届け、紙飛行機

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紙飛行機

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朝、目が覚めると希死念慮はどこかへ消え去っていた。

心奥でもやもやと鬱の種のようなものがくすぶっているのを感じ、まだ体調が良くないことが分かる。

ベットから鉛のように重たい体を起き上がらせ、リビングへと向かう。

リビングとベランダを遮るように閉じていたカーテンを開けると日光が部屋の隅々まで行き渡り一気に明るくなる。

僕の心もこんなに晴れる日は来るのだろうか。
嵐の海のように乱高下する精神は一向に晴れる気配が無かった。

ベランダの窓のロックを外し、扉をゆっくりとスライドさせる。

カラカラカラと音がなる。
網戸は錆びた鉄をこすり合わせたような音をたてる。

昨日とは違い、足の感覚に集中することもなく、ただベランダへと出た。

風に乗った春の匂いに心地よい哀愁を感じながら背伸びをする。

今日一日、鬱が燻っているだけで済めばいいのだが・・・。

如何にに刺激を減らし、平凡な日常を送れるかにかが重要だ。

ベランダの塀に肘をかけ、タバコを加えジッポを開ける。

カチンと高い音をたて着火する。

一口大きく吸い、ふぅ~と紫煙を吐き出した。

なんとなしに見下ろした町並みはいつもと変わらず穏やかな空気が流れていた。

僕には縁のない空気だ、いつも僕の周りは重苦しい空気が充満している。

タバコを吸い終わり、リビングへ引き返えそうと扉に手をかけたとき、後頭部にチクリと刺すような痛みが走った。

「いて!」

と思わず声を上げ痛みの原因が何なのか後頭部を触りながらあたりを見渡した。

するとさっきまでなかった白紙で折られた紙飛行機が落ちていた。

どうやら紙飛行機の先端が後頭部に直撃したようだ。

どこから飛んできたのだろうとあたりを見渡すが見当もつかない。

仕方なく紙飛行機を広う。
このままベランダから飛ばしてまた旅立たせても良かったのだが、何となく紙飛行機を開いてみた。

そこには柔らかい文体で文字が書かれていた。

「手紙か?・・・・」

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