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未踏の大地へ(青年編)
女神様、側にいますよ
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気を落としているマルデルを連れて浜辺を散歩していた。
途中、街を造っている人達に挨拶をされたり、串焼きなどを手渡されたりしたがマルデルは笑顔で接していても常よりは少しだけ表情を曇らせていた。
ただ二人で手を繋ぎながら、潮風に吹かれ、波の音を聞きながらのんびりと歩いた。
そして少し景色の良い場所で二人で腰をおろした。
「んー、波の音も潮風も気持ちいい」
両手を上に伸ばし、体を伸ばした後、そのまま仰向けに寝転んだ。
「悠太くんは何も聞かないのね」
マルデルは小さく囁くようにそう言った。
「マルデルは俺に隠し事はしないだろ。だから話したくなったら話してくれるかなって。それにマルデルにアドバイス出来るような立派な男じゃないしさ。あ、でも、側にいて聞くことだけは誰よりも出来ると思ってる。まぁ、俺が勝手にそう思ってるだけかもしれないけど」
俺は寝転んだまま真っ直ぐ空を見ていた。
「ちっとも変わらないね、悠太くんは」
マルデルはそう言うと、俺と同じように背伸びをして寝転んだ。
「あのね。スルーズが悠太くんを危険な目に合わせたから責任を取って隊長を辞めるって言ったの。わたし、そんな風に誰かを責めたこともないし。今回の事でいえばスルーズのせいだなんて少しも思ってもいなかったから、なんか私は長い時を彼女たちと過ごしても理解されてないんだなって悲しくなったの」
それで、つい怒ってしまったと、最後はかすれた声で吐露した。
俺はそんな彼女の手を握った。
自分の思いが伝わるように、優しく包むように想いを込めて彼女の手を握った。
「私も、悠太くんも自分の行いを誰かのせいにだなんてしないのにね。そんな事は欠片も思っていなのに。なんか上手くは伝わらないものなんだね」
本気ではないが、たまに誰かのせいにしてる俺には少しだけ心が痛かった。
ましてや、自分の行いが招いた結果だと思うと、なんかやり切れない思いがした。
「マルデル、ごめんね。いつも周りに迷惑を掛けて」
つい、この場で一番言ってはいけない事を口にしてしまった。
「もう、悠太くんまでやめてよ。そんな事は思っていないよ。それに前にも言ったけど、私はそんなのとっくに覚悟してるから。悠太くんは悠太くんのままでいいんだよ」
少し頬を膨らませながら、俺を覗き込むように体を起こすと、そのまま重なるように体を預けてきた。
「もう、そうやって意地悪言うところも、ちーっとも変わらないんだから」
ん、意地悪なのか今のは?
まぁいい、失言よりはマシだろう。たぶん……
「なんか落ち着くね、こうしてると」
「そうなの。なら嬉しいけど」
うん、とだけ短く答えると、マルデルは俺の胸に耳を当てた。
「悠太くん、少し鼓動が早くなってきたよ。もしかして照れてドキドキしてるのかな」
そう言って彼女はクスクスと笑った。
そりゃあそうだろう。マルデルとこんなに近くにいてドキドキしない方がおかしいだろ。
「まぁ、俺はマルデルにデレる自信は人一倍あるから。それは誰にも負けないと自負してる」
ふふふ、と笑っておどけてみせた。
「へんな悠太くん。ちっともカッコ良くないよ」
マルデルはまたクスクスと楽しそうに笑っていた。
「まぁ実際そうだし。でも、いつかは素敵な男になるかも、しれない。たぶんだけど」
「今でも誰よりも素敵だよ」
そう言って体を少し起こすと、俺にキスをしてくれた。
俺はその口づけに応えるように彼女の腰に手をまわし抱きしめた。
長い、長い、でも短く感じるその時の中で、俺とマルデルは心を通わせるように唇を重ねた。
「悠太くん。わたし、みんなに謝るね」
「うん。マルデルがそう思うのなら、そうすればいいよ。俺も一緒に謝らないとね、なんせ原因は俺だし」
マルデルは一瞬、驚いた表情を見せたが、何故かすぐに笑い出した。
「もう、本当に変わらないんだから」
彼女は俺の胸で声に出して笑った。
うーん。どこに笑いの要素があったのだろうか。
それに生まれ変わっても何も変わらないのは駄目なんじゃないのか……
まぁいいか。よく分からないし、マルデルが喜ぶならそれで良しという事にしておこう。
◇
マルデルは戻るとすぐにヒルデ達を呼んで謝った。もちろん俺も一緒に。
そしてスルーズにも謝ると言ったが、それはヒルデ、エイル、アルヴィドの三人に止められた。
「あの堅物には少し反省させます。ですから、」
「はいはい、わかりました。好きなようになさい。それと、今後は悠太くんに親衛隊は付けさせないからね」
「はい。そう仰るかと思い、親衛隊は既に解散させました。今後はエルルーンを専属護衛とし、数名の人員も彼女に一任する事にしました」
ヒルデから俺にとっては喜ぶ報告を受けた。
おお、これでやっと一般人に戻れる!
「悠太くん、なんでそんなに嬉しそうなの。スルーズが外れたから自由になれるとか思ってないよね。そんなのは勘違いだからね。それにスルーズが離れたのに喜ぶなんて薄情過ぎるよ」
「ふふふ、甘いな、マルデルは。エルルーンなら絶対にスルーズを護衛として連れてくるよ。絶対にだ、賭けてもいい」
俺はロータばりに人差し指を軽快に揺らした。
「そう。そこまで自信があるなら勝負だよ、悠太くん」
「おっ、いいよ。じゃあ何を賭ける」
俺は自信たっぷりにマルデルを見た。たぶん今の俺は自信に満ち溢れたナイスガイに見えるだろう。
「くっ、なんでも好きな物をあげるよ。それか私を好きなようにしてもいいよ。でも、私が勝ったら悠太くんを好きにするからね!」
「ああ、好きなようにすればいいよ、勝ったらね」
俺たちはエルルーンを呼ぶと、その事を聞いてみた。
「えっ、空気を読まない、のんびり屋の私でもさすがに謹慎処分になった者をすぐに復職なんて出来ませんよ。まぁ、いずれ機会があったらとは思いますが」
マルデルは俺を見てニヤリと笑い、俺は両手、両膝を着いて床に項垂れた。
「ふふふ、悠太くん。わたしの勝ちだね。あっはは、何をしてもらおうかな、悠太くん。ほんと楽しみだよ」
ああぁ、なんてことだ。絶対の自信があったのに!
この時の俺は、あんなおそろしい事が待ち受けているとは露知らず、ただただ負けた事に落ち込んでいた。
ああぁ、悔しいよ!
途中、街を造っている人達に挨拶をされたり、串焼きなどを手渡されたりしたがマルデルは笑顔で接していても常よりは少しだけ表情を曇らせていた。
ただ二人で手を繋ぎながら、潮風に吹かれ、波の音を聞きながらのんびりと歩いた。
そして少し景色の良い場所で二人で腰をおろした。
「んー、波の音も潮風も気持ちいい」
両手を上に伸ばし、体を伸ばした後、そのまま仰向けに寝転んだ。
「悠太くんは何も聞かないのね」
マルデルは小さく囁くようにそう言った。
「マルデルは俺に隠し事はしないだろ。だから話したくなったら話してくれるかなって。それにマルデルにアドバイス出来るような立派な男じゃないしさ。あ、でも、側にいて聞くことだけは誰よりも出来ると思ってる。まぁ、俺が勝手にそう思ってるだけかもしれないけど」
俺は寝転んだまま真っ直ぐ空を見ていた。
「ちっとも変わらないね、悠太くんは」
マルデルはそう言うと、俺と同じように背伸びをして寝転んだ。
「あのね。スルーズが悠太くんを危険な目に合わせたから責任を取って隊長を辞めるって言ったの。わたし、そんな風に誰かを責めたこともないし。今回の事でいえばスルーズのせいだなんて少しも思ってもいなかったから、なんか私は長い時を彼女たちと過ごしても理解されてないんだなって悲しくなったの」
それで、つい怒ってしまったと、最後はかすれた声で吐露した。
俺はそんな彼女の手を握った。
自分の思いが伝わるように、優しく包むように想いを込めて彼女の手を握った。
「私も、悠太くんも自分の行いを誰かのせいにだなんてしないのにね。そんな事は欠片も思っていなのに。なんか上手くは伝わらないものなんだね」
本気ではないが、たまに誰かのせいにしてる俺には少しだけ心が痛かった。
ましてや、自分の行いが招いた結果だと思うと、なんかやり切れない思いがした。
「マルデル、ごめんね。いつも周りに迷惑を掛けて」
つい、この場で一番言ってはいけない事を口にしてしまった。
「もう、悠太くんまでやめてよ。そんな事は思っていないよ。それに前にも言ったけど、私はそんなのとっくに覚悟してるから。悠太くんは悠太くんのままでいいんだよ」
少し頬を膨らませながら、俺を覗き込むように体を起こすと、そのまま重なるように体を預けてきた。
「もう、そうやって意地悪言うところも、ちーっとも変わらないんだから」
ん、意地悪なのか今のは?
まぁいい、失言よりはマシだろう。たぶん……
「なんか落ち着くね、こうしてると」
「そうなの。なら嬉しいけど」
うん、とだけ短く答えると、マルデルは俺の胸に耳を当てた。
「悠太くん、少し鼓動が早くなってきたよ。もしかして照れてドキドキしてるのかな」
そう言って彼女はクスクスと笑った。
そりゃあそうだろう。マルデルとこんなに近くにいてドキドキしない方がおかしいだろ。
「まぁ、俺はマルデルにデレる自信は人一倍あるから。それは誰にも負けないと自負してる」
ふふふ、と笑っておどけてみせた。
「へんな悠太くん。ちっともカッコ良くないよ」
マルデルはまたクスクスと楽しそうに笑っていた。
「まぁ実際そうだし。でも、いつかは素敵な男になるかも、しれない。たぶんだけど」
「今でも誰よりも素敵だよ」
そう言って体を少し起こすと、俺にキスをしてくれた。
俺はその口づけに応えるように彼女の腰に手をまわし抱きしめた。
長い、長い、でも短く感じるその時の中で、俺とマルデルは心を通わせるように唇を重ねた。
「悠太くん。わたし、みんなに謝るね」
「うん。マルデルがそう思うのなら、そうすればいいよ。俺も一緒に謝らないとね、なんせ原因は俺だし」
マルデルは一瞬、驚いた表情を見せたが、何故かすぐに笑い出した。
「もう、本当に変わらないんだから」
彼女は俺の胸で声に出して笑った。
うーん。どこに笑いの要素があったのだろうか。
それに生まれ変わっても何も変わらないのは駄目なんじゃないのか……
まぁいいか。よく分からないし、マルデルが喜ぶならそれで良しという事にしておこう。
◇
マルデルは戻るとすぐにヒルデ達を呼んで謝った。もちろん俺も一緒に。
そしてスルーズにも謝ると言ったが、それはヒルデ、エイル、アルヴィドの三人に止められた。
「あの堅物には少し反省させます。ですから、」
「はいはい、わかりました。好きなようになさい。それと、今後は悠太くんに親衛隊は付けさせないからね」
「はい。そう仰るかと思い、親衛隊は既に解散させました。今後はエルルーンを専属護衛とし、数名の人員も彼女に一任する事にしました」
ヒルデから俺にとっては喜ぶ報告を受けた。
おお、これでやっと一般人に戻れる!
「悠太くん、なんでそんなに嬉しそうなの。スルーズが外れたから自由になれるとか思ってないよね。そんなのは勘違いだからね。それにスルーズが離れたのに喜ぶなんて薄情過ぎるよ」
「ふふふ、甘いな、マルデルは。エルルーンなら絶対にスルーズを護衛として連れてくるよ。絶対にだ、賭けてもいい」
俺はロータばりに人差し指を軽快に揺らした。
「そう。そこまで自信があるなら勝負だよ、悠太くん」
「おっ、いいよ。じゃあ何を賭ける」
俺は自信たっぷりにマルデルを見た。たぶん今の俺は自信に満ち溢れたナイスガイに見えるだろう。
「くっ、なんでも好きな物をあげるよ。それか私を好きなようにしてもいいよ。でも、私が勝ったら悠太くんを好きにするからね!」
「ああ、好きなようにすればいいよ、勝ったらね」
俺たちはエルルーンを呼ぶと、その事を聞いてみた。
「えっ、空気を読まない、のんびり屋の私でもさすがに謹慎処分になった者をすぐに復職なんて出来ませんよ。まぁ、いずれ機会があったらとは思いますが」
マルデルは俺を見てニヤリと笑い、俺は両手、両膝を着いて床に項垂れた。
「ふふふ、悠太くん。わたしの勝ちだね。あっはは、何をしてもらおうかな、悠太くん。ほんと楽しみだよ」
ああぁ、なんてことだ。絶対の自信があったのに!
この時の俺は、あんなおそろしい事が待ち受けているとは露知らず、ただただ負けた事に落ち込んでいた。
ああぁ、悔しいよ!
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