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第2章
13.魔王誕生
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「……と、そのようなわけでアモンも城で暮すことになりました」
玉座の間。
宝石や黄金で彩られた椅子に俺は座らされ、下座で片膝をついたリリスから報告を受けている。
ロキア、緋魅狐、アモンもリリスの横に一列に並び、同様の姿勢を崩さない。
(ってか、リリスさん……その畏まった口調は何? 怖いんですけど!)
「「「「魔王サタン様、我らは生涯をかけてあなた様に忠誠を捧げ、どのような困難も共に乗り越えることを、ここに誓いましょう!」」」」
(ま、待って! まだ心の準備が出来ていないんですけどぉおおおおお!!!)
「……さて、堅苦しい挨拶はここまでにしてサタンよ」
リリスは一旦、言葉を切って、立ち上がる。
「新魔王の下、魔族の新たな船出じゃ。これを機に、国の名前を決めようではないか!」
いつもの調子で提案した。
まるで、気圧が元に戻ったみたいだ。
耳に馴染んだリリスの口調が心地いい。
「リリス、その口の利き方はなんです! 魔王様に対して不敬ですよ!!」
アモンが咎める。
人型のアモンは長い髪の清楚な美女で、お姫様のような気品を纏っている。
角や尻尾は見えない。
レースのついた白いブラウス、深緑色のコルセットスカートにショートジャケットを合わせている。
「いや、堅っ苦しいのは抜きで! そのほうが、俺も助かる!」
「それじゃあ、ボクはこれまで同様、サタンくんって呼ばせてもらうね」
「けじめというのは必要だと思いんすが、魔王様がそう望まれるのであれば、リリスとロキアの無礼な言葉遣いには目を瞑りんしょう」
「サタン魔王様の御心のままに」
アモンは片膝をついた姿勢のまま右手を胸に当てて、お辞儀をした。
国の名付けは俺に一任されたので、悩み抜いた末『ジャングリラ』に決めた。
「転生前の世界で、ユートピアの代名詞として使われいた架空の国の名前『シャングリラ』とジャングルを掛け合わせた。争いや苦しみのない、平和で調和のとれた楽園をこの森に築きたいという願いを込めて付けた」
「いい名じゃな。気に入った」
リリスの言葉に、他の3人も頷いた。
この城は『魔王城』となり、ソドムの森全域を支配下に置くことになった。
アモンの眷属である龍人は城下の街に、リザードマンは現在の居住区である湖、それから大鬼《オーガ》の郷があったバベルの滝の麓に分散して暮らすことになった。
リザードマンは水辺の方が生活しやすいのだそうだ。
加えて、
「今後は魔王城でも気軽に魚を食べられるようになりますわ」
アモンが補足してくれた。
なるほど、そういう狙いもあるわけか!
「それで、今後の方針は?」
ロキアの質問に、
「街の整備は、しばらくの間、4人に任せたい。俺は、人間の国に行ってみたいと思ってる」
と答えた。
「……ほう? なぜじゃ?」
リリスが険しい顔をする。
「この世界の人間の暮らしぶりが知りたい。魔族の生活を、もっと良くする参考になると思うんだ」
農園、果樹園、牧場を作ったことにより、食生活は飛躍的に向上した。
街に出ると子供たちに囲まれて、
「サタン様~、ありがとう!」
とお礼を言われる。
「あのね、いつもね、ご飯がいっぱい食べられるようになったの」
「お父さんとお母さんがケンカしなくなったの」
貧困で一番犠牲になるのは子供たちだ。
昔、インドで物乞いをする幼い少年を見たことがある。
「ぼくがお金を持って帰らないと病気の家族が飢え死にするんです」
すっかり同情して、その日の夕飯代を全て渡したが、後になって現地の人からこう言われた。
「子供の物乞いに会った時は、現金ではなくクッキーとかチョコレートなんかを渡したほうがいい」
「どうして?」
「子供を誘拐して物乞いをさせるような組織があるからさ。幼い子供には、同情で多くのお金が集まるからね。でもそのお金は、背後にいるマフィアたちに回収されてしまうのさ。食べ物なら、その子供の口に確実に入る。マフィアの道具ではなく、本当に病気の家族と暮らしていたとしても……」
魔族の子供たちの笑顔は俺を元気にしてくれる。
誰かの役に立てているんだと、この世界に来た意義を実感させてくれる。
「その笑顔を守りたいんだ」
「なるほどのう……」
リリスは顎に手を当てて、何か考えているようだった。
「わかった。ならば、反対する理由はない。ジャングリラのことは妾たちに任せておけ」
「サタンくん、ボクも一緒に行きたい! 連れてってぇえええ!!」
ロキアが泣きながら抱き着いてきた。
「お前さんは耳と尻尾が目立ちすぎるから駄目でありんす。すぐに魔族と見破られてトラブルになりんす。大人しゅう留守番しておきんなんし」
「長居するつもりはないから。すぐに帰ってくるよ!」
俺はロキアの頭を撫でた。
人間の街を視察するにあたり、どこへ行けばいいか見当もつかない俺に、リリスは大陸で一番長い歴史を持つ大国、アンジャル王国のウォータールーという街を薦めてくれた。
「ここは妾が以前、契約したことがあるディラン伯爵の領内にある街での。紹介状を書いてやるから持っていくがよかろう。いろいろと便宜を図ってくれると思うぞ?」
こうして俺の旅先が決まった。
◇
【アルニラム神皇国、アストレア教・メーテス大聖堂】
「ニコラウス教皇、100年振りに新しい魔王が誕生したようです」
教皇の執務室、フランシスコ大司教が震える声で報告した。
ニコラウス教皇の眉がピクリと動く。
「おやおや……それは穏やかではありませんね。それは確かな話ですか?」
「古に、女神様より賜りし秘宝『賢者の石』が光を放っておりますので疑う余地はないかと……」
千年よりも昔、女神アストレアは人間に3種の神器を与えた。
魔王の誕生を報せる『賢者の石』、勇者を召喚する『宝杖』、魔王を斬ることができる『聖剣』だ。
「光が指し示す方向は?」
「北西……『死の樹海』がある方角です」
「なるほど……取り急ぎ、私が皇帝陛下にご報告しましょう。フランシスコは司祭たちに説明を。そして、勇者を召喚する準備を進めなさい」
「御意……」
玉座の間。
宝石や黄金で彩られた椅子に俺は座らされ、下座で片膝をついたリリスから報告を受けている。
ロキア、緋魅狐、アモンもリリスの横に一列に並び、同様の姿勢を崩さない。
(ってか、リリスさん……その畏まった口調は何? 怖いんですけど!)
「「「「魔王サタン様、我らは生涯をかけてあなた様に忠誠を捧げ、どのような困難も共に乗り越えることを、ここに誓いましょう!」」」」
(ま、待って! まだ心の準備が出来ていないんですけどぉおおおおお!!!)
「……さて、堅苦しい挨拶はここまでにしてサタンよ」
リリスは一旦、言葉を切って、立ち上がる。
「新魔王の下、魔族の新たな船出じゃ。これを機に、国の名前を決めようではないか!」
いつもの調子で提案した。
まるで、気圧が元に戻ったみたいだ。
耳に馴染んだリリスの口調が心地いい。
「リリス、その口の利き方はなんです! 魔王様に対して不敬ですよ!!」
アモンが咎める。
人型のアモンは長い髪の清楚な美女で、お姫様のような気品を纏っている。
角や尻尾は見えない。
レースのついた白いブラウス、深緑色のコルセットスカートにショートジャケットを合わせている。
「いや、堅っ苦しいのは抜きで! そのほうが、俺も助かる!」
「それじゃあ、ボクはこれまで同様、サタンくんって呼ばせてもらうね」
「けじめというのは必要だと思いんすが、魔王様がそう望まれるのであれば、リリスとロキアの無礼な言葉遣いには目を瞑りんしょう」
「サタン魔王様の御心のままに」
アモンは片膝をついた姿勢のまま右手を胸に当てて、お辞儀をした。
国の名付けは俺に一任されたので、悩み抜いた末『ジャングリラ』に決めた。
「転生前の世界で、ユートピアの代名詞として使われいた架空の国の名前『シャングリラ』とジャングルを掛け合わせた。争いや苦しみのない、平和で調和のとれた楽園をこの森に築きたいという願いを込めて付けた」
「いい名じゃな。気に入った」
リリスの言葉に、他の3人も頷いた。
この城は『魔王城』となり、ソドムの森全域を支配下に置くことになった。
アモンの眷属である龍人は城下の街に、リザードマンは現在の居住区である湖、それから大鬼《オーガ》の郷があったバベルの滝の麓に分散して暮らすことになった。
リザードマンは水辺の方が生活しやすいのだそうだ。
加えて、
「今後は魔王城でも気軽に魚を食べられるようになりますわ」
アモンが補足してくれた。
なるほど、そういう狙いもあるわけか!
「それで、今後の方針は?」
ロキアの質問に、
「街の整備は、しばらくの間、4人に任せたい。俺は、人間の国に行ってみたいと思ってる」
と答えた。
「……ほう? なぜじゃ?」
リリスが険しい顔をする。
「この世界の人間の暮らしぶりが知りたい。魔族の生活を、もっと良くする参考になると思うんだ」
農園、果樹園、牧場を作ったことにより、食生活は飛躍的に向上した。
街に出ると子供たちに囲まれて、
「サタン様~、ありがとう!」
とお礼を言われる。
「あのね、いつもね、ご飯がいっぱい食べられるようになったの」
「お父さんとお母さんがケンカしなくなったの」
貧困で一番犠牲になるのは子供たちだ。
昔、インドで物乞いをする幼い少年を見たことがある。
「ぼくがお金を持って帰らないと病気の家族が飢え死にするんです」
すっかり同情して、その日の夕飯代を全て渡したが、後になって現地の人からこう言われた。
「子供の物乞いに会った時は、現金ではなくクッキーとかチョコレートなんかを渡したほうがいい」
「どうして?」
「子供を誘拐して物乞いをさせるような組織があるからさ。幼い子供には、同情で多くのお金が集まるからね。でもそのお金は、背後にいるマフィアたちに回収されてしまうのさ。食べ物なら、その子供の口に確実に入る。マフィアの道具ではなく、本当に病気の家族と暮らしていたとしても……」
魔族の子供たちの笑顔は俺を元気にしてくれる。
誰かの役に立てているんだと、この世界に来た意義を実感させてくれる。
「その笑顔を守りたいんだ」
「なるほどのう……」
リリスは顎に手を当てて、何か考えているようだった。
「わかった。ならば、反対する理由はない。ジャングリラのことは妾たちに任せておけ」
「サタンくん、ボクも一緒に行きたい! 連れてってぇえええ!!」
ロキアが泣きながら抱き着いてきた。
「お前さんは耳と尻尾が目立ちすぎるから駄目でありんす。すぐに魔族と見破られてトラブルになりんす。大人しゅう留守番しておきんなんし」
「長居するつもりはないから。すぐに帰ってくるよ!」
俺はロキアの頭を撫でた。
人間の街を視察するにあたり、どこへ行けばいいか見当もつかない俺に、リリスは大陸で一番長い歴史を持つ大国、アンジャル王国のウォータールーという街を薦めてくれた。
「ここは妾が以前、契約したことがあるディラン伯爵の領内にある街での。紹介状を書いてやるから持っていくがよかろう。いろいろと便宜を図ってくれると思うぞ?」
こうして俺の旅先が決まった。
◇
【アルニラム神皇国、アストレア教・メーテス大聖堂】
「ニコラウス教皇、100年振りに新しい魔王が誕生したようです」
教皇の執務室、フランシスコ大司教が震える声で報告した。
ニコラウス教皇の眉がピクリと動く。
「おやおや……それは穏やかではありませんね。それは確かな話ですか?」
「古に、女神様より賜りし秘宝『賢者の石』が光を放っておりますので疑う余地はないかと……」
千年よりも昔、女神アストレアは人間に3種の神器を与えた。
魔王の誕生を報せる『賢者の石』、勇者を召喚する『宝杖』、魔王を斬ることができる『聖剣』だ。
「光が指し示す方向は?」
「北西……『死の樹海』がある方角です」
「なるほど……取り急ぎ、私が皇帝陛下にご報告しましょう。フランシスコは司祭たちに説明を。そして、勇者を召喚する準備を進めなさい」
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