異世界就職!?

pさん

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第一章 ー始まりー

合格の先に…

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『おめでとうミツキ君。そして、本当にありがとうのぉ。』


お爺さんはそれはそれは嬉しそうに頭を下げた。


「そんな、とんでもないです!こちらこそ本当にありがとうございます!!」


なんとなく、流されてここまで来てしまったけれど何故だろう…悪い気はしないな。
俺は、ここに来るまでにいくつか気になった事を、思い切って聞いてみる事にした。



「あの…。質問してもよろしいでしょうか?」



『ん?なんじゃ?』



「ここに来る途中で、エルフの男から大体の話は聞きました…。」


俺は前もって考えていた3つの質問をした。


1.  何故、俺に魔力があったのか。

2.  どうして、俺がこの面接に合格したのか。

3.  エルフの男が言う、とはどう言う事なのか。


お爺さんはゆっくりと答えてくれた。


まず、俺に魔力があった理由は、俺の家系にあると言う。

俺は初めて知ったのだが…もともと柏手家は、先祖代々ある神社を守ってきた。

その神社では、とても珍しいとされる水晶を御神体ごしんたいとし、永遠の平和を願い時空の神としてあがたてまつってきたそうだ。

長年の信仰により、人々の想いは力となり、力はやがて魔力へと変わって水晶に蓄積された。
いつしかその魔力により水晶は意思を持ち、やがてそれはへと変わっていった。

そんなおり世界は戦火に包まれ、神社もそれを守り続けてきた柏手家もみんな燃えてしまったそうだ。

その時。燃えさかる炎にも怖ずに、最後まで御神体ごしんたいの水晶を守ろうとした男がいた…。
それが、俺の父の高祖父こうそふだった…。

水晶はこの男の想いを強く感じ取り、この男を守るため、空間魔法で男の体を包み火の手から命を救った…。
この時にはもう、思考や感情すらも水晶にはあったのだろう。

この出来事をきっかけに力が開花した水晶は、女神へと姿を変え空へと消えていった…。

長い時を経て男に残った魔力は血筋を流れ、男のみに受け継がれていったのだった。

そして俺の両親が死んだ時、その魔力は俺へと受け継がれたと言うことだった。



次に、俺がこの面接に受かった理由だが…。

その質問に対しての答えは何か意味深で、完全には納得できなかった。

『ただわしは君に、恩返しがしたかったのじゃが……もちろん人とを見ないわけにはいかないじゃろう?』

(人となりは問題ないと言うことか?でも恩返しって……)

もっと具体的に聞きたかったのだが、お爺さんはそのまま次の質問の話しを続けてしまって、これ以上は話さなかった…。




そして最後の質問、の意味について…。

薄々は気づいていたが、やはりこのお爺さんの正体は 時空の神 だった。
と言っても、お爺さんは二代目の神で初代は最初の話に出ていた女神…。

そして、と言うのはお爺さんの名称で、もともと名前が無いそうだ。

時空の神とは文字通り、時間と空間を操る神の事を言い、その力は使う者の魔力の多さによって、星を作り世界を作る事も可能だそうだ。

そして、時間や空間を操ると言う事は、他の者の記憶を見たり、生き物や人間や物といった形あるものを別の空間に運んだりなど容易たやすい事だそうで…。
もちろん俺の記憶も見たと申し訳なさそうに話してくれた。



『どうじゃ、答えになったかのぉ?』


俺は色々と納得がいってしまった。


「はい、とても勉強になりました。ありがとうございます。」


俺は一度立ち上がり、深々とお辞儀をした。
お爺さんはニコニコしながら頷いていた。


『さて、長い話も終わったことじゃし。これから君の業務内容でも伝えようかのぉ。』




お爺さんはそう言うと、椅子から立ち上がり俺の隣に来た。
俺もすぐに立ち上がり、お爺さんはパチンと指を鳴らした。






「おぉ!これは凄いですね!」





空間が変わり、周りを見渡すとそこはキラキラ光る星が散りばめられた宇宙だった。



『さぁ、足元を見てみるのじゃ。』




俺は言われた通りに下を見ると、そこには俺の居た地球らしき星があった…。


(ん?……)

「ここは…良く見たら地球じゃない…ここは何て言う星なのですか?」



確かに青い海と緑の大地、けれども俺の知っている陸地の形はどこにもない…。



『ここはかつてわしと母の作った世界じゃ。まぁ、あえて君らの言葉で言うならば……異世界じゃな。そして今日から君にはあそこで働いてもらうのじゃ。』


「えっ……!?」


俺はてっきり、お爺さんとあのエルフの男の部下になって一緒に働くのだとばかり思っていたので予想外すぎて頭が真っ白になった。


『ん?なんじゃ、不満か?』


お爺さんは不思議そうな顔で固まった俺を見ている。


「あっ…いえ!少しばかり予想外だったもので…。」



お爺さんは振り返ると、穏やかな優しい笑みを浮かべて言った。


『だから言ったじゃろ?わしは恩返しがしたいのじゃと。わしはお前の過去も後悔も何もかもを知っておる。今まで本当に、よく頑張って来たのぉ。』



「…………。」


人生のほとんどを孤独に生きていた俺を隣で認めてくれる人が、まさかこんな所に居たなんて…。
そして、それを引き合わせてくれたのが俺のご先祖様と死んでしまった両親…。



『じゃから…君の職場は今日からこの異世界で、業務…つまり仕事は、自由かつ好きに生きることじゃ。』


いつの間にか、俺の目頭は熱くなっていた…。

正直とても嬉しかった…ただただ本当に嬉しかった。
俺は親指でこぼれそうな涙を拭き取り、少し大きな声で返事をした…。


「はい!」



『うむ。良い返事じゃ。では、一旦戻るかのぉ。』

お爺さんはそう言って微笑むとまた指をパチンと鳴らした。


音が鳴り止むと同時に、俺たちは元の部屋に戻っていた…


『さて、ミツキ君。わしから君に贈りものを渡そうと思うのだが…。』


お爺さんは少しだけ気恥ずかしい表情をしていた。

「はい…。私はありがたいのですが…よろしいのですか?」



お爺さんはそう大したものじゃないからと、椅子に座るよう言い、俺はすぐに腰を下ろした。


『ただ…その前にもう一つだけ、わしの質問に答えてくれないかのぉ?』


お爺さんはそう言うと俺の目の前まで歩いて来た。


「はい、構いませんが…。」


俺はもしかして、さっきみたいに凄んで来るんじゃないかと心の準備をした。


『そうか、では君の人生の中で、一番楽しかった頃を思い出して欲しいのじゃが……できるかのぉ?』


口調も優しいままで内心ホッとした…。


「はい。やってみます!」


俺の一番楽しかった頃の記憶かぁ…。



(ん~~~)


俺は目を閉じて、人生で一番楽しかった頃の記憶を探した。


(ん~。あれでもないし、これでもないし。)


脳内の記憶をフルで巻き戻して、俺は過去へと遡っていった。


(ん~、やっぱこれかな…よし!)



「……思い出しました!」



『うむ。ではそのまま目を閉じ、できる限り強く思い出すのじゃ。』


お爺さんはそう言って、俺のおでこに手を当てた。


『ふんっ!!』


………………


(あぁ…なんだろ…。記憶がどんどん鮮明になっていく…。それに、とても温かい…。)


俺が一番楽しかった頃の記憶の中に居た。

それは中学1年の13歳の時…。
小学校から解放されて新聞配達やラーメン屋の皿洗いとか、八百屋の客引きとかを前からやってて…。

そう、やっとお小遣いからお給料に変わった頃だ…。

この頃の俺は、環境が変わり制服も変わり、やっと少しだけ大人に近づけた事が何よりも嬉しかったっけ……。


俺が記憶を満喫してたら身体がポカポカと温かくなってきた…。
そして少しずつ、周りの景色が白く光りだし、俺の身体もその温かい光にゆっくりと飲み込まれていった…。


……………………


『うむ、もう目を開けても良いぞ。』


「……………。」


俺は目を開けるとお爺さんが満面の笑みを浮かべていた…。


(あれ?俺、寝てたのかな…。)


「ふわぁ~あぁ………あっ!?」


俺は思わず大きなあくびをしたと同時に、異変に気がついた……。


「あっ…あれ!?声が…なんで?」



そう、どんな時も大人の余裕を感じさせた男らしい俺の声が…。
声変わりする前のなんとも少年らしい声になっていたのだ……。



『ほれ。声だけじゃないぞ、身体もよく見てみるのじゃ。』



お爺さんは指をパチンと鳴らすと、豪華な姿鏡を出した。


(…………えっ?)


俺は自分の身体を見て思わず叫んだ…。


「ぎゃあぁぁぁー!!」



腕も足も身長も…何度確認してみても。


「短くなってるーぅ!!」


先程までビシッと着こなしていたあのスーツもシャツもネクタイもズボンもパンツも靴も…。
見る影もなく全てダボダボになっていた。




『これは、わしからの贈りものじゃ。君の一番楽しかった頃の姿から、あの世界で第二の人生を歩んで欲しいと思ってな。』



「あ…ありがとうございます…。」


鏡にうつった俺の表情に、もはやビジネススマイルの影はなく。ただただ普通の少年の汚れのない笑顔だった。


(なんか複雑~)


お爺さんはまるで孫を見るような目でこちらを見ている……気がする。


『まだまだあるぞ。』


そう言うとお爺さんはまた指を鳴らす。
すると今度は、おれの服装がダボダボなスーツ姿から一瞬で様変わりした。


(この格好は…!!)


「おぉー!かっこいい!!」


長袖で青色のインナーに黒いズボン、頑丈そうな革の胸当てに革の肘&膝当て、革のブーツに革の腰ベルト、そして左脇には短剣。

まるでRPGゲーム初心者の初期装備だが、男なら一度はこの格好に憧れないはずがない!



「本当に!ありがとうございます!!」


俺はついテンションが上がってしまい、鏡の前で色々な角度から全身をくまなくチェックしたのだった。



『喜んでくれて何よりじゃ…では最後にもうひとつ。』


「まだあるのですか?」


俺は正直、こんなにたくさんのものをいただいてしまって少々気が引ける…。


しかしお爺さんは、そんな事気にもしないと言う感じで、俺の後ろに立ち両肩に手を置いた。

俺はただ、鏡越しに映るお爺さんを見ていた…。

お爺さんは鏡越しに俺に微笑むと、ゆっくりと目を閉じた。


数秒後、お爺さんの手がだんだんと白く光り、俺の身体の奥深くに温かいものがどんどん入ってくる…。

そして、しばらくすると光はゆっくりと消え、お爺さんは一息つくと俺の両肩をポンっと叩いた。




『これでわしからの贈りものは以上じゃ。』



光のせいなのか、俺の心はまたポカポカしていた。



「はい…本当にありがとうございます。」


俺はこの時、お爺さんから何を貰ったのか、なんとなく分かっていた。
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