは、頭では分かっていた。
爆発に巻き込まれ、致命的な傷を負った時も、数時間後には一緒に食事をしにいったこともあった。
ここで後悔の涙をこぼすなら、シャワールームで強引なキスをした時、すぐにも体を離して謝罪をするべきだった。
彼の、少年らしさを残す顔に、微かな驚きと頬に赤みが挿したように見えたあの時。
クリスの肩に当てられた手が、抵抗を見せなかった。
それもあって、自分は感情のコントロールを失ってしまったのだ。
それから、ミスティが再生を繰り返すたびに、スヴェンは彼に触れた。
肌を重ね、煽り立てることで──彼が乱れることで、彼の感情の起伏を取り戻せるような気がして……。
ミスティの反応は、スヴェンが考えていた以上に顕著なものだった。
肌に触れれば熱を帯び、刺激に応じて呼吸が乱れ、奥を突けば甘い声を漏らす。
何度も、どこまでも求めるように、脚を絡めてくることさえするようになった。
組み敷いた彼の中に、未だ残っている感情の欠片を追い求めて、見つめるスヴェンにいつもミスティはこう言った。
「ジロジロ見るな!」
突き刺すような声。
拒絶とも、照れ隠しともつかぬ語調。
眉を寄せ、苛立たしげにそう告げる彼が、その瞬間は……年相応に未熟で、感情的な青年に戻っているように見えて。
余計に、その姿を追い求めて見つめてしまった。
それで、終わったあとに少し不機嫌な態度でも取ってくれれば、スヴェンは納得出来た。
だが彼は……、するりとベッドを抜け出すと、まるで任務終わりの時と同じようにシャワーを浴び、甘い時間を過ごすこともせず、自分の部屋に帰ってしまう。
感情を交わしたようで、何一つ交わっていなかったことに、スヴェンは後から気付くのだ。
「でも、もしかしたらあれは、きみの思う "合理性" だったのかもしれないな。感覚と感情は別物……そう言い聞かせてたんだろう? ずっと、自分にも、俺にも」
クレイドルにもたれたまま、スヴェンは続けた。
「きみをこのクレイドルで眠らせる前に、別れをしておけばよかった……」
竜舎の扉の前で、何者かが蠢く気配がする。
「ああ、最後の仕事をしなけりゃならない。ミスティ……きみは最後まで、俺の名前を呼んではくれなかった。だけど……」
スヴェンは立ち上がると、大剣・エクスカリバーを構えた。
カウントダウンは、もうとうに30秒を切っている。
「俺も……ずっと、 "ミスティ" としか呼べなかった」
本当は、呼びたかったのかもしれない。
ルーファ、と──彼の名を。
だがそれを口にした瞬間、自分がしてきたことすべてが、許されざるものになってしまう気がして……。
扉が破られ、中に私兵たちがなだれ込んでくる。
スヴェンはエクスカリバーを振り抜き、その剣圧と魔力とで私兵たちを蹴散らした。
「私兵ごときが、クリスタルナイトに届くと思うなよっ!」
クレイドルに手を掛け、スヴェンは飛竜が発着するカタパルトに向かって進んだ。
いかにも、このクレイドルの中にミスティが未だ収まっているかのように振る舞って。
片手でエクスカリバーを振るい、敵を薙ぎ払う。
そこで倒れた相手の鎧の紋章を見て、スヴェンは顔をしかめた。
「まいったな。ずいぶんと古めかしいものだとはわかるが、記憶にない。どこの紋章だったか……?」
しかし今更、それが判明したところで、誰に伝えられるというのだろうか?
「ああ、くそっ! ダイアナに礼と謝罪を兼ねた、花束でも贈っておくべきだったな……」
私兵の放った術が、スヴェンの頬をかすめる。
「生きてくれ、ルーファ……」
警報が鳴り響き、カウントダウンがゼロを告げる。
どこかで爆発音が響き、床が揺れた。
その振動の中、スヴェン・ダムノス──蒼穹の騎士は剣をおろした。
爆発が連鎖的に広がり、大広間も機関部もラウンジも……それら全てが炎に包まれる。
警告灯の赤が、白い閃光に塗り替えられ、爆発すると予想していなかったらしき私兵たちも吹き飛んでいった。
自嘲すら、もう出てこない。
だが、ここで泣くのは、卑怯に思える。
ミスティが再生することは、頭では分かっていた。
爆発に巻き込まれ、致命的な傷を負った時も、数時間後には一緒に食事をしにいったこともあった。
ここで後悔の涙をこぼすなら、シャワールームで強引なキスをした時、すぐにも体を離して謝罪をするべきだった。
彼の、少年らしさを残す顔に、微かな驚きと頬に赤みが挿したように見えたあの時。
クリスの肩に当てられた手が、抵抗を見せなかった。
それもあって、自分は感情のコントロールを失ってしまったのだ。
それから、ミスティが再生を繰り返すたびに、スヴェンは彼に触れた。
肌を重ね、煽り立てることで──彼が乱れることで、彼の感情の起伏を取り戻せるような気がして……。
ミスティの反応は、スヴェンが考えていた以上に顕著なものだった。
肌に触れれば熱を帯び、刺激に応じて呼吸が乱れ、奥を突けば甘い声を漏らす。
何度も、どこまでも求めるように、脚を絡めてくることさえするようになった。
組み敷いた彼の中に、未だ残っている感情の欠片を追い求めて、見つめるスヴェンにいつもミスティはこう言った。
「ジロジロ見るな!」
突き刺すような声。
拒絶とも、照れ隠しともつかぬ語調。
眉を寄せ、苛立たしげにそう告げる彼が、その瞬間は……年相応に未熟で、感情的な青年に戻っているように見えて。
余計に、その姿を追い求めて見つめてしまった。
それで、終わったあとに少し不機嫌な態度でも取ってくれれば、スヴェンは納得出来た。
だが彼は……、するりとベッドを抜け出すと、まるで任務終わりの時と同じようにシャワーを浴び、甘い時間を過ごすこともせず、自分の部屋に帰ってしまう。
感情を交わしたようで、何一つ交わっていなかったことに、スヴェンは後から気付くのだ。
「でも、もしかしたらあれは、きみの思う "合理性" だったのかもしれないな。感覚と感情は別物……そう言い聞かせてたんだろう? ずっと、自分にも、俺にも」
クレイドルにもたれたまま、スヴェンは続けた。
「きみをこのクレイドルで眠らせる前に、別れをしておけばよかった……」
竜舎の扉の前で、何者かが蠢く気配がする。
「ああ、最後の仕事をしなけりゃならない。ミスティ……きみは最後まで、俺の名前を呼んではくれなかった。だけど……」
スヴェンは立ち上がると、大剣・エクスカリバーを構えた。
カウントダウンは、もうとうに30秒を切っている。
「俺も……ずっと、 "ミスティ" としか呼べなかった」
本当は、呼びたかったのかもしれない。
ルーファ、と──彼の名を。
だがそれを口にした瞬間、自分がしてきたことすべてが、許されざるものになってしまう気がして……。
扉が破られ、中に私兵たちがなだれ込んでくる。
スヴェンはエクスカリバーを振り抜き、その剣圧と魔力とで私兵たちを蹴散らした。
「私兵ごときが、クリスタルナイトに届くと思うなよっ!」
クレイドルに手を掛け、スヴェンは飛竜が発着するカタパルトに向かって進んだ。
いかにも、このクレイドルの中にミスティが未だ収まっているかのように振る舞って。
片手でエクスカリバーを振るい、敵を薙ぎ払う。
そこで倒れた相手の鎧の紋章を見て、スヴェンは顔をしかめた。
「まいったな。ずいぶんと古めかしいものだとはわかるが、記憶にない。どこの紋章だったか……?」
しかし今更、それが判明したところで、誰に伝えられるというのだろうか?
「ああ、くそっ! ダイアナに礼と謝罪を兼ねた、花束でも贈っておくべきだったな……」
私兵の放った術が、スヴェンの頬をかすめる。
「生きてくれ、ルーファ……」
警報が鳴り響き、カウントダウンがゼロを告げる。
どこかで爆発音が響き、床が揺れた。
その振動の中、スヴェン・ダムノス──蒼穹の騎士は剣をおろした。
爆発が連鎖的に広がり、大広間も機関部もラウンジも……それら全てが炎に包まれる。
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