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第一章 ー始まりー
始まり
しおりを挟む目を覚ますと、外にはまだ日が出てなかった。
時間はおそらく朝の5時半くらいだと思う。
(そう言えば、この家には時計がないけど、そもそもこの世界にあるのだろうか…。)
「ふぁ~。」
俺はベットから起き上がり、窓を開けた。
(あぁ~風が気持ちいい~)
窓の外を見ると、1階の調理場の窓から明かりが見えた。
(もう、起きてるのかな?)
俺は部屋を出て、1階へと降りた。
どうやら明かりは調理場だけだった。
俺は、顔を洗う前に、調理場を覗いた。
(レイナさんか…メイドは大変な仕事だな。)
「おはようございます、レイナさん。」
「あっ、おはようございますミツキ様、もう少しで朝食が出来ますので…」
「あぁ、いえ、そんなお気遣いなく。俺は顔を洗って来ますので…。」
(なんか焦らせちゃったみたいで申し訳ないな…。)
俺はとりあえず、用を足しながら顔を洗ってくる事にした。
(歯ブラシがあればなぁ~このミントの味がする茎を裂いた棒じゃ奥歯を磨くのが大変だ…)
俺が戻ると、レイナさんが温かいお茶を入れてくれていた。
「ミツキ様、お茶を入れたのでよければどうぞ。」
「ありがとうレイナさん、いただきます。」
(そうだ、黙って見てるのも気まずいし、時計の事聞いてみよう…。)
俺はお茶を飲んでからレイナさんに聞いてみた。
「あの~。レイナさんは、何時から起きてたんです?」
レイナさんは少し驚いてから、不思議そうに答えた。
「えぇっと、私は4時頃に起きましたけど、どうかしたんですか?」
(なるほど…あとは…。)
「あっ、いえ。レイナさんは時計って知っていますか?」
(これで答えが出る筈だ…。)
「えぇ、知ってますよ…ほら!」
そう言って、首に掛けていた懐中時計を見せてくれた。
(あるんかーい!しかも数字は元の世界と一緒か…。)
「あの、それってどこで手に入りますか?」
(やっぱ時計は欲しい、時間の把握も社会人の鉄則だ。まぁ、今は13歳だけども…。)
「えぇっと、確か大きな街に行けば手に入りますけど、もの凄い高価なものでして、これはティアさんから借りているものなんです。」
ティアは不思議そうな顔でそう言って、時計を胸元にしまった。
「あの、ミツキ様は、執事や使用人を目指しているのですか?」
(………何故?)
「いえ、そう言う訳じゃないんですが、どう言う意味なんですか?」
レイナさんは丁寧に教えてくれた。
要するに…。
• まず、時計は凄く高価なもので、一般人にはそもそも買えないし、買う意味がない。
• 中身は凄く精密でドワーフ族の職人が作り、時間魔法を習得している者がその中に、魔法陣を埋め込んで初めて、機能を発揮する。
• そして時計は、執事やメイド長などが主人から与えられ、責任をもって時間を管理する。
と言う事だった。
(なるほど…。)
「なので、皆様の起床時間や朝食、昼食、夜食、旦那様や皆様のご予定やお約束が入れば、そのお時間の管理まで、これがここでの私の仕事になります。」
(まだまだこの世界に慣れるのは時間が掛かりそうだ…。)
「教えてくれてありがとうございます。」
俺はどうも仕事体質なようで、頭の中では常に何か出来る事はないだろうかと考えていた。
しかし、それは相手の仕事を奪う事でもあり、ありがた迷惑になる事もある。
俺のここでの仕事は訓練と勉強だ。
なら、俺は…俺の仕事に責任を持ないと皆に迷惑をかける事になる。
(よし、気まずいなんて失礼な事を考えるのはやめよう。それぞれにやるべき仕事があるんだ。)
俺があれこれ考えていると、レイナさんが優しく言った。
「大丈夫ですよ、皆んなを信じて下さい!あっ、朝食も出来ましたので、私は皆んなを起こして来ますね。」
「はい、本当にありがとうございますレイナさん。」
(皆んなを信じて…か。)
俺は、過去の自分を思い返していた…。
俺は両親が死んでしまった時からきっと、自分だけを信じていたんだと実感した。
(本当に、この世界に来れて良かった…。俺もまだまだ子供のようだ…。)
窓の見ると、空は段々と明るくなって来ていた。
俺は、今までの大きな心のつっかえが消えていくような気がした。
それからしばらく経ち、2人も起きて来た。
『もう起きてたのかい?ミツキ君はやる気満々だね~私は嬉しいよ。』
「鍛えがいがあります。」
(2人共凄く嬉しそう…。)
「はは…頑張ります…。」
朝食後、俺とティアさんは訓練場へと向かった。
(いよいよか…。頑張るぞ!)
「では、訓練を始めます。」
「はい!よろしくお願いします!」
俺は初めに、体術における基本的な考え方と動作方法を教えてもらった。
体術は言わば己の肉体を削りながら戦うもので、いかに自分ダメージを抑え、相手に大きなダメージを与えるか…。
そして、攻撃、防御、回避…
いかに攻撃を防ぎ、または避け、致命打を与えるか…。
それから一番重要な事、いかに早く決着をつけるか、だった。
「では、実践形式で行います。」
「よろしくお願いします!」
意気込んだのは良かったけど、それはそれはボコボコのボコにされた。
「痛ってぇ~!!」
「もう、終わりですか?」
俺の攻撃は全て当たりもしない。
ティアの攻撃を避けようにも身体が防御に入る、しかし防御したとて、ティアの一発は重い。
(なら、まず意識するのは…。)
俺はまず、攻撃を避ける事を意識する事にした。
「まだです!お願いします!」
俺は立ち上がって構えた。
「よろしい、では行きますよ。」
「はい!」
俺は集中して、ティアの動きを見る…。
攻撃が来ると、足が止まってしまう。
(止まるな!動かせ!)
俺は強く自分の体に命令を出す。
(よし、動く!後は…)
「ブッ…。」
俺はパンチをもろに受け、後ろへ飛んだ…。
(痛ぇ…でも目を閉じずに見えた。これなら…)
俺は直ぐに立ち上がり、集中して構え、ティアの顔を見た。
「良い顔です、行きますよ。」
ーしばらく後ー
あれから、何時間経っただろうか。
ボロボロなれば、その度にティアが治癒魔法をかけてくれる。
そのおかげで俺も段々と怖さが無くなって、身体も言う事を聞いてくれるようになってきた。
最初は、1~2発で吹っ飛んで俺も、徐々にだが、4~5発ほどはかわせるようになって来た。
しかし、かわすのが精一杯で攻撃にはなかなか繋げられない。
「フゲェー!!」
俺は腹にパンチをもらい、変な声と共に後ろへ飛んだ。
俺が腹を押さえて倒れていると、ティアがクスクス笑った。
「君は殴ると色んな声が出るので面白いですね。」
(俺は楽器か何かですか…。)
「………。」
俺は上半身を起こしてティアを見る。
「ウフフ、冗談ですよ。少し休憩にしましょう。」
ティアはそう言って近づくと、治癒魔法をかけてくれた。
「ヒール。」
「あはは…何度もすいません…。」
身体の傷がみるみる無くなっていく。
「ありがとうございます。」
「お礼なんてしなくてもいいですよ、これも私の仕事なのですから。」
「はい…。」
俺は、ティアからアドバイスを貰いながら、心と身体を休めた。
応援ありがとうございます!
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