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第一章 未知なる世界でスローライフを!
暴風神官ロータ
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散々な目にあった。
あの神殿の乱闘騒ぎは小一時間ほど続いたと思う。そのくらい時間が経ったように強く思っている。
「なに言ってるんすか。十五分ほどですよ、いたっ!」
土下座して他の神官達と並べられているロータはスクルドに拳骨を喰らった。
「なにレンジ様に失礼なことを言っているのですか。反省なさい」
スクルドは帰ってこない俺達を探しに来てこの騒動を止めてくれた。
そして今、ロータを説教中なのだ。
「反省もなにも、なにもしてませんよ。それにレンジ様も結構楽しんでましたし」
「ばっか言うな! いつ俺が楽しんだんだよ。潰されそうになって苦しんでいただろうが!」
「あ、柔らかい。それに良い匂い。とかなんか言ってニヤけてましたよ」
「レンジ!」
やばい、リィーナの目がもの凄く恐い。なんとなく目が赤く光ってなっていないか。
「いっ、言ってねぇだろうが、勝手に話をつくんな!」
「え、言ってましたよね。」
「はい、私も何気に胸を触られたような」
「ええ、私なんて顔に下半身を、きゃっ、恥ずかしい!」
「私なんてほっぺにぎゅっ、ですからね。どうです、うらやましいでしょ」
なっ、なんなんだ、ここの神官共は。
全員頭がイカれてるんじゃないのか。
どうしたらあの激しい乱闘騒ぎでそんな風に思えるんだよ!
「お黙りなさい! あなた達は本当に」
「いや、スクルド姉様。今の件については私は関係ありませんから。てか、なんで私が叩かれなきゃいけないんすか!」
今度はおもいっきり頭に拳骨が振り下ろされた。
「ぐへっ、!」
「あなた達、今夜は全員反省なさい。そしてロータ、あなたは今から私達について来なさい。あなたの好きな厳しいお仕置きの時間ですよ」
「姉様、そんな時間を好きになった覚えはありません!」
ロータは襟首を掴まれてズルズルと宿まで引き摺られていった。
そして俺も似たようなもので怒り狂うリィーナに引き摺られていた。
最悪だ、本当に最悪だ。
許可を取りに神殿へ行っただけなのに、なんでこうなるんだよ!
俺はただただ項垂れて引き摺られていた。
◇
俺とロータは床に直に座らされていた。
そんな哀れな俺を護るかのようにクオンは膝の上で丸くなって寝ている。そしてレンやレイも俺の足に頭を掛けて両隣りで寝ていた。
そんな微笑ましい三人の子供達の姿にルージュが風邪をひかないようにとタオルを掛けてくれていた。
「まさかレンジ様にあんな性癖があるとは。かなりがっかりしました」
「そうですよね。乱闘騒ぎの中であのような痴態を晒すなんて。私もがっかりしました」
ルージュとセリーヌから言われなき中傷を受け、かなり心が削られる。
「ん、くんくんくん。あなた、心がとても綺麗ですが魔族ですね。しかも真祖の吸血鬼じゃありませんか」
ロータが器用に座ったままセリーヌに近づいて正体を見事暴いた。
そして驚くセリーヌを庇うかのようにスクルドがロータに拳骨をかました。
「誰が話してもいいと許可しましたか、ロータ」
顔を床に押し付けるようにロータは倒れた。
「こいつ、鑑定のスキルでも隠し持っていたのか」
「レンジの鑑定から逃れるなんてあり得ないと思うけど」
だよなあ。どう探ってもそんなものは持っていない。しかしこいつ、本当に強いな。ルージュやスクルドに匹敵する強さだ。
この瞬間、俺の中で人間強さランキングの上位トップスリーにロータが入った。
「そんなの持ってませんよ。私の勘は鋭いのです」
床に頬をつけながらロータが不敵に笑った。
「おい、何度も言うけどな。おまえ格好つける場面間違ってんぞ」
ゆっくりとロータは鎌首を上げるかのように頭を上げた。
「で、なんでスクルド姉様がレンジ様と一緒に居るのですか。聖教国で暴れてるはずじゃありませんか」
「もう終わりましたよ。それに暴れてるってなんですか。もう少し言い方に気を付けなさい!」
スクルドは拳骨を振り下ろしかけたが、その手を止めた。
おそらく何度も叩くのが忍びなく思ったのだろう。
「まぁいいです。大聖女リィーナ様、初めまして。私、女神様とその彼の勇者様の僕のロータと申します。以後、お見知り置きを。というか、よろしくお願いします!」
ペコリと頭を下げて唐突にリィーナに挨拶をした。
「うん、よろしくね。ん、レンジの僕だって、そんなの許さないよ!」
「許す、許されないの話ではないのです。これは私の女神様への揺るぎない信仰の証。運命で定められた事なのです」
珍しくリィーナが頭を抱えてる。
「ロータ。おまえ凄いな。あのリィーナをあんなに悩ませるなんて。よし、決めた。おまえを俺の世話係件助手に任命しよう」
「はい! ありがたき幸せであります!」
「ねえ、この流れをどうにかして」
「無理ですね」
「ええ、無理です」
「よし、ロータ。おまえには色々と俺の為に働いてもらうぞ」
「はい、お任せください!」
「掛け合わせてはいけない組み合わせのような気がするのは、気のせいですかね」
「セーたん。それ間違ってないと思う」
「はぁ、やっぱりですか」
そんな声を無視して、俺とロータは遅めの夕食を一緒に食べた。
「でな、あの立ち入り禁止の東屋に行きたいんだよ。なんとかしてくれ」
「お任せください。私が全域の立ち入りを今から許可しますから全部オッケーです」
「おお、ありがとな。で、許可証とかは要らないのか」
「そんなの必要ありませんよ。顔パスですよ、顔パス」
「なんかついに大物感が出てきたな、俺にも」
「レンジ様は最初から大物じゃないですかぁ。もう謙遜しないでくださいよ」
「スーたん、あれなんとかならない」
「残念ながら、もう手遅れです」
「これからトラブルの予感しかしないよ。秘書のルーたんの腕の見せ所だね」
「あのリィーナ様もフォローしてください」
「出来ないよ。まるで僕を見ているみたいで辛いから」
こんな風に楽しくシーフレアの初日は過ぎていった。
あの神殿の乱闘騒ぎは小一時間ほど続いたと思う。そのくらい時間が経ったように強く思っている。
「なに言ってるんすか。十五分ほどですよ、いたっ!」
土下座して他の神官達と並べられているロータはスクルドに拳骨を喰らった。
「なにレンジ様に失礼なことを言っているのですか。反省なさい」
スクルドは帰ってこない俺達を探しに来てこの騒動を止めてくれた。
そして今、ロータを説教中なのだ。
「反省もなにも、なにもしてませんよ。それにレンジ様も結構楽しんでましたし」
「ばっか言うな! いつ俺が楽しんだんだよ。潰されそうになって苦しんでいただろうが!」
「あ、柔らかい。それに良い匂い。とかなんか言ってニヤけてましたよ」
「レンジ!」
やばい、リィーナの目がもの凄く恐い。なんとなく目が赤く光ってなっていないか。
「いっ、言ってねぇだろうが、勝手に話をつくんな!」
「え、言ってましたよね。」
「はい、私も何気に胸を触られたような」
「ええ、私なんて顔に下半身を、きゃっ、恥ずかしい!」
「私なんてほっぺにぎゅっ、ですからね。どうです、うらやましいでしょ」
なっ、なんなんだ、ここの神官共は。
全員頭がイカれてるんじゃないのか。
どうしたらあの激しい乱闘騒ぎでそんな風に思えるんだよ!
「お黙りなさい! あなた達は本当に」
「いや、スクルド姉様。今の件については私は関係ありませんから。てか、なんで私が叩かれなきゃいけないんすか!」
今度はおもいっきり頭に拳骨が振り下ろされた。
「ぐへっ、!」
「あなた達、今夜は全員反省なさい。そしてロータ、あなたは今から私達について来なさい。あなたの好きな厳しいお仕置きの時間ですよ」
「姉様、そんな時間を好きになった覚えはありません!」
ロータは襟首を掴まれてズルズルと宿まで引き摺られていった。
そして俺も似たようなもので怒り狂うリィーナに引き摺られていた。
最悪だ、本当に最悪だ。
許可を取りに神殿へ行っただけなのに、なんでこうなるんだよ!
俺はただただ項垂れて引き摺られていた。
◇
俺とロータは床に直に座らされていた。
そんな哀れな俺を護るかのようにクオンは膝の上で丸くなって寝ている。そしてレンやレイも俺の足に頭を掛けて両隣りで寝ていた。
そんな微笑ましい三人の子供達の姿にルージュが風邪をひかないようにとタオルを掛けてくれていた。
「まさかレンジ様にあんな性癖があるとは。かなりがっかりしました」
「そうですよね。乱闘騒ぎの中であのような痴態を晒すなんて。私もがっかりしました」
ルージュとセリーヌから言われなき中傷を受け、かなり心が削られる。
「ん、くんくんくん。あなた、心がとても綺麗ですが魔族ですね。しかも真祖の吸血鬼じゃありませんか」
ロータが器用に座ったままセリーヌに近づいて正体を見事暴いた。
そして驚くセリーヌを庇うかのようにスクルドがロータに拳骨をかました。
「誰が話してもいいと許可しましたか、ロータ」
顔を床に押し付けるようにロータは倒れた。
「こいつ、鑑定のスキルでも隠し持っていたのか」
「レンジの鑑定から逃れるなんてあり得ないと思うけど」
だよなあ。どう探ってもそんなものは持っていない。しかしこいつ、本当に強いな。ルージュやスクルドに匹敵する強さだ。
この瞬間、俺の中で人間強さランキングの上位トップスリーにロータが入った。
「そんなの持ってませんよ。私の勘は鋭いのです」
床に頬をつけながらロータが不敵に笑った。
「おい、何度も言うけどな。おまえ格好つける場面間違ってんぞ」
ゆっくりとロータは鎌首を上げるかのように頭を上げた。
「で、なんでスクルド姉様がレンジ様と一緒に居るのですか。聖教国で暴れてるはずじゃありませんか」
「もう終わりましたよ。それに暴れてるってなんですか。もう少し言い方に気を付けなさい!」
スクルドは拳骨を振り下ろしかけたが、その手を止めた。
おそらく何度も叩くのが忍びなく思ったのだろう。
「まぁいいです。大聖女リィーナ様、初めまして。私、女神様とその彼の勇者様の僕のロータと申します。以後、お見知り置きを。というか、よろしくお願いします!」
ペコリと頭を下げて唐突にリィーナに挨拶をした。
「うん、よろしくね。ん、レンジの僕だって、そんなの許さないよ!」
「許す、許されないの話ではないのです。これは私の女神様への揺るぎない信仰の証。運命で定められた事なのです」
珍しくリィーナが頭を抱えてる。
「ロータ。おまえ凄いな。あのリィーナをあんなに悩ませるなんて。よし、決めた。おまえを俺の世話係件助手に任命しよう」
「はい! ありがたき幸せであります!」
「ねえ、この流れをどうにかして」
「無理ですね」
「ええ、無理です」
「よし、ロータ。おまえには色々と俺の為に働いてもらうぞ」
「はい、お任せください!」
「掛け合わせてはいけない組み合わせのような気がするのは、気のせいですかね」
「セーたん。それ間違ってないと思う」
「はぁ、やっぱりですか」
そんな声を無視して、俺とロータは遅めの夕食を一緒に食べた。
「でな、あの立ち入り禁止の東屋に行きたいんだよ。なんとかしてくれ」
「お任せください。私が全域の立ち入りを今から許可しますから全部オッケーです」
「おお、ありがとな。で、許可証とかは要らないのか」
「そんなの必要ありませんよ。顔パスですよ、顔パス」
「なんかついに大物感が出てきたな、俺にも」
「レンジ様は最初から大物じゃないですかぁ。もう謙遜しないでくださいよ」
「スーたん、あれなんとかならない」
「残念ながら、もう手遅れです」
「これからトラブルの予感しかしないよ。秘書のルーたんの腕の見せ所だね」
「あのリィーナ様もフォローしてください」
「出来ないよ。まるで僕を見ているみたいで辛いから」
こんな風に楽しくシーフレアの初日は過ぎていった。
応援ありがとうございます!
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