アストレイヴ 〜中二病召喚計画〜

よしまさ

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第33話 忍者刀影縫

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第33話 忍者刀影縫

謎の町娘が帰った後、鍛冶場に戻ると、月がつぶやいた。

『この刀、私と同じ“玉鋼”ね』

「やっぱり……イズノア産か?」

真也は忍者刀へ声をかけた。

「名前は?」

『影縫(かげぬい)。イズノアの生まれだ』

「じゃあ……あの娘の名は?」

『アカツキ。……ただの呼び名ではあるが』

影縫は語り始めた。

50年前、名工が打った刀。
アカツキの家に代々伝わり、今は兄・ソウレンが継いだもの。

そして――。

『主よ、アカツキに伝えてほしい。兄のソウレンは“生きている”と』

影縫の話によれば、門外不出の術巻物が盗まれ、兄はそれを追うため、敵が逃亡のために作動した転移陣へ飛び込み、そのまま敵地へ。
刀を奪われ離れ離れになり、影縫は敵に回収され、ある武器屋でアカツキに買い戻される。

『ソウレン殿は責任感の強い方だ。巻物を取り返すまで帰らぬだろう。
 ……アカツキは、兄を想って何度も泣いていた。感情を出さぬ娘だが、陰で泣くこともある。あの子に申し訳なくて……』

「伝えるよ。兄はまだ生きてるって知れば、きっと救われる」

 真也は優しく言い、研ぎ作業に入った。

 刀身は傷だらけ。しかし確かに名工の魂が宿る一振りだった。
 固有スキルは「影縫い(攻撃時拘束)」と「影歩(気配減少)」。
 ただし、そのスキルに必要な素材が見当たらない。

(……何か法則が違う?)

 悩む真也に、月が静かに言う。

『名のある武器は、持ち主と意識を一致させた時、最適な一撃を教えます。それが“スキル発動”です。素材が不要な場合もありますよ。あのアマダンタイトの兜を切った時、私の意識が主の体に最適な動きを再現させ、スキル兜割が発動していた。そうでなければ玉鋼がアマダンタイトを切るなんて不可能です。』

「……なるほど、そのような要素もあるのか」

 疑問が解け、真也は夢中で刃を研いだ。



翌日。
アカツキがやって来て、研ぎ終えた影縫を受け取り立ち去ろうとする。

「アカツキさん!」

振り返った彼女の目は鋭かった。知らない相手に自分の名前を呼ばれ、警戒心MAXになり、すでに抜刀の構え。真也は慌てて誤解を解く。

「ちょっと待て!俺には鍛冶スキルで武器と対話ができる。影縫が、“兄ソウレンは生きている”と」

その瞬間、アカツキの身体から力が抜けた。

「……兄者が……生きて……」

ぽろぽろと涙が落ちる。
普段は感情を見せない彼女が、兄の刀を抱いて泣きじゃくる。

「どこ探しても…刀以外は何も…ううう…」

真也は影縫から聞いた全てを伝えた。

少し落ち着いたアカツキは、涙の跡を拭いながら尋ねる。

「鍛冶屋……名は?」

「真也だ」

「ふむ、イズノア出身か?」

「と言うわけではないが…。前世では…そこに住んでたのかもな」

「不思議なことを言う男だ」



兄の手がかり――
それは“巻物を盗んだ幻影衆”の動向だったが、まずその手がかりを掴むべく、アカツキは動いている様だった。しかし、アジトらしきものは見つからず、途方に暮れていたそうだ。

「とりあえず、兄と合流すればいいんだろ?」
真也はもっと単純な策を提案する。

「兄貴の好物は? 故郷の味とか」

「忍びは質素だぞ……兄貴がよく食ったといえば握り飯……味噌汁……」

「修行中の坊さんかよ!」

そこへ影縫が助け舟を出す。

『ソウレン殿は“鰻の蒲焼”が大好物。人目を盗んでしょっちゅう食べていた』

「それだ!!」

影縫からの兄ソウレンの秘密を伝えると、
アカツキはむすっと頬を膨らませた。

「兄者が隠れて蒲焼を……一人だけ抜け駆けとは……」



数日後。

なぜか真也は町の屋台で鰻を焼いていた。

「なんで俺が蒲焼焼いてんだよ!!」

「真也殿、見事な火加減だ。流石、鍛治士」

「俺は武器を作りたいの! 蒲焼じゃねぇ!!」

「勘定も手馴れているな、武器屋で鍛えてるだけある。流石」

「武器を売りたいんだよ!!!」

しかし長蛇の列は止まらない。

アカツキも看板娘として営業スマイルを覚え、思いのほか馴染んでいた。

閉店後。

「今日も兄者らしき人物はいなかったが……明日はきっと来る」

少し寂しげに呟く彼女を、真也は励ます。

「大丈夫だ。好物の匂いに釣られて必ず来る。三日でダメなら次の町だ」

「……うむ。明日も頑張ろう!」

「できれば、早く見つかってくれると、金銭的にも助かるのだが…」

「どうした?大繁盛じゃないか」

「鰻も醤油も味醂も、イズノア直輸入だから、結構お高く付くんだよ!」

かくして――

鍛冶士兼・蒲焼職人となった真也と
忍者兼・営業スマイル覚えたて看板娘アカツキの蒲焼屋は、しばらく続きそうである。
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