4 / 27
第一章 ー始まりー
合格の先に…
しおりを挟む『おめでとうミツキ君。そして、本当にありがとうのぉ。』
お爺さんはそれはそれは嬉しそうに頭を下げた。
「そんな、とんでもないです!こちらこそ本当にありがとうございます!!」
なんとなく、流されてここまで来てしまったけれど何故だろう…悪い気はしないな。
俺は、ここに来るまでにいくつか気になった事を、思い切って聞いてみる事にした。
「あの…。質問してもよろしいでしょうか?」
『ん?なんじゃ?』
「ここに来る途中で、エルフの男から大体の話は聞きました…。」
俺は前もって考えていた3つの質問をした。
1. 何故、俺に魔力があったのか。
2. どうして、俺がこの面接に合格したのか。
3. エルフの男が言う、あの方とはどう言う事なのか。
お爺さんはゆっくりと答えてくれた。
まず、俺に魔力があった理由は、俺の家系にあると言う。
俺は初めて知ったのだが…もともと柏手家は、先祖代々ある神社を守ってきた。
その神社では、とても珍しいとされる水晶を御神体とし、永遠の平和を願い時空の神として崇め奉ってきたそうだ。
長年の信仰により、人々の想いは力となり、力はやがて魔力へと変わって水晶に蓄積された。
いつしかその魔力により水晶は意思を持ち、やがてそれは意志へと変わっていった。
そんな折世界は戦火に包まれ、神社もそれを守り続けてきた柏手家もみんな燃えてしまったそうだ。
その時。燃えさかる炎にも怖ずに、最後まで御神体の水晶を守ろうとした男がいた…。
それが、俺の父の高祖父だった…。
水晶はこの男の想いを強く感じ取り、この男を守るため、空間魔法で男の体を包み火の手から命を救った…。
この時にはもう、思考や感情すらも水晶にはあったのだろう。
この出来事をきっかけに力が開花した水晶は、女神へと姿を変え空へと消えていった…。
長い時を経て男に残った魔力は血筋を流れ、男のみに受け継がれていったのだった。
そして俺の両親が死んだ時、その魔力は俺へと受け継がれたと言うことだった。
次に、俺がこの面接に受かった理由だが…。
その質問に対しての答えは何か意味深で、完全には納得できなかった。
『ただわしは君に、恩返しがしたかったのじゃが……もちろん人となりを見ないわけにはいかないじゃろう?』
(人となりは問題ないと言うことか?でも恩返しって……)
もっと具体的に聞きたかったのだが、お爺さんはそのまま次の質問の話しを続けてしまって、これ以上は話さなかった…。
そして最後の質問、あのお方の意味について…。
薄々は気づいていたが、やはりこのお爺さんの正体は 時空の神 だった。
と言っても、お爺さんは二代目の神で初代は最初の話に出ていた女神…。
そして、あのお方と言うのはお爺さんの名称で、もともと名前が無いそうだ。
時空の神とは文字通り、時間と空間を操る神の事を言い、その力は使う者の魔力の多さによって、星を作り世界を作る事も可能だそうだ。
そして、時間や空間を操ると言う事は、他の者の記憶を見たり、生き物や人間や物といった形あるものを別の空間に運んだりなど容易い事だそうで…。
もちろん俺の記憶も見たと申し訳なさそうに話してくれた。
『どうじゃ、答えになったかのぉ?』
俺は色々と納得がいってしまった。
「はい、とても勉強になりました。ありがとうございます。」
俺は一度立ち上がり、深々とお辞儀をした。
お爺さんはニコニコしながら頷いていた。
『さて、長い話も終わったことじゃし。これから君の業務内容でも伝えようかのぉ。』
お爺さんはそう言うと、椅子から立ち上がり俺の隣に来た。
俺もすぐに立ち上がり、お爺さんはパチンと指を鳴らした。
「おぉ!これは凄いですね!」
空間が変わり、周りを見渡すとそこはキラキラ光る星が散りばめられた宇宙だった。
『さぁ、足元を見てみるのじゃ。』
俺は言われた通りに下を見ると、そこには俺の居た地球らしき星があった…。
(ん?……)
「ここは…良く見たら地球じゃない…ここは何て言う星なのですか?」
確かに青い海と緑の大地、けれども俺の知っている陸地の形はどこにもない…。
『ここはかつてわしと母の作った世界じゃ。まぁ、あえて君らの言葉で言うならば……異世界じゃな。そして今日から君にはあそこで働いてもらうのじゃ。』
「えっ……!?」
俺はてっきり、お爺さんとあのエルフの男の部下になって一緒に働くのだとばかり思っていたので予想外すぎて頭が真っ白になった。
『ん?なんじゃ、不満か?』
お爺さんは不思議そうな顔で固まった俺を見ている。
「あっ…いえ!少しばかり予想外だったもので…。」
お爺さんは振り返ると、穏やかな優しい笑みを浮かべて言った。
『だから言ったじゃろ?わしは恩返しがしたいのじゃと。わしはお前の過去も後悔も何もかもを知っておる。今まで本当に、よく頑張って来たのぉ。』
「…………。」
人生のほとんどを孤独に生きていた俺を隣で認めてくれる人が、まさかこんな所に居たなんて…。
そして、それを引き合わせてくれたのが俺のご先祖様と死んでしまった両親…。
『じゃから…君の職場は今日からこの異世界で、業務…つまり仕事は、自由かつ好きに生きることじゃ。』
いつの間にか、俺の目頭は熱くなっていた…。
正直とても嬉しかった…ただただ本当に嬉しかった。
俺は親指でこぼれそうな涙を拭き取り、少し大きな声で返事をした…。
「はい!」
『うむ。良い返事じゃ。では、一旦戻るかのぉ。』
お爺さんはそう言って微笑むとまた指をパチンと鳴らした。
音が鳴り止むと同時に、俺たちは元の部屋に戻っていた…
『さて、ミツキ君。わしから君に贈りものを渡そうと思うのだが…。』
お爺さんは少しだけ気恥ずかしい表情をしていた。
「はい…。私はありがたいのですが…よろしいのですか?」
お爺さんはそう大したものじゃないからと、椅子に座るよう言い、俺はすぐに腰を下ろした。
『ただ…その前にもう一つだけ、わしの質問に答えてくれないかのぉ?』
お爺さんはそう言うと俺の目の前まで歩いて来た。
「はい、構いませんが…。」
俺はもしかして、さっきみたいに凄んで来るんじゃないかと心の準備をした。
『そうか、では君の人生の中で、一番楽しかった頃を思い出して欲しいのじゃが……できるかのぉ?』
口調も優しいままで内心ホッとした…。
「はい。やってみます!」
俺の一番楽しかった頃の記憶かぁ…。
(ん~~~)
俺は目を閉じて、人生で一番楽しかった頃の記憶を探した。
(ん~。あれでもないし、これでもないし。)
脳内の記憶をフルで巻き戻して、俺は過去へと遡っていった。
(ん~、やっぱこれかな…よし!)
「……思い出しました!」
『うむ。ではそのまま目を閉じ、できる限り強く思い出すのじゃ。』
お爺さんはそう言って、俺のおでこに手を当てた。
『ふんっ!!』
………………
(あぁ…なんだろ…。記憶がどんどん鮮明になっていく…。それに、とても温かい…。)
俺が一番楽しかった頃の記憶の中に居た。
それは中学1年の13歳の時…。
小学校から解放されて新聞配達やラーメン屋の皿洗いとか、八百屋の客引きとかを前からやってて…。
そう、やっとお小遣いからお給料に変わった頃だ…。
この頃の俺は、環境が変わり制服も変わり、やっと少しだけ大人に近づけた事が何よりも嬉しかったっけ……。
俺が記憶を満喫してたら身体がポカポカと温かくなってきた…。
そして少しずつ、周りの景色が白く光りだし、俺の身体もその温かい光にゆっくりと飲み込まれていった…。
……………………
『うむ、もう目を開けても良いぞ。』
「……………。」
俺は目を開けるとお爺さんが満面の笑みを浮かべていた…。
(あれ?俺、寝てたのかな…。)
「ふわぁ~あぁ………あっ!?」
俺は思わず大きなあくびをしたと同時に、異変に気がついた……。
「あっ…あれ!?声が…なんで?」
そう、どんな時も大人の余裕を感じさせた男らしい俺の声が…。
声変わりする前のなんとも少年らしい声になっていたのだ……。
『ほれ。声だけじゃないぞ、身体もよく見てみるのじゃ。』
お爺さんは指をパチンと鳴らすと、豪華な姿鏡を出した。
(…………えっ?)
俺は自分の身体を見て思わず叫んだ…。
「ぎゃあぁぁぁー!!」
腕も足も身長も…何度確認してみても。
「短くなってるーぅ!!」
先程までビシッと着こなしていたあのスーツもシャツもネクタイもズボンもパンツも靴も…。
見る影もなく全てダボダボになっていた。
『これは、わしからの贈りものじゃ。君の一番楽しかった頃の姿から、あの世界で第二の人生を歩んで欲しいと思ってな。』
「あ…ありがとうございます…。」
鏡に映った俺の表情に、もはやビジネススマイルの影はなく。ただただ普通の少年の汚れのない笑顔だった。
(なんか複雑~)
お爺さんはまるで孫を見るような目でこちらを見ている……気がする。
『まだまだあるぞ。』
そう言うとお爺さんはまた指を鳴らす。
すると今度は、おれの服装がダボダボなスーツ姿から一瞬で様変わりした。
(この格好は…!!)
「おぉー!かっこいい!!」
長袖で青色のインナーに黒いズボン、頑丈そうな革の胸当てに革の肘&膝当て、革のブーツに革の腰ベルト、そして左脇には短剣。
まるでRPGゲーム初心者の初期装備だが、男なら一度はこの格好に憧れないはずがない!
「本当に!ありがとうございます!!」
俺はついテンションが上がってしまい、鏡の前で色々な角度から全身をくまなくチェックしたのだった。
『喜んでくれて何よりじゃ…では最後にもうひとつ。』
「まだあるのですか?」
俺は正直、こんなにたくさんのものをいただいてしまって少々気が引ける…。
しかしお爺さんは、そんな事気にもしないと言う感じで、俺の後ろに立ち両肩に手を置いた。
俺はただ、鏡越しに映るお爺さんを見ていた…。
お爺さんは鏡越しに俺に微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。
数秒後、お爺さんの手がだんだんと白く光り、俺の身体の奥深くに温かいものがどんどん入ってくる…。
そして、しばらくすると光はゆっくりと消え、お爺さんは一息つくと俺の両肩をポンっと叩いた。
『これでわしからの贈りものは以上じゃ。』
光のせいなのか、俺の心はまたポカポカしていた。
「はい…本当にありがとうございます。」
俺はこの時、お爺さんから何を貰ったのか、なんとなく分かっていた。
0
あなたにおすすめの小説
最強令嬢とは、1%のひらめきと99%の努力である
megane-san
ファンタジー
私クロエは、生まれてすぐに傷を負った母に抱かれてブラウン辺境伯城に転移しましたが、母はそのまま亡くなり、辺境伯夫妻の養子として育てていただきました。3歳になる頃には闇と光魔法を発現し、さらに暗黒魔法と膨大な魔力まで持っている事が分かりました。そしてなんと私、前世の記憶まで思い出し、前世の知識で辺境伯領はかなり大儲けしてしまいました。私の力は陰謀を企てる者達に狙われましたが、必〇仕事人バリの方々のおかげで悪者は一層され、無事に修行を共にした兄弟子と婚姻することが出来ました。……が、なんと私、魔王に任命されてしまい……。そんな波乱万丈に日々を送る私のお話です。
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました
佐倉穂波
恋愛
転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。
確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。
(そんな……死にたくないっ!)
乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。
2023.9.3 投稿分の改稿終了。
2023.9.4 表紙を作ってみました。
2023.9.15 完結。
2023.9.23 後日談を投稿しました。
転移先で日本語を読めるというだけで最強の男に囚われました
桜あずみ
恋愛
異世界に転移して2年。
言葉も話せなかったこの国で、必死に努力して、やっとこの世界に馴染んできた。
しかし、ただ一つ、抜けなかった癖がある。
──ふとした瞬間に、日本語でメモを取ってしまうこと。
その一行が、彼の目に留まった。
「この文字を書いたのは、あなたですか?」
美しく、完璧で、どこか現実離れした男。
日本語という未知の文字に強い関心を示した彼は、やがて、少しずつ距離を詰めてくる。
最初はただの好奇心だと思っていた。
けれど、気づけば私は彼の手の中にいた。
彼の正体も、本当の目的も知らないまま。すべてを知ったときには、もう逃げられなかった。
毎日19時に更新予定です。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。
黒ハット
ファンタジー
前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる