暁闇の騎士

琉斗六

文字の大きさ
57 / 75

13-3

しおりを挟む
 ダスクの誘導で、ミスティは廊下を走った。
 拘束されていた所為で少しぎこちないが、ネクシオンの再生力のおかげでダスクのあとを問題なく追っていける。
 廊下は暗く、相変わらず警告灯が音もなく点滅を繰り返していた。

「警備の魔導無人機フロートギアもいないのか?」
「マギア炉を乗っ取られかけていて、警備に回せる魔力が充分にないんだろう」

 廊下を進み、先に様子を見たダスクが角の先へと行く。
 あとを追ったミスティは、廊下に人影が出てきてギョッとなり、立ち止まった。

「タイド……」
「この先の非常脱出口は、もう使えないぞ」

 言い回しに疑問を抱き、自分を守るように立っていたダスクの前に、ミスティは歩み出た。

「僕を……捕らえにきたのか?」
「いや……」

 タイドは、少し迷うような顔で視線を落とした。

「私はずっと、きみを魔物……ネクシオンだと、思うように努めてきた」
「僕はネクシオンだ」

 ミスティは、言い淀まなかった。
 タイドは、ハッとしたようにこちらを見る。
 だが強く、まっすぐに見つめ返すミスティの視線に、後ろめたさを感じたように視線をそらす。

「だが……きみにも感情はある。尊厳も……あるべきだろう……」

 視線を上げ、タイドは半歩ハンポ前に出た。

「きみの細胞は、他の人間にんげんには見られない異常な再生能力を持っている。免疫系、神経伝達物質、細胞複製過程……その一部でも解析できれば、騎士団長の蘇生計画に道が開ける。今の医学では到達できない "修復と維持" のメカニズムが、そこにはある」
「だから、なんだ?」
「きみの存在のおかげで、人間はこの戦いを切り抜けた。だが、魔人だとてこのまま黙ってはいないだろう。戦火は再び起こる。その時、あの人は絶対に必要なんだ」

 ミスティは、レスタークの伝説しか知らない。
 しかし、レスタークを慕い、彼の復活を望むものがレフュージを立ち上げ、50年もの間、彼の復活を願っている。
 その事実に、ミスティの気持ちは揺れた。

「きみが進んで、サンプルの提供をしてくれるなら、私たちはもっと協力しあえると思わないか?」

 ミスティがほんの一歩を踏み出そうとした瞬間、ダスクの手が彼の肩に鋭く絡んだ。
 その力には、怒りと、そして必死の願いが込められていた。

「おい、ミスティ! 自分が一体どんな目に合わされたのか、忘れたのかっ!」

 それからダスクは、きつい視線をタイドに向けた。

「貴様、レフュージに散々サンプルを流していたんだろう? ミスティを拉致監禁して、どうせ殺すようなことも何度もしたんだろう? 人道的? 協力? 耳障りの良いご都合主義なことばかり言うな!」
「嘘じゃない! 私は本当に、彼の扱いには腹が立っていた! そうじゃなければ、わざわざきみたちが逃げやすい状況を作ったりはしなかった!」

 激昂するダスクに、ミスティは考えを改めた。
 ダイアナにも、シェイドにも、そしてダスクにも。
 自分は最初から、危機感が薄いと叱責され続けていたのに。
 それを無視して、結局は虜になった。
 今また、自分は道を間違えそうになったのだ。

「ダスク、怒ってくれてありがとう。タイド。悪いが、協力は出来ない」

 ミスティの答えに、タイドの顔は絶望にゆがむ。

「どうしてもか?」
「僕は、この不死身の理由を探求するには、人間の理性はまだ足りないと考えている。不死を手にするには、人間はまだ幼稚だと……」

 タイドは口を開きかけた。
 その声は震えていたが、熱を帯びていた。

「待ってくれ……話を聞いてくれ——」

 だが、その言葉は、一発の銃声によって無慈悲に断ち切られた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

薄紅の檻、月下の契り

雪兎
BL
あらすじ 大正十年、華やかな文明開化の影で、いまだ旧き因習が色濃く残る帝都。 没落しかけた名家に生まれた“Ω(オメガ)”の青年・白鷺伊織は、家を救うため政略的な「番(つがい)」として差し出される運命にあった。 しかし縁談の相手は、冷酷無慈悲と噂される若き実業家であり“α(アルファ)”の当主・九条鷹司。 鉄道・銀行事業で財を成した九条家は、華族でもありながら成り上がりと蔑まれる存在。 一方の伊織は、旧華族の矜持を胸に秘めながらも、Ωであるがゆえに家族から疎まれてきた。 冷ややかな契約婚として始まった同居生活。 だが、伊織は次第に知ることになる。 鷹司がΩを所有物としてではなく、一人の人間として尊重しようとしていることを。 発情期を巡る制度、番契約を強制する家制度、そして帝都に広がる新思想。 伝統と自由のはざまで揺れながら、二人は「選ばされた番」から「自ら選ぶ伴侶」へと変わっていく——。 月明かりの下、交わされるのは支配ではなく、誓い。 大正浪漫薫る帝都で紡がれる、運命を超える愛の物語。

溺愛極道と逃げたがりのウサギ

イワキヒロチカ
BL
完全会員制クラブでキャストとして働く湊には、忘れられない人がいた。 想い合いながら、…想っているからこそ逃げ出すしかなかった初恋の相手が。 悲しい別れから五年経ち、少しずつ悲しみも癒えてきていたある日、オーナーが客人としてクラブに連れてきた男はまさかの初恋の相手、松平竜次郎その人で……。 ※本編完結済。アフター&サイドストーリー更新中。 二人のその後の話は【極道とウサギの甘いその後+ナンバリング】、サイドストーリー的なものは【タイトル(メインになるキャラ)】で表記しています。

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

窓のない部屋の、陽だまりみたいな君

MisakiNonagase
BL
都心の高層ビル、その「内臓」とも言える地下一階のメール室。 そこで働く山﨑智之は、目立たず、期待されず、淡々と郵便物を捌く「透明人間」のような毎日を愛していた。自分は低スペックで、華やかな地上には居場所がない。そう、諦めていた。 ​そんな彼の静寂を破ったのは、二十二階の住人、若きエース・風巻隼人だった。 完璧なルックス、圧倒的な成果、羨望の眼差しを一身に浴びる彼が、なぜか地下のメール室に足繁く通い始める。 ​「五分だけ、ここにいさせてくれないか」 ​一通の郵便物から始まった、五分間だけの秘密の共有。 次第に剥き出しになっていく隼人の孤独と、それを無自覚に包み込んでしまう智之の温度。 住む世界が違う二人が、窓のない部屋で見つけたのは、名前のつかない「救済」だった。

伯爵家次男は、女遊びの激しい(?)幼なじみ王子のことがずっと好き

メグエム
BL
 伯爵家次男のユリウス・ツェプラリトは、ずっと恋焦がれている人がいる。その相手は、幼なじみであり、王位継承権第三位の王子のレオン・ヴィルバードである。貴族と王族であるため、家や国が決めた相手と結婚しなければならない。しかも、レオンは女関係での噂が絶えず、女好きで有名だ。男の自分の想いなんて、叶うわけがない。この想いは、心の奥底にしまって、諦めるしかない。そう思っていた。

恋なし、風呂付き、2LDK

蒼衣梅
BL
星座占いワースト一位だった。 面接落ちたっぽい。 彼氏に二股をかけられてた。しかも相手は女。でき婚するんだって。 占い通りワーストワンな一日の終わり。 「恋人のフリをして欲しい」 と、イケメンに攫われた。痴話喧嘩の最中、トイレから颯爽と、さらわれた。 「女ったらしエリート男」と「フラれたばっかの捨てられネコ」が始める偽同棲生活のお話。

【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】

彩華
BL
 俺の名前は水野圭。年は25。 自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで) だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。 凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!  凄い! 店員もイケメン! と、実は穴場? な店を見つけたわけで。 (今度からこの店で弁当を買おう) 浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……? 「胃袋掴みたいなぁ」 その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。 ****** そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています お気軽にコメント頂けると嬉しいです ■表紙お借りしました

ルピナスの花束

キザキ ケイ
BL
王宮の片隅に立つ図書塔。そこに勤める司書のハロルドは、変わった能力を持っていることを隠して生活していた。 ある日、片想いをしていた騎士ルーファスから呼び出され、告白を受ける。本来なら嬉しいはずの出来事だが、ハロルドは能力によって「ルーファスが罰ゲームで自分に告白してきた」ということを知ってしまう。 想う相手に嘘の告白をされたことへの意趣返しとして、了承の返事をしたハロルドは、なぜかルーファスと本物の恋人同士になってしまい───。

処理中です...