暁闇の騎士

琉斗六

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12.悲劇の騎士団長

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 タイドの研究室の扉が、乱暴に開かれた。

「おい! どういうことだ!」

 部屋に入り込んできたのは、大柄おおがらで精悍な男だ。
 声も大きく、動作もキビキビしていて、かつて騎士団で鳴らしていたことが伺える。
 だが、顔に刻まれた皺や白髪交じりの頭は、すでに現役を退いて久しいことをはっきりと示していた。

「ノックぐらいしてくださいよ。ラファエル総監」

 呼び方こそ敬語だが、その声音には露骨な皮肉が混じっていた。
 だがラファエルは眉一つ動かさず、ズカズカと机に歩み寄った。

「映像を出し給え、検体の」
「管理が必要な映像です。リサーチ部門が申請してきた分は、出したでしょう」
「今朝の分が欠けていると言って、儂のところに苦情がきた。なんだ、なにか都合が悪い部分でもあったのか?」
「機材トラブルです。今朝の実験はサンプルさえ取れていれば問題ないもののはずだ。どうしても映像が必要ではないでしょう」
「機材部の連中は、全部の機器が問題なかったと言ってる。脳波と心電図は、ちゃんと記録されていた。カメラだけが壊れていたと?」

 タイドはタブレットを手から離し、椅子から立ち上がる。

「私達の目的には、ほとんど無関係の映像だ」
「なんだ、あの化け物に情でも移ったのか?」

 顔を強張らせたタイドに向かって、畳み掛けるようにラファエルが言った。

「このままでは、我々は優れた指導者を失うことになる」
「違う。私たちは、すでに一度……彼を失っているんだ。──だからこそ、取り戻すために知恵を絞り、手を尽くしている」
「当然だ。私は諦めないぞ。そのためにも、おかしな情なぞ捨てて、データを出せ!」

 タイドは手放したタブレットを再び手に取り、壁に掛かっているモニターに映像を出した。

「これの、どこが "科学研究に必要な映像" だって言うんですか!」

 画面には、ミスティがドクター・アルドリックによって、体液を採取されている映像が写った。

「そんなことは知らん。儂は騎士だ、研究者じゃない。だがやつらが必要だというなら、データでもかねでも出すさ。それであれからの50年を生き抜いてきたんだからな!」

 年齢だけを見れば、とうに人間の限界を超えている。
 だが、詰め寄るラファエルの足取りには、老いの影など微塵もなかった。

「リサーチの連中は、心拍数と身体しんたい反応を照らし合わせてどうとか言っていた。さっさとこの映像を回してやれ」
「揃いも揃って……。やつらのほうが、よほど化け物じゃないか……」
「なにを言う。そういうきみだって、延命処置の恩恵に預かっているだろう?」

 嘲笑うように、ラファエルが言った。
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