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第一章 ー始まりー
この世界に来て3年
しおりを挟む弓術訓練と医学勉強が始まったあの日からもう1年…。
俺はやっとの思いで、全ての課題をクリアする事が出来た。
弓術は、コツを掴むのがかなり早かったお陰で、難なくクリアできたのだが…。
医学はそうは行かなかった…。
毎日毎日頭を抱え、弓術訓練が終了した事をいいことに、ディーアは丸一日を医学に当てた…。
少しずつ医学を覚え始めた時、どうしても外に出たくて、ディーアに懇願し、週に1回の午前中だけティアに体術と剣術の修行を手伝ってもらった。
そして、半年で医学を叩き込み、再生魔法を使えるようになる為と言って、ディーアは空間魔法で怪我をした様々な種族を俺の部屋に連れて来るようになった。何度何度も治し、時には手や足が取れた者の四肢を繋げたり、致命傷を負った者も来た。判断を誤ったり遅かったりしたら死ぬ。
何とも言えない感情の日々、正直しんどかった…。
でも、皆んなに励まされ、助けられて、俺はどうにかこの地獄を切り抜ける事ができ、やっと再生魔法を習得する事が出来たのである。
俺は再生魔法習得後、ディーアにこんな事をして、誰かに恨まれたり仕返しされたりしないのか聞いたが、どうやら時間魔法で、治療の記憶を消して、元に帰していたらしい…。
そして、歴史、地理、古代学。これらはディーアが世界を歩き、集めた情報に基づくものだった。
様々な種族の歴史や国、氷の土地や燃える土地。各地にある古代遺跡や太古の生物ドラゴン、俺は物凄く心が踊った。
ちなみに、算術は元の世界と数字が同じだったので楽勝だった。
そんなこんなで、今日で俺は16歳になった。
この世界来て早3年…。
様々な事をここで学ばせてもらった。
そして、夢も貰った…。
皆んなには、本当に感謝してもし足りない程だ。
でも、明日、俺は旅に出る。
半年前にディーア達に言ったら、少し寂しそうな顔をしていたけど、止めはしなかった。
今では喜んでもいる。理由は、俺にも空間魔法と時間魔法が使えるようになったからだ。
これで俺達は、離れていてもテレパシーで連絡が取れるし、行った事がある場所には空間移動も出来る様になった。
そして今日、当分会えなくなるからと言って、ディーアが俺の魔力の解放をしてくれるそうだ。
『まさか、あの君が旅に出るなんてね。』
ディーアは懐かしんでいるようだ。
「はい、ディーアの世界を周った話を聞いた時から、いつかはと考えていました。」
俺はお茶を飲んだ。
『そう言えば、明日旅立つ君にお願いがあるんだけども。』
ディーアはレイナを呼んだ。
「お呼びですか?旦那様。」
『君も、明日街にもどるんだよね?』
「はい、皆様とのお別れは寂しいですが、私は元の生活に戻ります!」
(だから荷物をまとめていたのか…)
「それで、頼みって言うのは?」
『あぁ、君に街まで、レイナの護衛を頼みたいんだよ。』
ディーアは笑顔で言った…。
(えっ?ディーアが空間魔法で帰してあげればよくね?)
なんて、言う事もできず…。
「もちろん!喜んで!」
と、俺は笑顔で答えた。
「ありがとうございますミツキさん!」
レイナの笑顔が眩しかった…。
『いやー、助かるよミツキ君、ちなみに私とティアも旅に出る事にしたよ。』
俺はまさかの新事実に驚いた…。
「えっ?旅と言うのは?」
(まさかついてくるんじゃ…。)
『いや、ちょっと気になる事があってね、また世界を周りながら、古代遺跡を調べようと思うんだ。』
(なるほど…知識欲には敵わないんだなこの人…。)
「師匠も行くのですか?」
俺は隣でクールにお茶を飲んでいるティアに聞いてみた。
「えぇ、私も今初めて聞きましたが、ご主人様の為なら何処へでもついて行きます。」
(ご主人様に戻ってる、懐かしいな~てか今知ったんだ…。)
『まぁ、そう言う事で、この家とは今日でお別れだね。なんならミツキ君が使いたい時に使ってくれても構わないよ。』
確かに、空間移動を使えるのは俺とディーアだけ、もしまた皆んなが集まる可能性があるのはこの家だけだ…。
「分かりました!そう言っていただけるのであれば、使わせてもらいます!」
(そうだ、いつかまた、みんなで…。)
『好きに使って構わないよ、でも、たまに掃除と庭の芝の手入れをしておいてね。帰る時は前もって連絡するから。』
ディーアは笑顔でそう言った。
(あーこいつ!上手く管理を押し付けたな!)
「はい…。任せて下さい…。」
俺は心の中で、このエルフには一生敵わないと思った。
『さて、じゃあ日が落ちる前に、ミツキ君の魔力を解放しようか。』
そう言って、ディーアは立ち上がった。
『解放は訓練場で行うよ、この家に被害があったらたまらないからね。』
「はい…。よろしくです。」
ディーアはレイナとティアも同行させた。
『じゃあ、皆んなで行こうか。』
こうして、俺達4人は、訓練場へと向かった。
「ディーアさん、どうしてレイナと師匠も?」
俺は歩きながら楽しそうにしているディーアに聞いた。
『理由は簡単だよ、もし、君が魔力の制御に失敗して魔力が暴走しても、私ならあの2人を守れる。』
(2人?俺は?)
「あの~俺は?」
『君はおそらく、失敗した時点で粉々に吹き飛ぶと思うよ。』
ディーアはニコニコしながら答えた。
(いや、笑顔で言う事ですかねそれ…。)
そんな事を思っている内に、訓練場へと着いてしまった…。
「…………」
俺は何だか緊張してきた…。
『2人はそこに居てね、ティアは失敗したらすぐに魔法で防御壁を出してレイナを守って、私はすぐに空間魔法で君たちとここから離脱するからね。』
「承知しました、ご主人様。」
「ミツキさん!頑張って下さい!」
「はーい。」
俺は、何とも覇気のない返事だと、自分でも思った。
『よし!じゃあ始めるよ、ミツキ君はこっちへ来て座ってくれるかな。』
俺は言われた通り、訓練場中央で待つディーアのところへ行き、正座で座った。
『あれ?緊張しているみたいだけど大丈夫かい?』
(このやろう…一体誰のせいだと…。)
「はい、少し緊張してます。俺、大丈夫なんでしょうか…。」
すると、ディーアが後ろに立ち、俺の頭に手を置いた。
『大丈夫だよ、これまで君は、あの厳しいティアの訓練にも耐え、私の知識も自分のものに出来た、それに、君の魔法はオリジナル性が高く、私でも真似できるのは少ない。そして魔力操作はもう私をとっくに超えているよ。後は、自分と、私達を信じて。』
俺の中から、嘘のように緊張が消えていった。
まさか、ディーアがそんな事を言ってくれるなんて…。
「ありがとうございます!先生!」
そう言うと、ディーアは俺の両肩に手を置いた。
『いいかいミツキ君、解放後、恐らく魔力は、身体から外に出ようとするはずだ、君はそれを押さえ、身体に馴染むまで魔力をコントロールする事だけ考えるんだ。馴染みさえすればこっちのものだからね。』
「はい、先生!」
俺はそっと目を閉じ、自分の魔力に集中した。
『 じゃあいくよ! 魔法解除!! 』
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