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第一章 ー始まりー
白の空間と男
しおりを挟む!?
「ここは……。」
気がつけば…俺は真っ白な 場所? に居た。
そして、何故かビジネスチェアに座っていた…。
俺は吸い込まれたときの事を思い出し、身体のあちらこちらを確認した。
(痛いところもないし、どこも怪我はしていないみたいだけど…)
「なんで俺、スーツ着てるんだろ?」
もう、わけが分からなかった。
頭の中は ? のマークで溢れ、それでいても必死にこの状況を整理しようと、体の全ての感覚がこの現状の情報を集め出す。
これが本能と言うやつなのだろうか…。
未知に遭遇すると、人はこんなにも恐怖心が溢れてくるものなのか…。
それなのに、体の感覚は通常の何倍もの力で働いて、この恐怖心に必死に抗おうとしているのがよく分かる。
「…………。」
1分くらい経っただろうか?
黙りこんでじっとしていたおかげか少しずつ頭も落ち着いてきた。
きっと、今すぐに危険は無いと本能が判断したのだろうか…
俺はとりあえず自分の置かれた状況を確かめる事にした。
(よし、まずは状況判断から…)
俺は今、ビジネスチェアに座っている…
もちろんキャスター付きで高さ調整のレバーも付いている…。
そして俺は何故かスーツを着ている…
これは今日俺が着ていたスーツなのは間違いないようだ。
ネクタイも同じ色だしサイズもピッタリ、襟の裏にある糸ほつれも同じ位置…
俺は時間を確認しようと左腕を上げた。
(腕時計が無い…。でも吸い込まれた時は夜だったよな…気を失っていたみたいだし、今は朝なのか?)
次にビジネスチェアでゆっくり180°回転しながら周りの景色を見た。
(やっぱり真っ白。でも 部屋? と言うには奥行きが見えないし…天井すら無いとなると。)
ある程度の状況判断が出来た俺の頭はいつしか平常運転まで戻っていた。
だが…。
(白い 空間 にビジネスチェア…そしてスーツ姿……。)
「さっぱりわからーん!!」
思わず叫んでしまった…。
いくら頭が平常運転になったとしても、俺の理解の範疇を超えているのだから分かるわけもない。
俺はとりあえず元居たであろう位置へまた180°回転した。
……………。
あれやこれやを考えてみたけれど、やっぱりどれも納得いく答えにはならなかった。
「ハァ~~。」
俺はため息をつき肩を落とすと、ふとベランダから見えていたいつもの景色が頭をよぎった。
(俺はこれからどうなるんだろう…。)
そんな事を考えていると急に不安な気持が溢れてきた。
それと同時に、このままではこの気持ちに押し潰される気がした俺は、とりあえず、あるのかないのかも分からない白い空間の出口を探してみようと決めたのだった。
(これ以上考えてても仕方がない…か……。)
「よし!」
ビジネスチェアから立ち上がり歩き出そうとした時だった…。
『柏手 三木さん。』
「は、はいぃ!!」
急に真後ろから何も感情が込められていないような冷たい男性の声で名前を呼ばれた…。
就活中の身だった為なのかクセがついたのか、俺は名前を呼ばれ咄嗟に返事をしてしまったのである。
(ビッ…クリしたぁ~)
『良い返事です。ではこちらについて来て下さい。これより面接を行いその場であなたの合否が決まります。』
「………。」
そう言い放ち、姿勢良く俺の前を歩いて行くスーツ姿のいかにもエリートな男性は 気をつけ の姿勢でピーンと固まっている俺には目もくれず真横を通りすぎて行く…
「えっ…?」
俺の反応が数秒遅れてからその男は数歩先で立ち止まり、振り返りもせず俺に言い放った。
『何をしているのです。時間は限られています。そこで突っ立ってないで急いで下さい。』
「は、はい!」
俺は状況がよくのみ込めないまま、このうるさい鼓動と一緒に男についていく事にした。
……………。
無言で歩き続ける二人…。
真っ白な空間に聞こえる二人だけの足音…。
まるで、声を出してはいけない暗黙のルールのような威圧感…
正直、息苦しい。
だが、考えることは辞めてはいけない。
社会人として色んな経験をしてきたからなんとなくその事だけは分かる……なら。
俺は前を歩くこの男をじっと見た。
(背は…俺より高いな。180cmぐらいか?)
(すらっとした細身の体型…スーツのラインもとても綺麗だ。)
(髪は綺麗な金髪でオールバック…地毛かな?もしかして外国人?でも言葉は日本語だったし…ハーフかな?? それにちゃんと髪を固めてる…うん、あのテカリからしてジェル派だな…。)
俺は男の後ろを歩きながらこの男の分析をしていた。
髪の毛の分析が終わったところで、普通の人とは違うところを見つけた。
(髪型のおかげで耳がよく見える…えっと、耳の上部が少し長くて尖っている…しかもこの人メガネだ!これは…おそらくフレームの細いタイプ…。)
(よし、だんだんこの男の顔が想像出来てきたぞ。)
俺は少しだけ目を瞑りながら歩き、今までの分析結果を頭の中で整理して目の前の男の顔を作ってみた。
• 髪は金髪オールバック
• 肌は首と手を見る限り白めの肌
• 顔は外国人だと考慮して恐らくイケメン
• 眉毛は細く色は髪の毛と同じ
• おそらく鼻も高く綺麗な形をしているだろう
• 目の色は髪の色素の関係で黒では無いはず…
• 口はまぁイケメンだろうし、こんなもんか。
• フレームの細いメガネを掛けていて
• 表情はあの冷たい口調からしておそらく無表情…ならシワもほぼ無いはず。
• そして耳は上部が少し長く尖っている……
と、なると。
俺は、完成した顔を想像して思った…
(あれ!?もしかしてこの人…ゲームやアニメに出てくるエル…)
「ブッ!!」
突然、ナニかに顔をぶつけ尻もちをついた。
一番衝撃の強かった鼻を左手で抑えながら直ぐに目を開けると、前を歩いていたはずのあの男の後ろ姿があった。
『全く、あなたの分析能力は流石のようです。』
男はいつの間にか立ち止まっていて、ため息をつきながらこちらに振り返り話した。
『そう、私の種族はあなたの分析通り エルフ です。私はあなたがこれから会うあのお方の秘書をさせてもらっています。そしてあなたはこれから……』
俺は少し赤くなっているであろう鼻から手を下ろし、体勢を正座に変えまじまじとエルフを名乗る男の顔を見上げた。
(やっぱりメガネだぁ!!しかも想像通りのイケメン! はっ、目の色…目の色はっ!!)
俺は自分が想像した通りの顔に嬉しくなり少し表情筋が緩んだ。
(目は薄い緑かぁ~ 予想では青かと思ってたのにぃ…)
俺は少しだけガッカリした…。
『あの。』
エルフの男が少し声の音量を上げて言った。
『私の話、聞 い て ま す か ?』
その言葉達に、少しだけ殺気のようなものを感じた…
「すっ、すみません!!」
俺はすぐさまおでこを真っ白な地面に勢いよくぶつけ、完璧なフォームの土下座を行った…。
(ヤバいぃ…つい調子に乗ってしまったぁぁ。)
数秒間おでこと地面が密着した後、エルフの男が話し始めた。
『いいですか?先程もお伝えしたと思いますが、今は時間がありません。ある程度の事は歩きながら説明しますので、あなたは口を開かずにただ黙って私についてきて下さい。』
エルフの男はそう言い、メガネを指で触りながら念を押すように続けて言った。
『よ ろ し い で す ね ?』
(怖ぇぇー!)
俺は顔を上げ、エルフの男の目を見て何度も頷いた。
それから俺は黙ったまま後ろをついて歩き、エルフの男の話す事を必死に頭に叩き込んだ。
相変わらず感情のこもってない口調は今はありがたく、理解は出来ないが自然なほど耳には入ってきた。
話をまとめると…。
まずはこの空間。
この空間は、世界と世界の間にある隙間の空間で、必ずしも存在する訳ではなく特別な条件で生まれるものだと言う事。
そして、その条件とはこのエルフが秘書として仕えているあのお方の力があってこそだと言う事。
次にあの白い封筒について。
あの封筒は魔法の類いのものであり、魔力を持つ人間の僅な魔力を吸収しその人間を別の空間に移動させる、空間魔法が施されていた事。
そして、それもどうやらあのお方の力らしい。
次は俺がここに居る理由について…
どうやら、ハロワで貰いまくっていた求人票の中にあらかじめ仕込まれていた魔力を持つ人間にだけに反応するよう作られたダミーの求人票を、俺が受け取り反応したのであの封筒を送った。
求人票は役目を終えた後、あのお方の手元に戻る仕組みになっていた。
ちなみに郵便受けに入れたのはこのエルフの男で…。
やっぱり、そう指示をしたのもあのお方だそうだ。
『話は以上です。質問はありますか?』
正直、頭の中は質問したい事だらけだが……。
とりあえず、今の話しの中で一番気になったのは……。
「あの…。魔力って俺の居た世界にも存在していたんですか?」
今までの話しだとそう言う事なんだろう…だが。
もしあったならば、これまでニュースや新聞、ネットやSNSに情報が上がっててもおかしくないはずだ。
(何か知られてはまずい理由があると言う事か…。)
『いいえ、あなたがいた世界には魔力は存在していません。』
予想外の答えに少し動揺した。
(えっ?じゃあなんで俺は魔力を持ってるんだ?)
「では、何故俺には……」
エルフの男が足を止め、後ろを振り返った。
『話しは終わりです。着きました。これからあなたはあのお方とこちらで個人面接していただきます。』
エルフの男がそう言い、左横に2歩移動すると。
俺の前の真っ白な空間に不思議な模様の大きな扉が現れた。
『面接終了後、その場であのお方から合否が言い渡されます。合格の場合はあのお方の指示に従って下さい。不合格の場合は私があなたの記憶を消し、元居た世界へとお返しします。』
(どうやら、あのお方が俺の知りたい答えを全部知っていそうだな…)
「分かりました。ありがとうございます。」
俺はエルフの男にお辞儀をし、扉を見つめた。
(この扉の模様…どこかで…。)
「よし!!」
俺は腹を括り、ネクタイを整えスーツのシワを伸ばした。
そしてエルフの男を横目に扉を3回ノックしたのだった。
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