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ミスティは、ハッと目を開いた。
──僕は……、嬉しかった……のか?
違う。
見られることは、耐え難いほど苦しかったはずだ。
──ああでも……、クリスに見つめられると、僕はなんだか人間になれたような……そんな気がしたんだ……。
それは、とても傲慢で、想像するだけでも震えるほどに恐ろしい考えだが。
自分は、兵器であり、今や検体などと呼ばれる程度に物に過ぎないが。
あの部屋へ足を踏み入れるのが、いたたまれない気持ちになったのは、クリスが自分を "人間" のように扱ってくれたからだ。
部屋に呼ばれ、酒を飲み、体を重ねる。
再生をした時に、必ず繰り返されたその "ルーチン" が終わった時。
一分一秒でも早く、このいたたまれない空間から逃げ出したくて、ベッドから抜け出しシャワールームに駆け込んだ。
部屋に戻ると、クリスはいつもベッドに横たわったままだった。
その顔を見たくなくて、視線を向けず……。
しかし無言の間に耐えきれなくて……。
「すまん。シャツを借りていく」
再生後、病衣一枚で訪れているために、毎回シャツを借りていた。
「病衣のままじゃ、廊下は歩けんからな」
そんな迂闊な自分に、クリスはいつでも親切にシャツを貸してくれた。
「明日は、何時だ?」
「午後からのシフトだ」
やはり無言に耐えられなくて……。
けれど、自分にはクリスのような、軽妙な会話をするスキルもなくて……。
結局は、事務連絡のような言葉しか紡げなかった。
「泊まっていったらどうだ?」
そう、声を掛けられた時もある。
けれど、本当は眠りと再生の区別がなく、夜が……眠りの闇が恐ろしいことを知られたくなくて……。
「他人のベッドじゃ、よく眠れん」
と、突き放すような……暴言にも近いひどい言葉を投げ返した。
その後、クリスが何かを言ったが、よく聞き取れず、「なんだ?」と訊ねたら「いや……なんでもない」と返された。
だから最後に、少しの謝罪を込めて「じゃあおやすみ、クリス」と言った自分に、クリスもまた「……おやすみ、ミスティ」と返してきた。
結局は "ミスティ" としか返されないことに、あの時は悲観的な気持ちにしかなれなかったが。
自分もまた、クリスを肩書きでしか呼んでいなかった。
──道具の僕が、彼らを名で呼ぶなど、おこがましいものな……。
だが、今思い返してみると、あの時クリスは……。
「……きみが、よく眠れる夜なんて、あるのか」
と、言ったように思える。
クリスが、自分が考えるよりもずっと、ミスティのことを思いやってくれていたのだとしたら。
自分は、クリスに、なんとひどいことをしたのだろう……。
──僕は……。
皆の気持ちは、態度同様に思いやりだったのだろうか?
自分は確かにネクシオンだが、そこにいてもいいのだろうか?
答えは、まだ、霧の向こうにある。
だが、それだけは、取り返しがつかなくなる前に思い出さなければならない気がした。
──僕は……、嬉しかった……のか?
違う。
見られることは、耐え難いほど苦しかったはずだ。
──ああでも……、クリスに見つめられると、僕はなんだか人間になれたような……そんな気がしたんだ……。
それは、とても傲慢で、想像するだけでも震えるほどに恐ろしい考えだが。
自分は、兵器であり、今や検体などと呼ばれる程度に物に過ぎないが。
あの部屋へ足を踏み入れるのが、いたたまれない気持ちになったのは、クリスが自分を "人間" のように扱ってくれたからだ。
部屋に呼ばれ、酒を飲み、体を重ねる。
再生をした時に、必ず繰り返されたその "ルーチン" が終わった時。
一分一秒でも早く、このいたたまれない空間から逃げ出したくて、ベッドから抜け出しシャワールームに駆け込んだ。
部屋に戻ると、クリスはいつもベッドに横たわったままだった。
その顔を見たくなくて、視線を向けず……。
しかし無言の間に耐えきれなくて……。
「すまん。シャツを借りていく」
再生後、病衣一枚で訪れているために、毎回シャツを借りていた。
「病衣のままじゃ、廊下は歩けんからな」
そんな迂闊な自分に、クリスはいつでも親切にシャツを貸してくれた。
「明日は、何時だ?」
「午後からのシフトだ」
やはり無言に耐えられなくて……。
けれど、自分にはクリスのような、軽妙な会話をするスキルもなくて……。
結局は、事務連絡のような言葉しか紡げなかった。
「泊まっていったらどうだ?」
そう、声を掛けられた時もある。
けれど、本当は眠りと再生の区別がなく、夜が……眠りの闇が恐ろしいことを知られたくなくて……。
「他人のベッドじゃ、よく眠れん」
と、突き放すような……暴言にも近いひどい言葉を投げ返した。
その後、クリスが何かを言ったが、よく聞き取れず、「なんだ?」と訊ねたら「いや……なんでもない」と返された。
だから最後に、少しの謝罪を込めて「じゃあおやすみ、クリス」と言った自分に、クリスもまた「……おやすみ、ミスティ」と返してきた。
結局は "ミスティ" としか返されないことに、あの時は悲観的な気持ちにしかなれなかったが。
自分もまた、クリスを肩書きでしか呼んでいなかった。
──道具の僕が、彼らを名で呼ぶなど、おこがましいものな……。
だが、今思い返してみると、あの時クリスは……。
「……きみが、よく眠れる夜なんて、あるのか」
と、言ったように思える。
クリスが、自分が考えるよりもずっと、ミスティのことを思いやってくれていたのだとしたら。
自分は、クリスに、なんとひどいことをしたのだろう……。
──僕は……。
皆の気持ちは、態度同様に思いやりだったのだろうか?
自分は確かにネクシオンだが、そこにいてもいいのだろうか?
答えは、まだ、霧の向こうにある。
だが、それだけは、取り返しがつかなくなる前に思い出さなければならない気がした。
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