ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ

文字の大きさ
6 / 44
第1章

06.初めての戦闘

しおりを挟む
<メッセージ>『戦闘支援モードを開始します!【身体能力MAX】【動体視力MAX】【全魔力解禁】【全魔法自動発動許可】!!!』

 ロキアの右前脚が、俺の顔面を狙って振り下ろされる。
 
 俺は後方に跳んだ。

 ロキアの鋭い爪が、俺の鼻先をかすめるのが見えた。

「ずざざざざぁーーーーー!」
 空中でトンボを切り、ロキアから10メートル程離れた位置に、低い体勢で着地した。

 休む間もなく、ロキアが俺との距離を詰める。

 牙と爪の連撃で、俺を仕留めようと荒れ狂う。

 全ての攻撃を回避しながら、俺はリリスの姿を探す。

(おまえの紹介の仕方が悪かったせいで、こんなことになっちまったんだぞ! 早く、どうにかしろよ!)

 いつの間にか、俺とロキアから離れた木陰にイスとテーブルが用意されていて、リリスが優雅にお茶を呑んでいた。
 傍らには、黒いドレスアーマーにロングソードを身に着けたオークニーが立っている。
 シャルロットは、ティーワゴンの後ろで、心配そうに戦況を見守っていた。

(あの悪魔がぁああああああああ!)

「魔王ともあろうお方の全力が、それ? よけてるだけじゃ、ボクを倒せないよ!?」
 ロキアが、ナメきった口調で言う。

「確かにな……」
 俺はボソッと呟く。

 リリスは俺たちを止める気はない。
 というより、戦闘が起こるように仕向けていた。
 俺の能力を見極めるためだろう。
 それならば……。

能力ちからなんて、自分でも把握してねぇんだよ! どうなっても知らんぞぉおおおおお!!!」

 今度は、俺が一気に距離を詰めた。
 待ち受けるように、正面から噛みつこうとしたロキアの牙を躱し、こめかみに拳を叩きこんだ。

「――っ!!!」
 ロキアが声にならない声を上げる。
 前脚の膝が、ガクンッと折れる。
 たった一撃で動きを止められたことが信じられない、という目をしている。

(心配すんな、おまえだけじゃない! 俺だって信じられねぇええええええええ!!!)

 ロキアの鼻先に蹴りをぶち込む。
 眉間、瞼、頬、アゴに拳と蹴りを入れ続けた。

「――っ調子にのるな!」
 ロキアは地面を転がり俺から離れると、高く跳び上がる。
「死ねぇえええええええええ!!!!!」

 大きく開け放たれたロキアの口から、巨大な火球が放たれた。

『防御障壁を展開します!【アイギスの盾】!!!』

(――!? アテナの防具の名前なんかつけて大丈夫? 怒られたりしない?)

 ネーミングの問題はさておき、火焔は魔法障壁によって阻まれ、俺に少しの熱すら感じさせることなく消滅した。

「……そんな、ありえない!」
 一切のダメージを負っていない俺を見て、ロキアが呟く。

「もうこの辺にしないか? これ以上やったら、本当に死ぬぞ」

「ふざけるな! 誰がお前なんかに……」

『せっかく作った農地がこれ以上、荒らされないよう捕縛します。【グレイプニル】!』

 地中から幾つもの鎖が出現した。
 ロキアの四肢、胴体、頚に絡みつき、動きを完全に封じる。
 
「――いくらもがいても、その魔法の鎖は切れない。かつて、フェンリルの始祖を拘束するために神々が作り出した魔法の紐の進化版だ。【猫の足音】【女の髭】【山の根】【熊の腱】【魚の息】【鳥の唾液】という元々の素材に加えて、紐に絡んでいた【フェンリルの体毛】が使われてる」
 頭の中に流れてきた解説を、そのまま口にした。
「……てか、お前ってフェンリルだったんだな」

「そこまでじゃ!」
 いつの間にか、リリスが俺の横に立っている。
「ロキアよ、お主の負けじゃ。いい加減、認めよ」

「――くっ!」
 固く閉じた目元から涙がこぼれている。
 動物愛護団体が見たら、きっと俺を八つ裂きにするに違いない。

「確かに、俺は元人間だ。そんなヤツが魔王だなんて認めたくない気持ちはよくわかる。だから、俺の配下にならなくていい」
 ロキアを拘束している鎖を消した。
「俺は、ルシファー様に『魔族が幸せに暮らせるようにして欲しい』と頼まれて、ここにいる。規格外の力も授けてもらった。でも、俺一人の力で出来ることなんて、たかが知れてる。だから、友人として協力してほしい。全ての魔族が幸せになれるように……」

 ロキアの身体が小さくなっていく。
 それと同時に、濃い霧のようなものが全身を覆う。
 
(――??? えぇえええええええ!!!)

 白い靄が晴れた時、そこにフェンリルの姿はなく、中学生くらいの短髪女子が立っていた。
 狼のような耳に白銀のふさふさとした尻尾、ハーフブーツにショートパンツ、タンクトップの上にボレロを羽織っている。

(お、女の子だったのか……)

「……ふ~ん、そういうことなら、まあ……協力してあげてもかまわないかな。……あっ、だからって! ボクはキミを魔王様だなんて認めてないからね! そこんとこ勘違いしないでよね!」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『スローライフどこ行った?!』追放された最強凡人は望まぬハーレムに困惑する?!

たらふくごん
ファンタジー
最強の凡人――追放され、転生した蘇我頼人。 新たな世界で、彼は『ライト・ガルデス』として再び生を受ける。 ※※※※※ 1億年の試練。 そして、神をもしのぐ力。 それでも俺の望みは――ただのスローライフだった。 すべての試練を終え、創世神にすら認められた俺。 だが、もはや生きることに飽きていた。 『違う選択肢もあるぞ?』 創世神の言葉に乗り気でなかった俺は、 その“策略”にまんまと引っかかる。 ――『神しか飲めぬ最高級のお茶』。 確かに神は嘘をついていない。 けれど、あの流れは勘違いするだろうがっ!! そして俺は、あまりにも非道な仕打ちの末、 神の娘ティアリーナが治める世界へと“追放転生”させられた。 記憶を失い、『ライト・ガルデス』として迎えた新しい日々。 それは、久しく感じたことのない“安心”と“愛”に満ちていた。 だが――5歳の洗礼の儀式を境に、運命は動き出す。 くどいようだが、俺の望みはスローライフ。 ……のはずだったのに。 呪いのような“女難の相”が炸裂し、 気づけば婚約者たちに囲まれる毎日。 どうしてこうなった!?

世界一簡単にレベルアップ ~魔物を倒すだけでレベルが上がる能力を得た俺は、弱小の魔物を倒しまくって異世界でハーレム作る事にしました~

きよらかなこころ
ファンタジー
 シンゴはある日、事故で死んだ。  どうやら、神の手違いで間違って死んでしまったシンゴは異世界に転生することになる。  転生する際にオマケに『魔物を倒すだけでレベルが上がる』能力を貰ったシンゴ。  弱小の魔物を倒してレベルを上げ、異世界でハーレムを作る事を企むのだった。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

異世界翻訳者の想定外な日々 ~静かに読書生活を送る筈が何故か家がハーレム化し金持ちになったあげく黒覆面の最強怪傑となってしまった~

於田縫紀
ファンタジー
 図書館の奥である本に出合った時、俺は思い出す。『そうだ、俺はかつて日本人だった』と。  その本をつい翻訳してしまった事がきっかけで俺の人生設計は狂い始める。気がつけば美少女3人に囲まれつつ仕事に追われる毎日。そして時々俺は悩む。本当に俺はこんな暮らしをしてていいのだろうかと。ハーレム状態なのだろうか。単に便利に使われているだけなのだろうかと。

『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』

チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。 気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。 「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」 「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」 最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク! 本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった! 「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」 そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく! 神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ! ◆ガチャ転生×最強×スローライフ! 無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

レベルアップは異世界がおすすめ!

まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。 そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。

異世界転生したらたくさんスキルもらったけど今まで選ばれなかったものだった~魔王討伐は無理な気がする~

宝者来価
ファンタジー
俺は異世界転生者カドマツ。 転生理由は幼い少女を交通事故からかばったこと。 良いとこなしの日々を送っていたが女神様から異世界に転生すると説明された時にはアニメやゲームのような展開を期待したりもした。 例えばモンスターを倒して国を救いヒロインと結ばれるなど。 けれど与えられた【今まで選ばれなかったスキルが使える】 戦闘はおろか日常の役にも立つ気がしない余りものばかり。 同じ転生者でイケメン王子のレイニーに出迎えられ歓迎される。 彼は【スキル:水】を使う最強で理想的な異世界転生者に思えたのだが―――!? ※小説家になろう様にも掲載しています。

処理中です...