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第一章 ー始まりー
いざ、異世界へ…
しおりを挟む『さてじゃ、わしが君の記憶を見てきた限りこのまま職場に放り出すのは、少しばかり酷だと思うのじゃ…』
お爺さんは何か考えながら自分の椅子に座った。
「いえいえそんな!俺はもう大丈夫ですよ!十分に貰い受けましたので!」
(これ以上何かを頂くのはすごく気まずい…。それに社会人の一人としての俺のプライドが……)
目の前の姿鏡がフワッと消えて俺はお爺さんと向き合う。
『まぁまぁ、子供が遠慮するんじゃないのぉ。』
(…子供……。)
俺のココロの中で何が砕け散る音がした…。
『そうじゃな…。やはり仕事を教える上司は必要じゃな。』
(…なるほど。)
確かに俺は、これから行く異世界の事は何も知らない。何となくゲームみたいな感じで魔法があることは分かるけど…これは現実であってゲームじゃない。
つまり、怪我をすると痛いし下手をすれば死ぬと言う事だ…。
お爺さんはそうならないように教育してくれる人をつけてくれると言う事なのだろか…。
コン コン コン ガチャ
「失礼します。」
突然あのエルフの男が入ってきた…。
『うむ。呼んだのは他でもない、実は…』
「はい存じております。全て聞いてましたので、それでは急ぎ行ってまいります。」
エルフの男はお爺さんの話を遮るようにそう言うとスッとその場から消えて行った…。
「………。」
俺は一連の流れの早さに頭がついていけずに固まっていた。
『すまんのぉ。あの者は昔からあぁでのぉ…せっかちと言うかなんと言うか。』
お爺さんは困った顔をしながらため息をついていた。
(空気が少し気まずい……。)
このまま会話を続けなければもっと気まずくなると思った俺は、質問をすることにした。
「あの、質問してもいいですか?」
『うむ。なんじゃ?』
俺はエルフの男がここに来たとき、お爺さんがどうやって呼んだのかが気になっていた。
「今の呼び出しも魔法の力なのでしょうか?」
お爺さんの表情が元に戻り、少し笑ってから言った。
『そうじゃ。あれは 時の魔法 の一つじゃ、どれ…少し試してやろうかの。』
お爺さんがそう言うと、俺の頭の中に直接声が聞こえてきた。
((どうじゃ~聞こえるかのぉ~))
((おぉー声が直接聞こえる!!))
目の前にいるお爺さんはニコニコしながらこっちを見ている
((なんだか、嬉しそうだ…))
俺もお爺さんの笑顔を見てると、なんだか嬉しくなった。
((君はやはり優しいのぉ~))
((しまっ……す、すいません…。))
俺はなんだか恥ずかしくなり俯いた。
『まぁ、ざっとこんなもんかのぉ。』
どうやら魔法は解けたようだ…。
(ふぅ~、慣れるのは時間がかかりそうだ。)
「なるほど、これは便利ですね…。」
実際の気持ちは複雑だ…。
使い方によっては俺の頭の中のあーんなことやこーんなことまでバレてしまうのだから…。
『この魔法は魔力が強ければ強いほど扱いが難しくなるんじゃ。もちろん誰でも使えるわけじゃないがのぉ、じきに君にも使えるじゃろう。』
お爺さんの顔が少しドヤ顔に見えた…。
(やっぱり、さっきの贈りものって…。)
「はい。本当になにからなにまでありがとうございます。」
俺はずっと考えていた、こんなにたくさんの贈りものを頂いて何もお返し出来なくていいのかと…。
だが、俺に贈れるものってなんだろうか?
そもそもこんな凄い人に喜んでもらえる贈りものなんてあるのだろうか…。
俺は目を閉じ、集中して考えた…。
(ん~~)
考えろ…俺に出来る事で相手に喜んで貰える贈りものを…。
(俺にあって、相手にはないもの……)
『考え事かのぉ、ミツキ君?』
「……!?」
(そうだ!!名前だ!!)
「あの!!大変失礼かもしれませんが!」
俺は勢いよく立ち上がり、机の側まで歩いた。
『な、ななんじゃ?』
お爺さんは少し驚いているようだ。
「私…いや俺……いや僕にっ!!貴方様のお名前を付けさせてもらえませんか!!」
俺は深くお辞儀をした後、お爺さんの顔をじっと見つめた。
お爺さんは驚いていた顔を笑顔に変え、嬉しそうに言った…。
『ありがとう。では、よろしく頼むかのぉ。』
(良かったぁ~。)
俺は心からホッとした…。
相手は優しいお爺さんでも神だ。
そんな高位の存在に対して名前をつけるなど本来はバチが当たると言うものだ。
「ありがとうございます!!では…」
俺はお爺さんと出会ってから今までの事を思い出した。
お爺さんの能力…人柄…これまでの話してくれた歴史…。
女神様にも確か名前はなかった。
もしかしたらお爺さんは、時空を操る神として生まれたが故に、名前をもてなかったのかもしれない…。
俺が思う時間や空間などは、感じとるもので、それこそ魔法とかがないと普通は可視化して見れるものじゃない。
それに俺は、あのお方と言う言葉を聞いた時からモヤモヤしていたし、お爺さんから名前は無いと聞いた時、頭の中は「 」が浮かんでいた…。
(そうだ!!「 」を言葉にして、名前にしよう!!)
「……空白様。空白と言う名前はどうでしょう??」
『…………』
お爺さんは黙ったまま目を閉じ、腕を組んで目を開いた。
『……採用じゃ!!!』
そう言うと、突然お爺さんの身体が光り出した。
その光りは部屋全体を照らす程強くなり、そして光りだけがお爺さんの身体から抜けて、天井へと消えて行った…。
「一体、何をしたのですか?」
俺が尋ねると、空白様は笑いながら言った。
『なぁに、わしの名前を世界に知らしめただけじゃ。』
俺は訳がわからないまま、その場で立ちすくんでいた…。
すると、空白様の側にエルフの男が現れた。
「只今戻りました空白様。それでは報告します。」
『うむ。』
空白様は先程とはうって変わってニコニコと嬉しそうな顔をしている。
「例の件、承諾していただけましたので用が済み次第引き受けるそうです。」
『そうか、ならもう少……』
空白様が言いかけたとき、エルフの男はこめかみに指を当てて言った。
「たった今、用事は済んだと報告がありました。これで問題もないでしょうし私は他の仕事を片付けて来ますので。」
『う…うむ。ごく』
「では空白様、失礼します。」
空白様がねぎらいの言葉を言う間もなく、エルフの男は消えて行った…。
『………。』
「………。」
(俺あの人嫌いだぁ~)
また気まずくなるなる前に会話しようとあたふたしていると。
『わしに気を使わなくても良いぞ、あの者もいずれ分かる時が来るじゃろうからのぉ。』
空白様はまた笑顔でそう言った。
「はい…。」
俺は何とも言えない感情のまま返事をした…。
『さて、向こうの準備も出来ておるみたいじゃし、そろそろ送り出すとしようかのぉ。』
空白様はそう言って立ち上がると、両腕を広げ眼を閉じ身体から光を放った。
『良いか、これから君の上司の所へ転送する。しっかりと学び、己の仕事を全うするのじゃぞ。』
そう言うと、俺の足元に大きな白い輪が現れ、輪の中に模様が描かれていった。
「はい!本当にありがとうございました!」
俺は深々と頭を下げ、お礼をした。
足元の輪はやがて魔法陣となり、光の柱に包まれた俺は、静かに目を閉じたのだった…。
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