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秘密の影2
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葉月が帰宅したのは夕方の6時ごろだった。
玄関をあけると、夕食の匂いが漂っていた。
荷物を部屋に置き、リビングへと向かう。
「ただいま」
葉月が総司に声をかけると、火加減を調節しながら総司がお帰りと迎えてくれた。
「今日はビーフシチューにしたよ」
地震で電気も止まっているのでガスコンロで料理をしていた。
3日分作ってあとは温めるだけにしておけばガスの節約にもなるからと総司は言った。
確かに、いつ復旧するかわからない状況なので総司の考えはごもっともであった。
相変わらず頼りになると葉月は思った。
昔の総司も、私達姉妹にとって頼れる存在であった。
夕食の準備をし、二人向かい合ってテーブルに着いた。
部屋はランタンの光で薄っすらと照らされている。
お互いの顔がぼんやりと見える程度だ。
「そういえば、今日出かけたときにおばあちゃんを助けたんだけどさ」
と総司は老婆の指輪探しの話を始めた。
話を聞き終えた後、葉月は考えさせられた。
夫婦で大事なことは信頼関係。
確かにその通りだ、今の私に向けられた言葉のような気がした。
このまま総司と夫婦という関係を続けていいのだろうか?
こんな偽りの関係で、夫婦としての幸せを手に入れることが出来るだろうか?
けれど、真実を打ち開ければ夫婦としての生活が終わる可能性が高い。
葉月は総司との今の生活を手放したくはなかった。
やっと憧れの人と結婚ができた。
経緯はどうであれ、今の生活はずっと葉月が求めていたものだった。
------------------------------------------------------
総司は葉月と双子である葉月の姉にとって、頼りになる兄みたいな存在だった。
総司との年は1つしか違わないのだが、子供にとっての一つ上というのは、凄く大人に見えていた。
三人は幼馴染みでいつも一緒に居た。
そして、総司はいつも私達姉妹を引っ張ってくれている存在だった。
そんな総司に私は小学生になった頃から恋をしていた。
けれど、私の思いとは裏腹に、姉と総司がいい感じになっていた。
他人から見れば仲良し三人組に見えていただろう。
けれど、葉月はどことなく孤立した気持ちだった。
二人の間に入り込む隙が無かったのだ。
そして、中学に入ると姉と総司は付き合い始めた。
私はただ、二人を応援する振りをして見ていることしか出来なかった。
次第に3人で会う回数も減り、私は二人に置いていかれてしまった。
だけど、姉を嫌いにはならなかったし、総司に対する気持ちも変わらなかった。
二人は私に対して優しかったし、そんな二人が幸せそうにしているのは複雑だったが私も嬉しかった。
そして、四年前の26歳になった時、姉と総司は結婚したのだ。
私は姉をとても羨ましく思った、いいな、本当に幸せそうに二人とも笑っている。
この時、私の一途の恋心は、心の奥底へと閉じ込められた。
二人の邪魔をしてはいけない、これからは心の底から応援し、二人を支えたいと切実に思った。
そして、いずれ私にもいい人がみつかればいいと願った。
しかし、2週間前の震災の起きた日、予想もしない事が起きたのだ。
------------------------------------------------------
「葉月?大丈夫?」
いつの間にか考え込んでしまっていた葉月は、掬ったビーフシチューを片手に固まってしまっていた。
「え?あ、大丈夫だよ、ちょっと疲れているみたい」
「そう、ならいいんだけど」
総司は食べ終わった紙皿をキッチンペーパーできれいに拭き取り、ゴミ箱へ捨てた。
葉月もビーフシチューを食べ始める。
けれど、さっきまで味のしていたはずのビーフシチューの味は無くなっていた。
玄関をあけると、夕食の匂いが漂っていた。
荷物を部屋に置き、リビングへと向かう。
「ただいま」
葉月が総司に声をかけると、火加減を調節しながら総司がお帰りと迎えてくれた。
「今日はビーフシチューにしたよ」
地震で電気も止まっているのでガスコンロで料理をしていた。
3日分作ってあとは温めるだけにしておけばガスの節約にもなるからと総司は言った。
確かに、いつ復旧するかわからない状況なので総司の考えはごもっともであった。
相変わらず頼りになると葉月は思った。
昔の総司も、私達姉妹にとって頼れる存在であった。
夕食の準備をし、二人向かい合ってテーブルに着いた。
部屋はランタンの光で薄っすらと照らされている。
お互いの顔がぼんやりと見える程度だ。
「そういえば、今日出かけたときにおばあちゃんを助けたんだけどさ」
と総司は老婆の指輪探しの話を始めた。
話を聞き終えた後、葉月は考えさせられた。
夫婦で大事なことは信頼関係。
確かにその通りだ、今の私に向けられた言葉のような気がした。
このまま総司と夫婦という関係を続けていいのだろうか?
こんな偽りの関係で、夫婦としての幸せを手に入れることが出来るだろうか?
けれど、真実を打ち開ければ夫婦としての生活が終わる可能性が高い。
葉月は総司との今の生活を手放したくはなかった。
やっと憧れの人と結婚ができた。
経緯はどうであれ、今の生活はずっと葉月が求めていたものだった。
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総司は葉月と双子である葉月の姉にとって、頼りになる兄みたいな存在だった。
総司との年は1つしか違わないのだが、子供にとっての一つ上というのは、凄く大人に見えていた。
三人は幼馴染みでいつも一緒に居た。
そして、総司はいつも私達姉妹を引っ張ってくれている存在だった。
そんな総司に私は小学生になった頃から恋をしていた。
けれど、私の思いとは裏腹に、姉と総司がいい感じになっていた。
他人から見れば仲良し三人組に見えていただろう。
けれど、葉月はどことなく孤立した気持ちだった。
二人の間に入り込む隙が無かったのだ。
そして、中学に入ると姉と総司は付き合い始めた。
私はただ、二人を応援する振りをして見ていることしか出来なかった。
次第に3人で会う回数も減り、私は二人に置いていかれてしまった。
だけど、姉を嫌いにはならなかったし、総司に対する気持ちも変わらなかった。
二人は私に対して優しかったし、そんな二人が幸せそうにしているのは複雑だったが私も嬉しかった。
そして、四年前の26歳になった時、姉と総司は結婚したのだ。
私は姉をとても羨ましく思った、いいな、本当に幸せそうに二人とも笑っている。
この時、私の一途の恋心は、心の奥底へと閉じ込められた。
二人の邪魔をしてはいけない、これからは心の底から応援し、二人を支えたいと切実に思った。
そして、いずれ私にもいい人がみつかればいいと願った。
しかし、2週間前の震災の起きた日、予想もしない事が起きたのだ。
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「葉月?大丈夫?」
いつの間にか考え込んでしまっていた葉月は、掬ったビーフシチューを片手に固まってしまっていた。
「え?あ、大丈夫だよ、ちょっと疲れているみたい」
「そう、ならいいんだけど」
総司は食べ終わった紙皿をキッチンペーパーできれいに拭き取り、ゴミ箱へ捨てた。
葉月もビーフシチューを食べ始める。
けれど、さっきまで味のしていたはずのビーフシチューの味は無くなっていた。
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