異世界就職!?

pさん

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第二章 ー旅立ちー

リックとモリス

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「ま、待って下さい!誤解なんです!」

彼はそう言って、地面に頭をつけた。

「実はあの後、仲間達が目を覚まして、兄貴に言われた通り、説得したんです!でも、聞いちゃくれなくて…」

俺は魔力を抑え、話を聞くことにした。

「それで、あいつら、そんな弱腰な奴は仲間じゃねーって言って、縄が解けたら俺をぶっ殺すって言ったんです。」


(はぁ~、説得は失敗か。)

「それで、俺達を追っかけて、逃げて来たと言うことか。」

俺はため息をついて考えた。
心を入れ替えてくれたのはいいが、まさかこんな面倒な事になるとは…。


「それで?あいつらはまた追って来るのか?」


(本当に懲りない奴らだ、できれば街に入るまでに片付けたいな。)

すると、彼は意外な事を言った。

「いえ!奴らはもう追っては来ないと思います!」

彼は顔を上げて、真っ直ぐな目で俺を見た。

(嘘は言ってなさそうだが…)

「それはどういう意味だ?」

俺はその目に免じて、もう少しだけ話を聞く事にした。

「はい!奴らに、兄貴達が何処へ向かったのか聞かれましたので、もう一度気絶させました。それに、兄貴が置いてくれた奴らの武器も、全て川に投げ捨てたので、もう追ってこれないと思います!」


こいつ、金髪でチャラチャラしてるが意外に頭は回るみたいだ…。


「よし、事情は理解しました。それで、ここへは何をしに?」

俺が警戒を解いたのを確認して、モリスさんとレイナも警戒を解いた。

「はい、俺、兄貴に言われて正気に戻ったんです、金を稼ぐ為とはいえ、あんな事はやっぱり間違いだったって。」


「なるほど、心を入れ替えてくれたのなら、俺も嬉しいですよ。」


「はい、あのような事は2度としません!なので、俺を兄貴の子分として、側に置いてくれませんか!お願いします!!」

彼はそう言って、また地面に頭を付けた。

(えぇー!!!)

俺は困った、正直こうなったのは俺の責任もあるだろうけど、こんなつもりで脅しをかけた訳じゃない。
それに、俺はまだ仕事すら付いていないし、何より、正直に言えば、子分なんていらない…。

(困ったな…でも、本気なのは分かる…)

「まぁ、返事は後にして、とりあえず飯でも食べます…?」

そう言うと、彼は何度もお詫びとお礼を言った。

(根は悪い人じゃなさそうだ。)

その姿を見て、2人も安心したようで、ニコニコと笑っている。

(でも、その前に。)

「その前に、あなたには謝るべき人が居ますよね?」

俺は彼を悟すように言った。

すると彼はすぐに察し、モリスさんのところへ飛んで行き、ひたすら土下座して謝った。

モリスさんは、困ったような、嬉しいような、複雑な表情をしていた。

(仕方ない、俺も少し手を貸してやろう。)

「モリスさん、俺からもお願いします。根はいい奴だと思いますので、どうか、許してやって下さい。」

俺がそう言って、モリスさんに頭を下げると、彼がうるうるした目で言った。

「兄貴ぃ~」


(あぁーむず痒い!)

「兄貴はやめて。」

そう言うと、しゅんとした顔で俯いた。

それを見たモリスさんは、笑いながら言った。

「そうですね、私の商人としての人を見る目もまだまだ衰えてはいないようです。確かに彼は、元盗賊ですが、心から後悔し、謝罪している事は、伝わってきました。」


「なら…」

彼は、頭を上げて、モリスさんを見つめた。
モリスさんは、彼を見て、笑顔で頷いた。

「はい、許してあげましょう。」


モリスさんがそう言うと、彼は喜んで、何度も頭を下げながら、お礼を言った。

俺は、レイナと顔を合わせて、2人で笑ったのだった。


それから、彼に残っているシチューを与え、自己紹介を行った。

「俺の名前はリックです!飯までいただけて、本当に感謝してます!」

相当、腹が空いていたのだろう、皿の中のシチューはみるみる内に無くなっていった。

「俺はミツキ、よろしく。」

「私はレイナです。」

「私は商人を生業にしているモリスと言います。」

俺達は、各自、自己紹介をした。

リックは腹を満たして落ち着いたのか、少し表情が柔らかくなっていた。

(しかしよく見ると、爽やか青年と言うか、盗賊には似合わない容姿だよな、チャラいけど。)

「それで、リックは何で盗賊なんかにいたんだ?」

俺が質問すると、リックは皿を地面に置いて、改まって話した。

「実は、この先のクオークって街に、俺の両親と兄妹で住んでたんッスけど、俺の母は飲んだくれのクソ親父に痺れを切らせて、俺と弟だけを残して出て行ってしまったんッス。幸い、1番下の妹は母に引き取られたので大丈夫だったんッスけど…。親父は仕事も上手くいかず借金まみれになり、ある日から俺と弟に暴力を振るうようになったんッス。」


「家庭の事情ってやつか…。」

俺は、どこの世界にもあるんだなと思った。

「はい、それで、俺も借金返済の為に、あっちこっちで働いて、どうにか金を作ってたんッスけど…。」

リックは、悔しそうに拳を強く握った。

「ある日、家に、成り立ての奴隷商人がやって来たんッス…。そして、金に困ってたクソ親父の野郎が、金に目が眩んで、俺の大事な唯一の弟を売りやがったんッスよ。」


「………。」


俺は、言葉を失った…この世界には奴隷と言う存在がいる…。
すると、俺が考えている事を察して、モリスさんが話してくれた。

「確かに、奴隷商売は若ければ若いほど儲かると聞いた事があります。あぁもちろん私はそんな事はしませんが、恐らく親父さんはかなりの大金を得たでしょう。」

(胸糞悪い話だ、我が子を売ってまで金を得るなんて…。)

「ミツキさん、私もミツキさんには良いように街の事を話しましたが、そう言う闇の部分があるのも事実なのです。」

確かに、俺はレイナが元奴隷と言うのは知っている、そして、レイナが俺に気を使って街の話をしていた事も…。
やはり、それでも俺はショックだった、いや…心のどこかでは、俺には関係のない事だと安心しきっていたのだった。

「モリスさん、レイナ、ありがとう。続きを聞かせてくれませんか?」

俺は、気を使ってくれた2人にお礼を言って、リックに続きを聞かせてもらった。

「あ、はい兄貴…それから大金を得た親父が憎くなり、俺は親父を殺しました。夜中に荷車で街の外に連れ出し、魔物と動物のエサにしてやったんッス…。それから親父の大金を持って、奴隷商人の所へ行き、喉に短剣を突きつけながらお金を返し、弟を連れ戻しました。」

(どうやら、根性はあるようだ。)

「それから、弟を信頼できる知人に預けたのですが、俺は街で奴らに見つかり、その腕を買われて盗賊になったんッス。」


「なるほど、それで今、弟さんは?」


「はい!無事ッスよ!俺は合わせる顔がないので、稼ぎだけやつらにバレないように届けてました。」


俺は、今の話を聞いて、リックの能力を分析した。

度胸も根性もある、人としての思いやりもある、頭も悪くはないし、隠密行動もできるみたいだ、それにこれまでも色んな困難を乗り越えてきただろうし、この若さでここまでしっかりとしてるなら、何にでもなれそうだな…。


俺が考えていると、モリスさんがリックに質問した。

「リック君、うちで働く気はないかね?」


レイナと、リックが驚いて固まった。
どうやらモリスさんも、俺と同じ分析をしていたみたいだ…。

「え…。こんな俺でもいいんッスか…俺はモリスさんに酷いことを…」


「それはさっき許しただろう?それに君は良い人間だ、商人にも向いている。」

モリスさんはそう言って微笑んだ。


「でも…俺は…」


「いやぁ、実は近々自分の店を出そうと思っててね、商人を仕入れるのにも、腕が立つ人材が必要だし、荷物を運んだり、店を掃除する人材も必要だ。」


(なるほど、モリスさんは弟さんも一緒に雇うと言いたいんだな。)

俺も少し手伝うか…。

「あ、あー。えぇーっと、お店の掃除や荷物の運搬なら、子供でもできますねー。しかし、リック君が1人で全部となると、それは厳しそうだなぁー。それに俺には旅もあるしー街にずっとは居られないしなー。」


俺がそう言うと、リックは気がついたみたいで、キョトンとした顔が笑顔になっていった。



「あ、ありがとうございますモリスさん!荷物運びや掃除なら!俺の弟でもできます!」


モリスさんは、俺の顔みて笑った。

「是非とも、俺達兄弟に働かせて下さい!お願いします!」


モリスさんは、頭を下げているリックに近寄って右手を伸ばした。

「では、これから兄弟共々、よろしくお願いしますねリック。」


「はい!喜んで!」

リックは、鼻水を垂らしながら、両手でモリスさんの手を固く握った。



「最初はどうなるかと思いましたけど、本当に良かったですね。」


レイナは俺に、嬉しそうに言った。


「そうですね、これで兄貴なんて呼ばれなくて済みます。」

そう言って俺とレイナは笑った。
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