さよならの代わりに

book bear

文字の大きさ
7 / 30

秘密の影

しおりを挟む
総司は朝食を取りながら、ニュースをぼんやりと眺めていた。

震災の被害状況やどういった支援を受けているのかが放送され、それについてコメンテーターや地震の専門家等が今後の展開や、やるべきことを話し合っていたのだが、総司の頭の中は昨夜見た、夢の事で埋め尽くされていた。

葉月といた葉月そっくりの少女、その少女とお見舞いに来てくれていた女性が夢の中では同一人物だった。

葉月からは姉妹が居るとは聞いていなかった。
もしかしたら、記憶を無くした総司に色々と話すのは混乱させるだろうと気を使い、今は話さないだけなのかもしれない。

でも、もし意図的に話さないのだとしたら葉月は一体何を隠しているのだろう?

姉妹について俺に話してはまずいことってなんだろうか?

夢の内容が昔の記憶から取り出された物だとしたら、俺と葉月と少女は小さい頃からの知り合いだということだ。

今の考えが正しかった場合、幼いの時から今まで付き合って来ていて、ましてや片方は妻として側にいる。

それほどまでに強い信頼関係があってもなお言えない事、それはよほどの何かがあるという事だ。

しかし、どんなに考えてみても全く想像がつかなかった。

記憶が無いのだから関係性もよくわからないし、考えようも無かった。

しかし、総司は探究心に駆られ、どうしても真実が気になった。

葉月に直接あの少女について聞いた時、本当に話したくない話題だったら警戒し、余計に話を聞き出せなくなってしまうかもしれない。

だから、あたり触りない内容から聞くべきだと考えた。

その前に夢が本当なのかどうか確認する事からだ。

それともう一つ、先日みつけたカメラ中にヒントが隠されていると期待し、写真を現像をする事にした。

葉月は朝から出かけているので、とりあえず先に写真の現像に取り掛かることにした。

土地感が皆無であった総司はインターネットでカメラ屋を検索した。

幸いにも徒歩圏内に店舗があったので早速カメラを持ち、雨の降る中、家を出た。

------------------------------------------------------

一方葉月は車を走らせていた。

車内にはFMラジオが流れていた。
聞こえてくる内容は何かの番組の質問コーナーだった。

--続いてのお便りは、大阪府在住のペンネーム忙しい暇人さんからのお便りです。

早速読み上げてみましょう--

パーソナリティは低音の聞き取りやすい声で読み上げていく。

--私には姉がいます。先日私の家に姉が押しかけてきました。

姉の足元には、一匹の子犬がちんまりと付き添っていました。

姉は旅行に出かけるから一週間、この子を預かってと言い残し、そのまま帰ってしまいました。

私は犬が大好きなので、そこまでは問題ありません。

問題はここからです。実は私、家族に内緒で彼氏と同棲をしているのですが、その彼氏は動物アレルギーです。

このままでは彼氏は家に入れない状況です。

それに彼氏の実家は東京なので避難場所もありません。

どうしたらいいでしょか?--


葉月は、忙しい暇人に同情した。

自分も今置かれている状況で似ているところがあったからだ。

そして、そのせいで今私は車に乗り、不動産へ向かい、借りていた家を解約しなければならない状況になっている。

総司さんと住んでいる家とは別の家だ。

葉月は今後どうしたらいいのか考え、解決策が見つからず重たいため息を吐いた。

総司さんはいつか記憶を取り戻すだろう。

このまま今の夫婦生活を貫いて、秘蜜を墓場まで持っていくのは無理があると思う。

幸いと言って良いのかわからないが、記憶がもし戻らないならこのまま生活していけばそれでいい。

なんとか、取り戻させない方法は無いだろうか?

しかし、そんな都合のいい話があるはずもなく、葉月はまたため息をついた。

解決策があるとすれば、姉に会うしかない。

「お姉ちゃん、どこにいるのよ」

葉月は不安を背負い、車を走らせる。





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

『白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?』

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。

沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。 その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。 そこで待っていたのは、最悪の出来事―― けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。 夫は愛人と共に好きに生きればいい。 今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。 でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。 妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。 過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――

愛人を選んだ夫を捨てたら、元婚約者の公爵に捕まりました

由香
恋愛
伯爵夫人リュシエンヌは、夫が公然と愛人を囲う結婚生活を送っていた。 尽くしても感謝されず、妻としての役割だけを求められる日々。 けれど彼女は、泣きわめくことも縋ることもなく、静かに離婚を選ぶ。 そうして“捨てられた妻”になったはずの彼女の前に現れたのは、かつて婚約していた元婚約者――冷静沈着で有能な公爵セドリックだった。 再会とともに始まるのは、彼女の価値を正しく理解し、決して手放さない男による溺愛の日々。 一方、彼女を失った元夫は、妻が担っていたすべてを失い、社会的にも転落していく。 “尽くすだけの妻”から、“選ばれ、守られる女性”へ。 静かに離婚しただけなのに、 なぜか元婚約者の公爵に捕まりました。

あなたが決めたことよ

アーエル
恋愛
その日は私の誕生日パーティーの三日前のことでした。 前触れもなく「婚約の話は無かったことにしよう」と言われたのです。 ‪✰他社でも公開

元公爵令嬢は年下騎士たちに「用済みのおばさん」と捨てられる 〜今更戻ってこいと泣きつかれても献身的な美少年に溺愛されているのでもう遅いです〜

日々埋没。
ファンタジー
​「新しい従者を雇うことにした。おばさんはもう用済みだ。今すぐ消えてくれ」  ​かつて婚約破棄され、実家を追放された元公爵令嬢のレアーヌ。  その身分を隠し、年下の冒険者たちの身の回りを世話する『メイド』として献身的に尽くしてきた彼女に突きつけられたのは、あまりに非情な追放宣告だった。  ​レアーヌがこれまで教育し、支えてきた若い男たちは、新しく現れた他人の物を欲しがり子悪魔メイドに骨抜きにされ、彼女を「加齢臭のする汚いおばさん」と蔑み、笑いながら追い出したのだ。 ​ 地位も、居場所も、信じていた絆も……すべてを失い、絶望する彼女の前に現れたのは、一人の美少年だった。 ​「僕とパーティーを組んでくれませんか? 貴方が必要なんです」  ​新米ながら将来の可能性を感じさせる彼は、レアーヌを「おばさん」ではなく「一人の女性」として、甘く狂おしく溺愛し始める。  一方でレアーヌという『真の支柱』を失った元パーティーは、自分たちがどれほど愚かな選択をしたかを知る由もなかった。  ​やがて彼らが地獄の淵で「戻ってきてくれ」と泣きついてきても、もう遅い。  レアーヌの隣には、彼女を離さないと誓った執着愛の化身が微笑んでいるのだから。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

処理中です...