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後編
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後編
「なんで?兄ちゃんは深雪のこと歓迎してたじゃないか」
そもそもおかしい。
兄は深雪を紹介したときも’’弟をよろしく''と笑顔で言ってくれた。
「彼女は聡明で顔も悪くないからな。今までお前が連れてきた頭の悪い女達と比べ物にはならないほど気に入ってるさ」
だったらどうしてっ!
今にも叫びそうになった瞬間、兄が綺麗な笑顔で衝撃的な言葉を吐く。
「どうせ俺達の子供を作るなら優秀な遺伝子が好ましいだろ?」
「…おれ、たち?」
咄嗟に頭を過ったのは深雪と兄の不貞である。
だがそのある種深雪と兄への裏切りである考えは嬉しそうな小さな笑いと共に続いた台詞により否定される。
「楽しみだな。俺とお前の子供。」
兄と俺の子…?
大真面目でいて、そして嬉しそうな顔で冗談みたいな事で言う兄。
でも弟である俺は知っている。
兄のこの顔は冗談なんかじゃない。
だとすると本気で言ってるのか?
あまりにも突拍子もない台詞に言葉が出ない。
「子供を作る為とはいえお前を余所の女に任せるのは苦しかったなぁ。俺の方が作れば簡単だが、生憎俺は生まれた時から性的対象はお前しかいないから女は抱けないしな」
「に…ちゃん?な、に言って…」
「でもお前自分の子を持つのが夢だろ。だからお前の血が入った俺達の子を産んでくれる深雪さんには感謝してるが、紙の上だけでもお前の隣に並ぶなんてあっては駄目だ。お前の隣は常に俺のモノなんだから」
「に、いちゃん……」
兄が何を言っているのか全く理解出来なかった。
ただ思うのは、兄は疲れているだけだと。
こんなの、嘘だ。
「…どうした?顔色悪いぞ?」
疲れているのは自分なのに俺の顔を心配そうに覗き込む兄に、頬に涙が伝う。
「な、なんで泣いてるんだ!?」
両親の死以来泣いた試しのない俺の涙に焦る様子はまさしく俺の知る優しい兄そのもので。
それがまた涙を誘う。
「俺、は、深雪と、結婚、するよ」
「…もしかして深雪さんに赤ん坊を引き取ることを説明してないのか?子供だけが目当ての関係だと言い出しにくかったのか?」
だが、違った。
兄はやっぱり俺の分からない言葉を吐く。
さらに青ざめる俺を間違った方向に解釈した兄は納得したように頷く。
「ほら、泣くな。赤ん坊は兄ちゃんが絶対持ってきてやるから。母親から乳児を取り上げるのはなかなか骨が折れそうだが、俺は知り合いも多いし安心しろ」
「っ!?やめてくれっ!」
会社でも優秀な兄は俺を養育する一方でどんどん出世していき、今では若いのに社会的地位もかなり高い。
あながち出来ないこともないかもしれないのが恐ろしい。
そりゃ兄からすれば俺の給料なんて小遣い程度だろうと自嘲すると同時に、頭を優しく撫でる大きな手が絶望を連れてくる。
一体いつからだったんだろう。
なんてー気付いてやれなかったんだろう。
兄がこんなにおかしくなっているのに。
「親を失ったのは辛かったが二人で生きていける代償なら安いものだ。ずっと二人一緒だと、約束したもんな?」
普段の優しい笑顔で、しかし眼底にどこか恍惚を宿しながら俺の涙を拭う兄の手を取る。
「兄ちゃん、明日…出掛けよう」
「いいな、それ。ベビーグッズを買いに行こうか。’’俺達''の子の為に」
「そうだね。病院に行った帰りにね…」
これから、俺達兄弟がどうなるのかは分からない。
ただ、両親が死んだあの時兄がしてくれたように、今度は俺が兄を支えようと心に誓い、兄の大きな手を強く握り締めた。
END.
「なんで?兄ちゃんは深雪のこと歓迎してたじゃないか」
そもそもおかしい。
兄は深雪を紹介したときも’’弟をよろしく''と笑顔で言ってくれた。
「彼女は聡明で顔も悪くないからな。今までお前が連れてきた頭の悪い女達と比べ物にはならないほど気に入ってるさ」
だったらどうしてっ!
今にも叫びそうになった瞬間、兄が綺麗な笑顔で衝撃的な言葉を吐く。
「どうせ俺達の子供を作るなら優秀な遺伝子が好ましいだろ?」
「…おれ、たち?」
咄嗟に頭を過ったのは深雪と兄の不貞である。
だがそのある種深雪と兄への裏切りである考えは嬉しそうな小さな笑いと共に続いた台詞により否定される。
「楽しみだな。俺とお前の子供。」
兄と俺の子…?
大真面目でいて、そして嬉しそうな顔で冗談みたいな事で言う兄。
でも弟である俺は知っている。
兄のこの顔は冗談なんかじゃない。
だとすると本気で言ってるのか?
あまりにも突拍子もない台詞に言葉が出ない。
「子供を作る為とはいえお前を余所の女に任せるのは苦しかったなぁ。俺の方が作れば簡単だが、生憎俺は生まれた時から性的対象はお前しかいないから女は抱けないしな」
「に…ちゃん?な、に言って…」
「でもお前自分の子を持つのが夢だろ。だからお前の血が入った俺達の子を産んでくれる深雪さんには感謝してるが、紙の上だけでもお前の隣に並ぶなんてあっては駄目だ。お前の隣は常に俺のモノなんだから」
「に、いちゃん……」
兄が何を言っているのか全く理解出来なかった。
ただ思うのは、兄は疲れているだけだと。
こんなの、嘘だ。
「…どうした?顔色悪いぞ?」
疲れているのは自分なのに俺の顔を心配そうに覗き込む兄に、頬に涙が伝う。
「な、なんで泣いてるんだ!?」
両親の死以来泣いた試しのない俺の涙に焦る様子はまさしく俺の知る優しい兄そのもので。
それがまた涙を誘う。
「俺、は、深雪と、結婚、するよ」
「…もしかして深雪さんに赤ん坊を引き取ることを説明してないのか?子供だけが目当ての関係だと言い出しにくかったのか?」
だが、違った。
兄はやっぱり俺の分からない言葉を吐く。
さらに青ざめる俺を間違った方向に解釈した兄は納得したように頷く。
「ほら、泣くな。赤ん坊は兄ちゃんが絶対持ってきてやるから。母親から乳児を取り上げるのはなかなか骨が折れそうだが、俺は知り合いも多いし安心しろ」
「っ!?やめてくれっ!」
会社でも優秀な兄は俺を養育する一方でどんどん出世していき、今では若いのに社会的地位もかなり高い。
あながち出来ないこともないかもしれないのが恐ろしい。
そりゃ兄からすれば俺の給料なんて小遣い程度だろうと自嘲すると同時に、頭を優しく撫でる大きな手が絶望を連れてくる。
一体いつからだったんだろう。
なんてー気付いてやれなかったんだろう。
兄がこんなにおかしくなっているのに。
「親を失ったのは辛かったが二人で生きていける代償なら安いものだ。ずっと二人一緒だと、約束したもんな?」
普段の優しい笑顔で、しかし眼底にどこか恍惚を宿しながら俺の涙を拭う兄の手を取る。
「兄ちゃん、明日…出掛けよう」
「いいな、それ。ベビーグッズを買いに行こうか。’’俺達''の子の為に」
「そうだね。病院に行った帰りにね…」
これから、俺達兄弟がどうなるのかは分からない。
ただ、両親が死んだあの時兄がしてくれたように、今度は俺が兄を支えようと心に誓い、兄の大きな手を強く握り締めた。
END.
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