頭の可笑しい子爵令嬢は目の前にいる天然な公爵令嬢をどうにかしたい〜この世界はゲームの中で、ヒロインは私、悪役令嬢は〜

笹本茜

文字の大きさ
1 / 2

前編・ルミエール

しおりを挟む
 ルミエール・アリディとノイカ・ラーズは学園の敷地にある庭園で、二人っきりのお茶会をしている。
 
 白、黄色、赤、青。
 鮮やかな彩りを放つ花々が咲く庭園。
 その中央に位置するガゼボは二人の愛用している所だ。
 
 紅茶のカップはお互いに贈りあったものを使用している。
 薄桃色の線が入ったものと黒色の線が入ったもの。
 ルミエールは二つのカップにお茶を入れる。
 
 テーブルの真ん中には茶請けのクッキーが置かれている。
 ノイカが作ったものだ。

 お茶を用意するのはルミエール担当。
 茶請けを用意するのはノイカ担当だ。

「ルミー、私、言わなきゃいけないことがあるの」
「どうしたの、ノイ? そんなに改まって」

 ルミエールは緊張した面持ちのノイカをじっと見つめる。
 内心、緊張に強張った顔も可愛いと思ってしまう。

 ノイカはルミエールにとって、世界一可愛らしい女の子だ。
 家族からも「ラーズ家の宝石」と言われ育てられたらしい。
 自信がありあまっている所以だろう。
 彼女の貴族らしからぬ明るさはみんなを魅了する。
 
 腰までのばしたピンクブロンドは緩く巻かれている。
 整った顔に愛嬌を与えているのは鼻のそばかすだ。
 透き通る水色の瞳は潤んでんいるように見える。

 ノイカは息を吸い込んだ。
 ぐいっと眉間にシワを寄せている。
 なにかの衝撃を受け止めたかのような険しい表情だ。

「私ね、実は転生者なの」
「てんせいしゃ?」
「ここは乙女ゲームの世界で私はヒロインなのよ!」
「おとめげーむ……ひろいん……?」

 突拍子もないノイカの発言に首を傾げる。
 いくら考えても、彼女の放った単語の意味は分からない。
 ノイカはたまに知らない言葉をつぶやくときがあるのだ。
 『おとめげーむ』や『ひろいん』もそのたぐいなのだろう。

「やっぱり、分からないわよね」
「ごめんなさい、ノイ。私の勉強不足だわ」
「違うの、ルミー! これは私の前世の記憶で……説明が難しいのだけれど、ここは物語の世界で、私が主役なの」

 ノイカの説明はとても分かりやすいものではない。
 だが、彼女の表情から察するに真剣なのは分かる。
 ルミエールはノイカの言葉を信じることにした。
 彼女が嘘をつくとは思えないからだ。
 おかしな事を言うことも多いが、彼女はいつも真面目なのだ。
 それに、たとえノイカに嘘をつかれても私は彼女を責めることは出来ない。
 だって、その嘘は私のことを想ってのものだと分かっているから。

「凄いわ、ノイ。貴方が主役の世界だなんて! 私はどうゆう役割かしら? 友人?」
「……悪役令嬢よ」
「悪役令嬢? 悪い人ってことかしら?」
「そうよ。ルミエールは王子様の婚約者でありながら、その立場を利用して悪事を働くの。そして最後は断罪されて、国外追放される運命にあるわ」
「それは嫌ね。でも、どうしてそうなったのかしら? 私、悪事を働いた覚えはないもの」
「そうルミーはそんな事しないわ! きっと、冤罪なのよ。だから私はルミーを国外追放させたくないのよ」
「ノイ……」
「だから、安心して! 私を信じて、必ず助けてみせる。そうすれば、2人で幸せになれるはずだわ!」

 ぎゅっと両手を握って力強く宣言したノイカ。
 こんなにも必死に訴えかけてくる人を疑うことが出来るだろうか? 
 いや出来ない。
 出来るはずがない。
 この子ほど真っ直ぐで優しい心の持ち主はいないと思う。
 ノイカはいつだって他人のために行動している。
 そんな彼女に救われたのは一度や二度ではない。
 もし、ノイカがいなければ今の私はいなかったかもしれない。
 ノイカのいない世界があったならば私はどうしているのだろう。
 想像するとゾッとしてしまう。
 だけど、今はもう大丈夫だ。
 ノイカがいるだけで幸せな気持ちになる。

 そんな気持ちに浸っていると、突然、マントをはためかせる男子生徒が現れた。

「ここに居たか、ルミエール・アリディ!」
「……第二王子殿下」

 

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

バッドエンド予定の悪役令嬢が溺愛ルートを選んでみたら、お兄様に愛されすぎて脇役から主役になりました

美咲アリス
恋愛
目が覚めたら公爵令嬢だった!?貴族に生まれ変わったのはいいけれど、美形兄に殺されるバッドエンドの悪役令嬢なんて絶対困る!!死にたくないなら冷酷非道な兄のヴィクトルと仲良くしなきゃいけないのにヴィクトルは氷のように冷たい男で⋯⋯。「どうしたらいいの?」果たして私の運命は?

婚約破棄された私はカエルにされましたが、悪役令嬢な妹が拾って舞踏会で全部ひっくり返します

まぴ56
恋愛
異世界貴族の私は、婚約者に捨てられ――口封じに“蛙”へ。 声も出せず噴水の縁で震える私を拾ったのは、嫌味たっぷりで見下すように笑う妹のミレイだった。 「汚らしいお姉さま――わたくしが連れ帰って、たっぷり苛めて差し上げますわ」 冷たく弄ぶふりをしながら、夜な夜な呪いの文献を漁るミレイ。 やがて迎える、王も出席する大舞踏会。ミレイの千里眼が映す“真実”が、裏切り者たちの仮面を剥ぎ取っていく―― 呪いが解ける条件は、最後のひと押し。 姉妹の絆が、ざまぁと逆転を連れてくる。

夫が勇者に選ばれました

プラネットプラント
恋愛
勇者に選ばれた夫は「必ず帰って来る」と言って、戻ってこない。風の噂では、王女様と結婚するらしい。そして、私は殺される。 ※なろうでも投稿しています。

どうぞ、おかまいなく

こだま。
恋愛
婚約者が他の女性と付き合っていたのを目撃してしまった。 婚約者が好きだった主人公の話。

お腹の子と一緒に逃げたところ、結局お腹の子の父親に捕まりました。

下菊みこと
恋愛
逃げたけど逃げ切れなかったお話。 またはチャラ男だと思ってたらヤンデレだったお話。 あるいは今度こそ幸せ家族になるお話。 ご都合主義の多分ハッピーエンド? 小説家になろう様でも投稿しています。

貧乏男爵家の末っ子が眠り姫になるまでとその後

空月
恋愛
貧乏男爵家の末っ子・アルティアの婚約者は、何故か公爵家嫡男で非の打ち所のない男・キースである。 魔術学院の二年生に進学して少し経った頃、「君と俺とでは釣り合わないと思わないか」と言われる。 そのときは曖昧な笑みで流したアルティアだったが、その数日後、倒れて眠ったままの状態になってしまう。 すると、キースの態度が豹変して……?

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...