ジャングリラ~悪魔に屠られ魔王転生。死の森を楽園に変える物語~

とんがり頭のカモノハシ

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第1章

08.妖狐・緋魅狐

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 バベルの滝の麓、大鬼《オーガ》の郷――。

「ご報告いたします。リリス殿とロキア殿が手を結んだ模様。リリス殿の城下に人狼が終結。街が形成されつつあります!」

 大鬼の頭・カゲトラが言った。

「近頃、森が騒がしいと思っていたら、何やら面白いことが起こっているようでありんすね」

 朱色の長い煙管キセルを一口吸って、緋魅狐ひみこはホゥ~と煙を吐く。
 
 赤と緑を基調にした派手な花柄の着物を着ている。
 緋魅狐は800年の時を生きる妖狐で、元魔王軍四天王の一人だ。
 
「アチキをのけ者にするなんて、リリスもロキアもいい度胸をしてやす。カゲトラ、出掛けんす。ついてきなんし」

「御意!」

 リリスとロキアが急接近してやす。
 魔王様が倒されて四天王がバラバラになってからというもの、それぞれの領域は侵してはならぬという暗黙のルールがありんした。
 100年間、それは守られてきんした。
 それなのに、急に2人が手を組むなんてことがありえんす……?

 緋魅狐を乗のせた煌びやかな輿《こし》を大鬼の男たちが担ぐ。
 その周りをカゲトラをはじめ手練れの戦士たちが囲み、護衛する。

「此度は挨拶に出向くだけでありんす。早まった行動は慎みなんし、皆の衆……」

 緋魅狐と大鬼の一団は、リリスの城に向かって進み始めた。


  ◇


 うららかな午後――。

 俺とリリスとロキアは、城内にある庭園のテラスで、果樹園から収穫されたばかりのメロンを試食していた。

「なんだコレ!? 舌がとろけそうな甘さがボクの全身を駆け巡って……ああ~幸せ♡」
 ロキアがほっぺたを押さえる。

「黄色みがかったグリーンの果肉が美しいの。香りも実に素晴らしい」
 リリスも気に入ってくれたようで、満足そうにウンウンと何度も頷く。

「元いた世界では高級フルーツだったんだ。ちゃんと同じ味がしてる!」
 リリスの正面に座り、スプーンで果肉を口に運んだ俺も感想を伝えた。

 農園の代表として城に来たジャルロットが、ほっとした表情になる。
「みなさんが満足されていたと、帰ったら伝えておきますぴょん!」
 耳が嬉しそうにピコピコ動いていた。

「お待ちください!」
 突然、ひどく慌てたオークニーの声が響く。

「騒がしぞ。何事じゃ?」
 声の方向に目をやったリリスは、
「……これは珍客じゃな。緋魅狐よ、何用があって我が城に参った?」

「緋魅狐、ボクたちはお茶会を楽しんでるんだよね。キミが連れてきた大鬼の武士もののふたちを下がらせてくれない? この和やかな席には、ふさわしくない顔だから……」

 ロキアはティーカップを口に運ぶ。

「それとも、喧嘩をしに来た? なら、ボクが相手になるよ!」

「……アチキは争いが目的で、ここに来たわけじゃありんせん。わかりんした。カゲトラ! みんなを連れて下がるでありんす」

 大鬼の武士たちはオークニーに案内されて、城のどこかへ移動した。

「……で、用は何じゃ? 手短に話せ」

「リリス……」

 緋魅狐はゆっくりと口を開き、そして言った。

「その果物は何でありんす!?  アチキにも食べさせておくれなんし!!!」


  ***


「……なるほど。異世界人が魔王として召喚されたのを機に2人は協力関係を結ぶことになった。新魔王様は魔族の生活を向上させることが第一目的……と。話を要約すると、こうゆうことでありんす?」

 緋魅狐は、メロンと一緒にリリスの説明を咀嚼する。

「そういうこと!」

 俺は大きく頷いた。
 魔王軍の元四天王に妙な誤解をされるのは勘弁だ。
 
「だから、リリスとロキアが手を組んで緋魅狐の縄張りを奪おうとしているとか絶対ない。断じて、ない。安心してくれ!」

「アチキが頂いている緑のこの果物は、どこで手に入れられんした?」

「城下に果樹園がある。そこで育てたものだよ。異世界原産、メロンというフルーツだ」

「なるほど。この世界にはありんせん果物でありんしたか。永う生きてやすが、このように美味しいものは初めて口にしたので驚いておりんす。……決めんした。魔王様の『魔族の生活向上計画』にアチキも協力させていただきんす!」
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