邪神様に恋をして

そらまめ

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邂逅

邪神様、この世界の女神って勝手なんですね

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 調査に出てから二日目の夜、とある女性が現れた。

「ふっ、こうして間近でみると、ただの少年にしか見えないな。こんな少年に遅れをとるとは、ロキもモリガンも衰えたものよな」

 月を背に宙を浮く、その者に注目した。
 逆光で顔は見えないが、丸い盾と槍を持った女性だった。

「それで、ただの少年になんの用かな」
「これは面白い、私の神気を浴びても尚、そんな事が言えるとは。なかなかどうして興味深い」
「で、なんの用だ。あんたに構って睡眠時間が減るのは嫌なんだ。用があるなら手短に頼むよ」

 なんとなく、わずかな怒りの気配を感じた。

「なに、忠告にきただけだ。今頃、お前の大事なロザミアの父親の命が尽きかけてるとな。これでまた乱世に逆戻りだ。フレイヤなどに、この世界を簡単には渡さぬ」

 言うだけ言って去っていった。なんなんだ、あれは。
 とにかく、ロザミアに早く知らせないとな。
 俺達は急いでテントなどを片付けると、トボルの町へ引き返した。



 全速で走れば馬なんかよりも、よっぽど速い。
 俺達は昼にはトボルの町に戻ってきた。
 早速、マルデルとロザミアに昨晩の事を伝えた。

「マルデル様。父が誰かに害せられるとは思いませんが、魔国に戻る許可を頂けませんか」
「ええ、至急戻って構いません。ただ、何か有れば必ず報告してください」

 ロザミアだけではなく、凛子、ヘカテーも一度戻ることにした。
 俺はそんなロザミアと凛子を外へ連れ出した。

「凛子、ロザミア、お前達二人に精霊の加護を与えようと思う。ただ、精霊が二人を気に入ればの話だけど。でも気に入られれば魔法が使えるようになる。試してみないか」

 二人は俺の申し出を受けてくれた。

 まず最初に凛子から始めた。
 俺は精霊達に話しかける。誰か加護を与え、守護するものはいないかと尋ねた。
 すると、金色に輝く精霊が凛子の肩に乗った。どうやら光の精霊、それも大精霊だと、マルデルが教えてくれた。

「光の大精霊よ、王が命じる。凛子を守護し、加護を与えよ!」

 命じた瞬間、光の大精霊と凛子が一つに重なるような錯覚がすると、眩いばかりの金の輝きを放った。
 なぜか疲労を感じたが、無事に成功したみたいだ。

「クロノア、凛子に説明してあげてくれ。次はロザミア、お前の番だ」

 同じように立たせて、精霊に尋ねると、黒の輝きを放つ精霊がロザミアの肩に乗った。闇の上位精霊だった。

「闇の精霊よ、王が命じる。ロザミアを守護し、加護を与えよ!」

 凛子と同じように精霊とロザミアが一つに重なるような感じがすると、眩い黒の輝きを放った。
 どうやら二人とも無事に成功したみたいだ。
 俺は安心したせいか、目の前が暗くなり意識を失った。


 ◇


 目が覚めると小屋のベッドで寝ていた。
 いつものようにマルデルが側に居てくれた。

「悠太くん、調子はどう。たぶんマナを少し多めに持っていかれたせいみたい。もう少し休んで回復しないとね」

 マルデルは熱もないのに、俺の額に手を当てた。
 なんか彼女の手の温もりが心地いい。

「凛子とロザミアは大丈夫だった?」
「うん、悠太くんのおかげで完璧だったよ。クロが珍しく丁寧に二人に教えていたし、すぐにでも魔法を使えると思うよ」
「そっか。なら、大丈夫だね。マルデル、また倒れて心配かけてごめんな」

 上から覆い被さるように抱きしめてくれた。

「今回は、わたしの目の前だったから、まだ大丈夫だったよ」

 そう言って、優しく唇を重ねてくれた。
 俺は掛けてある薄手の布から両腕を出して、彼女を抱きしめた。
 一旦、唇が離れると、彼女をベッドの中へ誘う。
 彼女を抱きしめ、もう一度、唇を重ね、ゆっくりと服を脱がし、全身を優しく、愛しく、キスをした。


 愛してる、何度もそう彼女に伝えて、二人は一つになった。



 ◇



 マルデルから現状について話を聞き、二人で小屋をでて、皆を集めた。


「アテナから宣戦布告がありました。これより天馬及び全武装の使用を許可します。皆、天馬を召喚し、これよりヴェールへ帰還します。アルヴィド、全ワルキューレに通達を」

 皆のこんな真剣な表情は初めてみた。
 一斉に完全武装となり天馬を召喚すると移動を開始する。
 俺はヒルデと、ミツキはスクルドと、マチルダはロータと一緒に天馬で移動した。
 そしてクオンとクロノアは、マルデルが召喚した猫の牽く戦車に乗って移動した。

 空を駆ける猫の戦車に天馬、まさに神話の女神の軍勢だった。
 その圧巻な光景に俺とミツキは言葉を失った。

「マルぅ、これすごいね!」

 クオンだけが大興奮して絶賛していた。
 そんなクオンをマルデルは愛おしそうに優しく髪を撫でていた。
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