暁闇の騎士

琉斗六

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 処置室の中は、淡々としたざわめきに満ちていた。
 白衣の助手たちは、ラベルを貼ったサンプルをケースに収め、次々と部屋を出ていく。
 ミスティが寝かされている寝台から離れた、カメラの機材の向こう側に立つタイドは、特に動きもせずにそこにジッと立ったまま、ミスティを見つめていた。

「……どうかしましたか、トラセナー?」

 そんなタイドに、ドクター・アルドリックが声を掛ける。
 仰向けに寝かされているミスティは、瞬きもせずに天井を見つめていた。

「かなりのショックだったようですね。まぁ、一般的な反応です」
「一般的? 彼が一般的でありえるのか?」
「そう……、煌環騎士団ラディアントオーダーは彼のような貴重な資料を、親切すぎる扱いでもてなしていたようですね。こちらの質問に対する答え、監房内での態度、処置に対する対応。全てが "普通の人間" のようです」
「彼は……ネクシオンだぞ!」
「そうですね。……しかし、ネクシオンとしても異質です。一般的なネクシオンは、浄化をされたら二度と復活はしませんから」
「それでも……人間だと言うのか?」

 その言葉は、ドクター・アルドリックに問いかけたと言うよりは、おのれに問いかけているような、つぶやきに近かった。

「どうでしょう? ネクシオンであることは間違いありませんが。そもそも模倣体もほうたいのネクシオンは、身体しんたい強度が人間と全く同レベルですからね。不死身の点を除けば、彼の存在は人間そのものと言って、問題ないでしょう」
「な……なにを言ってる……」
「だって、そうでしょう? 人間であれ魔人であれ、知的生物の思想は、その記憶に基づく常識や習慣の積み重ねに過ぎません。むしろ、そのものの記憶を完全に持っているにも関わらず、人間を害そうとするネクシオンの思想は、洗脳によるゆがみですよ」

 自身の中で保っていた何かが、音もなく崩れていく。
 タイドの顔から、冷静を装う仮面が静かに剥がれていた。
 そんなタイドを無視して、ドクター・アルドリックは続ける。

「死の恐怖を何度も体験し、更に再生という他の誰も体験したことのない経験を重ね、同胞というよりどころもないままに "物" として扱われている。心が鈍化するのは人間として当然ですな。それ以外は……年相応の子供です。さて、私の出番はここまでのようですね」

 ドクター・アルドリックが言葉を切ったところで、タイドはハッとなった。
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