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本編
3話
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放課後には、生徒会役員としての仕事がある。
生徒会室へ向かう途中、中庭を通りかかった時だ。
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
まさかと思い、物陰に隠れて確認する。
そこには例の令嬢がいた。
一人でベンチに座っている。
ちらっと見えた手には本を持っていた。
読書をしているのだろう。
聞き覚えのない鼻歌を歌いながら、横に揺れている。
「私って絶対ヒロインだよねー? だって、このちょーぜつ可愛い容姿だし、子爵令嬢だし、魔力も光属性だし、設定も完璧! だけど、なんの乙女ゲームか分からないのよねー」
すると、いきなり独り言を喋り出し、意味のわからないことを言い始めた。
僕の存在には一切、気付いていないようだ。
一体何を言っているんだ。
全く理解できない。
「まあ、分かんなくてもいいでしょ。どうせ、私がヒロインなのよ! ていうか、逆ハーとか狙ってみたり? うわあ! 絶対、楽しいじゃん!」
令嬢はそのまま話し続けている。
しかし、内容が全く分からない。
さっぱりだ。
すると令嬢は突然立ち上がり、ガッツポーズをした。
僕の方からは令嬢の後ろ姿しか見えないが、何やら嬉しそうだ。
その声はとても楽しげだが、僕の心の中には黒いモヤが広がる。
なんだか嫌な予感がした。
急いでその場を離れ、生徒会室に急いだ。
早く仕事を終わらせよう。
そして、クラーラに会いに行こう。
彼女はいつも終わるまで図書館で待っていてくれている。
登下校は一緒の馬車だから。
彼女の笑顔さえ見れれば、この胸の中の気持ちも落ち着くはずだ。
「あっ、遅かったね」
生徒会室の扉を開けると声をかけられた。
友人の一人でもある書記のテオ・グラーツだ。
「さっき、バルテル嬢が伝言を伝えにきてたよ。“今日は一緒に帰れません”だって」
僕は目の前が真っ暗になった。
絶望感に頭がクラクラする。
勝手に身体が震え出す。
なぜだ?
いや、確かに一緒に帰る約束はしていないが。
それでもいつも一緒だったではないか。
だが、伝言をしてくれただけ良かったのかもしれない。
「どうしたんだい? そんなに真っ青になって」
「なんだ、フランツ。たった一回、一緒に帰るのを断られただけじゃねぇか」
生徒会長のロルフ・メルティスと庶務のヴィリー・ドーレスが声をかけてきた。
友人である2人の声も聞こえないくらいに僕の頭は働かなかった。
「おい、聞いてんのか!」
「大丈夫かい?」
「あ、ああ」
その日は結局、仕事にならずに活動時間は終わった。
僕はフラつきながら馬車まで歩き、一人で帰宅した。
生徒会室へ向かう途中、中庭を通りかかった時だ。
聞き覚えのある声が聞こえてきた。
まさかと思い、物陰に隠れて確認する。
そこには例の令嬢がいた。
一人でベンチに座っている。
ちらっと見えた手には本を持っていた。
読書をしているのだろう。
聞き覚えのない鼻歌を歌いながら、横に揺れている。
「私って絶対ヒロインだよねー? だって、このちょーぜつ可愛い容姿だし、子爵令嬢だし、魔力も光属性だし、設定も完璧! だけど、なんの乙女ゲームか分からないのよねー」
すると、いきなり独り言を喋り出し、意味のわからないことを言い始めた。
僕の存在には一切、気付いていないようだ。
一体何を言っているんだ。
全く理解できない。
「まあ、分かんなくてもいいでしょ。どうせ、私がヒロインなのよ! ていうか、逆ハーとか狙ってみたり? うわあ! 絶対、楽しいじゃん!」
令嬢はそのまま話し続けている。
しかし、内容が全く分からない。
さっぱりだ。
すると令嬢は突然立ち上がり、ガッツポーズをした。
僕の方からは令嬢の後ろ姿しか見えないが、何やら嬉しそうだ。
その声はとても楽しげだが、僕の心の中には黒いモヤが広がる。
なんだか嫌な予感がした。
急いでその場を離れ、生徒会室に急いだ。
早く仕事を終わらせよう。
そして、クラーラに会いに行こう。
彼女はいつも終わるまで図書館で待っていてくれている。
登下校は一緒の馬車だから。
彼女の笑顔さえ見れれば、この胸の中の気持ちも落ち着くはずだ。
「あっ、遅かったね」
生徒会室の扉を開けると声をかけられた。
友人の一人でもある書記のテオ・グラーツだ。
「さっき、バルテル嬢が伝言を伝えにきてたよ。“今日は一緒に帰れません”だって」
僕は目の前が真っ暗になった。
絶望感に頭がクラクラする。
勝手に身体が震え出す。
なぜだ?
いや、確かに一緒に帰る約束はしていないが。
それでもいつも一緒だったではないか。
だが、伝言をしてくれただけ良かったのかもしれない。
「どうしたんだい? そんなに真っ青になって」
「なんだ、フランツ。たった一回、一緒に帰るのを断られただけじゃねぇか」
生徒会長のロルフ・メルティスと庶務のヴィリー・ドーレスが声をかけてきた。
友人である2人の声も聞こえないくらいに僕の頭は働かなかった。
「おい、聞いてんのか!」
「大丈夫かい?」
「あ、ああ」
その日は結局、仕事にならずに活動時間は終わった。
僕はフラつきながら馬車まで歩き、一人で帰宅した。
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