アストレイヴ 〜中二病召喚計画〜

よしまさ

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第69話 長老戦

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第69話 長老戦

まず長老が動く。

「小手調べじゃ」

魔法陣が淡く光り、召喚獣が姿を現す。
初級召喚獣――リーフウルフが五体。
緑の毛並みを持つ狼たちは、静かに地面へ降り立ち、即座に戦闘態勢へ移行した。

対するイオリスの魔法陣から現れたのは――

「……スライム?」

十体のスライムが、ぽよぽよと地面に並ぶ。

それを見た長老は、鼻で笑った。

「まだスライムなどと遊んでおったか。子供のままじゃな、イオリス」

その言葉に、イオリスは動じない。
ただ、前を見据え、明確に指示を飛ばした。

「スラミチ! 第1形態で行く!」

迅の実況が入る。

「スラミチはコミュ担当。知能が高く、イオリスの指示を他のスライムに正確かつ高速で伝達できる個体だ」

次の瞬間、スライムたちが一斉に動き出した。
互いに接触し、融合し、形を変えていく。

迅は思わず声を上げる。

「合体スキルがあるのは知ってた。そこにスラナギの形態模写能力を組み合わせて人型を形成――前面には弾力特化のスラゴロウを盾役に。さらに、粘度調整が得意なスラリコの硬度を最大まで引き上げて槍を形成……」

人型の輪郭が完成する。

「――通称、スライムナイト!」

完成した合体スライムナイトは、着地と同時に地面を蹴った。
一瞬でリーフウルフとの距離を詰め、スラリコ槍を突き出す。

一体目のリーフウルフは、悲鳴を上げる間もなく光の粒子となって消滅した。

奇襲成功。残り四体。

迅が続ける。

「足回りは跳躍力に特化したスラピョンが担当してる」

残ったリーフウルフたちが一斉に襲いかかる。
だがスライムナイトは再び跳躍し、大きく間合いを取った。

「スラピョンの跳躍力と、スラリコ槍の貫通力。
“蝶のように舞い、蜂のように刺す作戦”が成立してる」

着地と同時に再突撃。
二体目を正確に貫き、消滅させた。

残り三体。

ここで長老が声を張り上げる。

「囲め! 隠密発動! 連携強化!」

リーフウルフたちは距離を取りつつ、円を描くように配置につく。
そして次の瞬間、姿を消した。

イオリスは即座に叫ぶ。

「スラミチ! スラタロウに索敵強化を!」

迅が補足する。

「スラタロウの索敵強化は厄介だ。姿を消しても、匂い、空気の流れ、地面の振動――消えない情報を拾える」

一体のリーフウルフが姿を現し、正面から攻撃態勢に入る。
だが、それは囮だった。

背後から、別の一体が飛びかかる。

しかし――

スライムナイトはすでに察知していた。
振り返ることなく、槍の穂先を合わせる。

カウンターが決まり、三体目が消滅。

残り二体。

観戦していた真也が、思わず声を漏らす。

「……すげぇな。スライムでここまでやるのか。
しかも別個体の集合体とは思えない。動きが滑らかすぎる」

迅は頷く。

「スラミチの情報伝達速度が異常なんだ。
もはや脊髄反射レベルだよ」

再び、長老の命令が響く。

「同時にかかれ!」

残るリーフウルフたちは、捨て身の突撃を選んだ。
左右から同時に迫る。

スラリコ槍が一体を貫き、消滅させる。
しかし、もう一体への攻撃は間に合わない。

だが、スライムナイトは慌てない。
前面にスラゴロウ盾を構える。

――バインッ!

予想を超える反発音。
リーフウルフは勢いごと弾き飛ばされた。

迅が即座に解説する。

「盾役のスラゴロウはスーパー弾力性の持ち主。
だいたいの物理攻撃は、全部パリィ判定になる」

弾かれたリーフウルフは、苦し紛れに再び隠密を発動する。
だが――

スラタロウの索敵からは逃れられない。

位置を正確に捉え、スラリコ槍が一閃。
最後のリーフウルフも、光となって消えた。

訓練所に静寂が戻る。

長老は、苦虫を噛み潰したような表情で、その光景を見つめていた。

長老は、ゆっくりと頷いた。

「なるほどな。リーフウルフへの対策は、きちんと練られておったようじゃ。――では、次はどうかな?」

そう言うと、長老は再び魔力を展開した。
先ほどよりも大きく、複雑な召喚陣が空中に描かれる。

次の瞬間、緑の鱗を持つ翼竜――グリーンワイバーンが出現した。

召喚された直後、グリーンワイバーンは地面に留まることなく、そのまま上空へと舞い上がる。
翼を大きく打ち振り、空気を震わせる。

直後、鋭い風刃が次々と地上へ降り注いだ。

スライムナイトは盾を構え、防御に徹するしかない。
跳躍しても届かない高度。完全に射程外だ。

イオリスは、すぐに判断を下す。

「スラミチ! 第4形態、行くぞ!」

その指示は一瞬で共有された。
スライムナイトの体が崩れ、再構築されていく。

粘体がうねり、背中から大きな翼が形成される。
次の瞬間、飛行型へと完全変形し、空へ飛び立った。

迅が呟く。

「対空中戦用のフォルムだな……。
スライムドラゴン、ってところか」

スライムドラゴンは、上空を自在に旋回しながら、グリーンワイバーンの放つ風魔法を巧みに回避していく。
狙いを定めさせない軌道だ。

やがて距離を詰め、口を開く。

そこから放たれたのは、光でも炎でもない、粘性のある液体の塊だった。

真也が目を見開く。

「あれは……ブレスか?」

迅がすぐに答える。

「いや、スラジロウが吐く強酸だ。
直撃したら、相当きついぞ」

飛び交う強酸の塊が、グリーンワイバーンの脚部に命中する。

「ギャオォォォ――ッ!」

絶叫が空に響く。
命中箇所の鱗が溶け、肉がただれ落ち、骨が剥き出しになった。

真也が顔を引きつらせる。

「強酸……。
いや、怖すぎだろ……」

相手が怯んだ、その一瞬を逃さず、スライムドラゴンはイオリスの指示に従って急上昇する。
一気に高度を取り、制空権を完全に掌握した。

上を取られたグリーンワイバーンは明らかに焦り始める。
同じ空を舞う敵との戦闘経験が乏しいのだ。

長老も、一瞬言葉に詰まる。

(空中戦で、ここまで主導権を取られるとは……)

それでも、咄嗟に指示を飛ばす。

「口からの攻撃に気をつけよ!
ハリケーンでも、かまいたちでも放つんじゃ!」

グリーンワイバーンは風魔法を連続して放つ。
しかし、スライムドラゴンはそれらを難なく回避していく。

イオリスは、上空のスラミチへ念で直接指示を送った。

「――第7形態で、一気に決めるぞ!」

命令を受け取ったスライムドラゴンは、さらに高度を上げる。
そして――

そこから、グリーンワイバーンへ向かって急降下を開始した。

グリーンワイバーンは必死に風魔法を撃ち続ける。
だが連発による反動で、ついにリキャストタイムへ突入する。

その隙を、逃すはずがない。

スライムドラゴンは重力を味方につけ、速度をさらに増していく。
同時に、その形態も変化していった。

空気抵抗を極限まで削ぎ落とした、細長い突撃形態へ。

迅が、思わず呟く。

「行け!スライムランス!」

音速に迫る勢いで突き進むスライムの塊が、グリーンワイバーンの胴体を正面から撃ち抜いた。

次の瞬間、グリーンワイバーンの身体には、ぽっかりと大穴が開いていた。

そのまま、光の粒子となって消滅する。

空に、再び静寂が戻った。


スライムランスは地面へと着地すると同時に分解し、再びスライムナイトの形へと戻った。

その様子を見た長老は、ゆっくりと息を吐く。

「……さすがに、ここまでやられてはな。
イオリスよ、儂も本気を出さねばなるまい」

そう告げると、長老はこれまでとは明らかに格の違う魔力を解放した。
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