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第二章 新生活、はじめるよ!
激突
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嫌な予感がして皆に何も言わずに私はスクルドの所へ転移した。
「な……」
転移した先はスクルドの頭上。
全身を赤く染めながらも、それでも彼女は気丈に槍を構えている。
その彼女に向けて無情にも三叉の槍が突き出された。
「させない!」
私は一気に加速して降下すると、スクルドに向けて突き出された槍を横から刀で払い上げた。
そのまま着地して四本腕の巨人に剣を向ける。
「もう大丈夫」
四本腕の巨人に剣を向けたまま、スクルドと戦場の仲間達の傷を癒すべく回復魔法を戦場全域に展開した。
「なるほど。不完全な在りようでもそこまで力を行使できるか」
「なにが不完全かは知らないけど。私の友達に手を出したツケは払ってもらうよ」
先に動いたのは巨人の方だった。
私に向けて三叉の槍を薙ぎ払うように振るう。それを最小限の動きで横に飛び越えて槍を躱す。躱された槍が力を落とすことなく振り上げられ勢いに乗って斜めに振り下ろされる。
その振り下ろされた槍を右手に掴んで止めた。少し衝撃で横に滑るが踏み留まる。
「こんなものなの。見かけのわりに、大したことないね」
ちょっと手がヒリヒリするけど、ここは見栄を張るところだ。
巨人が槍を戻そうとするが、そんなことはさせない。
互いに槍を引き合う形になるが機を見て少し力を抜いて相手の態勢を崩した後、槍を両手で持ち、そのまま槍共々巨人を投げ飛ばした。
そんな光景に驚いているスクルドに声を掛けた。
「どう、スーたん。見事な背負い投げでしょ」
「あ、はい。お見事です」
投げ飛ばされた巨人は怒気を放ち、ゆっくりと立ち上がる。
「舐めた真似を。つけあがるのもいい加減にしろ!」
一気にこちらに向けて間合いを詰め、鋭く三叉の槍を突き出してくる。
私はふわりと跳ねて突き出された槍の上に乗った。
「怒りすぎじゃないかな。それじゃ刺さるものも刺さらないよ」
槍の上に立ち、私は口角を上げる。そして槍の上を走り巨人の顎を蹴り上げた。
巨人は後ろに倒れ、私はそのままクルリと回って着地した。
「どう、あなたのお眼鏡にかなったかしら」
最初から本気を出してないのは分かっていた。なので鎌をかけてみる。
「それと、あなたは誰」
とはいえ、私はけっこう本気なんだけどな。
「あっははは! 相変わらずの太太しさだな」
まずい。目が本気になったよ。
「誰もが貴様のその身に纏う美しき炎に焦がれた。そしてその在りようにも」
巨人はゆっくりと立ち上がる。
「その不完全な在りように手加減しようとなど慢心したことは詫びよう」
槍を隙なく構え直した。
「ここからが真剣勝負だ」
いや、謝ったんだから退いてくれないかな。勝てる気しないし。
「いくぞ!」
ちょ、ちょっと、そんなに器用にポンポン槍を持ち替えられたら分かんないじゃん!
四本の腕で槍を素早く持ち替えられ振るわれるその凶悪な攻撃を紙一重で避け続ける。けれど、そんなのがいつまで続くわけがない。
そんな状況を打破しようと地面から鎖を出して腕を抑えようとするが、腕を絡め取っても鎖を引きちぎられる。でも、僅かだが動きを鈍らせることはできた。
「そんなものか!」
そんなものも何もないでしょうが。
馬鹿なの、阿呆なの、脳筋なの!
レンジの刀をマジック袋にしまい。両の手に炎の剣を具現化させる。
そして巨人の足下から何本もの炎の槍を突き出す。全て下から突き通すことは叶わなかったが三本は腕と足をそれぞれ貫いた。
貫かれ、一瞬動きを止めたところを私は間合いを詰めて巨人の腕を三本斬り落とした。けれど、私の横腹を槍で殴られる。その痛打で軽い私の体は横へ飛ばされ地面を転がる。
「死ね!」
倒れている私に向けて巨人から放たれた業火が迫り私を飲み込む。けれど
「お生憎様。世界を燃やし尽くす炎であっても、それが炎である限り私には効かない」
業火の中、可能な限り気丈そうに横腹を抑えて立ち上がる。
くっ、シールドを貫通してくるなんて、なんて馬鹿力なのよ。
自身で回復を施すがあまりのダメージに口の端から血が溢れ流れ落ちる。
「忘れたの。炎が私にとって何かを」
痛さで転ばないように一歩一歩しっかりと地を踏みしめながら業火の中を進む。
「ならば、これはどうだ!」
青い毒霧が迫るも、私にたどり着く前に身に纏う炎によって燃え尽きる。
「私の炎はあらゆるもの全てを浄化する。そんなことも忘れたの」
まずいなぁ。マナが尽きそうだよ。
「相変わらず出鱈目な強さだな。まぁいい、今回はこれで退くが次こそ貴様を倒す!」
そう負け惜しみを残して巨人は消えてくれた。正直、助かる。
っていうか。この火、消してきなさいよ!
私は残り少ない力を振り絞って火を消した。
疲れて倒れそうになったところをスクルドに抱き留められた。
「お、スーたん。体は大丈夫?」
「私のことなんかより。リィーナ様の方こそ大丈夫なのですか」
んー、大丈夫じゃないかも……
「ちょっと寝て回復するね」
私はスーたんに抱かれたまま瞼を閉じた。
あああ、なんかすごく疲れた
「な……」
転移した先はスクルドの頭上。
全身を赤く染めながらも、それでも彼女は気丈に槍を構えている。
その彼女に向けて無情にも三叉の槍が突き出された。
「させない!」
私は一気に加速して降下すると、スクルドに向けて突き出された槍を横から刀で払い上げた。
そのまま着地して四本腕の巨人に剣を向ける。
「もう大丈夫」
四本腕の巨人に剣を向けたまま、スクルドと戦場の仲間達の傷を癒すべく回復魔法を戦場全域に展開した。
「なるほど。不完全な在りようでもそこまで力を行使できるか」
「なにが不完全かは知らないけど。私の友達に手を出したツケは払ってもらうよ」
先に動いたのは巨人の方だった。
私に向けて三叉の槍を薙ぎ払うように振るう。それを最小限の動きで横に飛び越えて槍を躱す。躱された槍が力を落とすことなく振り上げられ勢いに乗って斜めに振り下ろされる。
その振り下ろされた槍を右手に掴んで止めた。少し衝撃で横に滑るが踏み留まる。
「こんなものなの。見かけのわりに、大したことないね」
ちょっと手がヒリヒリするけど、ここは見栄を張るところだ。
巨人が槍を戻そうとするが、そんなことはさせない。
互いに槍を引き合う形になるが機を見て少し力を抜いて相手の態勢を崩した後、槍を両手で持ち、そのまま槍共々巨人を投げ飛ばした。
そんな光景に驚いているスクルドに声を掛けた。
「どう、スーたん。見事な背負い投げでしょ」
「あ、はい。お見事です」
投げ飛ばされた巨人は怒気を放ち、ゆっくりと立ち上がる。
「舐めた真似を。つけあがるのもいい加減にしろ!」
一気にこちらに向けて間合いを詰め、鋭く三叉の槍を突き出してくる。
私はふわりと跳ねて突き出された槍の上に乗った。
「怒りすぎじゃないかな。それじゃ刺さるものも刺さらないよ」
槍の上に立ち、私は口角を上げる。そして槍の上を走り巨人の顎を蹴り上げた。
巨人は後ろに倒れ、私はそのままクルリと回って着地した。
「どう、あなたのお眼鏡にかなったかしら」
最初から本気を出してないのは分かっていた。なので鎌をかけてみる。
「それと、あなたは誰」
とはいえ、私はけっこう本気なんだけどな。
「あっははは! 相変わらずの太太しさだな」
まずい。目が本気になったよ。
「誰もが貴様のその身に纏う美しき炎に焦がれた。そしてその在りようにも」
巨人はゆっくりと立ち上がる。
「その不完全な在りように手加減しようとなど慢心したことは詫びよう」
槍を隙なく構え直した。
「ここからが真剣勝負だ」
いや、謝ったんだから退いてくれないかな。勝てる気しないし。
「いくぞ!」
ちょ、ちょっと、そんなに器用にポンポン槍を持ち替えられたら分かんないじゃん!
四本の腕で槍を素早く持ち替えられ振るわれるその凶悪な攻撃を紙一重で避け続ける。けれど、そんなのがいつまで続くわけがない。
そんな状況を打破しようと地面から鎖を出して腕を抑えようとするが、腕を絡め取っても鎖を引きちぎられる。でも、僅かだが動きを鈍らせることはできた。
「そんなものか!」
そんなものも何もないでしょうが。
馬鹿なの、阿呆なの、脳筋なの!
レンジの刀をマジック袋にしまい。両の手に炎の剣を具現化させる。
そして巨人の足下から何本もの炎の槍を突き出す。全て下から突き通すことは叶わなかったが三本は腕と足をそれぞれ貫いた。
貫かれ、一瞬動きを止めたところを私は間合いを詰めて巨人の腕を三本斬り落とした。けれど、私の横腹を槍で殴られる。その痛打で軽い私の体は横へ飛ばされ地面を転がる。
「死ね!」
倒れている私に向けて巨人から放たれた業火が迫り私を飲み込む。けれど
「お生憎様。世界を燃やし尽くす炎であっても、それが炎である限り私には効かない」
業火の中、可能な限り気丈そうに横腹を抑えて立ち上がる。
くっ、シールドを貫通してくるなんて、なんて馬鹿力なのよ。
自身で回復を施すがあまりのダメージに口の端から血が溢れ流れ落ちる。
「忘れたの。炎が私にとって何かを」
痛さで転ばないように一歩一歩しっかりと地を踏みしめながら業火の中を進む。
「ならば、これはどうだ!」
青い毒霧が迫るも、私にたどり着く前に身に纏う炎によって燃え尽きる。
「私の炎はあらゆるもの全てを浄化する。そんなことも忘れたの」
まずいなぁ。マナが尽きそうだよ。
「相変わらず出鱈目な強さだな。まぁいい、今回はこれで退くが次こそ貴様を倒す!」
そう負け惜しみを残して巨人は消えてくれた。正直、助かる。
っていうか。この火、消してきなさいよ!
私は残り少ない力を振り絞って火を消した。
疲れて倒れそうになったところをスクルドに抱き留められた。
「お、スーたん。体は大丈夫?」
「私のことなんかより。リィーナ様の方こそ大丈夫なのですか」
んー、大丈夫じゃないかも……
「ちょっと寝て回復するね」
私はスーたんに抱かれたまま瞼を閉じた。
あああ、なんかすごく疲れた
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