届け、紙飛行機

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届け僕の負の遺産

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拝啓、知らない誰かへ。

僕はもうすぐ死にます。
死因は自殺になる予定です。

突然ですが、僕の自殺に至った原因をここにしたためようと思います。

1年前の出来事、彼女はうつを患っていましたた。
毎日しんどそうにベットにこもって身動きせずじっと、苦しみに耐えるようでした。

できるだけ、僕は彼女をサポートした。
金銭面、家事、通院の付き添いなど様々なことを仕事をしながら支えていました。

ある日、僕は彼女にあることを聞きました。

それは、うつ病についてです。

うつ病を理解しようとして聞いたのだが、それが裏目に出てしまったのです。

「鬱って気持ち病気なんだよね?体のだるさとかは錯覚とかじゃないの?

気持ちが沈んだときってみんな体が重く感じたり、頭が痛くなったりするだろ?
それと同じようなもの?
それに対する体力が無いだけなんじゃない?
うつ病ってそういった根性というか、気力の弱い人たちの事を指す言葉で、病気ではないんじゃないかな?と思ってさ」

僕は悪気があって言ったわけではなかった。
ただ、病気じゃなくて気のせいだよ、だから治るんじゃないかな?と言いたかったのです。

なんでややこしい言い回しをしてしまったのだろう。

いや、そもそもうつ病に対しての理解が浅すぎたのです。

僕の言葉が彼女を傷つけてしまった。

今ならわかる。

彼女は毎日鬱という谷底の上をロープ一本で落ちないように神経をすり減らしながら毎日生きていたのだ。
谷底を超えるために、慎重に一歩一歩バランスが崩れそうになったり、時には落ちてしまいそうになったり極限状態の苦しみに耐え、鬱に落ちないように自分と戦っていたのだろう。

彼女は何も言わず涙を流した。
感情は表情に現れていなかった。
放心した状態で涙が流れていた。

今なら涙の意味が分かるような気がする、心が死にかけている中、僅かな悲しみと絶望が涙に込められていたのだと思います。  

最も身近な僕が彼女を理解して上げることができなかった、理解しようともしていなかった事に、彼女は絶望したのだと思います。
一番の理解者であって欲しい人に理解してもらえなかった事への悲しみ、怒り、呆れ、色んな感情が渦巻いたはずだ。

ほぼ無の感情の中、僅かにしか感じない感情がめいいっぱい溢れたのだろう。

それが彼女の最後の僕へメッセージだった。

あなたには失望したと彼女の涙がこぼれ落ちる。


そしてその二日後に彼女は自害した。

杏里、ごめんな。

俺も今から同じ死に方で謝りに行くから待っててほしい。

本当にごめん。

そして、これを読んでくれた誰かさん。
関係のない話を聞いてくれてありがとう、そしてごめんなさい。

僕は手紙を紙飛行機に折って、ベランダへ向かった。

風が優しく吹いていた。
まるでどこかへ導くように一方向に風はずっと吹いている。

僕は僕の思いを載せた紙飛行機を風に載せた。

紙飛行機は風に乗り空高く、知らない誰かのもとへと旅立つ。

自分の気持ちを書き出すことで少し楽になった。

あとは死ぬだけ、さぁ彼女に会いに行こう。
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