邪神様に恋をして

そらまめ

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邂逅

邪神様、天馬で空を駆けます

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 マルデルに合流すべく天馬に乗り空を颯爽と駆ける。

 だが、予定にはない者達も一緒にいた。クオンとミツキである。
 なんとミツキも天馬との契約に成功して、一緒に同行する事が急遽決まった。
 それもクオンとミツキが居残りは嫌だと子供のように駄々を捏ねたからだ。あ、二人とも子供か。

 そんな訳で、俺の胸元には常のようにクロノアが潜り込み、クオンが俺の前で天馬にちょこんと乗っていた。
 だがすでにクオンは興奮しすぎて夢の中だが。

「もうすぐ土の公国です。公国内に入ったら野営に適した場所を探しましょう」

 スクルドが隣に並び、そう話した。
 スクルドの風に靡く髪が陽の光で輝き、その美麗な姿に思わず見惚れて返事を忘れる。
 だが不思議だ。天馬に乗っても風の抵抗は感じないのに、なぜ、髪が風で靡く。なぜ、スカートが風で靡くのだろうか。
 これは天馬のオプションなのだろうか。男を魅了する特別な仕様なのだろうか。判断に困るところだ。

「悠太様、聞いていましたか!」
「あっ、聞いてた、大丈夫」

 おっといけない、つい考え込んでしまった。
 この世界は不思議でいっぱいなのだ。
 戦闘中や普段日常で激しく動いてもワルキューレのスカートは絶対にパンチラするほどめくれない。摩訶不思議な世界だ。
 でもなぜか屈むと胸は見える不思議仕様でもある。
 まったく誘惑の多い、けしからん世界なのだ。

「ユータ。あんた今、邪なことを考えていたでしょ。なんかユータの鼓動がそう教えてるよ」
「いつの間にそんな傍迷惑なスキルを覚えたんだよ。さては、俺の心を読んだな。このいやらしいノゾキ魔め」

 あう! クロノアに乳首を思いきりつねられた。

「ユータの心なんて読まなくてもわかるわよ! ばか、ユータ」
「ゆ、許してください、痛いです、もうつねらないで」

 俺は痛みで天馬から落ちそうになる。
 きっとエドガーならご褒美なのだろうが、俺は生憎、そんな趣味は持ち合わせていない。

「もうそんな事は言わない、約束だよ」
「はい、約束します。ぜひ約束させてください」

 あぁぁ、やっと解放された。今度、早急に対策しなければダメだな。
 あれ、でももう痛くない。あっ、回復魔法か。

「クロノア、癒してくれてありがとう。やっぱりノアはなんだかんだ言って優しいよな」


 そしてしばらくして野営に適した場所を見つけると、そこで野営をすることにした。

 野営の準備中にクロノアとのやり取りを自慢げにロータに話すと、冷めた白い目で見られた。

「それって、たんに調教されてるだけですよね」



 ◇



 アルヴィドはマルデル様の事で頭を痛めていた。
 そのしわ寄せが私にもきていた。

「ブリュンヒルド。もうどうしたらいいか、ちゃんと教えてください」

 悠太と出逢い、マルデル様はガラリと変わられた。
 その変化にアルヴィドはまだ対応できないのだ。
 それもそうだろう。私と並ぶほどに堅物と評された彼女には理解し難い事なのだろう。

「アルヴィドも恋をした事くらいあるのでしょう。だったらマルデル様が何を求めているのかくらい、想像がつくのではありませんか」
「恋したことなんてありませんが。だいたい、なんで英雄の魂を集めるだけなのに、私達がそのような瑣末な者達と恋をしなければいけないのですか。私には理解できません」

 そうだった。彼女はそういう性格だった。
 はぁ、これではなんと言ったらいいのか分かりませんね。

「とにかく、マルデル様が悠太のなんの情報が欲しいのか、ちゃんと把握すればいいだけです。もし分からないなら直接マルデル様に聞きなさい」

 もはや面倒になり、マルデル様の元へ向かった。

「ヒルデ、悠太くんはヴェールを発ったのでしょう。いつ頃、こちらに着きますか」

 はぁ、アルヴィドめ、なんの説明もしていないのか。

「おそらくなんのトラブルもなければ、明日の夕刻には着くのではありませんか」
「トラブル? ただ天馬で空を飛んでくるのにですか?」
「ドラゴンに襲われたり、土の公国を荒らしているアテナの兵に襲われたりする可能性も無いとは言えませんから」

 しまった! つい余計な事を。

「王都に行くのはやめます。即刻、悠太くんと合流すべく移動を開始します」

 やっぱり、そうなりますか……

「なにもたもたしてるのですか。悠太くんが襲われたらどうするのですか。はやく皆に指示しにいきなさい」
「は、我が君の仰せのままに」

 ああ、これもアルヴィドが余計な相談を持ち掛けるから、ついうっかり口を滑らせてしまいました。
 でも、あんな別れ方をしてきたら、ああなりますか。


「全軍、これより土の公国へ移動を開始する。即刻、移動を開始せよ!」

 転進せよ、とは言いたくありませんね。
 はぁ、悠太とマルデル様には本当に困ったものです。


 こうして私達は土の公国へ移動を開始した。
 それも急行軍でだ。そうしなければマルデル様お一人で、すぐにでも飛び出して行きそうだったからだ。


「アルヴィド、スクルドの正確な位置を。それと私達と最短で合流できるルートをとらせるよう連絡をお願いします」
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